「私が悪魔に――そんな、どうしてっ?」  
「本当はね、エルカちゃんはファシスへの当てつけの為だけに悪魔にするつもりだったけど、ふふふっ♪  
 エルカちゃん、会ってみるとエッロいんだもん。アタシ、一発で気に入っちゃった♪」  
「う、嘘、だよね?」  
(大体、普通の人間が、どうやって悪魔に…?)  
「それはね。エルカちゃんの精気を、アタシの精気と入れ替えるの」  
「…精気を、入れ替える?」  
 コノットが呪文を唱える。狭い牢獄の地面に真っ赤な魔方陣が現れ、仄かに光り始めた。  
「そう。この魔方陣の中でエルカちゃんが射精すると、精液と一緒にニンゲンの道徳とか良心とか、  
 そういううざったいものも抜けていくの――こんな風に!」  
「あ!? だめえ!」  
 魔方陣の上。悪魔が腰を動かした。何度も男から精気を搾り取ったように、  
 組み敷いたエルカの腹に手を添えて腰を上下運動させる。媚粘膜同士がぐちゅぐちゅと擦れる生々しい感触に、  
 エルカは再び絶頂を迎えた。  
 びゅくっびゅくっ、二度目の射精がコノットの膣壁を熱く蕩けさせる。  
「ふわぁぁぁ…!」  
 精液を噴出す快感に、エルカが甘い声を上げる。同時に心の一部が欠けるような、  
 まるで母が死んだ時のような喪失感を覚えた。  
(ああ、本当だ、何かが、抜けていく…! わたし、空っぽになっちゃう…!)  
「あはぁん♪ ――どう? 分かるでしょ? 悪魔になる為に、不要なものがどんどん抜け落ちていくのが!  
 でもまだ! 真っ白になったエルカちゃんに、今度はアタシの、悪魔のとびきり邪悪で、  
 エッチな精気を注いであげるんだから!」  
 矢じり方の尻尾が、エルカの淫裂へと差し込まれた。  
「――っ!? …っ!」  
 悪魔に挿入している擬似ペニスより少し細い程度のそれは、粘度の濃いエルカの愛液を潤滑油を利用して、  
 あっと言う間に最奥へと潜り込んだ。  
「あぁっ!?」  
 ぶつり、という感触と共に、体の中心に激痛が走る。  
「はあっ、はあっ…! エルカちゃんのバージン、頂いちゃったっ♪ ちょー気持ち――」  
 悪魔少女が一瞬硬直し、  
「いぎゃあああぁぁっ!?」  
 悲鳴を上げながら慌てて尻尾を引き抜いた。  
 破瓜の痛みに涙を流しているエルカが潤む視界の中で、  
 引き抜かれた尻尾が酸でも掛けられたようにしゅうしゅうと煙のようなものを立ち上らせているのを見た。  
 
「ふーっ、ふーっ! ――この、なんて事してくれるのよ! 尻尾の先、溶けて無くなるかと思ったじゃない!」  
「…え、えっ?」  
(私、何もしてない! それどころか…)  
 悪魔にバージンを奪われた。秘裂から垂れ流れる破瓜の血が、それを嫌でも認識させる。  
(処女、奪われちゃった…! 酷いよぉ、ふええっ…)  
 悲しみに涙を流すと、コノットが突如声を上げた。  
「それだ! 血だ!」  
 人の心を勝手に読み取ったコノットが再びエルカに迫ると、尻尾の先で破瓜の血をつついた。  
 じゅ、と油を熱するような音がして、慌ててコノットが尻尾を引っ込める。  
「ディースの娘ってのは伊達じゃないわね…まさか血液自体に破邪の効果があるなんて…!」  
 ぎろり、忌々しげにコノットに睨まれた。  
「いいわよ…! それならそれでやりようなんていくらでもあるんだから!」   
 痛む股間に手の平をかざし、コノットが魔術を発動させる。すぐにじんわりと熱さが子宮まで届き、  
「はっ、あ!?」  
 それは突然、掻き毟りたくなるような疼きへと変わった。  
「強力な催淫魔術よ。本当はこんな無粋なの使いたくなかったんだけど」  
「や、だあっ! あそこ、うずくよぉっ!」  
 その尋常でない疼きに、エルカは思わず自分の秘所を弄りだした。  
「ひいっ!?」  
 魔術は破られた処女膜も癒したらしい。膣の深い所に指を突っ込んでも、  
 そこにあるのは背筋を駆け上る快楽だけ。破瓜の痛みなんてもう何処にもなかった。  
 ぐちょぐちょぐちょ! 指でかき回した肉ヒダから、子宮口から、溢れるように淫液が零れ出し、  
 エルカの破瓜の血を洗い流していく。  
「これくらいでいいかしらね…?」  
 コノットが再び魔術を発動させると、子宮の疼きは嘘のように消えて言った。  
(あ、やだっ…)  
 確かに疼きは消えたが、指の動きは止まらない。一度火がついた雌の本能は、  
 エルカの意思とは無関係に快楽を貪っている。  
「ふふふ、やらしいわねエルカは。ほら、そんな指じゃ物足りないでしょ?  
 アタシが気持ちよくしてあげるわよ。そして、悪魔になろうね?」  
(悪魔に…!)  
 その一言で、飛びかけていた理性が一瞬戻ってくる。  
「いや! 悪魔なんかになりたくない!」  
「そんなに悪魔になるのが嫌?」  
 
