明日香が唇をぺろりと舐めて、山田の下半身に目線をおろした。つられて山田も自身を見る。  
「ちょっとこのままはアレよね」  
 確かに、山田のものは明日香の愛液と破瓜の血がこびりついていて、少々グロテスクになってしまっている。明日香でなくとも、そのまま口に含むのはためらわれる状態だった。  
「よし! 洗おー」  
 シャワーから勢い良くぬるま湯を噴き出させると、山田に浴びせかける。  
「うわ。ちょっ、吉崎さん」  
「いいから、まかせといてって。お客さんこういうとこ初めてぇ?」  
 わざとらしく妙なしなをつくりながら、明日香が手をペニスに伸ばした。  
 こびりついた汚れを丁寧に落としていく。さおをマッサージするように指を滑らせたり、袋をひっぱったり、いいおもちゃがわりにされてしまう。しばらくすると、山田のペニスはぴかぴかになった。  
「も、もう充分綺麗になったから……」  
「お客さーん、遠慮しないで」  
 この水商売風のしゃべりが気に入ったのか、明日香は相変わらず山田をお客さん呼ばわりする。  
 ずっと固いままのペニスを優しく揉み、しごく。昨日、初めて男性器に触れたとは思えない手つきだ。  
 熱い肉棒を握り締めて、明日香は感動した。  
 こんなのが私の中に入ったんだ……。そりゃ痛いよね。  
 ほんとに次からちゃんと気持ち良くなるのかな。  
 山田にどんどん気持ち良くなれるようにしてもらわなきゃ。  
 山田が知れば、興奮のあまり鼻血を噴き出しそうなことを考えている間も、明日香の柔らかく暖かい手は滑らかに動き続ける。  
「ちょ、こ、これ以上そんなことされたら……」  
「なに? イッちゃう?」  
 好奇心に満ちた目で見つめられて、山田はうなずくしかなかった。  
「そっか……じゃあ、そろそろ」  
 明日香が顔の前で両手を合わせた。  
 なにをするのかと山田が見守っていると、  
「いただきまぁす」  
 底抜けに明るい声が浴室に響いた。  
 
 山田が覚悟を決める暇もなく、明日香はぱっくり大きく口を開け、山田のものを口に含んだ。  
 途端に、山田に温かい粘膜が送る快感が伝わってくる。  
「きもひいい?」  
 明日香がペニスを咥えたまま喋ったため、歯が亀頭を引っかいてしまう。いただきます、と言ってフェラチオを始められて、興奮の極みに昇りつつあった山田に、その鋭い刺激がさらなる加速で快楽を味わわせる。  
「ひもちひひんら」  
 眉をしかめる自分を見て、気持ちいいんだ、明日香がそう言ったのが山田にははっきりと伝わった。  
 敏感な亀頭を舐めまわし、甘噛みされ、先走りの滲み出る暇もなく山田はその日最初の山に昇り詰めた。  
「あっ、で……出るっ!」  
 今度は明日香の覚悟が間に合わなかった。  
 勢い良く噴き出した精液が、頬の裏側にあたり、口腔に溜まっていく。  
 少しでも快楽を持続させようと、山田が自ら腰を振り、明日香の口にペニスを突き込む。  
 すると、明日香の舌がそれに応えた。尿道に残った発射の残滓を外側から押し上げるような動きで、最後の一滴まで絞り尽くす。  
 腔内にたまった粘液のかき混ぜられる音が体の内側から聞こえて、明日香の瞳がとろりと半分閉じられ、うっとりした表情になった。  
「はぁ……」  
 青臭い匂いのする溜息とともに、艶やかなピンクの唇から山田自身がずるずると引き抜かれていく。  
 気付いた明日香が、それに逆らってちゅうちゅうと音をたててストローのように吸った。残念ながら甘いジュースは出てこなかったが、尿道からは新たな快感の代価としてカウパー滲み出て、明日香の舌の上に乗る。  
 にっこりと笑いながら山田を見上げる明日香の口の端から、ゆっくりと白い粘液が一筋、零れ、流れた。それが落ちてしまう前に、ぺろりと舌で舐めとる。  
 瞳に山田の姿を映したまま、喉を鳴らし、口の中のものを飲み下した。  
「……やっぱまずい」  
 明日香が眉をしかめて小さな声で呟いた。  
「昨日、無理して飲まなくていいって言ったのに」  
「ちゃんと私の中でイかせてあげらんなかったから。飲まれると嬉しいんでしょ?」  
 行為自体よりも、その自分を想う心が山田には嬉しかった。  
「すごく嬉しいけど、嫌ならいいよ」  
「いいの、決めたから。今日は全部飲んだげる」  
 知らず、山田の喉がごくりと鳴った。  
 
