「私、まだまだシ足りないんです。だから――」  
 ギズを抱き寄せ、首筋に顔を埋める。これだけなら恋人同士の熱い抱擁だが、エルカはそこで大きく口を開いた。  
 異常に伸びた犬歯が、愛らしい口から覗く。  
 
 エルカの牙が、ギズの首筋へと突き刺さる。  
 
「――があっ!?」  
 激痛に悶えるギズを優しく抱きしめながら、血を啜る。その血を媒介に、更に精気を吸い取った。  
「…んっ…んんっ…!」  
 流れ込んでくる熱い官能に体を震わせるが、どうにも量が少ない。  
 どうやら精液を媒介とするのが最も効率よく精気を吸収できるらしかった。  
(けど、これはこれで…いい、かも)  
 痛みに悶える獲物を肌で感じながら、自分は甘い汁を啜る。それはエルカに心地よい優越感を与えてくれた。  
 だがこれで終わりにはさせない。血液を媒介に、淫気を注いだ。  
「ぐうっ!? はあああっっ!」  
 雄叫びと共に、一度萎えた筈のイチモツが、再び血を集め、膨張し始めた。  
(うわあ、おちんちんって、こんな形してたんだ……びくんびくん、ってして、なんだか可愛いかも…)  
 間近で少しグロテスクな男性器を見ると、なんだか愛着すら持ってしまう。同時に、愛液と精液に濡れ、  
 てかてかと光りながら淫臭を放つそれを眺めていると、また交わってみたいと思ってしまう。  
 エルカは牙を引き抜いて傷跡を優しく舐める。魔力を使うと、傷口はあっと言う間に塞がった。  
「ギズさんも元気一杯じゃないですかぁ?」  
「はあっ! はあっ! エルカちゃん!」  
「鼻息荒いですよ? まるで発情したワンちゃんみたい。うふふっ」  
「え、エルカちゃん、頼むっ…抱かせてくれ! くそ…っ、何でだっ?  
 今すぐにでも、エルカちゃんを押し倒したいのに、体が、全然動かねえ…!」  
「大丈夫ですよ? ギズさんは何も心配しないで下さい。ね? 私がしてあげますから」  
 抱き起こしていたギズの体を、そっと横たえらせる。エルカは彼の体を跨ぐと、  
 スカートをたくし上げ、ゆっくりと腰を下ろしていった。  
「あっ…んんんっ…っ!」  
 性液で汚れた淫靡なヴァギナが、逞しいペニスを捕食でもするように飲み込んでいく。  
 ずちゅっ!   
「あはぁっ…!?」  
 思い切って腰を下ろすと、壊れるかと思うほど子宮口に肉槍が食い込み、快感でエルカは仰け反った。    
(すご…っ、この体勢、子宮の入り口にっ――んっ――おちんちんがぐりぐり当たるよぅっ)  
「んはあっ…はあっ――んっ、はっ、んっ、あっ」  
「ううっ! エルカちゃん、エルカちゃん!」  
 エルカが腰を上下に動かすと、感極まったようにギズが声を上げる。一度目の性交の際垂れ流した、  
 様々な粘液を潤滑油にして、じゅっぷじゅっぷ、と卑猥な音が、スカートの中から聞こえてきた。  
 
