「ちょっ、ちょっと吉崎さん!」
「なに?」
あっというまにトランクスに手を掛けていた明日香が山田を見上げる。
「そ、そんな急に。もっと時間をかけてというか」
「なんで? 彼女がフェラしたこと無くて恥かいてもいいの?」
無茶苦茶な理由にならない理由を盾にして、明日香は再び手を動かし始めた。一度しかやっていないというのに滑らかにトランクスを脱がしてしまう。
「で、でも……」
下半身裸という間抜けな格好で彼女に逆らおうとした彼氏は、大きく口を開けて今まさに自分のものを口にいれようとしている明日香の姿に逆らうことを止めてしまった。先程の甘美な記憶が蘇ってしまったのだ。
山田が期待に震えながら、暖かく濡れた口内に包まれるのを待っていたが、いつまで立っても明日香はペニスを咥えようとしない。
「なんで動かないの?」
焦れた山田が思わず声に出す。
「だって、嫌がってるのに舐めちゃダメだよね」
意地の悪い笑みが明日香の顔に浮かんだ。
「さっき凄くよさそうだったから、私も初めてできた彼氏を気持ち良くしてあげたいんだけどなー」
濡れた吐息をぴくぴく動く亀頭に拭きかけている明日香の様子は、とても男性経験がないとは思えない。まさに小悪魔のそのものだった。
「やっぱりこういうのってお互いの気持ちが大事だもんね」
明日香がちろちろ舌を動かして見せた。言葉とは裏腹に、その瞳は濡れて輝き、山田を魅了する光を放っていた。
じゃ、教室もどろっか。明日香が呟いて立ちあがると山田が情けない悲鳴を上げた。
「ごめん、吉崎さん! して欲しい、フェラチオして欲しい。そんなことされたら我慢できないよ」
「おっけー。これでお互いの気持ちも確かめ合ったし。いただきまーす」
してやったりとばかりに明日香が笑った。ほっと一息ついた山田を確認すると、明日香はしゃがみこんだ。
「じゃあさ、さっきみたいに立ってよ。……よしフェラするぞー。あ! イキそうだからってさっきみたいに無茶しないでよ」
釘を指されて山田が照れ笑いを浮かべる。先程の我を忘れた自分勝手な姿が思い出されて恥ずかしくなったのだ。
「う、うん!」
意気込んで返事をした山田を満足げに見上げると、明日香は目の前の欲望の塊に目をやった。
よし。こんどはちゃんとフェラチオしなきゃ。なんの経験にもならないしね。
えーっと……すぐイカれちゃったらだめだから……さっきはどうなったっけ。
確か皮を剥いたらイッちゃったから、そのままの方がいいのかな。
前二回の射精を振り返りながら明日香は考えた。少々失礼な考えも混じってはいたが。
「あむ」
なんの前触れもなく、自身のものが柔らかく熱を持った粘膜に包まれ、山田は深く息を吐き出した。
「はぁ……あ、あったかい……」
歓喜に震える少年の声を聞きながら、口中の肉棒の熱を確かめるように明日香はじっと動かない。
青臭い独特の匂いが、明日香の腔内にじわじわ広がっていった。最初は思わずえづいた匂いも次第に慣れて、気にならなくなっていく。しかし、ときおり舌に触れる精液の味には慣れることはできそうにないと思った。
咥えているだけではいけないと考えて、明日香は自分の性知識をフルスピードで思い出す。
確か……口でしごきながら舌で舐めるんだよね。
頭の中で確認すると、舌を動かし出す。
明日香が包皮の感触を楽しむように舌を熱い塊に這わせる。
たまらないのは山田である。やっと舐めてもらえたと思ったのに、皮の上からではぼんやりとした快感しか伝わってこない。まさに生殺しだった。
なんか、ちょっとぷにぷにしてグミみたいな感じかも。
舌先で押すようにしてペニスを突つきながら明日香が弾力を確かめる。頭を動かし、舌に触れる位置を少しづつずらしていく。そうすると艶やかな唇から唾液で濡れた血管の浮いた肉棒がずるずると姿を現してくる。
口の中に残っているのは亀頭の部分だけという状態になると、明日香は動きを止めた。
緊張と興奮で息が荒くなっていく。ふぅふぅ言いながら呼吸するのだが、口が熱い塊で塞がれてしまっているので非常に息がしにくい。それでも明日香はペニスを離そうとしない。
眼前のとてつもなく淫靡な光景に山田の興奮はどんどん高まっていく。自分のものがはちきれんばかりに漲って痛いぐらいである。
再び明日香がそそり勃ったものを口の中に収めていく。しっかりと味わうように舌をねっとり絡みつかせ、亀頭の盛り上がりを皮越しに感じながら動かす。
なんかさっきより硬くなってない?