「こんなにイガイガじゃなかったらまだましなんだけどなぁ」  
 舌で口の中を拭っているのだろうか、明日香の頬が膨らんだり、へっこんだりしている。  
 自分の出したものが恋人を困らせていると考えると、山田のものが再び固くなり始めた。  
 それを見た明日香の目が細まる。  
「あー! もう大きくなってる。お客さんエローい」  
「こ、これは、その」  
「つーか山田って絶対、普通の人よりエロいよ。昨日あれだけ出したのに今日のだってすっごい濃いんだもん」  
 ほら、と言ってはしたなく口を大きく明けて見せる。口内は、綺麗なピンク色なのだが、ところどころに、べっとりとゼリー状の白いものが張りついて糸を引いている。  
「うわ……」  
 淫猥な光景に山田の下半身はさらに固さを増した。  
「ね。普通は出せば出すほど薄くなるんでしょ、精液って。でも山田のって全然薄くならない、っていうか、だんだん濃くなってる気がする」  
「ご、ごめん」  
「謝らなくてもいいよ。これってそれだけ山田が私のこと好きってことでしょ?」  
 明日香の唇が動くたびに、糸を引いている姿に目を奪われていた山田はとっさに返事ができない。ただでさえ、そのような問いに答えるのは苦手だというのに。  
「……違うの?」  
「す、好きってことだと思う。いつもならこんなにで、出ないし、勃たないから」  
 悲しみよりも、むしろ驚いた表情の明日香に、慌てて自分の内情を暴露してしまう。  
「それじゃあ、私のためにおっきくなったんだから、私がちゃんとしてあげないと」  
 
 今度の明日香は先ほどとは違い、口を開けることはしないで、舌で根元のほうから、丹念にねぶっていく。  
 陰毛にも怯むことなく、顔を突っ込んで舌先でぐりぐりと根元を刺激していく。  
「う、うわ……」  
 いつのまにか抜け落ちた一本の陰毛が、明日香の上気した頬に貼りついている。あからさまに頭髪とは違う、ちぢれた太い毛が、本来なら自分が触れることができるかどうかも妖しかった部分に存在するのが、山田には信じられなかった。  
 恋人が感動している間にも、明日香の舌は巧みに動いていく。膨らんだ血管をなぞり、じょじょに先端に向かっていく。  
 本当にそれが愛しいのだろう、明日香はときどきキスをするような仕草を見せた。初めて唇を許したものなのだから当然と言えばそうかもしれない。本人はそれを認めていないが。  
 亀頭のかさの部分に残っていた水滴を舐めとると明日香は満足げな表情を浮かべた。  
「よし。お掃除終わり」  
 確かに綺麗にはなったが、こんな掃除はないだろう。とは思うものの、得がたい悦楽の前にそんな山田の常識は消し飛んでしまう。  
「ん?」  
 明日香が怪訝な表情を浮かべた。  
 どうしかしたのかと、山田が尋ねる前に、おもむろに明日香が指を口に突っ込んだ。  
 舌を突き出して、指でいじりまわしている。それは指を仮想のペニスに見立てたフェラチオのようだった。  
「取れた」  
 明日香が指でなにかを摘み上げる。山田が良く見てみると自分の陰毛だった。  
 そのまま捨ててしまうと思っていたそれを、明日香はちろちろと舌先で弄ぶ。  
「うわ! 私今すっごく変態チックじゃなかった?」  
 やばー、そう言って笑っている恋人の様子を見て、山田は変態でもいいと強く思った。  
「これで、本当におしまい」  
 陰毛を投げ捨て、ぽんと手を叩く明日香はまさしく小悪魔だった。  
「じゃ、じゃあもう終わり?」  
 情けない声を出した山田を見て、明日香が大笑いした。  
「あははははは。こんなので終われないでしょ? 私だって舐めたいのに、ね?」  
 器用にウィンクすると明日香はペニスの鈴口を爪で引っ掻いた。  
「うあっ」  
 思わず腰をひく山田。  
「あっ! ごめん、痛かった?」  
「大丈夫。凄い刺激がきてびっくりしただけだから」  
 