「え?」  
 気が付けば、悪魔の少女は何をするでもなくエルカを見詰めていた。  
「だって、悪魔は身勝手で、いやらしくて、怖いもん…」  
「そう? じゃ、エルカちゃんは今のままで良いんだ? 街のニンゲンどもに愛想笑いを作って、  
 ばれないようにこっそりオナニーして、ディースと同じ目で見られるのが良いんだ?」  
「それは…だってしょうがないじゃない!」  
「なんで?」  
「なんでって、そうするのが当たり前だから…」  
「どうして当たり前なの? 誰が決めたの? なんでそれに従わなきゃならないの?」  
「それは…」  
(あれ…どうして、だろう?)  
 答えは分かっている。それが人間の道徳だからだ。文化とも言っていい。  
 だが先ほどの性交のせいで、エルカからはそういったものが無くなっていた。  
 今までの価値観が急変し、何が正しいのか分からなくなってくる。  
「ねえ、エルカあ。悪魔になればね、そんなしがらみ、全部無くなっちゃうんだよぉ?  
 スケベな気持ちになったら気の済むまでオナって。ムカついた奴がいたら苛めて。  
 面倒くさい事はサボれるんだよぉ? それって、とっても素敵な事だと思わない?」  
「…あ…う…?」  
 残された理性がそれは違うと否定するが、魅了の魔術に掛かり、  
 価値観の変わったエルカには悪魔の囁きがとても甘美に思える。  
「悪魔になれば、誰もエルカちゃんを縛る事は出来ない。自由なんだよ」  
「…自由…」  
「そう。ね? だからぁ…悪魔に、アタシの仲魔になろ?」  
「……あ、ああ…」  
「悪魔になれば、もっと気持ちイイ事、し、た、げ、る♪  
 チンチンで射精するよりも、 もっと気持ちイイ事をね♪」  
「ぁん…っ」  
 耳を尖った牙でくりくりと甘噛みされる。  
(さっきよりも、気持ちいい事?)  
 射精の感覚を、秘所を弄られる快感を思い出す。悪魔の囁きが、なけなしの理性をどろどろに溶かしていった。  
「ねえエルカあ?」  
 ぼう、とコノットの瞳が赤く光る。その怪しい瞳に吸い寄せられるように、  
 
「――ん」  
 
 エルカは首を縦に振ってしまった。その瞳はガラス玉のように透明で、意思の光が消えている。  
「ふふふっ…ようやく素直になったね♪ じゃあ、もっと素直にしたげる♪」  
「あっ!? いっ、ふあっ!」  
 ずちゅずちゅっ! と突き刺さったままの尻尾がピストンを開始した。本格的な性交が興奮を呼び、  
 発情汁となってエルカの太股を伝っていく。白濁する意識の中で、  
 体の中心から生まれる快楽だけをはっきりと感じ取ってしまう。  
「ふふふっ…もう気持ちイイばっかりなんでしょ!? このスケベ!」  
 