男って出せば出すほど柔らかくなるんじゃないの?
自分の知識と眼前の山田とのギャップに驚きながらも、明日香は懸命に頭を動かした。
慣れない使い方をしているからだろうか、顎がすぐにだるくなる。それでもときおり洩れる山田の快感の呻き声を糧に、明日香はぷるぷると柔らかい唇で肉棒をしごき続けた。
初めのうちは歯がたまに亀頭を引っ掻いてしまっていたが、口の中に唾液と先走り液が溜まり始めると、それが潤滑液の役割を果たして滑らかな動きの手助けになった。
明日香の口内でぐぽぐぽと空気を含んだ粘液が攪拌される。
「気持ちいい?」
口の周りを濡らしながら明日香が彼氏を見上げた。
「気持ちいい、すごく……」
山田の心からの感想だった。短い感想だが、その表情が言葉以上に快感を物語っている。
自分の上達ぶりに満足した明日香は次のステップに進むことにした。さらに積極的に舌を使おうというのだ。
「ふむぅ……ん、んっぁ」
意識して舌を熱い幹に這わせる。
露出した亀頭と皮部分の感触の違いがなんだかおもしろい。明日香は円形の皮の縁を舌先でなぞり出した。
「あうぅ……」
繊細な刺激に山田がくぐもった声をあげた。口を一文字に結び、必死で快感を堪えている。
その様子を明日香が上目づかいで確認し、嬉しそうに目を細めた。
しばらくの間、明日香はふよふよした皮付きペニスを味わっていたが、咥えたときと同じように、口を大きくゆっくりと開けるとペニスを吐き出した。
「んむぁ……」
ピンクの唇と、赤黒い肉棒の隙間に幾筋もよだれが糸を引いた。混ざっている先走り液がよほど濃いのか、なかなか切れない。
「むぅっ……あんむぅ」
唇を動かしてなんとかベトベトする感触を取り払おうとするが、にちゃにちゃと音を立てるばかりで一向に粘液がなくなる気配はない。明日香は口元を指で拭うと、艶々光っている指先をじっと見つめしばらく考える素振りを見せたが、なにを思ったのかパクリと咥えてしまった。
「別に不味くはないよね」
その光景を見下ろしていた山田のペニスがひくひく動いて持ち主の興奮を代弁した。
ちゅぱちゅぱとはしたない音をたてて綺麗に手入れされた指先をしゃぶっていた明日香だったが、自分を凝視している山田に気付いた。
「ん? そんなに見ないでよ、なんか照れるじゃん」
「ご、ごめん。でも……すごくいやらしかったからつい」
「なにが?」
「その指を舐める仕草が凄くエッチに見えて……」
「マジで? 山田って結構エロいんだぁ。真面目そうなフリして、そんなことばっか考えてんでしょー」
山田に顔を近づけると、明日香はからかうようにゆっくりと指を口に含んだ。
ごくりと山田の喉が鳴った。
「やっぱり興奮してる……むっつり、は・っ・け・ん」
耳元で囁かれて、山田は再度つばを飲み込んだ。
明日香が息をするたびに、愛らしい口元にはつかわしくないイカ臭い匂いが微かに漂ってくる。
間違いなく自分の出した精液の匂いだ。その淫臭が、今の状況を夢ではなく現実だと確信させる。
山田は自分のものが本当に長い間想っていた同級生の口を犯したのだと思うと世界のすべてに感謝したくなった。そして、さらに自分の股間に血液が集まるのを感じた。
ひくひくと動いている山田の鼻に気付いた明日香は焦って口元を覆った。
「えっ、もしかして匂う!? うわっ! 最悪ぅー」
狭い個室でできる限り距離をとった明日香は、山田から顔をそむけた。
「ちょっとだけ。で、でも僕の出したやつの匂いだし……そんなに気にしなくても」
口元で掌を広げ、自分の息の匂いを確かめている明日香を見ながら、山田がおずおずと言った。
