「ごめん、ごめん。もうすぐ休み時間終わっちゃうし、続きは放課後ね」  
 その声に、少女は内心がっくりとうなだれた。こそこそと自分の席に戻ろうとする  
美冬のすらりとした背中を目で追い、再び小さくため息。  
 次の授業のノートはもう出してある。後ろの席、何やらぼやきつつ授業の支度を  
している少女のように、焦る必要はない。  
 そこに男子から声が飛んできた。  
「いするぎぃ! おい、黒板黒板っ!」  
 言われ、気が付く。  
 今日は自分がクラス当番だったことに。  
 美冬達の話に聞き入ってしまい、すっかり忘れていた。  
「え、あ、はいっ!」  
 後ろのショート娘の倍は慌てて石動千佳は立ち上がり。  
 ひっくりかえって、こけた。  
 
 
「あーあ。吉崎さんみたいに、エッチしたいなぁ……」  
 思わず漏れた言葉に、千佳は慌てて自分の口を塞いだ。  
 あたりをきょろきょろと見回し、周囲に聞こえていないのを確かめてほぅと胸を  
なで下ろす。千佳の小さな声は自動ドアが閉まった音にかき消され、誰にも  
気付かれなかったらしい。  
 既に放課後。学校からの帰り道である。本当なら美冬達の話に混ざりたい所  
だったが、主役である吉崎明日香がひと騒動起こしてしまい、それどころでは  
なくなったのだ。……もっとも内気な千佳に、明日香達の話に混ぜて欲しいと  
言える勇気はなかったけれど。  
「今日はしゅう先生来るもんね……。お菓子も買ったし、早く帰らなきゃ」  
 そんな事を言い訳にしつつ、出たばかりの所で足を止めた。  
 店の中が全部見渡せるショーウィンドー。ガラス張りのそれに、千佳の小柄な  
姿が映し出されている。  
 規則通りの制服に、左右からだらりと下がるお決まりの三つ編み。寸胴の体には  
色気のカケラもない。明日香のような派手・色気・経験豊富と三拍子揃った美人とは  
全く逆の姿が、そこにぼんやり立っている。  
 そして、トドメを刺すような『石動千佳』という名前。姓は固く、名は子供っぽすぎると  
思う。名は体を表すねぇ、と笑われても仕方がない。  
 思わず、はぁ、とため息が出た。  
(もうちょっと派手で元気があれば、吉崎さんとも仲良く話せるんだろうなぁ……)  
 堂々と恋人宣言までした明日香のパワーが羨ましい。  
 あの勇気の一割でもあれば、もう少しはマシになれるのに。と思う。  
「あれ? どしたの、ちかちゃん」  
 そこに掛けられた声は、随分と上からのものだった。  
 
 
 四畳半の和室にコタツが一つ。後は本棚と収納が少々。  
 それが千佳の部屋だった。  
 フローリングもベッドもなく、テレビは居間に一つだけ。押し入れにふすまの上に  
アパートだから、勝手にカギを付ける事も洒落たポスターを貼る事も出来ない。  
もちろん家族共用の電話は黒電話だ。  
「なんか元気なかったけど……どうかしたの?」  
 そんな泣きたくなるほど女っ気の無い部屋に、ふわりと紅茶の香りが立ち上った。  
「ううん。何でもないです」  
 ささやかな抵抗とばかりの小洒落た紅茶とショートケーキ。素っ気ない台所で  
淹れたにしては上出来だ、と思う。  
「そう?」  
 ケーキ屋で出会ったのは秀輔だった。  
 秀輔はいわゆる家庭教師だ。もちろん派遣協会などからやってきたカッコイイ  
ものではなく、親が知り合いの大学生を捕まえてきて勉強を見てもらっているだけ  
なのだが。  
「じゃ、始めようか。今日は数学だっけ?」  
「はい」  
 ページを開き、授業の内容で分からなかった所を確認していく。  
 小さなコタツで膝をくっつけるようにしての個人授業。  
 意外にも分かりやすい秀輔の説明を聞きながら、千佳はふと青年の顔を見上げた。  
 二階堂秀輔。  
 しゅう先生。  
 お母さんの友達の、息子さん。  
 少し細いけど、背は高いし、顔も悪くない。  
 性格は優しいといっていいだろう。怒った所は見た事がないし、千佳が分からない  
ところは根気よく教えてくれるから、短気でもないと思う。  
 真面目すぎるきらいはあるが、根が真面目な千佳はどちらかといえばそちらの方が  
落ち着いた。  
 