 サディスティックな表情を浮かべたコノットが、服越しにエルカの豊かな膨らみにいきなり歯を立てる。  
 力を込めた牙は、シスター服をブラを突き破り、穴が開くほど強く、ピンク色の頂点に食い込む。  
「っ!?」  
 いきなりの激痛にエルカの体が跳ねる。同時に、腹の中を蹂躙する異物を思い切り締め付けた。  
「あはっ、すごい締めつけぇ…アタシ、もう出ちゃう!」  
 コノットの尻尾がその先端を膨張させる。次の瞬間、  
 どぷっ、どぷっ! 矢じりの先端から白濁液が噴出した。  
「――ひあっ!? はああぁぁぁっ!」   
 熱めのお湯を直接腹の中に注がれるような感触に、エルカは髪を振り乱した。  
 そして、悪魔の放った精液を通して、邪悪で淫らな気が聖女の体を侵し始める。   
(――体中が、あつい! )  
 変化は、熱となって顕れた。酒をでも飲んだように、体の真芯に注がれた灼熱感が体中に伝播する。  
 やがてその感覚はどうしようもない痛痒感へと変質した。  
「――ん…はぁ…はぁ…」  
「どう? アタシのスペルマ♪ 体が熱くてたまらないでしょ?」  
 色っぽい吐息を漏らすエルカに、コノットは息を荒げながら尋ねた。  
「…コノットぉ…私…おかしくなりそうだよぉ…」  
 気が付けば、エルカはもじもじと腰を動かしていた。生理の後のように、淫らな気持ちになる。  
 熱く疼く体を今にも滅茶苦茶にしたい衝動に駆られた。  
「ふふふっ。エルカぁ、腰を動かして。アンタのチンポにはまだニンゲンの精液が詰まってるから、  
 それを全部出すの。そうすれば楽になれるよ?」  
「うんっ、分かったっ…私、出す…っ」  
 試しに、というより我慢出来ずにエルカは腰を振る。  
「ふあっ!?」  
「あん♪」  
 すると悪魔の肉ヒダに擦れたシャフトから蕩けそうな快楽が流れ込んできた。  
(あ、いい、さっきよりも、ずっといい!)  
「はあっ! はあっ! はあっ!」  
「あんっ♪ あんっ♪ あんっ♪」  
 エルカが自分を跨るコノットをひたすら突き上げる。自制を失ったエルカは喜んで快楽を貪った。  
 悪魔も、喉を見せながら、甘ったるい声を上げる。  
「あ、出ちゃう!? また出ちゃう!」  
「それでいいの! エルカのザーメン、アタシが吸ってあげる! ニンゲンの心も全部一緒にね!」  
 悪魔の言葉に背筋が震え、胸が怪しくときめいた。同時にいきり立つ腐肉の先端が弾ける。  
「ふやああぁぁぁっ!」  
 びゅるぅ! びゅるっ!  
 悪魔の精気を取り入れた体は、二度目の射精をより甘美なものへと変えた。  
 肉竿の先端から、粘ついた汁と共に、魂が抜き取られる。  
「んっ…♪ はあ…っ、クルぅ…エルカのザーメン、サイコぉ…♪」  
「あぁっ…、はあっ…はあっ――はぁ…♪」  
 