「だったら良かった。えーっと……寝っ転がってくれる? その方がしやすいし」  
 言われたとおりに洗い場に仰向けになった山田に明日香が覆い被さった。いわゆるシックスナインの体勢である。  
 目の前に恋人の秘部がある状況に山田は興奮し、先ほど自分のものが入っていたところにむしゃぶりついた。  
「ひあっ」  
 突然のざらついたしたの感触に、明日香が仰け反る。  
「もう! そっちがその気なら……」  
 明日香も山田のペニスにしゃぶりつく。一気に喉の奥にまで飲み込んでしまったために、少しむせそうになったが、なんとかこらえ、ちゅうちゅうと吸いこみ始めた。  
「ふぅ、ふむぅ、あ、そほ、いひかも」  
 どうやらペニスを咥えたまましゃべってしまうのは明日香の癖らしい。  
「ぼ、僕も気持ちいい」  
 二人は夢中で互いを愛撫しあったが、明日香のお尻を鷲掴みにしていた山田の手が、そろそろと動き出した。  
「んいっ!」  
 お尻の穴に指を突っ込まれた明日香が小さく喘ぐ。  
 ぞわぞわと背筋を這いあがってくる奇妙な感覚に明日香は戸惑った。  
 さっきも舐められたけど、これって気持ちいーのか、悪いのか変な感じ。  
 アナルセックスってできるぐらいだから、指ぐらい入って当たり前なのかも。  
 でも・・・・・・んーっ! お尻がおかしくなりそう。なにこれぇー?  
 あ! そうだ!!  
 なんだかんだ言って、山田の顔に、お尻を押し付け貪欲に快感を味わっていた明日香ががばりと身を起こした。  
 そのまま山田の下半身を持ち上げようとする。が、明日香の力では持ちあがらない。  
「どうしたの?」  
「ちょっとさぁ、四つん這いになって欲しいの」  
 わけがわからないまま、言われたとおりの格好をする山田。  
 
「実験開始ー!」  
 唐突に明日香が山田のお尻に顔を埋めた。そのまま山田のお尻に舌を這わせ、裏側から袋を弄ぶ。  
 身を振わせながら、別にこんな姿勢にならなくても、と山田がいぶかしんでいると、  
「実験本番!」  
 舌を突き出した明日香が、肛門に舌を伸ばした。  
 快感に浸りきっていた山田がふいをつかれて慌てる。  
「う、うわっ」  
「だめっ!」  
 身をよじって逃れようとする山田を制し、明日香がさらに皺の一本一本を味わうようにいじくりまわす。  
「よ、吉崎さん、だ……ダメだって!」  
「山田のおしりー」  
 悲鳴をあげる山田を無視して、手ではペニスをしごきながら、お尻の穴を舐りまわす明日香。  
 あきらめたのだろう、されるがままになった山田に対して明日香が留めを刺した。舌をドリルのように突き出し、ぬぷりと肛門に侵入させた。  
「あ。あくっ、で……出る!」  
 まるで女性のような甲高い声を出して山田が身震いすると、山田のものが膨れあがり、勢い良く射精した。  
「あ、すごーい」  
 自分でしてお気ながら、どこか他人事のように、明日香が簡単の声をあげた。  
 なにもない空間に放物線を描いて、これでもかとばかりに白い橋がかかり、床を汚す。  
「あ、全部飲むって約束してたのに。でも……お尻が気持ち良かったの?」  
「気持ちいいっていうか、なんかよくわからないうちに出ちゃったって感じかな」  
「ふぅん。気持ちいいってわけじゃないんだ」  
「気持ち良くないことはないけど、なんかちょっと違う感じかな。でも、よくあんなところ舐める気になったね。嫌じゃなかった?」  
 さすがに赤面しながら山田が尋ねる。  
「山田も舐めてくれたし、ちょっとイイ感じだったから男だったらどうなのかなーって思って」  
 しおれてしまった山田のものをいじりながら明日香が答えた。  
 
