川村純一(かわむら じゅんいち)  
  特に取り立てる程の特徴は無い青年。佑香は小中学校時代に席並べていた。  
 
 北條佑香(ほうじょう ゆか)  
  人気アイドルだが、TVでの癒し系とはかけ離れた、タカビーな少女。  
 
ちなみに2人とも大学1年生という設定です。  
 
 
 
「なんで私があんな大学に行かなくちゃいけないの。だいたい芸能人のスケジュールを最優先してくれるからって、  
こんな偏差値の低い人達と席を並べるなんて考えただけで吐き気がするわ」  
 田代マネージャーは、次の現場に向かうタクシーの車内で北條佑香の愚痴を聞いていた。  
 
 北條佑香は今、関東テレビで視聴率25%を超える人気ドラマ「もう君しか見えない」で主人公の妹役を演じ、バラエティーでも引っ張りだこである人気アイドルであり、  
トーク番組では癒し系のトークも出来て、清涼飲料水のCMからブレイクしたマルチな活躍をする人気アイドルである。  
 
「佑香ちゃん。でも大学行ったら新しい出会いもあるんじゃないの」  
ふと田代は佑香に言った。  
「まさか、でも田代ちゃんは私が恋愛したらどうするの?やっぱり『恋愛はアイドルにご法度です』とか言って引き離すの?  
まぁ私が恋なんてするなんて、やっぱりお金持ちじゃないと駄目だし背もルックスもレベルないと駄目だから絶対ないわ」  
「僕は基本的にタレントでも等身大の恋をするなら別に引き裂こうなんて思わないよ。  
まぁもちろんそれによって仕事に集中出来ない程の影響が出なければの話だけどね」  
「私が恋に溺れる?無い無い」  
佑香は笑いながら続けた。  
「それより、ジュニーズの1人に声掛けてちょっと誘惑してみようかな?そうすれば、私の役柄の幅を妹や癒し系から小悪魔・魔性の女まで広げられるかもしれないわね!」  
 
 田代マネージャーは北條の話に笑いながら、心の中で呟いていた。  
(「佑香は本当の恋を知らないのだろう。むしろ誰か佑香を恋に溺れさせてくれ。そうすれば性格も変わり、役者としての真に迫る演技ができるはずなのに」)  
 田代は次の現場に着くまで北條の愚痴を聞き続けることとなった。  
 
「田代ちゃん。ちなみに私が行く予定の大学の入学式はいつだったけ?」  
「4月5日ですよ」  
 
 
 
 川村純一は桜がすっかり散って青葉が目にしみる構内にいた。  
「おい、俺の受けている講義にアイドルの北條佑香が来ているんだぜ」  
 そういって声を掛けてきたのは純一と同じサークルの太一であった。  
 
「へぇ〜、昔どっかの有名大学にいっていたアイドルはほとんど大学に来なくて学生や視聴者からバッシングされていたけど、  
北條佑香はしっかり来ているのか。そういえば小中学校は同じだったんだよな〜」  
「そうなのか!!佑香ちゃんはその頃から綺麗だったのか?」  
「ああ、でも彼女がアイドルになったのは高校だったみたいだからな」  
「そうか。でもさっきの話だが佑香ちゃんはしっかり来てるな。まぁ大学に来るのは週に2回位らしいけどな。やっぱりマスコミとか叩かれたくないだろうしね」  
「だろうな」  
純一は太一の発言に頷いた。  
 
「どうだ、今日の3限は純一は空いているか?」  
「まぁいつもは食堂でダラダラしてからネットルームでもっとダラダラする時間だな」  
「ということは暇ということで間違いないな。じゃ北條佑香を見に行こうぜ」  
 
 太一の提案に純一は、いまいち乗れなかった。  
「彼女目当ての奴らが一杯いて無意味に混雑しているんじゃないか?」  
 純一の断りの理由を当たり前のように読んでいた太一は笑いながら言った。  
「そう思うよな。確かに4月の頃はそんな感じだったのだけど、佑香ちゃんが真面目に授業受けているし、  
授業の中で毎回テストが行われて規定の点数以下だと次回から授業の参加を許されないからさ、だんだん授業を受けている人数が減ってきているんだ」  
 太一の思わぬ回答に驚いた純一は素朴な疑問を持った。  
「それでなのか、この時間4月頃に比べてネットルームの人口が急増しているんだよな。それにしても太一が毎回テストをクリアしているのも驚きなんだが、そんな授業に俺がいきなり入っても大丈夫なのか?」  
 