「はっ、んっ…気持ち、良いですかっ?」  
「あ、いい! もっとしてくれ!」  
「良いですよぅ…☆」  
 エルカは邪悪な笑みを浮かべると、ギズの胸をはだけさせ、筋肉の感触を堪能するように胸元を撫で摩る。  
 そして唐突に乳首を抓った。  
「ぐっ!?」  
「んっ?」  
(おちんちん、大きくなった?)  
 苦痛を与えるつもりが、先ほど送り込んだ淫気のせいで快楽へと変化しているらしかった。  
「ギズさんも変態じゃないですか。痛い事されて、感じてるんじゃないですか?」  
「それは…! 違う!」  
「私の事さっきさんざん馬鹿にして、人の事言えないんじゃないですか?」  
「違うって言ってる――ううっ!」  
 腰を真下へ突き落とし、黙らせる。  
「嘘ばっかり、傭兵ってもっと強くて頼りになって、格好良いイメージがあったんだけどなあ。  
 案外だらしないんですね。少し見損ないました」  
「エルカちゃん…」  
 心が読めなくとも分かる。ギズはプライドを傷付けられて、酷く落ち込んでいる。屈辱に打ち震えながら、  
 だが体は貪欲に快楽を求め、その狭間で苦悩している。悔しそうなその表情を見ると、  
 ファシスを言葉でなぶっていた時の高揚感を思い出して、エルカは背筋を振るわせた。  
「んっ…女の子はエッチだと馬鹿にされるのに…はあっ…男の子はエッチでも何も言われないよねっ?  
 あんっ…そんなのズルイと思うっ」  
 言葉と肉ヒダでギズを責め立てる。片手を背中越しに尻の辺りへと伸ばす。  
「うっ?」  
 蟻の門渡りと呼ばれる部分を指でなぞってやるとギズは体を震わせた。そのまま、指を肛門へと滑らせ――  
 つぷり。  
「ひっ!?」  
「あははっ。変な声っ――ギズさん? 分かります? おちんちん、びくびくしてるよ?  
 お尻の中弄られるのがそんなにいいの?」  
 理性が効かなくなり、敬語を使うのも億劫になってきた。  
「やめろ! そんなとこ、触っちゃ駄目だ!」  
「汚いから? でも、気持ちイイよね?」  
 差し込んだ中指を掻き回してやる。  
「うおおおっ!」  
「きゃん…っ!?」  
 動かないと思っていたギズの腰が跳ね上がる。子宮を小突かれ、不覚にも甘い声を出してしまった。  
「もう、何っ? 汚いとか言っておきながらちゃっかり腰を動かして、  
 どうして男の人はそんなに見境がないの!? 信じられないよ!」  
 肛門から指を引き抜く。汚れた指をギズの服で良く拭くと、本格的に腰を動かし始めた。  
「んっ…んっ! 教会で集まった時だって、皆私の事エッチな目で見てっ…は、んっ…! …本当は、  
 悪魔を倒すなんて、どうでも良いんじゃないの!? 私目当てで、教会に集まったんじゃないの!?」  
「はあっ! はぁあっ…っ! くっ! うおおっ!」  
 ギズのイチモツが膨張し、痙攣する。エルカは絶頂が近い事を感じ取った。  
(うふふ、イくんだ? 私みたいな女の子に酷い事言われながらイっちゃうんだっ?)  
 
「イきそうなの? でも駄目だから」  
 腰の動きを止める。  
「な、どうしてっ」  
「エッチなギズさんにお仕置きだよ。自分で動いてね?」  
「そ、そんな…」  
 分かっている。精気を抜かれたギズは、体から力が抜けて、自分の意思では殆ど動かせない。  
 それを知りながらエルカは言っているのだ。  
「どうしたの? おちんちんはこんなに元気一杯なのに、自分で腰を動かす事も出来ないんだ?  
 エッチな上にだらしないんですね、ギズさんは」  
 言いながら膣に力を入れる。肉棒が締め付けられる快感にギズが呻き声を上げるが、  
 絶頂の直前で膣から力を抜く。  
「か、勘弁してくれぇ…っ」  
 生殺しの扱いに、とうとうギズが泣き言を吐いた。  
 瞳をきつく閉じながら、苦悶の表情を浮かべる男の顔は、見ているだけで子宮が熱く疼いてしまう。  
「イきたい? イきたいよね? さっきからおちんちん、びくびくしてるもん。  
 私が腰を動かせば、すぐにでも熱い精液が飛び出しそう☆」  
「ああ、頼む、動いてくれ! 俺、頭がおかしくなっちまいそうだ!」  
 ギズの懇願に笑みを浮かべると、彼の耳元に顔を寄せて、こう囁いた。  
「良いよ――ただし、私にお願いして。『あなた家畜になります』ってね」  
 そう、家畜。人が牛や鳥を育て、食べるように。人間の男は、今のエルカにとっては家畜と変わらない。  
「な、――嘘だろ!?」  
「嫌なら良いよ」  
「――ぐあっ!?」  
 再びギズの首筋に牙を突きたて、淫気を流し込む。  
「うおぉぁああぁおおぁっ!!」  
 肉棒が更に膨張する。それを、絶頂させないようにゆっくりと肉のチューブで揉み解す。  
「はぁ、はぁ、どうするの? このまま延々とこうしてるの? はあ…私は別に良いけど?」  
 嘘だ。本当は思う存分この熱い肉棒で膣内を掻き回して欲しい。壊れるほど子宮を突いて欲しい。  
「うああ! 頼む! 家畜にでも何でもなるから! 出させてくれえ!」  
「あっはぁ☆」  
 ファシスの友人を屈服させたという事実にぞくぞくと、エルカの背筋を快感が駆け上った。  
「いいよ! 私のアソコで、沢山精液出させてあげる! ――はっ! あんっ! はあんっ!」  
「うおおおっ!」  
 臨界点ぎりぎりだった男根は、あっと言う間に爆ぜた。  
 どぴゅるっ! どくっ! どくんっ!  
「んあぁぁああぁぁっ…っっ☆」  
 悪魔の淫気を注がれた事により、一度目の射精より遥かに多い精液が、エルカの子宮内へと注がれる。  
(ああん! すごいよお! セーエキが、沢山出て、あぁっ…! 子宮が蕩けそうだよぉ!)  
 熱い粘液に敏感な粘膜を撃たれる感触に、エルカも絶頂した。子宮が痙攣して、  
 肉棒から一滴残らず精液を搾り取ろうと蠕動する。同時に精気を吸収した。  
 