「そ、そんなに触られるとまた……」  
「まじで元気あるよね、山田。精力絶倫ってやつ? ずる休みするぐらいだから元気だよねー、大きくなぁれ、大きくなぁれ」  
 山田にではなく、ペニスに話しかける明日香。柔らかいその感触を楽しむように、揉んでみる。  
「柔らかーい! はまりそう」  
 余った包皮を引っ張ってかしましい声をあげている。かと思うと、小さくなってしまった山田のものを口に含んでもむもむと攪拌する。  
 ぷるぷると形のいいおっぱいを揺らしながら、淫らな遊戯にふける恋人の姿に、山田は次第と下半身に血が集まっていくのを感じはじめた。  
「あ……おっきくなってきた」  
 とは言え、まだ芯の入ってないふうのそれを明日香がやんわりとその手で包み込んだ。  
 そうして、ゆっくりと上下に擦り始める。  
 少し滑りが足りないと感じたのか、明日香は口から唾液という極上の潤滑剤をペニスにふりかけた。  
 にゅるにゅると悶絶するような快感を味わって、固くならなければ男ではない。そして山田は男だった。  
「ほんと……元気な山田」  
 血管を浮かせ、勃起したペニスに明日香が軽いキスをする。  
「さ、さっきみたいな姿勢でしてもらいたいんだけど」  
 山田が遠慮がちに言った。  
「えっ! お尻気にいっちゃったの?」  
「ち、違う! 僕の上に吉崎さんが乗ってしてくれたやつだよ。今度は僕が上になりたいんだけど」  
「あー、あせった。危ない道に進ませちゃったかと思った」  
「吉崎さん!」  
「ごめんってば。いいよ、これでいい?」  
 元気良く返事をすると明日香が洗い場に身を横たえる。  
 
「きて」  
 誘う明日香の声は桃色に染まっていた。  
 たまらず山田がのしかかる。  
「よ、吉崎さん」  
 明日香の口を性器にみたてるようにして、山田が艶やかな唇に血管の浮いた自身を沈めた。  
「ふぅ……ん」  
 明日香から甘えるような吐息が洩れた。  
 下半身を明日香に沈めると、山田は上半身を柔らかい秘裂めがけて下げる。  
 恋人の唇が触れたかと思うと、舌が先ほどの痛みを癒すように優しく丁寧に、しかし情熱的に動き始めた。  
「あっ、んぅ、むぅ」  
 口を肉棒に塞がれているためか、明日香は言葉らしきものさえはなすことができなくなってしまった。  
 そのうえ、上手く溢れるよだれを飲み込むこともできない。先走り液とよだれがまざりあって明日香の口はぐちょぐちょになっている。  
 そこへ山田が腰を動かしてペニスを突きこんでくるのだから、明日香はたまらない。  
 山田の腰が上下するたびに、明日香の口元によだれが溢れ、まさに愛液に濡れる性器そのものといったありさまだ。  
 意識にピンク色のもやがかかりだすと、それを煽るように山田の舌がさらなる快感で責めたててくる。明日香はしだいに本当にセックスをしているような気持ちになってきた。  
 そう思うと不思議なもので、唇でしごくというよりも、しごかされているという状況が苦痛ではなくなってきた。舌にペニスが触れるたびに、痺れるような感覚が明日香の背を走る。  
 あ、頭がぼぉっとするぅ。  
 苦しいけど、気持ちいいぃ。  
 もう……なにも考えられない……。  
 
