「……はあ……はあ……」  
 エルカは荒い息を吐きながら、絶頂の余韻を噛み締める。  
(最高、だよぉ)  
 悪魔となった体で始めて味わったアクメ。友人を罵りながらの濃厚なレズプレイは、  
 エルカにとっては麻薬のようなものだった。  
(そう…もっと、ファシスを苛めたい…もっとエッチな事したい…っ)  
 一度知ってしまったら、もう止める事など出来ない。友人の心、或いは体が壊れるまで続けるのだ。  
 しかし、  
「う、ん…?」  
(あれ、なんだか、胸がざわざわするよ?)  
 急に胸の辺りに違和感を覚えた。その違和感は、折角の満足感に水を差すように、無遠慮に広がっていく。  
(……やだ、なに、これ、苦しい…!)  
 そしてそれはすぐに無視できない苦痛へと変わる。  
「か、は…っ」  
 まるで血管に進入した毒が、体中を犯そうとしているような苦痛を感じて、エルカは悶える。  
「……え、る、か?」  
 ファシスの声が耳に入ると、それに縋るように友人の顔を見る。  
 自分が愛したものに、心を陵辱された赤毛の剣士は、痴呆患者のような表情を浮かべていた。  
「ファ、シス?」  
(……え、これが、あのファシス?)  
 男勝りで、曲がった事が大嫌いで、自分を慕い思ってくれていた剣士。  
 それが、今では死んだ魚のような目をしながら浅ましい姿を晒している。  
 誰が、こうした。  
(あ、私…わたしが、ファシスを…っ!)  
 今理解した。前進を這い回る苦痛はともかく。胸の中に芽生えた痛み――それは失ったはずの良心の呵責だ。  
「……どうして、私、悪魔になったのに!? 悪魔になった筈なのに!?」  
(どうしてこんなに辛いの!?)  
「あ…あぁ……」  
 ふと、頭に体温を感じる。ファシスがエルカの頭を撫でていたのだ。励ますように、慈しむように。  
「……っ!!」  
 エルカは、反射的にその手を跳ね除けると、服を引っつかんで立ち上がる。  
 そしてファシスから逃げるように自室から飛び出した。  
 このままここに居れば自分はおかしくなってしまう気がする。一秒でも早く、この教会から離れたかった。  
 
 ***  
 
「ありゃ? ありゃりゃーっ?」  
 教会の直ぐ近くにある雑木林。背の高い木々の枝に座りながらコノットは間の抜けた声を出した。  
 彼女はここから、悪魔化していくエルカがファシスを貶めていく様子を息を荒げながら見ていたのだ。  
 最初の方はコノットが画策していた通りに話は進んでいたようだが、  
 最後の最後で、エルカが教会から逃げ出したらしい。  
「なんで? どーして? すごくいいところまでイったのに!!」  
 きーっ、と悔しそうに声を上げる。すると教会の外に出たエルカがそれを聞きつけ、  
 雑木林の中へと駆け込んできた。裸身の上からシスター服だけを纏っただけらしい、  
 胸の膨らみの頂点が服の下からでも自己主張をしている。裸身は見えないが、  
 栗色の長髪は淫らにほつれ絡まり、濃厚な性臭が服の下から漏れ出している。ある意味扇情的な格好だった。  
「コノット! コノットぉ!! 居るんでしょ!?」  
 