 ギズの活力を魔力として吸収すると、体が甘い愉悦に震え、力が満ちていく。  
 この感覚は、癖になりそうだった。  
「? あっ、やだ、体がっ…!?」  
 と、体中に溢れた魔力が、エルカに異変をもたらした。肩甲骨、尾てい骨辺りが熱く疼き始める。  
「ああぁんっ!」  
 色っぽい叫び声と共に、シスター服の背の部分が盛り上がった。  
 びりい、と服を引き裂いてそれが現れる。  
「はあっ…はあっ…!」  
 背中越しにそれを見た。  
(……翼だ)  
 蝙蝠の翼が、シスター服を内側から突き破って生えてきたのだ。  
「ん…ひょっとして…」  
 絶頂の余韻で痺れた下半身に意識を集中させる。スカートの中、お尻の上で、もぞもぞと動く物体がある。  
(尻尾、生えてる?)  
 廃屋の中に置かれ、埃を被っている鏡を見る。   
 シスター服を引き裂いた蝙蝠の翼。切れ長の瞳孔。あどけない顔に突如浮かび上がった黒のペインティングは、  
 魔力が体に行き渡った証。下半身に力を入れると、スカートを跳ね除けるように、矢じり型の尻尾が現れた。  
 
 この瞬間、エルカは完全なる悪魔となった。  
 
「あ…ははっ……あはははははっ!」  
 悪魔化した我が身を祝うように、高く笑い声を上げる。心身を縛るディースの血は、  
 溢れる魔力で完全に押さえ込まれ、もはや苦痛は感じない。最高の気分だった。  
(これが、悪魔の体…!)  
 蝙蝠の羽を、尻尾を動かす。新しい器官は、まるで今まで存在し、使ってきたように自由に操る事が出来た。  
「うふふふ…っ」  
 我が身を抱きしめる。精気を吸収し、魔力が行き渡った体は力に溢れ、熱い。  
 何もしないだけでもぞくぞくとする。エルカは新しい体の素晴らしさに打ち震えた。  
「ぐっ、ああああっ…」  
 一方のギズは、余りの快楽に口から泡を吹き始めている。精気も殆ど吸収され、顔を青くしていた。  
 だが、淫気を注がれた体は、未だに快楽を求め、猛っている。  
「まだ、イけるよね?」  
 エルカが悪魔の笑みを浮かべた。口の端から垂れていた涎をぺろりと舐め取り、ギズの腹に両手を添える。  
「う、…ああっ…!」  
 エルカの言っている意味を理解して、ギズは恐怖に震えた。確かに、繋がったままのペニスは、  
 若干萎えただけで、後一度や二度くらいの交合なら可能だろう。だが、ギズに残された精気は僅か、  
 このまま悪魔となったエルカと交われば、廃人になる事に間違いない。  
 