「そういう問題じゃないって」
泣き笑いの複雑な表情で乙女心を覗かせながら明日香が言った。
やはり彼氏の前ではできる限り可愛らしくいたい。それなのにまさか精液まみれの口臭を嗅がれてしまうとは。
明日香がくるりと山田に向き直る。
「あのさ……」
上目づかいで見つめられ、山田はどぎまぎした。金髪の女子高生に媚びるような視線を向けられるというめったにないシチュエーションは、ただでさえ異性慣れしていない少年にはきつすぎる。
山田は生唾を飲み込んだ。
「……普段は私絶対にこんな匂いしないから。ほんと、ちゃんと歯も磨いてるし、マジきれいにしてるから、だから……だから嫌いになんないでね」
今風の見た目に反した中身の持ち主だということを山田は先ほど知ったばかりだが、ここまで殊勝なことを言うタイプとは思わなかった。
見た目とのギャップのせいか、無性に胸が締めつけられるような気がする。
山田が感激して言葉にならないのを明日香は不安げに見ている。
「嫌いになった?」
ぶるぶると山田が勢いよく頭を振る。
「まさか! ますます好きになったよ。僕、吉崎さんを好きで良かった」
明日香が山田に抱きついた。喜びを全身で表現し、懸命に恋人に伝えようとしている。
「うわっ、吉崎さん!」
「やっぱり山田っていいやつだよね」
山田にぴったりと密着した明日香は、さらに言葉を続けようとしたが、自分の股間に当たっている熱く、硬いものの感触に言葉を変更した。
「つーか、いませっかくの感動のシーンなのにずっと山田のおちんちんが当たってて台無しなんだけど」
「ご、ごめん」
「でもフェラの途中だったから仕方ないか」
背中に回していた手をするするとおろし、優しくペニスを包み込んだ。鈴口から溢れている粘液が綺麗に手入れされた指を汚す。
「……っ」
小さな呻き声を聞きながら、明日香はしゃがみこんで自分の手の中で自己主張しているものをじっくりと観察する。
「……ほんと、山田のおちんちんって元気だよね」
照れ臭そうに笑う山田の顔には気付かずに、明日香は再び口を大きく開け、ペニスをしゃぶりだした。
ニ、三度頭を動かすと、剥き出しの亀頭部分のみを口内に残し、ちゅうちゅうと吸いつく。
痛いぐらいの快感に山田の顔がしかめられる。
最初は生臭い香りが鼻についていたが、次第に明日香はそれが気にならなくなっていた。慣れないだろうと思っていたのに、むしろ良い匂いだと感じさえする。
「ふむぅ、ん……んふ」
舌先を尖らせて亀頭の割れ目を刺激する。
その刺激に反応して、思わず山田の腰が跳ね上がり、明日香の喉を突いた。
「んぐっ!? んあっん……うー」
恨めしそうな顔で見上げてくる明日香に謝罪の言葉を口にすると、山田は明日香の髪を優しく撫でた。
明日香の目が細められ、先ほどまでとは逆に恍惚とした表情に変化する。
ほっ、として手を止めると、明日香がいやいやをするようにペニスを咥えたまま頭を振った。
「もっろ撫れて」
その言葉に、山田は再び手を動かしだした。前後に揺れる頭に触れていると、愛しさがこみ上げてくる。金髪にしているせいだろうか、少しぱさついている気がするが、それでもその手触りは十分に山田を楽しませた。
さらさらとした感触に山田が気を取られている間にも、明日香は必死で口をすぼめ、硬い肉棒をしごきたてていた。
しかし、次第に中途半端に皮越しにされる愛撫が山田には物足りなくなってきた。山田のものはさらなる快感を欲している。
少し躊躇ったものの、意を決して山田が口にした。
「よ、吉崎さん……。もう、そんなにすぐにイッちゃわないと思うから……皮越しじゃなくて直に舐めて欲しいんだけど」
