『――ファシス。居るんでしょ? 分かってるよ?』  
 扉越しにエルカの言葉を聞いた時、驚きのあまり口から心臓が飛び出すと思った。  
「――どうして、分かったんだ? 私は、気配を消していたつもりだったんだが」  
 ばれているなら隠してもしょうがない。ファシスは居心地の悪そうな顔をしながら入室した。  
「そうなの? ごめん。バレバレだった」  
(本当に、何故分かったのだ?)  
 ファシスは剣士の腕前なら傭兵達の中でも一二を争うと言われている。  
 気配を消す事など、呼吸をするのと同じくらい簡単な事なのだがエルカは気付いていた。  
「うーん? どうしてだろうね?」  
「ああいやそんな事はどうでもいいんだ、それよりも」  
 目が泳ぐ。その視線は一瞬だが閉じた体育館座りしたエルカの足の間――女の園へと向けられていた。  
「なあに?」  
 エルカが上目遣いで友人の目を見詰めると、体勢を少し崩して揃えられた両足の間隔を広げる。  
 ファシスは薄暗い空間でも分かるほど顔を真っ赤にさせて、後ろを向いた。  
「だ、だだからな! その――いや、やっぱり良い。それより早く服を着てくれっ。  
 これから、あの悪魔を倒さなきゃならないんだ」  
『悪魔を倒す』という言葉が出た瞬間、エルカの表情から笑みが消えた。  
「…嫌だよ」  
「エルカ?」  
「私、嫌だよ。悪魔を退治するなんて」  
 ファシスは自分の耳を疑った。  
「馬鹿な。どうして今頃になってそんな事を言うんだ?」  
 断るだけならいつでも出来た筈なのに、何故今になってそれを言うのか。  
「…嫌なものは、嫌なの。いいじゃない、私が居なくてもファシスなら仇を討てるって」  
「駄目だ! 私だけではあいつの魔術をどうする事も出来ない! エルカの協力が必要なんだ!」  
「えー? 流れの魔術師さんなり誰なりに協力してもらえばいいじゃない。どうして私なの?」  
「エルカがディース様の娘だからだ!」  
 エルカに近づいて力説する。先の友人の淫ら行為はすでに頭の中から消えていた。代わりに悪魔を倒す決意、  
 そしてエルカへの信頼が溢れていた。だがどこかいつもと雰囲気の違う年下の少女は、俯くと残酷な言葉を紡ぐ。  
「ファシス…うっとおしいよ」  
「っ!?」  
 ファシスは息を呑んで硬直した。  
 剣士として鍛えられた本能が、エルカから明確な苛立ちの感情を読み取っていた。  
(エルカが、そんな事を言うなんて…!)  
「……エルカ…?」  
 呆然とした様子で俯いたエルカを見詰める。悪魔を倒す、という決意、それにエルカへの信頼が揺らぐ。  
 今のファシスには驚きと、親友に嫌われるかもしれないという不安に支配されている。  
 それは悪魔に襲われる事よりも、よっぽど恐ろしい事だった。  
「なーんてね。びっくりした?」  
 ところが顔を上げたエルカはいつものように人懐っこい笑顔を浮かべていた。  
「――っ? エルカ? 今のは?」  
「やだなぁ。ファシスったら本気で泣きそうな顔をしてるんだもん。皆に見せてあげたかったよ」  
 あははと笑うエルカの顔を見て、今の言動が冗談であっという事に気付く。  
 いや、そう思いたかった。  
 
「――心臓に悪い冗談は止めてくれ。  
 本気で、エルカに嫌われてしまったのではないかと、思ってしまったじゃないか」  
「ファシスの事、嫌いになる訳無いじゃない」  
「……う…っ」  
「大好きだよ☆」  
(だ、大好き、だと!? そ、それは、つまり…っ)  
 絶望に染まりかけていた精神が、今度は期待に染まる。ファシスは、  
 エルカの、好き=親愛、であって恋愛ではない事を知っている。  
 知っているが――ふと思ってしまう。  
 好きの意味が、一線を越えたものであったら――。  
 そこまで思考してファシスは煩悩を払うように頭を振った。  
(私もエルカも、健全な筈だ――い、いや、確かにエルカとずっと一緒に居られたらとは思うが…  
 それと、恋愛感情はまた別の筈であって! 決して私が、女が好きという訳では!)  