「ちかちゃん、僕の顔に何か付いてる?」  
 ぼぅっと秀輔の顔を見つめていたのに気付かれ、声を掛けられる。  
「え、あ、いや、そういうんじゃ……ないです」  
 頬を染め、慌てて視線をノートに戻す。  
「分からないところは?」  
「……ない、です」  
 息が掛かるほどの距離でも、妹の勉強でも見るかのような態度で接してくれる。  
 エッチではないというよりも、千佳をそういう対象として見ていないのだろう。もしか  
したら、別に美人の彼女でもいるのかもしれない。  
(しゅう先生も、これが吉崎さんだったら……)  
 そんな考えがふと頭をよぎり、心の中でうなだれる千佳。  
「じゃ、この問題は大丈夫?」  
 ブルーの入った考えで沈み込んでいると、いきなりノートの一箇所を指された。  
日付からすれば、今日の授業で習ったばかりの場所だ。  
「え……?」  
 もちろん答えられるはずがない。授業の事など、完全に思考の外だったのだから。  
「んー。悩み事でもあるなら、聞くよ? 僕で良かったらさ」  
 優しく、穏やかな声。  
 大人の男の人の、声。  
「じゃ、しゅう先生……」  
 答えられなかった混乱とそれまでの考えで、千佳の思考は完全に暴走していた。  
 もしくは、願いに願った吉崎明日香の一部が乗り移っていたのだろう。  
「私のこと、どう思ってます?」  
 普段の彼女なら絶対に口にしない言葉を使い、秀輔に問いかけた。  
 
「……え?」  
 突然の問いに、秀輔の思考は完全に止まっていた。  
「ちかちゃんのこと……って?」  
 言ってから、随分と間抜けな問いだと気付く。  
「だから……その……」  
 千佳も頬を薄く染め、下を向いたまま。  
「えっ……と」  
「しゅう先生、私の事、嫌いですか?」  
 嘘は付けない。けれど、嫌いでもない。  
「そんな事ないよ」  
 千佳は可愛い。気だても良いし、優しくて真面目な良い子だと思う。時々ご馳走に  
なる手料理も美味しいから、いいお嫁さんになるとも思う。  
 だが……。  
「僕……こういう経験がほとんど無くてさ。何て言っていいか分かんないんだ。……ゴメン」  
「えーっ!?」  
 心底驚いた千佳の声は、秀輔の胸をぐさりと貫いた。  
「……傷つくなぁ」  
「ごめんなさい。でも、しゅう先生かっこいいから、彼女もいるんだとばかり……」  
 さっきのがブローだとすれば、今度のはアッパーだった。  
「……ちかちゃぁん」  
 ごめんなさいごめんなさいと連呼する千佳に、やれやれと苦笑。  
「で、何? こんな話をいきなり切り出して」  
 何となく予想は付いたが、それでも聞いてみる。  
 
「えっと……ですね」  
 途切れ途切れの千佳の話は大方秀輔の思った通りだった。  
 遊び人の女子がいること。  
 その子やその友達は既にエッチを経験していること。  
 自分もうらやましいと思ったこと。  
 そして千佳の最有力候補が……  
「で、僕?」  
 秀輔だということ。  
「ごめんなさい」  
 コタツに入ったまま、もう一度頭を下げる。  
「でも、誰でも良かったわけじゃないんです。しゅう先生、優しいし……かっこいいし  
……ひどいことも痛いこともしないと思ったから。それに……」  
 小さい体をもっと小さくして、蚊の鳴くような声で呟く。  
「私、しゅう先生のこと……好き、だし」  
「ちかちゃん……」  
 しゃくり上げ始めた千佳の頭を優しく撫で、秀輔はくしゃくしゃの千佳にそっと唇を重ね……。  
 