もともと内気な山田にとって、それはまさに清水の舞台から飛び降りるような心境でのお願いだった。
「いひの?」
先程の山田の情けない姿を思い出しているのだろうか、明日香が驚いた顔で尋ねた。
喋ったせいでピンクの舌先が亀頭を撫でる。
軽い刺激にも敏感に反応しているくせに、これ以上弱みを見せたくないと思ったのか、山田は強がりを言った。
「あっ……うん。だんだん慣れてきたからたぶん大丈夫だと思う」
「わかっら」
ペニスを口にしたまま短く返事をすると、明日香は自分の口からにょっきり出ている肉棒に目を向けた。
山田はいったん口を離して手で剥くのだろうと思っていたが、明日香は唇を離す素振りを見せない。
自分の発言を疑っているのかと、山田がもう一度、大丈夫だから。と口にしようとしたとき、明日香の舌がうごめいた。
明日香は包皮と、それが引っかかっている雁の隙間へ、にゅるりと舌を滑りこませた。
以外に伸びるんだ、この皮。
あ……!
そっか、勃っちゃったとき伸びなかったら困るもんね。
自分の考えに赤面しながら、明日香は皮をしばし弄ぶようにいじくりまわした。
それに飽きると、そのまま舌で丁寧に皮を押しのけて、じわじわ亀頭を露出させていく。明日香は器用に舌を動かし、皮の代わりに自らの舌で山田のものを包むように舐める。
「らいひょうぶ?」
心配そうに、明日香が山田の様子を窺う。
山田は眉を寄せて新たな刺激に堪えていた。それを見た明日香が淫らに動く舌から山田のものを解放する。
「あのさ、気持ち良かったら声我慢しないでだしていいよ。……そのほうが私も嬉しいし」
実際のところ、山田は返事どころではなかった。剥き出しになった先端から受ける刺激は痛いぐらいの快楽を山田に与えていたからだ。
「凄く、気持ち、いいよ……」
気を抜くと、またあっという間にイッてしまいそうで一語一語にむやみに力が入る。
褒められるのって嬉しいなぁ。
明日香は充足感を味わいながら、目の前の完全に亀頭が露出したペニスをまじまじと見た。
あー、ほんとに亀みたいなんだぁ。皮があってもなくても結構可愛いな。色もピンクだし。
山田のおちんちん。そう思った途端、愛しさがこみ上げてきて明日香は軽く先端にキスをした。
そうだ! あれやってみようかな。
アダルトビデオのワンシーンを思い出した明日香は天に向かってそそり立っているペニスの上に頭を持ってくる。
真上から男のものを見下ろす明日香。
「吉崎さん?」
「見てて」
くちゅくちゅと口を動かしている明日香を、これからなにをしてもらえるのだろうかと、山田が期待に胸を膨らませながら見守る。
「んぁ……ぁ」
明日香の唇が僅かに開かれ、隙間から濡れた舌が突き出された。
ひくひく動いている山田のものに、明日香の舌からとろとろ流れ落ちる唾液がシロップのように降りかかっていく。
糸を引いて落ちていく唾液が山田自身を濡らしていった。
この上なくいやらしい光景を目の当たりにして、山田は指一つ触れられていないはずなのに、濡れた場所から快感を感じてしまう。
「す……ごい」
「どう? エロかった?」
顎に垂れたよだれを拭いながら、明日香が自慢気に問いかけてきた。自分の思いつきを早く褒めて欲しくてたまらないようだ。
「だめ?」
ぽかんと口をあけたまま、間抜けな顔を晒している山田を見て、明日香は失敗だったかと、内心後悔した。
「全然だめじゃない、とってもエッチだったけど……。そんなのも本とかで見たことなの?」
山田にはとてもではないが明日香がセックス未経験とは思えない。