「ファシスも、私の事が好きでしょ?」  
「あ、当たり前だ! お前ほど大切な友人はこの世に二人と居ない!」  
「あはは。そうじゃなくて…どうしてはぐらかすの? ファシスは私の事、恋愛対象として見てるんだよね?」  
「……っ!? っっっ!!」  
 ファシスが言葉にならない声を上げる。口を開けたまま信じられないといった表情を浮かべた。  
 自分がエルカを恋愛対象として見ている。  
 もしそれを認めてしまえば、自分も、エルカも不幸にしてしまうかも知れなかった。  
 だからファシスは気付かない振りをしていた。  
 していたというのに当のエルカがそれを暴露してしまった。  
「ち、違うっ」  
 ほのかな期待と、やりきれないせつなさがせめぎ合い、胸が苦しくなる。  
 だがエルカは友人の悩みなど取るに足らないものだとでも言いたげに気楽に笑っている。  
「誤魔化さないで。ファシスの事、ずっと前から気付いてたんだから」  
「そうなのか!?」  
(私だけが、私自身の気持ちに気付いていなかったという事か?)  
「ね、ファシス? どうする? もし、私もファシスの事が好きって言ったら?」  
「そ、そんな事、」  
 それは恋愛対象として好き、という意味だろう。もしそれが本当なら相思相愛だが、それは都合が良すぎる。  
「ありえない、と思う?」  
 エルカがベッドから立ち上がりファシスの目前へと移動した。  
「だって私、さっきファシスの事想像しながら、エッチな事してたんだよ?」  
 親友は瞳を潤ませながら囁いた。  
「…う…そ、それっ、は…!」  
 自分の名を呼びながら自慰に耽る友人の姿を、ファシスは目撃している。エルカの言葉には信憑性がある。  
「ねぇ…ファシスぅ」  
 エルカがしだれかかる。  
「え、エルカっ!?」  
「私、本当はさっきからアソコが疼いて、たまらないの。だからね、ファシスの手で鎮めて欲しいな?」  
 上目遣いで見詰められ、ファシスは鼓動が一段と早くなった事に気付く。エルカの手は背へと回り、  
 潤ませた瞳を閉じて、徐々に顔を近づけてきた。  
 ファシスの呼吸はすっかり乱れて、耳を澄ませば早鐘のような心音まで聞こえてくる。  
 興奮が理性を削り取る。エルカと一つになれるかもしれないという期待が、ファシスの心を支配する。  
 大好きなエルカ。優しいエルカ。人懐っこい笑顔が。教会で祈るその姿が。  
 その全てが愛しい。  
 
 だが、ファシスは気付いてしまった。  
 目前のエルカは、たった今脳裏に浮かんだどのエルカとも一致しない事に。  
「――駄目だ!」  
「きゃっ!?」  
 唇が触れる直前でエルカを跳ね除ける。  
「エルカ、どうしたんだっ? 今日のお前は、おかしいぞ!?」  
「そんな事ないよ」  
 下を向きながら、エルカは無感情な声質で応える。その態度に、ますます違和感は膨れ上がった。  
「いや、おかしい! お前は、エルカはそんな子じゃなかった!」   
「そんな子、ってどんな子? ファシスは知らないと思うけど、私、本当はとっても悪い子だよ?  
 教会でエッチな事するのだって今日が初めてじゃないんだから」  
「う…嘘だ!」  
 ファシスの中でエルカの清純なイメージが崩れていく。  
「い、いやっ、百歩譲ってそれが本当だとしてもっ。エルカが私を誘惑するなんて事、考えられない!  
 それではまるで! ……悪魔のようだ…!」  
 瞬間、  
 
「うあああっっ!」  
 
 エルカが頭を抑えて悲鳴を上げた。  
「エルカ!? どうしたんだ!?」  
「あはっ。あはははっ…!」  
 かと思えば、気でも触れてしまったのか。涙を流しながら笑う。  
「エルカっ? しっかりしろ!」  
 友人の肩を揺さぶる。その表情は真剣そのものだが、心の中は不安と疑心で押し潰れそうになっている。  
「しっかりしろだなんて、無理だよ。私、悪魔に穢されたんだから」  
(今何と言った!?)  