「全く世話の焼ける娘ねぇ」  
 地上へと降り立つ。正直、エルカの苦痛が理解できなかった。  
 教会の結界が悪魔化していく体を拒絶しているのかと思ったが、それだけでは無いようだ。  
「ほら、顔を貸しなさい」  
 コノットは再会した仲魔に、いきなりディープキスをした。唾液を流し込んで、精気を若干分け与えてやる。  
 同時に、エルカに起きた異変の正体に気付いた。  
(げっ…!? エルカの体、人間に戻り始めてる!)  
 体だけではない。精神面でも、失ったはずの『人間らしさ』を取り戻しつつある。  
(――ディースの血だ!)  
 コノットはエルカの破瓜の血を浴びて、尻尾を火傷した事を思い出した。  
 そう、エルカは聖女と歌われたシスターディースの娘だ。  
「コノット…?」  
「エルカ、アンタの体、ニンゲンに戻り始めてる」  
「…ええ!?」  
「多分、アンタの血が、というよりディースの血が体の邪気を浄化してるんだわ。あーもううざったいなぁ!」  
「…人間に、戻る?」  
 エルカが困惑しているのを感じる。人に戻りつつある体は、人になる事を望んでいる。  
 だが、エルカは一度、甘い甘い蜜を啜ってしまった。エデンの園でイヴがリンゴを口にしたように。  
 人をいたぶり、貶める快感を知ってしまった。  
 人に戻る事、再び本能の赴くままに快楽を貪る事――二つの願いが衝突し、エルカの中で葛藤が生まれる。  
 文字通り、心の中で天使と悪魔が戦いを始める。  
 そして言うまでもなく。コノットはエルカが人に戻る事を望んでいない。  
「勿論嫌よね? ニンゲンに戻るなんて」  
「え、それは…」  
「今は、落ち着いてるけどね、それはさっきアタシがチューした時に精気を分けてあげたからなの。  
 言ってみれば応急処置ね。だからまた、すぐにアンタは苦しくなるわよ?」  
「ええっ?」  
「しかも体がニンゲンに近づいていく程、その痛みは増していくわよ?」  
 これは嘘だった。当然、痛みはエルカの体が中途半端で在るほど、その苦痛は大きい。  
 だが、こう言っておけば一度堕落したエルカは、人間に戻る、と決断する事は無い。  
「私、悪魔でいたい。人間には、戻りたくない…!」  
(ふふっ。やっぱり、根っこの方は堕ちちゃってるわね)  
「でもねえ悪魔になるならその苦痛はずっと続くわよ?  
 常に聖なる血に、心と体を浄化される訳だからね。それも永遠に」  
 つまり、悪魔化している間、エルカの苦しみは続くという事だ。  
「い、嫌だよ! さっきだって胸がざわざわして、体中が痛くって…! ねえ、コノット、助けてよ!」  
「あーもう分かったからちょっとは落ち着きなさい! 苦痛を和らげる手段はちゃんとあるの!  
 いーい!? アタシがさっき精気を分け与えたから、今は平気でしょ?  
 それは悪魔化した体が魔力を使って浄化の作用を押さえ込んでるからなの」  
 
「…それじゃぁ」  
「精気を蓄えれば、浄化作用を抑える事が出来るってワケ。アタシの言いたい事、もうわかるでしょ?」  
 にやり、とコノットは邪悪な笑みを浮かべた。そう。新たな仲魔も、そろそろ自立するべきだ。  
 
「ニンゲンを襲って、精気を吸いなさい」  
 
「…それは」  
「そうしないと、またあの苦しみを味わう事になるわよ。精気を吸って完全な悪魔になれば、  
 血の浄化作用だって殆ど無効化出来る筈」  
「でも」  
(あーもう、じれったい!)  
「ねえ、エルカぁ? アンタ、ディースが実は憎いんじゃない?」  
「…」  
「アンタはディースの娘という事実に縛り付けられている。ううん、それだけじゃない。ディースの血は、  
 アンタの肉体すらを縛り付けている。うざいよね。むかつくよね? だから、復讐してやろうじゃん」  
「え?」  
「アンタの体を、ディースが腹を痛めて産み落としたその体を、ぐちょぐちょに汚すの。  
 見知らぬ男にその体を捧げて、汚い精液をどくどく子宮に注がせるの。何回でもね…!」  
 完全な悪魔となる為に、街の人間を襲う。それが、ディースに対する復讐だった。  
(分かるわよエルカ、アタシの考えに、背中をぞくぞくさせてるわね?)  
 あまりにも背徳的な行為に、エルカの心の中にはドス黒い感情のうねりが生まれる。  
 それは被虐を求める性的嗜好であり、エルカが最初から持っていた心の闇だ。  
 その闇を後押しするように、コノットは優しく、穏やかに、悪魔の囁きを吹き込んだ。  
「アンタ達が打ち合わせしていた通りに、ここから少し離れた廃屋に、傭兵の男が一人で待ってるわ。そいつを、  
 襲いなさい。今度こそ本物の悪魔になりなさい。そして、アンタを縛るディースの鎖を、断ち切るのよ」  
「分かったよ、コノット。今度こそ、私は、自由になる」  
 人が変わったように垂れ目をすっと細めて、エルカは歩き出した。獲物が待つ廃屋へと。  
 