「あぁ、それは問題ない。カードで管理しているから初受講者には特にハードルは無い。まぁ次回以降も受講したいならテスト合格しなくてはならないのだけどな」  
「という事は1回受講する分には問題無いということだな」  
「ということだ」  
「ちなみに授業は何の授業だ?」  
「あぁ、『野々村證券提供講座 株式基礎解説』というやつだ」  
 
 太一に案内されながら純一は教室に着くと大教室の中に多くの学生が授業が始まるのを、いやTVでも大学でもアイドルの彼女が教室に来るのを待っていた。  
「あぁ、ちなみに授業中の私語は厳禁だからな。それと撮影。勿論写メや動画も厳禁だからな」  
「だろうな」  
 授業が始まる前に太一から純一はレクチャーされていた。  
「あっ、来たみたいだな」  
 ざわざわした雰囲気が開かれた扉の向こうからきた。  
 
 佑香は小さく会釈して教室内に入ってきた。  
(「あれ?あいつは幼なじみの純一かな」)  
 昔の幼なじみらしき男を見かけた佑香は、信用できる友人となった女学生にお願いして男の名前を確認してみることにした。  
「後ろのほうに座っているチェックのシャツを着ている人の名前を聞いてきてくれないかな」  
「うん別にいいけど。佑香ちゃんがそんな事言ったの初めてだよね?もしかして一目惚れなの?そしたらフライデーもんだよ。メモメモっと」  
 
「違うよ〜もしかしたら小中一緒だった幼なじみに良く似ているからね」  
「それで『実はあの頃好きでした。アイドルの私を愛してくれる』なんて言って告っちゃうんじゃないの?」  
「ないない。でもあの頃の知り合いと最近会って無いから近況でも聞こうかなって思っているだけ」  
 佑香は手のひらを軽く左右に振りながら恋心なんか無い事を強調した。  
 
「そうか。ちょっと残念。もし初恋の人だったらこの情報をあの雑誌社に持ち込むのにな〜」  
「も〜う馬鹿な事を言わないでね〜。悪いけど聞いて来てね。お願いね」  
「じゃちょっと聞いてくるね」  
 
 佑香の右隣に座っていた少女が、純一と太一が座っている席に近づいてきた。  
「すいません。あなたの名前を教えてくれないかな?」  
 少女は純一に向かって問いかけた。  
「俺の名前?川村純一だけど」  
「ありがとう。じゃあね」  
 そう言うと予鈴のチャイムが鳴る中、少女は元居た佑香の隣の席へ戻っていった。  
 
「佑香、聞いてきたよあの人の名前。川村純一だって」  
「かわむらじゅんいち?・・・。あっ純君か」  
「やっぱ知り合いだった?」  
「うん。そうだと思う。やっぱ小中学校時代の友人の近況を知りたいから川村君とコンタクトをとってくれないかな?」  
「いいよ。じゃどこで彼と会う?佑香だと旧友に会うにしても場所を選ばないといけないから大変だよね〜」  
「う〜ん。それじゃあ、私たちのゼミ準備室にしようかな」  
「あぁ、あそこなら部外者は入りにくいからいいね」  
「川村君へのコンタクトお願い」  
「了解だよ」  
 
 授業後、純一と太一に授業前話しかけてきた少女が駆け寄ってきた。  
「ねぇ、川村君。今時間あるかな?ちょっと付き合ってほしいのだけど」  
「一応、時間はあるけど・・・。何の用?それに君の名前も知らないのだけど」  
   
 そのとき純一の隣にいた太一が少女に話しかけた。  
「ねぇ、俺には用は無いの?時間はたっぷり空いているんだけど」  
「ごめんなさい。貴方には用は無いの。最も私自身が川村君に用事がある訳じゃないんだけど」  
「えっ?」  
 そういうと話をしているのがまどろっこしくなったのか、少女は純一の腕を無理やり掴むと室外へ連れ出した。  
 
「いい加減に腕を掴んで引き摺るのを止めてくれないかな?」  
「あっ、ごめんなさい」  
「俺も次の時間別に用がある訳じゃないから、用件を先に教えてくれないかな?」  
 少女は少し緊張した感じで純一に告げた。  
 
「今日同じクラスにいた北條佑香ちゃん、アイドルの彼女を知っているよね?」  
「まぁ、TVでも見るし、小中学校はクラスメイトだったからな」  
「やっぱり。それで佑香が旧友の近況を聞きたいから、会ってやってくれないかな」  
   