 悪魔に穢された。そう言ったような気がする。  
 脳裏に、ピンク髪の愛らしい少女――人間をたぶらかし、精気を吸い取る悪魔の顔が過ぎった。  
「どういう事だ!?」  
「教会の前でね。行き倒れてる人が居たの。小さくて、可愛らしい女の子」  
「まさか、お前は、もう、あの悪魔に…! 馬鹿な! あれほど外に出るなと言ったのに!」  
「ファシスがそれを言うの!?」  
 エルカが上げた大声に、ファシスは親に叱られた子の様に体を竦ませた。  
「誰が、死に掛けのファシスを見つけたと思ってるの!?」  
「そ、それは…」  
 そうだ、行き倒れていた自分を見つけてくれたのは他ならぬエルカだ。  
 同じような事が起きれば、何度でも見知らぬ人間を助けようとするだろう。  
「じっとしてられる訳、無かった。でも外に出た私を待っていたのは、罠を張った悪魔。  
 私は、あの子――コノットに捕まって、どこか分からない所で、精気を吸われて、処女まで奪われた」  
「なんという事を! おのれ、あの悪魔め! やはり、悪魔などいなくなればいいんだ!!」  
 
「それだけじゃないんだよ。私はね、廃人寸前まで精気を抜き取られた後に、悪魔の精気を注がれたんだ」  
「…どういう事だ?」  
「あの子はね。人間を堕落させて、悪魔に変えるんだよ」  
「……まさか…」  
 ファシスの顔が真っ青に染まっていく。  
 嘘だ、冗談に決まっている――だが、だったら目の前で私を見ながら薄ら笑いを浮かべているエルカは、  
 一体なんだと言うのだ。甘い声で囁き、誘惑してきた彼女はなんだと言うのだ。  
「私はね、ファシス。もう人間じゃないの。コノットと同じ、悪魔なの」  
 ファシスの家族を殺し、エルカの母親も殺した憎き仇。悪魔と呼ばれる人間の敵。  
 エルカがそれと同一だと、どうして認められよう。  
 想像してみる。蝙蝠の翼を生やし、尻尾を生やしたエルカの姿を――そして気付いた。  
「嘘だ! 大体、その姿は人間ではないかっ!」  
「本当だよ。まあ尻尾も翼もまだ生えてきてないから、まだ不完全な状態だとは思うけど、  
 私の魂はもう穢れてるの」  
 エルカが自らの秘所に指を付きこみ、胸を揉む。  
「コノットにエッチな事一杯されてっ、おちんちんまで生やされて…! はぁっ、んっ、  
 とっても気持ち良かったの! アソコにどろどろした精液を注がれた時なんかっ、あっ、ぁん!  
 子宮が蕩けるくらいイイの! ああんっ!」  
 ぐちょぐちょっ…! エルカが自分が堕ちた時をネタに、激しい自慰に耽る。淫臭が再び溢れ出した。  
「エルカ…! そんなっ! 止めるんだ!」   
「やだよう! もっと気持ちよくなりたいの! ほらあ、ファシス見てぇっ、あんっ――はあ、はあっ、  
 私のアソコ、もうドロドロなの! 誰でも良いからおちんちん突っ込んで欲しいの! そして、たっぷり、  
 精気を吸い取るの! 知らないよねファシスは!? 精気ってとっても美味しいの! あははははっ!」  
「うわあああっっ!!」  
 ファシスが頭を抑えて絶叫した。  
 エルカの変貌ぶりを見ていると、悪魔になったとしか思えない。  
(嘘だ、嘘だぁ!)  
 ――と、エルカが動きを止め、ファシスをにらみつけた。  
「私ね、そこでコノットに犯されながら、助けてファシス、って何度も叫んだ。  
 でも、あなたは来てくれなかった。私の事、守ってやるって言ったのに!」  
「ごめん! ごめんエルカ! 私は、私は!! なんていう事を…!」  
「嘘つき! ファシスのせいだよ! こんな体になったのは!」  
「ごめん! ごめん!」  
 涙を流しながら、ファシスが何度も頭を下げる。  
(私は、取り返しのつかない事をしてしまった…!)  