 ようとして、千佳に止められた。  
「ひょっほ、ひはひゃん?」  
「だめっ!」  
 左手で秀輔の顔を押しやり、右手で唇を隠したままで叫ぶ千佳。  
「やっぱ、しゅう先生、心の準備が……っ」  
 もちろん千佳のそれはファーストキスだ。いくら憧れの秀輔とはいえ、軽々と許せるものではない。秀輔もそれを分かっているのか、千佳に押されるままになっている。  
「キスがダメなら、もちろんエッチもダメだよねぇ……」  
 苦笑しながらそう言われ、千佳は頭が真っ白になった。  
 そう。手順からすればキスは一番最初。そこでつまずいてどうするのだ。キスも出来なくて、エッチなことが出来るものか。  
(どうしよう……でも……)  
 真っ白になりながら、必死で考える千佳。  
『…………!』  
 そこに天啓がひらめいた。  
 これだ。これしかない。  
 ああ神様大山様吉崎様ありがとう。千佳は本気でそう思った。  
「しゅう先生……あの、キスもエッチもダメだけど……」  
「ああ、まあ、無理しなくていいからさ……。もうすぐ伯母さんも帰ってくるだろうし」  
 時計を見ればもう五時だ。パートに出ている千佳の母親もそろそろ帰ってくる。ふすま一枚で仕切られた千佳のアパートでは、部屋の外まで丸聞こえだ。  
「その……フェラ……チオ、なら」  
「……千佳ちゃん!?」  
 唐突に出て来たとんでもない発言に、秀輔は言葉を失った。  
「あれなら痛くないし……初めて、だけど、キスほどじゃ……ないし」  
 もちろん千佳はフェラチオが何かなど分からない。明日香と美冬の話から断片的に仕入れた情報を適当に繋ぎ合わせているだけだ。  
「それに、しゅう先生も気持ちいいでしょ?」  
 座ってなお背の高い秀輔を見上げ、問う。  
「……いいの?」  
 そっと笑う千佳に逆らう術を、秀輔が持ち合わせていようはずもない。  
「じゃ、お願いしようかな」  
「はい!」  
 
「ここを……引き下ろすんですか?」  
「そうだよ」  
 そう言われ、千佳は秀輔のファスナーを降ろしていく。他人のジーンズのファスナーを  
降ろすなんて初めての体験だ。根本まで引き下ろし、丈夫なデニム地を左右に  
分けると、その奥には固く張りつめた布の山が控えていた。  
「これ……」  
 それを見た瞬間、顔が熱くなるのが分かった。いくら千佳でも、その奥に何がある  
のかくらいは想像が付く。どうなっているのかも……想像くらいは。  
「前にボタンがあるから、それ外して」  
「は……はい」  
 トランクスの小さなボタンを外すと、内側からむわっと熱気が流れてくる。それに  
驚きながらも布の山を押し開けば……  
「ひゃぁっ!」  
 近付けていた千佳の顔に、べたりと熱いものが飛びかかってきた。  
「や、やだ、な、何ですかぁ!? あうっ!」  
 思わず後ずさり、タンスの角で尻をしたたかに打つ。  
「……だ、大丈夫? ちかちゃん」  
「はぁ……」  
 打った尻をさすりながら、元のコタツの傍らへ。秀輔の前まで戻っておそるおそる  
かがみ込む、までは至らない。  
 さすがに怖さや気味悪さが先に立つ。  
「これがしゅう先生の?」  
 話に聞いたものよりも随分大きく、天井めがけてそそり立っている。千佳の記憶  
では父親のものとしか比べようがないが、それよりも大きく黒々としている気がした。  
 