事情を飲み込んだ太一は少女から北條佑香が待っている場所を詳しく聞き、ゼミ準備室へ向かった。  
 
『トントン』  
「はい。どなたでしょうか」  
「北條佑香さんに呼び出された川村です」  
「あぁ!純君か。今あけるね」  
 
 鍵が開放されたドアの向こうには、アイドルの北條佑香がいた。  
「純君。久しぶり、今日授業で見かけたときびっくりしちゃった」  
「そうだな。俺は北條さんの事はTVでも見ていたけど、最初中学校まで見ていた勝ち気な北條さんじゃなかったから最初気付かなかったよ」  
「えっ!純君。その事誰かに言った?大学の友達とかマスコミとか・・・」  
「うんにゃ。別に言っていないけど」  
 
 北條の顔がアイドルとしてみせる顔ではなく、素であるタカビーな性格が剥き出しとなった表情となっていた。  
「いい、川村君絶対に昔の性格とか喋らないでくれる。私が自分で作りあげた自分が崩れるから」  
「・・・ああそれは構わんが、その言い方は何だ?」  
「えっ!?」  
 思わぬ幼なじみからの反発に驚いた佑香は、言葉を失っていた。  
「俺は芸能界の事なんか全く知らない世界だからアレだけど、自分とかけ離れた自分を作り出しても自分が疲れるだけだし、そのイメージを護ろうとするために大事な物を失っているんじゃないか?」  
「・・・。」  
「それじゃあ」  
 部屋に取り残された彼女は窓越しに映る夕暮れを見ながら、ただ呆然としていた。  
 
「田代ちゃん。私ってタカビーだよね。いっぱい迷惑かけているよね」  
「えっ?」  
 
いつもになく元気が無くて、俯いている佑香を助手席に乗せて運転している田代はこれまで聞いた事も無い殊勝な言葉に驚いていた。  
「・・・。」  
「実はね今日大学で幼なじみの男に会ったの。そして話をしていたら言われちゃった・・・」  
 
田代は否定も肯定もせずに運転をしていた。  
「私は失っちゃいけないものを失ったのかな・・・。」  
 
田代は佑香の溜め息を聞くとゆっくりと口を開いた。  
「良い幼なじみだね。佑香に損得の駆け引きも無くて直球を投げてきてくれるなんて。  
多分、その彼は佑香をアイドル北條佑香じゃなくて、一人の人間・北條佑香として見て話してくれたんだよ」  
 
「そうか・・・。ねぇ、いつか話した彼氏がいた方がとか話があったじゃない」  
「あぁ佑香に恋人が出来たら僕が仲を引き裂くとかそうじゃないとか」  
「うん。もしかしたら、あいつに恋したかもしれない。もしそうなったら引き裂かないでね」  
「あぁ、考えておく」  
 
佑香の衝撃の宣言を聞きながら、田代は思いを巡らしていた。  
(『佑香が恋か。でも絶対必要だろうし、彼女に直球で意見してくれる人も必要だな。そうなると彼女の役者としての幅も広がるだろうし、でもアイドルからは卒業の時期かもな』)  
 
 翌週、同じ授業で純一の姿も見つけた佑香は前回と同じ方法でコンタクトを図り、ゼミ準備室に純一を呼び出した。全てを覚悟して・・・。  
 
「なんだよ。別にお前の性格について誰にも話してないぞ。毎週呼び出されて尋問でもするのか?」  
明らかにイライラを隠せていない純一を前に佑香は前の日に練習したどの台本を覚えるより難しいセリフを準備していた。  
「ごめんなさい・・・。純君が言うとおり私タカビーだった。でもアイドルになってから誰もそんなこと言われずにちやほやされていた・・・」  
 
佑香は目に涙を溜めて話しを続けた。  
「私、間違っていた。でも誰もブレーキも掛けてくれなかった。でもそんな驕っていた私を純君はブレーキを掛けてくれた」  
「それは、北條さんをアイドルじゃなくて幼なじみとして見ていたから・・・」  
「ありがとう」  
佑香はこれから話そうとするセリフを考えると唇が乾いてきたが思い切って小さな唇を開いた。  
 