「ゆ、許して、くれ…っ」  
「だーめ☆」  
 エルカは、人間の時のように、人懐っこい笑顔を浮かべると、再び腰を動かした。  
 
 ***  
 
「――ちょっといつまでヤってんのよ?」  
「ほえぇ?」  
 六度目の吸精に恍惚としていた時、呆れた少女の声が聞こえた。  
 振り向くと、コノットが廃屋の中へと入って来た。  
「その男、もう精気残ってないわよ?」  
「……あ、そう言えば…精気、全然吸収出来てないや…」  
 ギズのペニスも既に萎え、膣を圧迫する感触も殆どない。彼の顔を見てみると、白目を剥いて気絶していた。  
「あ、あー。ギズさん、大丈夫かなあ?」  
「アンタって娘は…悪魔になっても天然ねえ。自分でヤったんでしょ? 廃人確定よぉ」  
「うー、もうちょっとシたかったんだけど」  
「無理無理。他の男捜しなさいって」  
「そっか、残念…」  
 ギズに同情している訳ではない。この男の熱い肉棒を、猛々しい精気を、もう味わう事が出来ないと思い、  
 後悔しているだけである。人一人、しかも友人の仲間を廃人にした事に、罪悪感は無かった。  
 その心も、とうとう人である事を忘れてしまった。完全に。  
「まーでも、見事な吸いっぷりね♪ どう? 悪魔になった感想は?」  
「うん。エッチな気分で、体中、熱いの。まだまだシたくてたまらないよ☆」  
「ふふふっ、アタシが見込んだだけあって、ほんっとーにスケベなんだからエルカは♪ まあ、  
 気持ちは分かるけどね。アタシも悪魔化した時は体がすっごい熱くて、一晩で十人以上とシちゃったから」  
「…うわ、すごい」  
「ちっさくても悪魔としてならエルカよりお姉さんだからねー。エッチな事色々教えたげる♪」  
「え、た、例えば?」  
「それはねー」  
 コノットが気を失ったギズに跨ったままのエルカに近づき、耳打ちをする。  
 ピンク髪の悪魔がコノットに喋ったのは――ファシスへの完全なる復讐。その最終段階。  
「――あれ? ファシスって、私が壊しちゃったと思ったんだけど?」  
「ああ、あんなんじゃ全然ダメダメ。エルカ不完全だったでしょ? 詰めが甘いのよ。  
 精気だって吸ってなかったし時間が経てば精神状態だって安定しちゃうわ。  
 だからこれは、アイツを完全に堕とす為の作戦よ」  
「そっか、そっかあ…」  
(また、ファシスを苛められるんだ……)  
 想像すると胸が熱くなる。顔が自然とにやけ、うふふふ、と笑いが漏れる。  
 コノットも同じように邪悪な笑い声を漏らすと、屋内に二人の少女の微笑が木霊した。  
 
「――さあ、こんな辛気臭い場所、さよならしましょ」  
「そうだね――よっと」  
 ようやくギズと結合を解き、立ち上がる。ぼたぼたと陰部から精液が零れ落ちた。見ると、  
 ギズの腰辺りには夥しい量の粘液で汚れており、悪魔化した体がどれだけ貪欲だったか伺える。  
「あー勿体無い」  
 零れ落ちる精液に手を伸ばす。人肌程度の温もりを感じる白濁液を口元まで運び、  
 まるでそうするのが当たり前のように、初めてスペルマを舐め取った。  
「……しょっぱくて、えぐい」  
「でも、美味しいでしょ?」  
「うん☆」  
「これからタップリ味わえるから楽しみにしときなよ?」  
「うんっ☆」  
 二人、いや、二匹の悪魔が廃屋の外に出る。空には悪魔となったエルカを祝福するように、  
 満月が淡い光を降り注がせている。それは魔力となって、悪魔の力を更に増幅させた。  
「さあ、楽しい宴の始まりよ」  
 コノットとエルカは翼をはためかせ、夜街へと飛翔した。  
 