「触ってみて、いいよ」  
 興味本位で屹立したそれに手を伸ばす。指先が触れると、びくんと小さく脈打った。  
「ひぁ……っ!」  
 根本だけを固定されたそれは、触れるたびにぷらぷらと小気味よく揺れる。何だかそれが面白くて千佳はくすくすと笑い、やがてちょんちょん、とつつき始めた。  
「こら、遊ばないの」  
「はぁい」  
 苦笑に笑顔で返しておいて、千佳は揺れるそれをそっと掴んでみる。つついてオモチャにしたせいか、不思議と気持ち悪いとは思わなくなっていた。  
「あ……なんか、熱ぅい」  
 初めて触れたペニスは固いような柔らかいような、不思議な感触だ。内側からじん、と熱を放っているようで、先の膨らんだ部分に手を添えるとその感触はさらに強くなる。  
 手のひらで柔らかく撫でると、秀輔の口から息が漏れた。  
「しゅう先生、ここが気持ちいいんですか?」  
「あ……うん」  
 そっと撫でる度、苦しそうな、気持ちよさそうな声が聞こえてくる。  
「じゃ、もっとやってあげますね」  
 その声を聞く度に千佳の中で何かが熱くなり、鼓動が早くなる。亀頭を撫でる手の動きが少しずつ滑らかさを増し、やがて水のような音が絡まり始めた。  
 にちゃにちゃというその音が、千佳の中の熱いものをさらに加速させていく。  
「ち、ちかちゃん……。そろそろ……手じゃなくて、口で……」  
「……へ?」  
 その言葉に、今度こそ千佳は固まった。  
「え? 口……って?」  
 口で。  
 千佳はドジだがバカではない。数学は苦手だが国語は得意だし、機転も利く。  
「嘘。なんで……え?」  
 この状況で、『手じゃなくて口で』何をするか。国語の問題にしても簡単な問題だった。  
「だって……フェラ、してくれるっ……て」  
(ええーっ!?)  
 嫌だ、と喉まで出て来そうになる。  
「……はい」  
 だが、千佳は火照った顔で、首を縦に振った。  
 ドキドキが止まらない。けれど、これを口に含めばそのドキドキも止まるかもしれない。  
 
「じゃ、行きますね……しゅう先生」  
 にちゃ、という音が小さな唇から響く。  
「熱ぅぃ……」  
 唇から伝わってくるペニスの感触は、手のひらからのものよりもはるかに熱を帯びていた。その熱を全体で味わうように、千佳は触れる先端を唇の端から端まで少しずつずらしていく。可憐な唇全体に先走りの透明な液体が絡み付き、蛍光灯の下でてらてらと光を反射する。  
 ぺろりとひと舐めすれば、とろりとした塩味が口の中に広がった。どこか甘い後味を残すそれは、嫌ではない。  
「ちかちゃん、舌で……舐めてみて」  
「はぁい」  
 それに気をよくし、千佳は秀輔のペニスに再びキス。触れた唇の先から舌を出し、ちろりと熱い処に直接舌を触れさせる。  
 唇で触れた時よりも、もっと熱い。  
 その熱さを感じるのが楽しくて、千佳は少しずつ大胆に舐め始めていく。最初は舌先だけでおずおずと触れるだけだったが、やがて亀頭を舐め上げたり、竿を滑らせるように舐めたりし始めた。唾液に濡れた箇所が頬にぺたぺたと当たるが、気にした様子もない。  
「ちかちゃん……もうちょっと、ゆっくり……」  
 思わず、秀輔の口から苦しそうな声が漏れた。  
「あ、しゅう先生。痛かったですか?」  
 ペニスに顔を近付けたまま、千佳。上目遣いのまま、てらてらと濡れるものを挟んだ向こうから、心配そうにこちらを見上げている。  
「いや、そうじゃなくって……」  
 無邪気な千佳とは対照的に、秀輔は絶頂に至らないよう抑えるだけで精一杯なのだ。  
「ちかちゃんの舌が……気持ちよすぎて……」  
「え……?」  
 絶え絶えの言葉に、赤い顔が耳まで真っ赤に染まる。  
 