「うん。やっぱ色々知ってないとさぁ、したことないのばれちゃうと思って」
あっけらかんと応える明日香を見て、山田は頭がくらくらした。
「なんかして欲しいことあったら言ってね。できるだけやったげるから」
舌をちろちろ動かして明日香はペニスにしゃぶりついた。
今日何度目かの暖かい粘膜の感触に山田が、こちらは数え切れないほどになる呻き声をあげる。
ぷちゅぷちゅと明日香の口腔で唾液が泡立ち、音をたてた。手を山田の腰に回し、まるですがりつくようにしてペニスを咥えこんでいる。
「ふむぅ、ふぅ、んっ……うっ、ん」
静かな女子トイレに、明日香の吐息だけが響く。
まるで別の生き物のように、舌が熱い幹を這いまわる。明日香の口の中はまるでそれが女性器であるように、ペニスを締めつけ、包み込んだ。
自分の頭に触れる掌を感じながら、明日香は懸命に頭を動かした。
敏感な亀頭に舌を擦りつけ、頬の内側で撫でる。まだ時折歯が幹を引っ掻いてしまうのは御愛嬌というものだろうか。
「あ、あの吉崎さん」
「はに?」
根元まで熱い塊を飲み込みながら明日香が返事をする。
「そ、その……やっぱりいいよ」
ちゅぽんと小気味いい音をたてて山田のものが明日香の口から飛び出した。
「できることならなんでもしたげるって言ったじゃん」
「……で、できたらでいいんだけど。あの、胸……見せて欲しいんだけど……」
申し訳なさそうに、おずおずと言った山田を明日香はたっぷり三十秒凝視した。ちょうど山田のペニスが納まりそうなぐあいに口をぽかんと開けて。
そして、思わず手直にあったものを握り締めた。
「いっ! 痛い!!」
顔を歪めて山田が叫んだ。それはそうだろう、なにせ急所を攻撃されたのだから。
明日香が慌て手を放し、お手上げをするように頭の上にやった。
「ご、ごめん! だけど山田が悪いんだからね、いきなり胸見せろとか言ったらびっくりするって」
わたわたと手を振って焦る明日香。
それを山田は痛みを堪えつつ涙目で見つめた。
「それにこんなところじゃヤだって」
その言葉に二人して辺りを見まわす。まぎれもなく女子トイレである。
「もっとちゃんとしたとこで見せたいし」
「えっ!」
山田が大きく目を見開いた。
「トイレはヤだって言ってんの」
もじもじと照れ臭そうに明日香は言った。これも乙女心の為せる業だろう。
「トイレは……?」
「全部言わせないでよ。恥ずいんだから」
頬を染めた明日香を見て、山田のペニスから先走り汁がぴゅくっ、と音をたてて噴き出した。
「う、うん……」
緊張した面持ちで山田が頷く。少々間抜けだが、握りつぶされそうになった自分のものをさすりながら。
「そんなに痛いの?」
明日香がペニスを指差した。相変わらず硬くそそり勃っていて、明日香には非常に元気に見える。
「もうそんなに痛くないよ。なんとなく気になって」
「ごめんね。マジびっくりしちゃってさ」
ゆっくり手を伸ばし、明日香は優しくそれを撫でた。いたわりの気持ちからなのだろうが、山田には快感として伝わってくる。
「できるだけ優しく、痛くないようにしたげるから」
目を閉じ、スローな動きでペニスに顔を近づけていく。柔らかい唇が触れた。それがじわじわと開いていき、山田のものを飲み込んでいく。
ゆっくりと舌を這わせ、頭を動かす。その触れるか触れないかの繊細な感覚が山田のものをじわじわと責める。
「ん……むっ。ふぅ、むぅ」
明日香の呼吸が山田の陰毛を揺らしている。
「吉崎さん、もう痛くないからもう少し強くお願い」
欲望に正直なお願いを快く受け入れ、明日香は少しづつ、唇の締めつけを強め、頭を動かすスピードを早めていく。