『ニンゲンらしさ』を抜き取られたエルカは愉悦の表情を浮かべながら、垂れる涎を拭おうともしない。  
 その瞳からは完全に意思の光が消えていた。  
「ふふふ…っ、その目、アタシ大好き♪ ぞくぞくする…! これでニンゲンの魂も殆ど消えたね♪ お次は――」  
 コノットが呪文を唱え、自らの秘所――敏感な肉豆を扱き始める。  
「はあ…っ♪ あっ…♪ ああっ♪」  
 ガラス玉のようなエルカの目が、コノットのクリトリスが肥大化していく光景を映す。  
 悪魔のそれは、先ほどのエルカの様に、擬似男根と化した。  
「さあ、精気の入れ替えも、これで最後。ニンゲンの魂が消えた空っぽの体を、  
 アタシの精気で隅々まで満たしてあげる!」  
 ずちゅうっ!   
 エルカの肉穴から尻尾を引き抜くと、代わりに巨大な擬似ペニスを捻じ込んだ。  
「ああん!?」  
(ああ、気持ちいい…!)  
 傷の癒えた処女膜からは、破瓜の痛みが消え失せ、かわりに痺れるような官能を伝えてくる。  
「どう!? エルカっ、まだマンコ痛い!?」  
 ぐっちゅぐっちゅっと肉魔羅をピストンさせながら悪魔が尋ねる。  
 痛みなど、どこを探しても見つからない。今にも痺れるような快楽に、下半身が溶けて無くなりそうだった。  
「痛くない! 痛くないよ! ――あぁん!」  
「あはっ! アタシのチンコどう!? 気持ちイイ!?」  
「うん! すごい! ――あん! ――おかしくなりそう!」  
「おかしくなればイイのよ! サカッた犬みたいに腰を振って! マンコからスケベ汁垂らして!  
 あんあん言いながらイケばイイのよ!」  
「ああっ! はんっ! ああっ! ああんっ!」  
 コノットの言われた通り、エルカは夢中で腰を振る。膣壁をペニスのカリでこそぎ取られるように擦られると、  
 下半身に甘い愉悦が広がる。すぐに単調な動きでは物足りなくなって腰を前後に左右に、  
 上下に淫らにくねらせて全ての肉ヒダで悪魔のイチモツを味わおうとする。  
「あぅん♪ ――ふふふっ、そう、その調子! やらしく腰をくねらせて!  
 チンポを味わうの! マンコの全部を使ってね!?」  
 言い終えるや否や子宮口に肉竿を突き込まれた。  
「ふあああんっ!?」  
 女の重要な器官の入り口は、すでに痛覚の変わりに快楽神経が根を下ろしている。  
 そこは新たなGスポットと言えるほど敏感で淫らな肉組織となって、エルカの脳に快楽のスパークを流し込んだ。  
「どう!? ニンゲンから悪魔へと変わっていく感じは!?」  
「んああっ! いい! いいよう! もっと、もっとしてえ!」  
「あははははっ! シスターが堕ちるところまで堕ちたわね!? もっと気持ちよくなりたい!?  
 もっとスケベな体になりたい!? だったらおねだりしなさい! エロい言葉を使って、悪魔にして下さい、  
 ってアタシに頼みなさい!」  
「――っ」  
 自らの意思で、悪魔になりたい、と頼む。少し前には抵抗も感じただろうが。  
 今のエルカには、快楽こそが全てだった。  
「私、おマンコからエッチなお汁とろとろ出てるのに、まだまだ気持ちよくなりたいんです! だから、だから、  
 コノットのおちんちん汁で私の体を、もっと汚してください! 悪魔にして下さい!」  
 エルカのおねだりに、コノットが笑みを浮かべる。  
 狂気すら垣間見えるそれは、少女が浮かべるには残虐的で、妖艶過ぎた。  
 
「いいよ! エルカを悪魔にしてあげる! アタシのザーメン、どぴゅどぴゅ子宮に注いであげる!!  
 ほらぁ!  だからアタシをそのエッロいマンコで満足させなさい!」  
「はぁっ! はんっ! うん…! あんっ! あんっ! んーっ…!」  
 エルカが腰をくねらせる。まるで文字を書くような動くと、腹に力を込めて膣を圧迫させた。  
 雑巾絞りでもするように、肉のチューブでコノットのペニスを締め上げた。  
「うはぁっ♪ 出るうっ! 淫乱エルカにスペルマ搾り出される!」  
 どぴゅるぅっ! どぴゅるっ!! どぷどぷっ!!  
「はあああああぁぁぁ…っっ!!」  
 子宮口に捻じ込まれた肉棒が、文字通り穢れた汚液を吐き出す。  
 子宮に大量に注がれた白濁液は、肉壁にこびりつくと、エルカの全身に邪気を送り込んでいく。  
(あああっ! 変わる! 私が、悪魔に変わっていく…!)  
 熱さと共に痺れるような感覚が全身を支配する。  
 体だけでなく、清純な精神が邪悪で淫らなものへと変質していく。  
 心も体も堕ちて行く過程は体が痙攣するほど背徳的かつ甘美で、  
「いっくうううぅぅっっ」  
 エルカは絶頂に達した。子宮を痙攣させ、結合部から潮を噴出す。  
 だらしなく開いた口から舌と涎を垂らしながら、甘美で刺激的な快感に目を見開いた。  
 
 そしてエルカは見た。悪魔の瞳に映る自分の瞳が変化したのを。  
 見開かれた自分の瞳が、朱色から血のような真紅へと変わるを。  
 開いた瞳孔が、猫のように縦長に形を変えるのを。  
 