「責任を取って! あなたのせいで、こんな体に――エッチな体になっちゃったんだから! なんとかしてよ!」  
 押し倒される。心も体も頑強に見えたファシスの身は驚くほど簡単に、床へと倒れ込んだ。  
「私、もうたまらないの。さっきからアソコが疼いて、変になりそうなの!」  
「エルっ、――っ!?」  
 開きかけたファシスの口が、無理矢理塞がれる。舌が絡みついてくると、唾液が流し込まれた。  
「――っ、はあっ! エルカ、何を!」  
「だって、悪魔になっても私は、ファシスの事が、好きなんだよ?」  
 聞き間違いだろうか。ファシスはエルカの目を見つめる。そこに狂気は無く、ただ身を切るような悲哀があった。  
「……それは、本当か?」  
「うん。本当だよ。ファシスも、本当に私の事が好きなら、お願い。助けて」  
「エルカ…」  
 
 ファシスの体から力が抜ける。途端にエルカが素早く体を反転させる。  
 股でファシスの頭を挟むような体勢は、シックスナインと呼ばれる体位だ。  
「ねっ、舐めて!」  
 スカートを引き上げる。ファシスの目の前に同世代同性の性器が露になった。  
「っ!? こ、これがエルカの…!」  
 塊の剥き身のような女性器を見て、ファシスが息を呑んだ。自分のものと比べてあまりにもグロテスク、  
 かつエロティックな光景にショックを受ける。  
「私の、アソコ、どう? 変じゃないかな?」  
「そんな事はない! と、とても、綺麗だ!」  
 嘘だ。ファシスにとって親友の性器は毒々しいと言ってもいいほど不気味に映っている。  
 だが、罪悪感からそれを素直に口に出来る訳が無かった。  
「じゃあ、臭いは? 変な臭いしない?」  
 こぷりと、膣を蠢かして陰液を吐き出される。悪魔に注がれた精液はまだ奥に残っているらしい、  
 白濁とした色合いだった。  
(エルカの為だ…!)  
 ファシスはゆっくりとその臭いを嗅ぎ、  
「――っ、」  
 甘酸っぱさとイカ臭さの混合臭にむせ返りそうになる。  
「やっぱり、悪魔のアソコは汚らわしくて、臭い?」  
「そ、そんな事はない! い、良い臭いだ! エルカの香りがする!」  
 性への嫌悪感を覚えながら、それでも友人の為に誤魔化した。  
「我慢しなくて良いよ。自分でも、汚いって分かってるから。だから、ファシスが綺麗にしてね?」  
 そう言うとエルカは腰を前後に揺すり始めた。にちゃにちゃ、と友人の顔を粘液で汚していく。  
「んっ、んっ、はんっ――ファシスの鼻が、ビラビラを掻き回して、気持ちいいよ!」  
「んぷっ? んあっ…! エルっ、ぷあ…!?」  
(汁が、顔に垂れてっ、――っ、息が…っ)  
「ほらぁ、ファシスぅ、ちゃんと舐めてっ。私のそこ、ぺろぺろして!」  
 初心な友人に少々強引な注文をつける。だが愛のなせる業か、  
 ファシスはおずおずとエルカの女陰へと舌を這わせた。エルカが舌の感触に体を震わせる。  
「んん…っ…そう…っ、んっ…あっ…いいよ、ファシス! 私も、気持ち良くしてあげるねっ」  
 女剣士の腰を覆う鎧を外す。下からレオタード状の肌着が現れると、割れ目にそって舌を這わせた。  
「…っ!? っ!」  
 びくん、と下になったファシスの体が跳ねる。  
(ひ、なんだ今のはっ?)  
 エルカはその反応が面白いのか、幼子のようなその溝を何度も舐め上げた。  
 その度に、びくびくと、魚のようにファシスの体が跳ねる。  
「ファシスぅ、舌がお留守になってるよ? ちゃんと舐めてっ」  
 たしなめるように言うと、腰を強く押し付ける。  
 ファシスは更に顔に圧迫感と、それに負けない淫らな感触に目を白黒させた。  
 更にエルカは友人の下着に手を掛けると一思いに股布部だけを破り取った。  
 びりい、と派手な音がして、ファシスの秘所が露になる。外気の冷たさを感じ取り、思わず声を上げる。  
「、エルカっ!? 何をしてるんだ!?」  
 ファシスの問いには答えず、体の向きを変えたエルカは友人の鎧を脱がしに掛かる。  
 腑抜けてしまった体からあっと言う間に鎧を外し終えると、股間部分と同じように、胸周りの布地を引き裂いた。  
「エルカ? 今度は、一体何を…!?」  
「とーっても気持ち良い事だよ?」  
 淫靡な笑みを浮かべながら、エルカも服を脱ぎ、自らの裸体を晒す。  
 それは少女というより女性に近いプロポーションに近い。線の細い肢体にはしっかりとしたくびれが分かる。  
 中でも二つの膨らみはシスター服の下に隠しておくのは勿体無いと思うほど豊かだ。  
 あどけない顔とは正反対に、エルカは成熟した肉体を持っていた。  
「ファシスの心、どろどろに溶かしてあげるよ。私の体を貪る事しか考えられなくなるように、ね…!」  
 エルカが仰向けになったままのファシスへと体を重ねていく。  
「え、エルカ!? ――くあっ!?」  
「んあんっ」  
 汗に湿った二人の女の体が密着する。  
 すると、剥き出しになっていた三つの勃起が、相手のそれらとぶつかり、擦れ、痺れるような感覚が走った。  
「あた、当たって…ああ…っ」  
 血を集め、自己主張する突起物同士が擦れ合う感触に、ファシスが艶かしい声を上げてしまう。  
「はあぁっ…! ――ね? どう、ファシス? ――んん…っ、おっぱいと、お豆さんが擦れて、気持ちいいよね? ――ほら、体、動かせば、もっと、擦れるよ?」  
 しゅっしゅっ、エルカが体を揺すり始める。  
 
「んっ、はっ、はっ、あっ、あっ、はあっ」  
「あ、やっ、だ、だめ、だめだ! ああっ! くあぁ!」  
(し、しびれてしまう!? こんな、いやらしい事をして!?)  