「やだ……先生のバカ……」  
 そう言ってぷいと顔をそらす千佳。  
「……ごめん」  
「知りません」  
 とはいえ、そう言いながらも千佳は剛直から指を離さない。恥ずかしくはあるが、名残惜しい……といったふうに指先を絡ませたままだ。  
 まだ舐めたい。先生の熱いものを可愛がりたい。募る想いはあっても、そんな恥ずかしい事を言われては舐められない。これでは千佳が初めてではないみたいではないか。  
「お願いします」  
 そんな千佳に秀輔が頭を下げた途端、絡んだペニスがふにゃりと指をすり抜けた。  
「……ぷっ」  
 絶妙のタイミングで萎えたそれがおかしくて、千佳は思わず吹き出してしまう。くすくすと体を折り、秀輔の前で笑い続ける。  
「ひどいなぁ、ちかちゃん」  
「だって……おか……おかしいんですもん」  
 よっぽどツボに入ったらしい。笑って笑って、笑い転げてから、千佳は憮然とする秀輔のペニスをそっと両手で包み込んだ。  
「ちか……ちゃん?」  
 両手に納まる大きさに縮まったそれに柔らかくキス。それから舌で撫でさすれば、千佳の手のひらの中で小さなそれはムクムクと元の大きさを取り戻していく。やっぱり秀輔のものは気持ち悪くも怖くもない。  
「しゅう先生のおちんちん、可愛い」  
 そう。その感想が、ぴったり来る。  
「……なんか、傷つくなぁ。その言い方」  
 くすりと笑い、そっと口にくわえ込んだ。舌で舐めれば秀輔は気持ちいいらしいと分かっていたから、舌で柔らかく舐め回し始める。  
 
「ん……っ……。吸う、みたいにして」  
「ふぁい」  
 口に含んだままでそう答え、ペニスに絡んだ唾液をずずっと吸い上げてやる。  
「もっと……」  
「んむ……っ」  
 ごくりと喉を鳴らし、息を吐いてからもう一度吸い上げた。じゅるじゅるという生々しい音が狭い四畳半に響き渡る。  
「んっ!」  
 その瞬間、秀輔のものが口の中で爆発した。  
 同時に頭を押さえつけられ、息を吐く事も出来ない。  
「んっ……んんっ……んんーーーーー!」  
 口の中には何だかドロドロする粘液が溜っている。さっきの透明な液体はむしろ甘かったが、今度のは生臭くて苦いだけだ。  
 押さえつけた手を無理矢理に振り解き、口からペニスを吐き出せば、今度は何だか熱いものがビシャビシャと顔に飛んできた。  
「ご、ごめん……ちかちゃん」  
 秀輔から差し出された空のカップに口の中の粘りけをべえっと吐き出し、自分のカップに残っていた紅茶で口の中を慌ててゆすぐ。今度のも吐き出したかったが……さすがに格好悪かったので、無理矢理飲み下した。  
「うぇぇ……なんですか、これぇ」  
 漢方薬でも飲み込んだような顔で、済まなさそうな顔をしている秀輔に向き直った。その千佳の鼻の頭にも白いものがどろりと垂れている。  
「……精液」  
 情けなさそうな秀輔にティッシュで拭われるより早く、千佳の指が鼻の頭の精液をすくい上げた。  
「ちょ、ちょっと、ちかちゃん」  
「そっか。これが、しゅう先生の精液……」  
 にちゃにちゃと指先に絡めてもてあそびつつ、もう一度舌先を伸ばす。  
 さっきは意味不明な気持ち悪い粘液だったが、正体さえ分かれば怖くも何ともない。苦くて変なえぐみはあるが、慣れれば意外と不味くないかもしれない。  
「先生、もう一回、やりませんか?」  
 千佳がにっこりと笑顔で言ったその時。  
「ただいまー」  
 玄関の鍵が、がちゃりと開く音がした。  
 