「よ、吉崎さん……苦しくない?」  
 本物の愛液を夢中ですすり、喉を潤していた山田が、明日香を気遣う様子を見せた。  
 しかし、とうの明日香は上下、二つの性器の伝える快感の虜になってろくな返事ができない。  
「はぅ、うんっ……んぃ、いいお……きもちいひよぉ」  
 少しでも奉仕しようと、明日香が必死で舌を山田のものにからめようとする。が、素早く動かれるせいで思ったように舐めることができない。それが逆に不規則な刺激となって山田を感じさせていた。  
 しだいに息を荒げながら、山田は夢中で腰を動かす。  
 明日香もこの擬似性行為の要領をつかんだのか、軽く噛んでみたり、袋に手を差し伸べるなど、様々なことができるようになっていった。  
 と、そのとき。明日香の口からペニスがすっぽ抜けた。  
「あ」  
 二人の声が重なる。  
 だが、山田の腰は急には止まれなかった。  
 明日香の顔に、今日一番固くなっていた山田自身が押しつけられる。鼻の頭にあたり、ずるりと滑り落ちて張りのある頬に沈む。それだけでは納まらず、数回上下運動を繰り返し、明日香の端正な顔に、グロテスクな陰嚢がぺちぺちという間抜けな音をたててぶつけられた。  
 口内とは違う感触が刺激となったのか、まるで山田が己の匂いを染み付かせようとするようにペニスを明日香の顔にすりつける。  
「んんー。や、山田? あん、えっ、ちょっ」  
「あぁ、吉崎さん……吉崎さん……」  
 話しかける明日香に気付かないのか、山田は鼻だろうが、おでこだろうがお構いなしにこすりつけてくる。  
 おでこに亀頭をおしつけているうちに、しっとりと濡れた明日香の前髪が山田のものにからみついてくる。  
 
 次から次に与えられる新しい刺激に山田は有頂天になり、理性など消し飛んでしまった。  
 髪の毛が絡まることなどお構いなしに、むしろこれ幸いとペニスを動かし、髪で己自身をしごきたてる。  
 山田は明日香の顔という顔を蹂躙し尽くしていく。  
 そのうちに、ふとしたはずみでつるりと明日香の唇をくぐりぬけたペニスは、そのままの勢いで喉の奥まで突き進んだ。  
「んぇっ!? んぐ、む……あぐぅ」  
 突然の事故に明日香はなんの反応もできない。異物をなんとかしようと喉が強烈に収縮した。  
「うわっ! なに? す、すごい!」  
 今までにない凄まじいしめつけと、蠕動に山田は耐えられなかった。  
 ペニスのかさが大きく広がり、本日三度目にもかかわらず、今までで一番勢い良く白濁液が鈴口から発射された。  
 びちゃびたと、喉に貼りつくようにして粘液が撒き散らされる。  
 喉の奥で爆発した熱い塊に、明日香の体も限界を迎えた。思うさま蹂躙されて、配線が焼き切れたのか、頭が真っ白になったかと思うと、頭の先から、爪先までを一斉に快感の大洪水が襲った。  
「あ、あっ……ん、ひゅごい、な、なにか……くるっ! あ、あぁっ、わらひがろっかにいっちゃうぅ!」  
 明日香は全身をがくがくと痙攣させたかと思うと、意識を手放した。  
 山田は慌ててペニスをひき抜こうとするが、その最中にも、精液は出つづけ、喉、口内、唇を汚し、なんとか引き抜いたところで、大きく震えて、たっぷり明日香の顔に白い雨を降らせた。  
 脳髄まで痺れさせて、ぽつりと山田が呟いた。  
「はぁ……、凄く気持ちよかった……」  
「けほっ、んっ、けほっ」  
 可愛らしい咳をして、喉を苦しめているものをなんとかしようとする明日香。  
「し、死ぬかと思った……」  
「ご、ごめん。わざとじゃないんだ」  
「あんなのわざとだったら一気に破局よ」  
 今まで興奮で赤くなっていた山田の顔が、一気に蒼褪めた。  
「ほ……ほんとにごめん、もう気持ち良すぎてなにがなんだかわからなくなって」  
「今回だけは、私もちゃんとアソコでイかしてあげられなかったから、ゆるしたげる」  
「吉崎さん……ありがとう」  
「最後のはなんかすごかったし。あれがイクってことなのかも……」  
 明日香は山田に聞き取られないように小さく呟いた。  
 