口の中に溜まった唾液のせいでぐちゅぐちゅと卑猥な音がして、それが二人の興奮をいっそう煽った。
様々な性知識をつたない技巧に反映させ、明日香は懸命に奉仕をする。
わざとちゅうちゅう恋人に吸いつく音をたててペニスをしゃぶり、おそるおそる指を袋に伸ばし、初めて触れるそれを揉みしだいた。
新たな刺激に、山田の腰が浮きかける。が、ぐっと腰に力を入れてなんとか堪えた。
明日香の舌が裏筋をくすぐるように撫でたかと思うと、次の瞬間には尖らせた舌で雁を突ついている。
ぎこちない動きだったが、心のこもった愛撫に山田の快感が高まっていく。
「あっ、いい……」
まるで女のような声をだして山田が己の快感を明日香に伝えた。
それに気を良くしたのか、明日香は掌で包み込んでいた袋を、今度は口に含んだ。もぐもぐと口を動かして、歯が当たらないように気を付けながらマッサージする。
あー、この感触けっこーやみつきになるかも。
でも急所なのに気持ちいいって男も大変な体してるよねぇ。
手をペニスに絡ませてシゴキながら、明日香が舌で袋の中の玉を転がした。
絶妙のコンビネーションに思わず山田の手が明日香の頭をがっしり掴んでしまう。
いきなりの衝撃に、明日香は噛んでしまわないように気を使いながら袋に吸いついた。自分の唾液でベトベトになった幹の部分が顔に当たってしまうが、それを気にせず明日香は舌を動かす。
時折てちてちと舌で叩くように刺激を与えながら、キャンディを舐めるようにぺろぺろとペニスをしゃぶる。
妙な高揚感に包まれているせいか、いつしか明日香の顔は上気してうっすらとピンクに染まっていた。
唇の締め付けをしだいにきつくして肉棒を締めつけ、頬をすぼめて激しく頭を振り立てる
ときどき、愛しさと興奮が高まりすぎて、口腔を犯しているそれを思いきり噛み締め、むちゃくちゃにしたい誘惑にかられる。
しかし、そのたびに先程の山田の痛がりようが思いだされて、恋人を傷付けるようなことはやめようと思いとどまる。
危険な欲望を抑えながら、その想いがあるからだろうか。明日香の愛撫はますます丁寧に、いやらしいものになっていく。
「ぐぷ……くちゅっ、ぐちゅっ」
唇の端に泡立った唾液が溜まって明日香の口元を汚す。
「吉崎さん……そろそろ、イキそう……」
「うむぅ」
ついうっかりして、山田のものを咥えたまま頷いた明日香だったが、それさえも山田には精液の発射を早める技に思えた。
今まで以上に舌が激しく動き、尿道口を中心に亀頭を撫でまわす。
「ふぅ、ふぅ、ん……んっむ」
明日香が荒い息を洩らしながらペニスにむしゃぶりついていると、徐々に山田の息も荒くなってくる。
口内に溜まった唾液と先走り汁を明日香がすする。頬をすぼめていたせいか、ずずっ。という下品な音が個室に響いた。
すべすべした手で柔らかい袋を揉みしだき、明日香は無我夢中で愛撫をおこなった。
今の明日香には山田のすべてが愛しく感じられた。
やさしそうな顔も、あの人の良さも、気の弱いところも、真面目なところも、以外にエッチだったことも、今自分の喉を貫いている欲望も、少し余り気味の包皮も、独特の感触で一気に気に入ってしまった柔らかい陰嚢も、これから自分の口内に溢れかえるであろう精液もすべて。
「あっ! あっ、よ……吉崎さん! イクぅっ!」
山田の腰が跳ねあがり、明日香の歯に引っ掻かれるのも気にせずに暖かい口内で欲望の塊が暴れまわる。
「ん! ぐぅ……!」
明日香がくぐもった悲鳴をあげるが、おかまいなしに山田のものは大きく膨れあがり、白い粘液を噴き出した。
びゅくびゅくと喉の奥に吐き出される精液を、明日香はむりやり飲み込まされた。