 半悪魔化したエルカの体は、ピンク色の三つの勃起物を更に硬く、大きくしこり立たせている。  
 小指大にまで体積を増加させたそれらが、ファシスの物と擦れ、揉み合い、  
 食い込む度にエルカは眉を八の字にして快楽に打ち震えた。  
「駄目じゃないよ! もっと動くの! 擦らせるの! はあ! はぁぁっ! ほらあ、動くのぉ!」  
「む、無理だぁ! ああっ!?」  
 自慰の経験も無いファシスは、初めてのレズ行為は強烈だった。  
 乳首が擦れれば、せつないようなもどかしいような痺れが鳥肌を立たせる。  
 肉ビラをすり合わされると、ぴりぴりとした官能に子宮が熱く疼き、愛液を沸かせてしまう。  
 剥き出しのクリトリスで小突き合うと、余りの刺激の強さに腰が引け、目の奥がツーンとしてしまう。  
 大好きなエルカと肌を重ねるだけでもどうにかなってしまうと思うのに、  
 お互いの荒い呼吸や、エルカの罵声、それにじゅくじゅくという淫裂で粘液を捏ねる音が  
 ファシスの思考力を徐々に削り取っていく。  
 甘酸っぱい匂いが、牝の欲情臭だと自覚すると、自分がいやらしい女だと錯覚してしまう。  
「無理でもするの! 剣士さんなんでしょ!? 傭兵さんなんでしょ!? この程度の事も出来ないの!?」  
「え、エルカあ…!」  
「分かった! 私の事、本当は嫌いなんでしょ!? 悪魔になったこの体が、憎いんでしょ!?」  
「ち、違う――ふああっ!」  
「本当に? だって悪魔だよ? 私、人間の精気を吸うんだよ? ひょっとしたら、」  
 エルカは悪魔の笑みを浮かべながら囁く。  
「この教会の子供達を――襲うかもしれないよ?」  
「――っ!?」  
 弾かれたように、ファシスがエルカの目を見る。そして口を開く――が、  
 それを遮るようにエルカが腰をグラインドさせた。  
「くぁあ!?」  
「ねえ!? それでも、私の事が好きなの!? ほら、どうしたの!? 何か言ってみせてよ!?」  
 エルカが性交でもしているように腰を激しく動かす。その度に敏感な肉豆と乳首が擦れ合って、  
 ファシスが喉を晒して仰け反った。同時に彼女の思考を快楽という名の白いペンキで塗り潰していく。  
「ううっ! ああっ!? はあっ! はっ! んぅっ! んああっ!」  
 媚薬成分に犯された体が、徐々にファシスの心を淫らな雌へと変えていく。  
「ああ…! んっ! は、ん! あっ、あっぁっ!」  
「んっ、何…っ? アソコがくちゅくちゅ言ってるよ…!? 私にイジワルされて、感じてるの!?」  
「や、ち、違う! あんっ! ああ、どうしてこんなに…!」  
「それはファシスが変態さんだからだよ!」  
「違う! 違ううっ――はんっ…!? あ、あ、あ、ああっ!?」  
「違わない! 分かってるよね? 今、ファシス、自分から腰を動かしてるんだよ…!?  