 それから二人はシャワーを浴びなおすことにした。いまだに、少しぐったりしている明日香を山田が丁寧に洗い、湯船に入れてから、自分もシャワーを浴びる。  
 体を流し終わった山田を明日香が誘い、二人でゆっくりと湯船につかる。  
「あのさぁ……」  
「なに?」  
「私、山田のことすっごい好き」  
 臆面もなく、好意を伝えられると、慣れていない山田はすぐに頭に血が昇る。  
「ぼっ、僕も」  
「じゃあキスして」  
「う……うん」  
 顔を近づける山田を、明日香がさえぎった。  
 自分から誘ってきながら、その行動に山田が戸惑う。  
「その前に、ちゃんと私のこと好きって言って」  
「よ、吉崎さん……」  
「じゃなくって! ちゃんと名前で呼んで。恋人どうしなんだから」  
「あ、あす……」  
 明日香の鼓動が早くなる。  
「あす……かさん」  
「さんはいらないってば」  
「あっ明日香」  
「なに?」  
 明日香が首をかしげた。  
「す、好きです」  
 何度もつっかえながら、山田はそれだけを口にすると、不器用に明日香の唇に、自分の唇を押し付けた。  
 歯がぶつかり、かちりと音を立てた。その音は、なにかがしっかりはまり合う音のように、二人には聞こえた。  
 
 
「ちょっとー? しんー? どこにいるのー? お風呂ー? 熱あるのにお風呂なんか入って大丈夫なの?」  
 騒々しく誰かを探す声が聞こえ、勢い良く風呂場のドアが開かれた。  
「あんた……今日は調子が悪いんじゃ……。よ、吉崎ぃ?」  
 すっとんきょうな声で明日香の苗字を呼ぶ女性。  
 二人は唇を重ねたまま、目だけを動かす。  
 そこにはスーツ姿の女性が目を丸くして立っていた。  
「ね、ねっ、ねね姉さん!?」  
「せ、せっ、せせ先生!?」  
 恋人達の発した単語はまるで違うものの、同じ人物に向けられたものであった。  
 山田の世界がぐにゃりと歪む。  
「こ、これは、その」  
「しん! 話は後でゆっくり聞くから、とりあえず……お風呂すませなさい」  
 うろたえる弟に向かって溜息をつくと、姉はドアを閉めて出ていった。  
「ど、どうして、山田先生がいるのよぉ?」  
「姉さんなんだ」  
「えー! マジで?」  
「うん。色々と問題があるから学校では内緒にしとこうってことになって」  
「ふぅん……でも大変なところみられちゃったよね」  
「ど、どうしよう」  
 うろたえる男とは対照的に、女のほうは対して堪えた様子もない。  
「別にいいんじゃないの? 悪いことしてたわけじゃないんだし」  
「そ……そうかもしれないけど」  
「とりあえずさぁ、先生に私のこと紹介してね。僕の彼女です、って」  
 明日香がにっこりと、微笑んだ。  
 質問攻めから逃げるために学校を休んだのに、家族にとんでもない場面を目撃されてしまい、山田は頭を抱えた。乗り越えたと思った羞恥心が再びわきあがってくる。やはり、友人と、家族ではなにか違うものなのだろうか。  
 人生の困難さというものを、高校生という若さで痛感した山田だった。  
 しかし、風呂からあがる頃には、再度の試練も乗り越えていることだろう。妙なきっかけで付き合うことになった、破天荒な彼女がついているのだから。  
「こんどアナルセックスってしてみようか?」  
 山田はぶくぶくと湯船に沈んでいった。  
 

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