山田にその気はなくとも口内を占領している肉の塊が吐き出すことを許してくれない。
明日香の喉が動き、ねっとりと跡をひきながら精液が食道を流れ落ちていく。
「っぷはっ!」
必死の思いでペニスを吐き出した明日香の顔に、ぴたん。と肉棒が押し付けられた。頬に擦りつけられたそれは、まだ出し足りないのか、震えながらぷにぷにしたほっぺたを白く汚していく。
「熱い……」
ぼんやりと明日香が呟く。最後に数回痙攣して明日香のおでこにまで粘液を飛ばし、ようやく山田は射精を終えた。
「ご、ごめん。できるだけ気をつけたんだけど、また顔にかけちゃって」
最初の射精後のように、トイレットペーパーを大量に巻き取りながらオロオロする山田。
「山田って……出しすぎ」
ぼそりと聞こえた一言に山田はますます恐縮する。
「でも、まぁいいよ」
「へ?」
「これだけ私が山田を気持ち良くしたげたって証拠だもんね」
口元、頬、額と、顔中にこびりついている粘液を指ですくい取りながら明日香が言った。
萎えた分身を挑発するような光景を見ながら、山田がトイレットペーパーの塊を手に突っ立っていると、明日香がぺろりと舌先の白濁を舐め取った。
「……っあ! まずーい」
目をつむり、ぎゅっと眉をしかめながら口を動かす明日香。
苦いだの、べとべとするだの言いながらも精液を舐め続けている。
「そんなに無理して舐めなくてもいいよ。これで拭いてあげるから」
自分の出したものを拭き取ろうと山田が、明日香の顔に手を伸ばす。
「えー。でもあれでしょ? 男の人って自分の飲んでもらうと嬉しいんじゃないの?」
「そ、そりゃ吐き出されるよりは嬉しいけど……不味いんでしょ?」
「すごくね」
明日香は軽く溜息をついた。
「だったらいいよ。はい、顔上げて」
「ん」
明日香が言われたとおりにすると、山田が手にした山盛りのトイレットペーパーでわしわしと自分が汚した顔を拭き始めた。
うにうにとほっぺたを拭かれながら明日香は目を閉じてされるがままになっている。
人にこんなことやってもらうの久しぶりだなぁ。
叶姉妹とか毎日こんななんだろうな。
なんか私もセレブになったみたい。ちょっとお姫様気分でいいかも。
まさか顔射されているお姫様もいないだろうに。明日香が少しばかり間の抜けた想像をめぐらしている間に、顔はすっかり綺麗になっていた。
大量のトイレットペーパーを便器に捨てると、山田がようやく手を止めた。
「はい。終わったよ。手は自分で洗った方がいいよね」
「だめ、手も」
甘えた声を出して綺麗に手入れされた爪を山田に向ける明日香。
「うん」
素直に頷く山田。からから音をさせて紙を巻き取ると丁寧に手を拭きだした。
「ね、私の指って綺麗だと思わない?」
明日香が細い指を目で示した。
「え、う、うん。綺麗だと思う」
「やっぱり。私の一番自信あるとこなんだ」
満足気な笑みを浮かべた明日香は拭き終えたばかりの右手を持ち上げた。
「そうなんだ。でも吉崎さんは指だけじゃなくて全部が可愛くて綺麗だと思うよ、僕」
「あ……ありがと」
「うん」
ぎこちなく礼を言う明日香に、微笑む山田。
「言うときは言うタイプなんだ」
「なにが?」
「……別にいいけどさ」
「よし、おしまい。一応自分でも洗った方が良いと思うよ」
「わかった、そうする」
明日香は素直に洗い場に向かった。
蛇口を捻り、流れ落ちる水でまず手を丁寧に洗い、次に濡らしたハンカチで顔をゆっくりと拭う。これも山田にやってもらえば良かったかな。そう思いながら。
山田も横に来たが、こちらは手を洗うだけなのですぐに済んでしまった。