 
「純君。今日からは幼なじみじゃなくて、恋人として見ていてくれないかな」  
「えっ!」  
 
予想もしなかった告白に驚き、純一はその場でフリーズしていた。  
「もし良ければ、回答くれないかな」  
 純一は驚きながら佑香に尋ねた。  
「佑香さんはそれでいいの。こんな俺で?別にルックスも頭も良くないし・・・」  
「いいよ。君に私を見つめていて欲しい。駄目かな?それとも好きな人とか恋人とかいるの?」  
 
「いや、君が本当に俺でいいのなら問題はないよ」  
「ありがとう」  
 
夕焼けが窓越しに映る部屋で二人の影が近づき、唇と唇が触れ合った。  
 
「純君、エッチしよう」  
「えっ?こんな場所でいいのか」  
「うん。だって純君に抱きしめて欲しい、一つになりたい。今日は1日中オフだから…駄目かな?」  
「駄目じゃないよ」  
 
純一は佑香を蜜柑の皮を剥がすように優しく生まれたままの姿にした。その姿は夕焼けに照らされてより美しくなった。  
「綺麗だよ」  
「ありがとう。私、実は初めてなの。純一は?」  
「俺も・・・だけど」  
 
二人とも夕焼けに負けないほど頬を真っ赤にしていた。  
「それじゃあ、私がリードする。一杯芸能界の先輩から男の人を悦ばす方法を聞いていたから試させてね」  
「うん、任せるよ。でもそれを試すのは俺の身体だけにしてくれれば嬉しいな」  
「うん。別に男なんて1人で十分だし私にとって純一が最初で最後の男」  
「俺もそうだよ。佑香1人だけだよ」  
 
簡易ベットの上で佑香は純一の上に乗り、シックスナインの格好となった。  
そして純一の勃起した男根にキスをしてからアイスキャンデーを舐めあげる様に男根を小さな唇から含んでいった。  
「うっ・・・佑香・・・。」  
「どう気持ち良い?」  
「あぁ凄く・・・。ヤバすぎる位に」  
「一緒にイキたいから、私のアソコも可愛がってくれないかな」  
 純一は目の前にあった佑香のアソコを可愛がり、そして舐めあげた。  
 
「私もイキそう。純一は?」  
「俺もそろそろ・・・」  
 
二人は体位を入れ替えて、純一は佑香の全てを見ながら男根を佑香の中にゆっくりと挿入していった。  
 
「い、いたいよ」  
「佑香、無理しなくていいから。また今度・・・」  
佑香は自分を気遣おうとするセリフを言おうとした純一の口に一指し指を当てた。  
 
「だ、駄目だよ。私は今一緒になりたいの。一気に私を貫いて」  
「わ、わかった」  
 
そうして二人は結ばれた。  
   
それから1ヵ月後、構内でも他人の視線を気にせず、堂々と行動を共にしていた佑香と純一のカップルは雑誌に掲載された。  
しかし、田代と佑香そして純一は話し合いの上で公表した。  
この結果として佑香はアイドルから女優への転身をして、恋をしている等身大の女性として人気はさらに上昇していた。  
 
 
さらに1年後  
「佑香、確かにマスコミにオープンに公表したから問題無いとは云え、ここを堂々と歩くのはどうなんだ?」  
「だいじょうぶよ。どうせカップルで溢れている六本木ヒルズだし」  
「そうか、で今日の買い物は何?俺聞かされてないけど」  
 佑香は純一の顔に向かって笑顔で話しかけた。  
 
「本を買いに来たんだよ。『たまご倶楽部』」  
 
純一の脳内PCは検索を開始し、フリーズした。  
「出来たんだよ私たち2人の子供」  
「えっ〜!」  
「嬉しくないの?」  
 
佑香の悲しそうな顔がそこにはあったが、直ぐに純一は言葉を重ねた。  
 
「そんなはずない!凄く嬉しいよ!でも二人は学生で俺はバイトだけ佑香はタレント業で同棲生活の生活費にしているけど、どうしよう・・・」  
「あぁ、それなら昨日のうちに先に事務所に報告して結婚も併せて了解貰ったから、当面の生活費はご祝儀かな?」  
「結婚までOK貰ったの?」  
「うん。私の仕事関係は全部OK。あとは記者会見くらいかな」  
「あれ、そういえば俺たちの両親へ挨拶しに行かないと」  
「あっ〜忘れていた!とりあえず携帯でママに電話しないと」  
「佑香のお父さんにあったこと無いぞ」  
さぁ二人の結婚まではどうなることやら。この続きはまた機会があったら・・・。  
 

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