 ***  
 
「――お、エルカちゃん! ――エルカちゃん?」  
 廃屋の扉を開けると傭兵の男――ギズは嬉しそうな声を上げた。  
 だが、一緒に来る予定だったファシスが居ない事、それにエルカが荒い息を吐いている事に気付くと、  
 慌てて走り寄ってくる。  
「おい、まさか、何かあったのか!?」  
「…悪魔に、襲われたの」  
「マジかよ…」  
「私、やっぱり何の役にも立たなかった…足を引っ張ってばっかりで…」  
「ああ、もうんな事はどーでもいい! ファシスは!?」  
「分からない…私は、急いで逃げてきたから…」  
 
「くそ、失敗か! エルカちゃんここでじっとしておいてくれ! 今仲間を集めてくる!」  
「待って!」  
「ど、どうしたんだ?」  
「私、悪魔に呪いを掛けられちゃったの」  
 嘘を吐く。エルカの体を縛るのは悪魔の呪いではなく、血の鎖だ。  
「はあ!?」  
「体中が、熱くて、痛いの…おかしくなりそうなの!」  
 魔力を失っていく体が、浄化作用に圧倒され、再び体が拒絶反応を起こしている。  
 異物が体中を這い回る感触に、嫌な汗が流れ始める。  
「ちょっと待ってくれよ、呪いとか、俺じゃどうしようもないぜ?」  
「それは、大丈夫、解呪、知ってるから――はあ…っ…」  
「ど、どうするんだ」  
 熱い吐息に、額を流れる汗に、潤んだ瞳にギズが声を裏返す。  
 雄の本能が刺激されているという事を直感的に感じ取ると、体が熱くなり、欲情の炎が灯る。  
「その、あのっ、人間の、せ、精液を……」  
「はあっ!?」  
「あ、う…ですから、んっ――男の人の、精液がいるんですっ」  
(は、恥ずかしいよっ)  
 復活した羞恥心が、エルカの顔を真っ赤に染める。あまりにも恥ずかしさに、浄化の痛みを忘れるほどだ。  
「おい、エルカちゃん。冗談にしちゃあ悪質だぞ?」  
「冗談でこんな恥ずかしい事言えません!」  
 大声で怒鳴ると、はあはあと肩で荒い息を吐く。  
 落ち着くと、忘れていた苦痛、それに高まっていく体が、男の精を欲しがり始めた。  
「…見て、下さい」  
「え、エルカちゃん!?」  
 スカートの端を摘み、ゆっくりと引き上げていく。腰まで引き上げられたスカートの下には、下着が無い。  
 エルカの秘所が、ギズの目に晒される。  
 汗にしっとりと濡れた恥毛。綻びた大陰唇。勃起したクリトリス。まるで生き物のように蠢く小陰唇の奥からは、 次々と愛液が流れ出、サーモンピンクの肉ビラを怪しく輝かせる。甘酸っぱい臭いを放つラブジュースは、  
 細い足を伝い落ち、エルカの足元の地面を汚した。  
「…っ」  
 街の人気者、シスターエルカの最も大事な部分を見て、ギズが生唾を飲み込む。  
「もう、こんなになってるんですっ。熱くてたまらないんですっ。ですから、ギズさんの熱いの、私に下さいっ」  
 据え膳食わぬは――と言うが、恐らく欲望に素直に従っただけだろう。  
 花に誘われる昆虫のようにギズはエルカに歩み寄った。  
「そ、それなら仕方ないよなっ? 呪いを解く為だもんな!」  
「はいっ、ですから、お願いします…っ」  
 