「僕、外で待ってるね」
明日香はすっかり忘れていたが、女子トイレは男には非常に居づらいものだ。
興奮が冷め、頭が冷えた今となっては常識人の山田にとって一刻も早く立ち去りたい場所だった。
そそくさと出ていく恋人の背を見ながら、明日香が口をすすぐ。
精液が混じっているせいか、なんとなくどろっとしている気がした。
実際には普通の水と何ら変わらないのだが。
「最初は美冬への見栄だけだったんだけどなぁ。……ま、いっか。彼氏ができたんだし」
唇が綺麗な曲線を描き、明日香の美貌に笑顔を添えた。
一応の作業をすべて終え、鏡でじっくりチェックした明日香は、後できちんとメイクをしなおすことを誓って、トイレから出た。
「お待たせ」
「う、うん」
「じゃ、教室にもどろっか」
「うん」
「とりあえずさぁ、お互いに初めてだったってことで今日の顔射は許したげる」
「ご、ごめん」
突然飛び出た顔射発言に思わず赤面した山田は辺りを慌てて見まわした。
幸い授業中ということもあって廊下には二人しかいない。
「ま、私のテクが凄かったってことで」
「……ありがとう」
山田はどこと無く釈然としないものを感じながら、一応礼を言った。
「だからって調子に乗んのは無しね。エ・ロ・い・山田に言っとくけど、顔にかけんのは私がいいって言ったとき以外これから無しね。髪の毛についたらすっごい取れにくいんだから」
前髪をいじる明日香。
「気をつけるよ」
くだらない会話をかわしながら、教室に戻ろうとすると授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。
「あ、終わっちゃった」
「僕授業サボったの初めてだ」
「いやぁ、今日は初体験尽くしですなぁ」
にやにやと笑いながらオッサンのようなセリフを吐かれて山田の頬が紅潮する。
「なっ!」
「またさぁ、サボって一緒になんかしようよ」
「……うん」
「だからってエッチなことじゃないよ」
「わかってるよ!」
二人は教室から出てくる大勢の生徒の流れとは逆に、騒ぎながら廊下を歩いて教室へ向かった。
その日、最後の授業が終わり、これからクラブ活動をする者、家に帰る者、どこかへ遊びに行く者、それぞれがそれぞれの準備でざわつく教室の中、明日香は教卓へ向かった。
黒板を背にすると、明日香は机をバシバシ叩きながら大きな声をあげた。
「はいはーい! 注目ー!」
また明日香がなにかしでかすのかと、教室中の目が教卓の方を向いた。
もちろん山田も何事かと明日香の方を見る。すると、明日香と目が合った。妙に楽しそうな笑顔に山田は嫌な予感がした。
「本日からー、私、吉崎明日香は山田と付き合うことになりましたー! 今まで私に色々言ってくれた人ごめんねー」
山田は椅子から大きな音をたてて転げ落ちた。
能天気な笑顔がやけに輝いて見える。
いきなりの交際宣言からきっちり十秒後、明日香への注目が一斉に山田に移る。
ざざっ。と、視線の動く音が確かに山田には聞こえた。
真面目でどちらかといえばおとなしい山田と、遊び人の明日香が付き合うなんてどういうことだ? 全員の好奇心に満ちた目がそう言っている。
中には憎しみと嫉妬のこもった視線もあったが。
ここから消えて無くなることができたらどんなに楽だろう。くらくらする頭でそう思ったが悲しいかな、山田はただの人間だった。
そこで山田はカバンを掴むと脱兎の如く駆けだし、教室を飛び出した。耳まで赤い顔となって。
背中に、どこ行くのよー。という明日香の声を聞きながら。
明日は初めてのずる休みをすることになりそうだった。