 それを見届けた瞬間。エルカの意識は闇に沈んだ。  
 
 どこまでも堕ちて行く感覚は心地良く。  
 だが、どこか悲しかった。  
 
 ***  
 
「ふふふっ……きーもちよさそうに寝ちゃって♪」  
 気絶したエルカを見下ろすコノットが無邪気に笑う。  
 その表情は見た目相応の、少女が浮かべるものとなんら変わりないように見えるが、  
 すぐ足元には彼女達二人が垂れ流した汗や、涎、精液に、愛液で小さな水溜りが出来ており、  
 二人の少女の体は度重なる性交のせいでべたべたに汚れている。  
(これで、ファシスに復讐する下ごしらえは出来たなあ。次はどうしようかなぁ? いきなり襲わせようかなぁ?  
 それとも、ちょっと焦らしてやろうかなぁ? うーん…♪)  
 
 満ち足りた表情で寝息を立てる堕ちたシスターをにやけた顔で見詰め、悪魔は思案する。  
(そろそろファシスの奴が教会に戻ってくるなぁ――だったら)  
「――決めた」  
 少女の笑顔が邪悪な悪魔の笑顔へと変わる。コノットは呪文を唱えると、エルカに魔術を掛けた。  
「――ふあ…?」  
 寝息を立てていたエルカが、ゆっくりと目を開ける。魔術で意思を操られ、死んだ魚のような目をしていた。  
「ほら、さっさと教会に帰りなさい。そして、ファシスに見せやりなさい。本当のアナタをね」  
「……うん…」  
 幽鬼のようにエルカが立ち上がる。無残にも散らされてしまった乙女の秘所から、白濁とした粘液が垂れ落ちた。  
 パンツを穿かせ直し、スカートを払い――と、コノットがにやけながらエルカの身だしなみを手伝ってやる。  
 最後に帽子を被らせると、彼女を牢獄へと繋ぎとめる鎖を外してやった。  
「じゃ、行ってらっしゃい♪」  
「……うん……いって、くるね……」   
 ふらふらとした足取りでエルカが牢獄から出て行く。  
「後でまた会おうねー♪」  
 仲魔の初陣を見届けたコノットは、憎き女剣士が絶望するその瞬間を想像して、胸を怪しくときめかせた。  
 
 
 ***  
 
「――あれぇ?」  
 間の抜けた声を上げてエルカは正気に戻った。ベッドの上で身を起こし、困惑した表情で周囲を見渡す。  
 清潔感に溢れる白と、ファンシーなぬいぐるみや置物で構成された室内は、間違いなく自分の部屋だ。  
(えーと? 私、何をしてたの?)  
 記憶を辿る。  
「――そうだ。今から悪魔を退治するんだ――そうそう、ファシスが仲間の傭兵さん達を連れて来て、  
私が手伝う事になって――」  
(悪魔退治? 私が? 嫌だなあ…)  
 だが、それは友人の頼みであり、また、その友人であるファシスと自分の仇でもある。  
 しかしこの時点で友人への義理や義務感よりも、面倒で億劫という気持ちの方が遥かに強かった。  
「――まあ、後で考えよ――そうだ、久しぶりにファシスと男の人とご飯を食べて…えっとサギさん?  
 だったっけ? あの人一杯私のご飯お代わりしてくれて、嬉しかったなぁ。腹筋だってついてたし、  
 強そうだったし――『きっと美味しい精気を持ってるんだろうなぁ』」  
 何気無く言った言葉。それがどういう意味を持つのか、エルカ本人は理解していない。  
 そしてこの時、自分が舌なめずりをした事も自覚していなかった。  
「ああ、そう言えば私お皿割ったまんまだ」  
(うーん……面倒臭いから片付けるの明日にしようかな)  
 だらしなくなった考えに違和感を覚える事も無く、エルカは記憶を掘り起こしていく。   
 記憶は、自分を慰め、気をやったところで途切れていた。  
 そこから先、何か続きがあったような気がするのだが、 どうしても思い出せない。  
「あー、私、またやっちゃったんだな」  
 教会で自慰に耽る。いつもなら死ぬほど後悔するのに、今では恥じ入る事すらなかった。  
(……なんかまだアソコがムズムズする。シたりないのかな?)  
 