 とってもエッチに腰をくねらせて――あんっ、私も、アソコがじんじんしてるんだからぁ!」  
「それはぁ、それはあ!」  
「だいっきらいな悪魔にエッチな事されて気持ちいいだなんて、ファシスはおかしいよ!」  
「お、おかしく、ない!」  
「じゃあ、ここで私を殺してみてよ! 悪魔が憎いんでしょ!? 殺したいくらいに!?」  
「ああんっ! そ、そんな事…!」  
 出来る訳が無い。エルカに対してファシスに殺意は無いのだ。  
 
 親友が悪魔という事を理解した上で、尚、好きという感情を抱いている。  
 エルカは問い詰めるような口調から一転、甘く優しい声色を使う。  
「うふふっ…! なら私の事が愛おしい? こうやって、死ぬまで体を重ね合わせていたい?」   
「ああ、それは…」  
「気持ちいいよね? クリトリスがびりびりして、乳首が甘くって、子宮がじーんってするよね? ねえ?  
 ファシスがいいなら、私はいつでもこうしてあげるよ? いっぱい気持ち言い事してあげるよ?」  
 はむ、と耳たぶを噛まれる。そうするとファシスは甘えるような声を上げて体を震わせた。  
「うぁんっ」  
「私の奴隷になれば、気持ち良い事もっとしてあげる――何度でも肌を重ねてあげる」  
 うなじに、頬に、キスマークを付けられる。  
「ねえ。どうするファシス?」  
 魔性の瞳で見据えられる。それだけでファシスの瞳から急速で意思の光が失せていった。  
「……いい……」  
「ちゃんと言わなきゃ。聞こえないよ?」  
「奴隷でもいい! エルカと一緒に居たい!」  
「うふふっ――あっはっはっはっはっ!! ファシスって本当に変態さんだね! 悪魔の奴隷だよ!?  
 家族を奪われて! 命の恩人である私のお母さんまで殺した、悪魔だよ!? その奴隷になるんだよ!?」  
「あああっ…!」  
 ファシスは、心の中で、何かが壊れていくのを感じた。  
「ファシスの家族も、お母さんも浮かばれないね!?  
 仇をとってくれる筈のファシスが、悪魔の奴隷になるんだからね!?」  
「許して…許して…!」  
「いいよっ? 例え神様が許さなくても、私はファシスの事許してあげるよ? 許してあげるから  
 ――もっと滅茶苦茶にさせてよ!」  
 エルカが再び腰を動かす。前後左右、時には叩きつけるように上下に動かし、二つの肉豆を徹底的にいたぶる。  
「ほらっ、ほらっ、ほらっ! どう!? 変態ファシス! 気持ち良いんでしょ!?  
 悪魔にクリトリス苛められて、お股からエッチなお汁たくさん垂らしてるんでしょ!?  
 ぐちょぐちょっ、って音が聞こえるよ!?」  
「ああっ! ああんっ! だめ、らめえ! へんになるうっ!」  
「自分から腰を振っておいてよく言うね!? あんっ! はんっ! ――ああっ! 私も、感じてきちゃった…!  
 ほらぁ! ファシスもイって!  私の前で、とってもエッチな、お顔を見せて!」  
「あ! あ! あっ、あっ、あ、あ、あ、あああっあっ…あああああっぁぁっっ!!」  
 その言葉を皮切りにファシスの体はびくびくと痙攣した。   
(と、とぶううっ!!)  
 子宮が痙攣する感触にファシスは恐怖を感じるが、それ以上の快楽が波となって全身へと行き渡ると、  
 何も感じられなくなった。  
「あっ、あんっ、あんっ…! あんっ! あはっ――ああぁぁぁぁんっっ…っ!」  
 続けてエルカは絶頂に達した。二人の少女は、体を密着させたまま、びくびくと体を震わせる。  
 互いの股に、ぷしゅっ、と潮を吹きかけると体を弛緩させる。  
『はあっ…はあっ…はあっ…』  
 二人で荒い息を吐く。強烈なアクメを迎えたファシスの瞳は淀み、  
 逆にエルカは喜悦の表情を浮かべながら友人の顔へと涎を垂らしていた。  
 その涎を、半開きの口で受け止める。思考も視界も真っ白に塗り潰されたファシスは、  
 ただ友人の体温と、絶頂の余韻を感じる事しか出来なかった。  
 

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