 ***  
 
「……う」  
 エルカの部屋でファシスは目を覚ました。  
(とんでもない夢を、見ていた気がする)  
 そうだ。エルカが悪魔となり、自分を誘惑し、体を重ねるなど、絶対にありえない。  
 否、あってはいけない事だ。だが、  
「……夢では、ないのだな」  
 改めて、自分の体を見て痛感させられる。剥きだしの股間や乳首、夜風にさらされ冷たくなった粘液、  
 そして部屋に立ち込める淫臭。  
「エルカ、まさか、本当に…」  
 そこから先は言葉にするのもはばかれる。だが、自分を誘惑した彼女の態度、そして辛辣で、  
 陰湿で容赦のない言葉。快楽に貪欲な体。真紅の瞳。切れ長の瞳孔――そのどれもが、  
 人間であるエルカとは結びつかないのだ。  
「いや、諦めるな…!」  
 絶望的な状況に押し潰されまいと、ファシスは被りを振った。  
(そうだ、本当に悪魔となったなら。私はこうして無事で居られない筈。  
 それに、気を失う直前、エルカの瞳には迷いがあった)  
 確かにその瞬間だけは、エルカの中に人の心は残っていた。  
「エルカ自身も、不完全な状態だと言っていたじゃないか…!」  
 なら、まだチャンスはある筈。  
 
 思い立ったファシスは、気だるい体に鞭を打つと立ち上がる。引き裂かれた服の上から鎧を装着し、  
 愛用の黒マントを羽織る。剥きだしの肌が鎧と接触して冷たいが、我慢出来る。  
「……そうだ。皆に知らせなくては」  
 仲間達は、エルカが心強い味方だと思ったままの筈。もし再び、エルカの心が闇に堕ちたら、  
 あの悪魔と結託して仲間を襲うかもしれない。  
「っ!? ギズ!?」  
 もしそうなれば、単独行動をしている彼が最も危険だ。  
 ファシスは最悪の展開を想像すると、エルカの部屋から飛び出した。  
 
 ***  
 
 そして、最悪の展開は、現実のものとなっていた。  
「――ギズ…そんな…」  
 廃屋の中には、仰向けのまま白目を剥いている仲間の姿があった。  
 昨日コノットから救い出した仲間はなんとか助かったが、ギズは精気を吸い尽くされ、仮死状態だった。  
一命を取り留めても、廃人になる事は決まっている。  
「おのれ、悪魔め!! よくも私の仲間を、エルカを!」  
 だんっ、と壁に拳を叩きつける。だが彼女は知らない。  
 ギズをここまで追いやったのは、コノットではなく、エルカだという事に。  
 ファシスはマントを外すと、ギズの体に掛ける。そしてすぐに踵を返した。  
 廃屋から出ると、仲間の下へと向かう。  
(ギズがこうなったという事は、他の仲間達も襲われている可能性が高い!)  
 こうしている間にも、悪魔に襲われているかもしれない。  
 そして彼らを襲っているのは、エルカかもしれないのだ。  
「くそおおおおおぉぉっっ!!」  
 あまりのやるせなさに、ファシスは月に向かって吼えた。  
 
 ***  
 
 一方その頃。二匹の悪魔は、ファシスをおとしめる為の作戦を着々と進めていた。  
「んっ! …はっ! あんっ!」  
「あん♪ あん♪ あん♪」  
 薄暗い路地で、エルカとコノットが二人の傭兵を押し倒し、腰を振っている。彼らの周りには、  
 ガラスの欠片と、その内容物である聖水がこぼれている。エルカが味方だと思っていた彼らは、  
 彼女の魅了の魔術を掛けられ、折角ファシスが用意した聖水を割ってしまった。  
 そうなればただの一戦士に過ぎない彼らが悪魔に敵う筈もない。  
 あっと言う間に押し倒され、現在へと至っている。  
「私の中、気持ちイイですか? うふふっ☆ いいんですよぉ? 溜まった物全部出しても?」  
「ほらっ、ほらっ、さっさと出しなさいよ! もう我慢できないんでしょ!? 大人しく精気を吸われなさい!」  
『ぐあああっ!』  
 二人の男が咆哮を上げる。快楽と苦痛を伴った声だ。同時に悪魔達の腹に白濁液が注がれた。  
 
