かれこれもう二十分近くなるが、陽一は机の上のテスト問題から目を放さずにいた。
問題ができないわけではない。とっくに答えはわかっている。普段の陽一ならとうにそうしただろう。
理由は陽一のそばにいる人であった。
私立高校の受験を目指している彼にとっては、今の学校のレベルでは不安なので、父親に頼んで家庭教師をつけてもらっていた。
陽一の母親はもともと病弱だったこともあり、彼が3歳のときに亡くなっている。以来、父子家庭で乗り切ってきた。
ところが、一月ほど前、父親から再婚の話があった。新しい母親となる人は三十九歳で、隣町で雑貨屋を営んでいるという。そして、彼女には十九歳の連れ子がいたのだ。
自分にいきなり四歳年上の姉ができるという衝撃は、思春期真っ只中にいる陽一にしてみれば、うれしかった。
そして新しい姉と対面した陽一は、脳天をハンマーでぶったたかれたような衝撃を受けた。
それは、彼の家庭教師をしている菜美であった。
「いくらなんでも……よりによって、先生が姉さんだなんて……」
当の姉となった菜美は、普段着の格好である。姉となって、家庭教師という仕事面は解消したが、責任感の強い菜美は、今も家庭教師の時間通りに陽一の勉強を見てくれていた。
「どう、できたかしら?」
菜美が聞いた。今日は普段着の格好である。したがってスーツ姿の時よりも胸のふくらみが目立っていた。
「どうすりゃ、いいんだよ……」
すでにトランクスの中のモノが硬くなりはじめていることを陽一はわかっている。姉相手に起っちゃったことが菜美にわかれば、軽蔑されかねない。
「陽ちゃん、そろそろ時間よ」
菜美が壁の時計を見ながら言った。
「え、ま、待ってよ」
「ダーメ。テストの時間は決まっているのよ。さあ見せて」
「え、で、でも……」
陽一が必死に抵抗すればするほど、彼の股間のモノは元気になっていく。
「どうしたのよ。あのくらいの問題、陽ちゃんなら簡単に解けるはずでしょ。家庭教師をしていたときに出題した問題の応用編よ」
テストの問題も解答もとうにわかっている。いや、むしろ自分の股間の元気よすぎることが何よりも問題であった。
「はい、時間切れ。じゃ、採点するから」
菜美が手を伸ばした瞬間、あわてていた陽一が椅子の向きを変えようと体を動かしたので、菜美はよろけてしまった。その拍子に彼女の手は陽一の股間に触れてしまった。
「しまった」
よりによって一番恐れていた事態になってしまい、陽一は混乱した。とうとう姉に知られてしまった。いったいどんなエライ目に遭うのか予想がつかない。
「……」
菜美も突然のことで呆然としている。
姉から罵声ひとつ浴びせられず、黙っていることが陽一をさらなる混乱に陥れていた。怒られてひっぱたかれるならまだよい。姉に無視されることは一番の苦痛であった。
「あ、あの……」
この場をなんとかしたいと思いにかられ、陽一は切り出した。
「なに」
低めの声が返ってきた。
「す、すみませんっ、そ、その……ぼ、ぼく……」
「いつからなの?」
「え?」
「勉強始めるから起ってたの? 聞いてるの陽ちゃん答えなさい」
「は、はい、す、すみませんっ」
「謝る必要はないわ。健康な男の子なら異性を意識するのは当然よ」
『どうやら、陽ちゃんには性教育の授業も必要みたいね』
菜美は心の中でそう思っていた。
菜美はそういうとズボンの上から陽一のペニスに触れた。
「カチンカチンじゃないの。これは一度すっきりさせないと無理ね」
菜美は陽一のズボンのジッパーを引いた。縞のトランクスが露出する。
予想だにしない出来事に、陽一はどう対応したらいいか、わからない状態であった。
「じゃ、出すわね」
菜美はそういうとトランクスの中に手を入れて、中のモノをつかみ出した。
大人の男性のものには及ばないが、それでも一人前を自負するかのように屹立している。
菜美が鼻を近づけると精臭が鼻をついた。
「陽ちゃん、お風呂でオチンチンの中まで洗ってないでしょ。ダメよ、オチンチンはいつも清潔にしておかなきゃ」
優しく諌めると菜美は、まだ完全に剥けきっていない包皮に目を向け、ペニスをつかんだ。(続)