 エルカは屋内の壁に寄りかかり、ギズの方へ尻を突き出した。  
 ひくひくとオスを誘う陰部から肛門までが、露になる。  
「本当に良いんだな!?」  
 シスターを犯すという背信行為に、若干尻込みしているらしい。  
 早く精気を得たいと思うエルカの願いとは裏腹に、ギズがしつこいほどに確認を取る。  
「早く、下さい…!」  
「よし、分かった、入れるぞ…!」  
 ベルトを外し、自分のモノを取り出す。エルカは背中越しに振り返ると、涙で潤む視界の中にペニスが現れた。  
(ああ、あれが、男の人の…っ…すごい、大きいっ…あんなのが入っちゃうんだ…)  
 その逞しさに、エルカは喉を鳴らした。  
「本当に入れるからな!」  
 ギズが、エルカの秘所にイチモツを添える。肉ビラに伝わる熱さに、エルカは体を震わせた。  
「はああ…!」  
(入ってくるぅ!)  
 肉棒が押し込まれると、エルカは甘い声を上げた。初めて腹の中に納めた本物の男根は、熱く、硬く、  
 こぼれ出れるほど精気に満ちている。そんなモノが、敏感な膣壁を押し分けてながら奥へと進んでくるのだ。  
 声だって出てしまう。  
「く! すげっ、めっちゃキツイ!」  
 雄の逞しさをもっと感じたくて、腹に力を込める。すると膣壁が生き物のように蠕動し、  
 ギズが上ずった声を上げた。  
「――ふわぁん!?」  
 やがてギズのペニスがエルカの子宮口を突き上げる。浄化されていく体――  
 子宮の入り口にはまだ性感帯が残っていた。悪魔にその部分を責められた時の事を思い出し、体と心が熱くなる。  
「あ、あれ? エルカちゃんっ? ひょっとして処女じゃ――ない?」  
 一方、愕然としたような期待を裏切られたような表情でギズが問い掛けてきた。  
「や……そ、そんな事――んっ――聞かないで下さいっ――あんっ」  
 恥ずかしさに抗議しながら、それでも快楽を得ようと腰はくねり始める。  
 そうだ。さっき――教会で分かれた時は、確かに処女だった。だが、悪魔に引き裂かれた処女膜からは、  
 何回も男と交わったように、痛みを感じない。それどころか変異した肉壁は、はしたない汁を次々と溢れさせ、  
 肉棒の隅々まで味わおうと淫らに蠢いてしまう。  
「シスターの癖にスケベな声だな、エルカちゃんは! おしおきしてやる!」  
「ごめんなさい! ――あ!? あんっ! はっ! ふあぁっ!」  
 後ろから責め立てられる。  
(私、ギズさんに犯されてる!)  
 一緒に悪魔を退治すると言った、ファシスの仲間に、犯されている。  
 その事実に、ドス黒い感情が、被虐の心が疼きだした。  
「そうなんです! 私、エッチな子なんです! あんっ!  
 夜になったら、教会の中でオナニーしちゃうような、はしたない子なんです!」  
「ええ!? なんだよ、いっつも清純そうに振舞って、街の人気者のシスターさんが実は淫乱だってか!?  
 冗談じゃねえぞ!」  
 ぐちょっ! 思い切り子宮に腐肉を突き込まれる。  
 