「あっ…あぁぁああぁんっ…っ☆」  
「あはっ♪ 出てる、出てる!」  
 相手から精気を吸って、その快感に打ち震える。  
「ん……はあっ……ちゃんとヤったのは二日ぶりかしらね? 危うく精気全部吸っちゃうところだったわ。  
 エルカも、ちゃんとそいつの精気、半分残してるんでしょうね? 全部吸っちゃったら、  
 折角アタシが考えてあげた計画がパアになるんだから!」  
「あー、うぅん…っ――言われなくても、分かってるよう…」  
(思いっきり吸いたいけど、計画の為――ファシスの為だもんね)  
「ならいいのよ。ほら、そしたらさっさとヤる事ヤる!」  
「はあーい」  
 すっかり打ち解けあった二匹の悪魔は、各々の獲物に魔術を掛ける。精気を半分吸い取られた男達は、  
 マインドコントロール系の魔術に面白いほど深く掛かってしまう。  
「教会で待っててね。皆を集めたら、私もすぐに行くから」  
「ファシスに見つかるんじゃないわよ。もしヘマしたら、二度とエッチ出来ない体にしてやるんだから!」  
 悪魔達が退くと、傭兵二人が立ち上がる。そして、ゾンビか幽鬼のような足取りで、  
 教会の方へと向かって行った。  
「案外簡単だね?」  
「でしょ? 男なんて皆バカばっかりだからさ、引っ掛けるのも楽勝♪」  
「本当だねー」  
 あははーと世間話でもするように笑い合う。エルカとコノットは、  
 すでに古くからの友人のように意気投合していた。  
「さて、そんじゃ次、行きますか」  
「うん」  
 悪魔達は再び夜空へと飛び上がった。  
 
 ***  
 
「――ここも駄目か…!」  
 仲間が待機している筈の裏路地。そこには傭兵二人の姿も悪魔の姿も見当たらない。だが、  
 傍に投げ捨てられた聖水の小瓶や辺りに残る性臭は、ここで何が行われていたかファシスに容易に想像させる。  
 こうやって仲間達の持ち場を回って一時間以上になる。二人でペアを組むチームが計五つ。  
 その内もう四つのペアが待機場所から姿を消している。  
(胸騒ぎがする! 事態は、私が考えている以上に、深刻らしいな…!)  
 ぐずぐずしてはいられない。これは時間との戦いだ。ファシスは、最後の仲間の安否を確認すべく走り出し、  
「――こーんな夜中にマラソン? 女剣士さんも精が出るわねえ?」  
 頭上で憎たらしい声がした。  
「いざという時の為にトレーニングは欠かさない事にしているんだ…!」  
 
 軽口を返しながら声の主を見上げる。  
 いつかのように、ピンク髪の小悪魔が民家の屋根に座り込んでいた。  
「とうとう現れたな! 今度こそ貴様を打ち滅ぼしてやる!」  
「あー、威勢の良いのは結構なんだけどねぇ――どっこらしょっと」  
 ファシスが剣を抜き放ち、臨戦態勢にもかかわらず、コノットは自ら地面へと降り立った。  
 その余裕に、返ってファシスが警戒心を抱く。  
(何を、考えているっ?)  
 罠を張っているのかと周囲に注意を配り――ふと気付いた。  
「エルカは、エルカはどうした!?」  
「さーあ? 途中までは面倒見てあげてたけど?」  
「どういう事だ!?」  
 ファシスの悲鳴に近い問い詰めに、コノットは邪悪な笑みを浮かべた。  
「とりあえず…急いで教会に行った方がいいんじゃない? と言っておくわ♪」  
「教会、だと!?」  
「早くしないと手遅れになるわよ? にしししっ」  
 歯を剥き出しにしながら嗤う悪魔を今すぐにでも切り殺したい衝動に駆られる。が、それは得策ではない。  
 エルカの状態や忽然と消えた十人の仲間を考えると、何が起こっていても不思議ではないのだ。  
「くそっ」  
 剣を鞘に納める。  
「そうそう分かってるじゃない。早く愛しのエルカちゃんの下にいっそげー♪」  
「覚えていろ!」   
 小憎たらしい悪魔に背を向けると、ファシスは教会へと一直線に駆け出した。  
 
 ***  
 
 遠ざかるファシスの姿を見送ると、コノットも翼を広げて飛翔する。  
「早くしないと手遅れになる? アタシってば超嘘つき♪」  
 心地よい夜風を肌で感じながら悪魔は歪んだ笑みを浮かべる。  
「もうとっくに手遅れなのにね♪」  
 ファシスへの復讐は、エルカが自らの手でギズを襲った瞬間、その殆どを達成していると言ってもいい。  
 ただ少し気がかりなのは――  
「エルカの奴、ちゃんとアタシの分残してるかしらねえ?」  
 教会で行われている狂宴に胸を躍らせる。  
 ファシスの後を追うように、コノットも教会へと急いだ。  
 

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