「――んっ――んん?」  
(うわあ。なんかアソコが凄い事になってるよ?)  
 たくし上げたスカートから下着を触ってみると、水でも被ったかのようにべちょべちょだった。  
 さらに、役に立たない純白のパンツをずり下げる。どろり、と女陰の奥から白く濁った粘液が垂れ、  
 太股とベッドを汚した。  
(やだ。こんなに溢れて……シーツが汚れちゃう)  
 不自然に多い陰液を、眉を顰ながら見詰めると、エルカはそれを指で掬い取り鼻を鳴らして臭いを嗅いだ。  
「――ふへぇ」  
(……カビの生えたチーズみたいな臭い。鼻が曲がりそう)  
 明らかに自分の愛液以外の何か得体の知れない粘液が混じっている。しかもそれは、  
 秘所からとめどなく溢れてくるのだ。これではまるで、自分が誰か男と寝たようではないか。  
(――嘘、なんで私、ドキドキしてるの?)  
 誰かと寝たという事は処女を奪われたという事だ。  
 だというのにエルカの心には屈辱や悲しみといった感情は生まれず、むしろ、  
 精を注がれた瞬間を想像しては胸を高鳴らせる。徐々に息を荒げていった彼女は、  
 自然と指をヴァギナへと沈み込ませた。  
「ぁん…っ?」  
 敏感な粘膜がぴりぴりとした刺激を脳に送る。想像以上の快楽にエルカは甘い声を上げた。  
(ふわ…っ、私、すごい感じてる…!)  
「んっ、んんっ、んっ――」  
 くちゅくちゅくちゅ。淫らな肉洞を弄り回すと卑猥な音がエルカの部屋に満ちた。  
(…いいよ…ゾクゾクするう)  
「はあ…っ…はぁっ…はあっ――ん! はあ…!」  
 無駄に敏感になった体は送られる官能に、すぐに肌を粟立てる。  
 鳥肌が立つと、二つのピンク色の頂きと最も敏感な肉芽がはしたなく勃ち上がった。  
(乳首も、お豆さんも立ってきちゃった…)  
 ふしだらな体をどうやって慰めようか考え――そこでふと気付いた。  
 扉が開いている。閉め忘れたように、僅かな隙間だけを作って。しかもそれだけではない。  
 扉一枚隔てた向こうの通路から、人の気配を感じる。  
(――あ……やだっ、ひょっとして、見られた!?)  
 かあ、と顔が真っ赤に染まる。  
(しかも、そこにいるのファシスじゃ――うん? ファシスなら別にいいかな?)  
 だが、覗き見している者の気配が、友人のものであると気付くと、何故か恥じ入るのが馬鹿らしく思えてきた。  
 むしろ、自分が乱れる姿を見せ付けてやったらどんな反応をするだろう、とか、  
 今どんな気持ちでそこに隠れているんだろう、とか、そんな小悪魔的な考えが頭をよぎる。  
 そしてその考えは、とても魅力的で面白いものに感じられた。  
 
「――んっ! あんっ!」  
 わざと声を出して、部屋の外に居る友人を挑発する。声は下にいる子供達にも聞こえるのではないか、  
 という大きさで、もし彼らにまでばれてしまったら、と思うと更に興奮は高まった。  
「はぁっ! いいの! あそこ、気持ちいい! 痺れちゃう!」  
 どうせならファシスにもっと自分のいやらしいところを見せてやろう、と体勢を変える。  
 片足からパンツを引き抜くと、ベッドの上で扉に向けて股を広げる。月の光だけでは、  
 秘所の詳細を見る事は出来ないが、扉の向こうからは困惑の気配がはっきりと伝わってきた。  
「お豆さんも、乳首もっ――ひゃんっ――こんなに尖っちゃってっ――あぁん!」  
 襟をはだけるとそこから片手を突っ込んで胸をまさぐる。  
 肉豆と乳首を同時に抓り上げると、体が跳ねて、声が裏返った。  
(…ファシス…動揺してるね?)  
 それだけではない。部屋の外から、僅かだが乱れた呼吸音が聞こえてくる。  
(私のオナニー見て、興奮してくれてるんだ…!)  
「ぁあん! いいよ! 指! ファシスの指、気持ちいいよぅ…!」  
『…!?』  
 ファシスの名前を出すとごくりと、生唾を飲み込む音が聞こえた気がする。  
「ファシスぅ…ファシスぅ…」  
 彼女の名前を連呼しながら指を動かす。今日は何故か体も敏感で、友人に見られていると思うと、  
 頭がどうにかなってしまいそうだ――しかし、何か物足りない。  
 胸の奥からこみ上げてくる衝動は、これだけでは満足しない。  
 エルカは指の動きを止めた。  
「――ファシス。居るんでしょ? 分かってるよ?」  
 足を閉じ、股を隠すように座る。折り曲げた両膝の上に顔を乗せて微笑を浮かべた。  
 扉の向こうの友人に向けて。   
 

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