「ふああっ!?」  
「悪魔に呪いを掛けられたって言うのも、嘘なんじゃねえのか!?」  
 ギズの口調が苛立たしく、棘のあるものへと変わっていく。だが彼は気付いていない。  
 それが、エルカから発せられる催淫効果を持った体臭が原因であるという事に。  
「あっ! それはっ――あぁっ! ――ごめ、ごめんなさい! そうなんです! ――あひっ…!」  
 そして、自分の淫らな部分を指摘され、罵られる度に、  
 エルカは背筋をぞくぞくとしたものが駆け上がっていくのを感じていた。  
「やっぱり! このスケベシスターめ! 本当は誰でも良かったんだろ!? アソコにチンコ突っ込んで!  
 ぐちょぐちょかき回されれば誰でも良かったんだろう!? ええ!? なんとか言ってみろよ!」  
「そうですっ! 私は――あんっ! エッチの為なら、誰でも股を開くような――  
 んんっ! いけない子なんですっ!」  
(ああ、私も、ファシスと同じだっ、ギズさんに酷い事言われてるのに!  
 恥ずかしいのに! とっても感じてる!)  
「くそ、信じられねえ!! ディース様の娘がこんなエロだなんて!!」   
「いやあ! お母さんの事は――はあっ! ――言わないで下さいぃ!」  
(違うの! もっと言って欲しいの! もっとなじって欲しいの!)  
「全くお笑いだぜ! シスターなんか辞めて娼婦になればどうだ! エルカちゃんよぉ!?」  
 ぱつっ、ぱつっ、ぱつっ! 汗をはさんで恥骨同士がぶつかり合う音が響く。  
 肉チューブ内の前面を擦り上げながら、子宮口を小突かれると、膝が笑う程の快楽が襲い掛かる。  
「あっ! あっ! あっ! あっ!」  
 リズミカルなピストンに合わせて色っぽい声が漏れる。エルカの興奮は最高潮に達していた。  
 そしてそれはギズも同じらしい。  
「はあっ! はあっ! くそ! エロイ、体しやがって! もう、はあっ! 出ちまうぞ!?」  
「出してください! ギズさんの精液を、私に注いでください! お願いしますぅ!」  
「欲しいか!? 欲しいんだったらもっとヤラシイ言葉でおねだりしろ!」  
「く、下さい!」  
「何をだよ!? ちゃんと言え、この雌豚!」  
「ギズさんの、臭くてどろどろしたセーエキでっ、私のぐちょぐちょおマンコを汚してください!」  
 ぴしり、と復活したばかりの自尊心にひびが入る。同時に、子宮にねじ込まんと言わんばかりの勢いで、  
 子宮口に肉棒の先端を押し付けられた。  
「うおおおおっっ!!」  
 どぷ! どぷっ!  
 
「きゃああぁぁぁっっ!?」  
 子宮に、熱い迸りを感じる。不浄の粘液から猛々しい精を感じ取り、敏感になった子宮が歓喜に打ち震える。  
 その精を貪るように、エルカは悪魔の魔術を発動させた。  
「あっ――ふああぁぁああぁぁぁあっっ…っ…っ!」  
 子宮内に注がれた白濁液を媒介にして、ギズの精液を吸い取る。熱く、淫らな気が、腹を満たし、  
 体中へと広がっていく感覚に、エルカは瞳孔を開きながら喜悦の表情を浮かべた。  
(すごい! エッチな気が、体中に広がって…っ、ああんいいっ…! とろけちゃいそうだよぉ…!)  
 絶頂の余韻だけがじわじわと体の内に満ちていく感覚。それはエルカに最高の官能とともに、  
 ご馳走を平らげたような充足感ももたらせた。苦痛が消え、甘美な痺れに思わず涎が垂れる。  
「……うぅっ!? はっ! ああ…っ!」  
 対照的に、ギズの顔が苦痛に歪む。快楽の先に待っているのは、指先一本動かす事も億劫になる、虚脱感だった。  
 ずるり、とエルカから萎れた息子を引き抜くと、だらしなくその場に尻餅を付いた。  
「ぁあん…っ」  
(あー、抜けちゃったぁ)  
 精気を吸い取る快感に体を震わせながら、背中越しにギズを見る。一度交わっただけだというのに、  
 彼は夜通しまぐわったかのように憔悴しきった顔をしていた。  
 それを見たエルカが、獲物を見つけた獣のような獰猛な笑みを浮かべる。  
「うふふ…ギーズさんっ☆」  
 中出しされた精液を地面へと零しながら、弱った獲物へと近寄る。  
 精気を吸収した体は力に満ち溢れ、何でも出来そうな気がした。  
「ぜーっ、――はぁ…! ……?」  
 呼吸を整えながら、ギズがぼんやりとした表情でエルカを見上げた。  
「あの、ですね。もう一回しませんか?」  
「……え、エルカちゃん…?」  
 エルカを見上げたギズの瞳――その中に、怪しい笑みを浮かべた自分を見る。  
 ギズの懐に座り、見詰め合う。エルカの朱色の瞳が真紅へと染まっていた。  
 

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