 
「先生。いつも千佳がすいませんね」  
 帰るなり千佳の部屋のふすまを開けた母親は、思わず眉をひそめた。  
「……千佳は?」  
 コタツを真ん中にした、いつもの千佳の部屋だ。それはいつもの通りなのだが、部屋の主である千佳だけがいない。  
「ああ、ちかちゃんはシャーペンの芯が切れたから、ちょっと買い物に」  
 コタツに入ったままの姿勢で、ヘラヘラと愛想良く笑う秀輔。  
「あの子ったら、まったく」  
 見れば、お茶もお茶菓子も出ていないではないか。いつもはしっかりしている娘なのに、どこか間が抜けているのだ。  
「じゃ、私はちょっと、お茶菓子とお夕飯の材料買ってきますね。先生も食べて帰られますよね?」  
「いえ、お気……」  
 その瞬間、秀輔は言葉を止めた。  
「先生、どうかなさいました?」  
「い、いえ、いつもすいません」  
 どこか引きつったような声で頭を下げる。  
 お気になさらず、と笑顔を残し、千佳の母親は狭いアパートを後にするのだった。  
 
「もう、ちかちゃん、ひどいよ……」  
 母親が出て行ったのを確かめ、秀輔はコタツの布団をめくり上げた。案の定、そこにあるのは精液で汚れたままの千佳の顔。  
「……ふぉぅ。ふぇんふぇいふぉふぁふぁあ」  
 そして、千佳にくわえられている秀輔の出しっぱなしのもの。慌てていた二人に、それを片付ける暇があるわけもない。そして親を呼び止めようとした秀輔を阻止しようと、千佳は目の前にあったそれをぱくりとくわえ込んだのだ。  
「ほら、顔、拭かないと。伯母さん帰って来ちゃうよ」  
「……うん」  
 それでも千佳は名残惜しいのか、秀輔のものから口を離そうとしない。両手も出せない狭いコタツの中で、舌と唇だけを使って太いそれを器用にもてあそんでいる。  
「ほら」  
 秀輔がコタツの中から腰を引けば、それに釣られるように千佳の体も外へと抜ける。半身を出したところで、秀輔は思わず動きを止めた。  
「……しゅう先生?」  
 不思議そうに首を傾げる千佳。  
「ちかちゃん……」  
 そっと、秀輔の手が千佳の頬に伸びる。薄い布が擦れるような音がして、ぱらりと左右の三つ編みが解け落ちた。  
「伯母さん、いつ頃帰ってくる?」  
「しゅう先生が来た時の夕ご飯ははりきって作るから、たぶん三十分は帰ってこないと思います」  
 身を寄せた千佳の髪が、再び立ち上がったペニスを柔らかくくすぐる。熱いそれをくわえ込んでも、秀輔はもう拒もうとしなかった。  
「先生……」  
 精液に濡れた顔で艶やかに微笑み、千佳は二発目の精を受けるために舌を這わせ始めた。  
 
 
 次の日。  
「おっはよー!」  
 元気の良い声が朝の教室に響き渡った。  
「おはよー」  
 席に着こうとすると、ふと前の席の女子が目に入る。  
 いつもは地味な三つ編みが、珍しく緩いウェーブに変わっているではないか。  
「……へぇ。石動さん、髪型変えたんだ?」  
「うん。三つ編みほどいただけなんだけど。変……かな?」  
 控えめな問いに、限界以上に上機嫌な少女は満面の笑みを惜しげもなく振りまいた。  
「前のより似合ってると思うよ。なになに、何かいいことあったの?」  
「うん。それより、吉崎さんもいいことあったの?」  
「これからあるのよ。聞いてくれるかい、ちょっと」  
 聞いてくれるかいも何もない。集まってきた女子の問いかけにまとめて囲まれて、千佳も明日香の隣でぐちゃぐちゃだ。  
「へぇ。でも、実はねぇ」  
 得意げに、そして思わせぶりに語る明日香の話を聞きながら。  
 千佳はその様子に、柔らかく微笑むのだった。  
 

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