「ほら。さっさとこっち運んでよ」  
「はいはい」  
 大学2年の俺が、今は中学生の女の子に顎で使われていた。  
 バイト暦は彼女の方がはるかに長い。仕方ないことだろう。  
 ここは、とある海岸の海の家。  
 俺の叔父さんが経営しているんだけど、今年は人手が足りないということで俺がバイトに借り出された。  
 バイトは俺のほかに中学生の美咲という女の子だけ。  
 叔父さんと叔母さん合わせて4人で客をさばかなくてはいけないのだった。  
「はい。じゃあ、今度はこれをあっちとあっちのお客さんに運んで」  
「へいへい」  
「返事はきちんとする!」  
「はいよ」  
 中学3年生の女の子。美咲ちゃんは、今年で3年目のバイトだそうだ。  
 仕事もきっちりこなすし、俺よりもテキパキと正確に素早く働く。  
 ってことで、店では俺の方が立場が下だ。  
「そこのヤキソバはけたら、今日はもう店じまいだな」  
 叔父さんの声が奥からする。  
「は〜い」  
「んじゃ、頑張るかな」  
 
「お疲れさま」  
 店じまいとなり4人で後片付けを終わらせる。  
「あぁ、そうだ。今日は私と家内は、会合あるから遅くなるんだ。美咲ちゃんを連れて帰ってくれないか?」  
「了解です。じゃあ、車借りますね」  
「あぁ。そのまま家においておいてくれ。私たちは別な人ので送ってもらうよ」  
「わかりました。気をつけてくださいね」  
 俺と美咲ちゃんは店を出て裏手の駐車場に止めてあった車に乗り込む。  
「お疲れさま。何か冷たいものでも買っていく?」  
「いい。太るし」  
「十分スタイルいいと思うんだけど」  
 美咲ちゃんは叔母さんの方の親戚らしく、彼女も俺と同じようにバイトの間は叔父さんの家にやっかいになっていた。  
「そういえば、夏休みなのに友達とかと遊ばないの?」  
「友達と一緒にいても楽しくないから」  
「そうなんだ」  
「それに・・・・・・いいや。なんでもない」  
 そう言うと美咲ちゃんは窓の外の方を向いてしまった。  
 
『と、いうわけで。明日はお休みにするよ。今晩もちょっと帰れないから戸締りだけは忘れないようにな』  
 叔父さんから電話が来た。  
 なんでも他の海の家で食中毒者が出たとかで、明日はすべての海の家を検査するそうだ。  
「だって」  
「そう」  
 美咲ちゃんはリビングに横になってテレビを見ていた。  
 俺は晩飯の後片付けを始める。  
 俺と美咲ちゃんの分だけなのに3人前の食器があった。  
 彼女はスタイルいいけどものすごい食べるんだよな。  
「ねぇ・・・お兄ちゃん」  
 食器を洗っていると、後ろから声をかけられた。いつもなら一言も話さないのに。  
「なんだい。美咲ちゃん」  
 あれ。そういえば、お兄ちゃん?美咲ちゃんって、俺のことお兄さんって呼ぶんじゃなかったか?  
「彼女いる?」  
「いないよ。いたらこんなとこにバイト来てないって」  
「そっか」  
 食器を洗っていると誰かが背中から抱きついてきた。  
 誰かって・・・家には俺と美咲ちゃんしかいないわけで。  
「・・・立候補していいかな?」  
 その声は俺のすぐ後ろから聞こえた。  
「美咲ちゃん」  
 俺は食器洗いを止めて、彼女の方に向きを変えた。  
 うつむいているため美咲ちゃんの顔は見えない。  
「キス・・・して」  
 美咲ちゃんは可愛い。中学生だけど・・・道徳には反してる。  
 けど・・・1年以上女性と接する機会のなかった俺は我慢することが出来なかった。  
 彼女の頬に手をあてて顔を上げる。  
 瞑った目がすでに心の準備が出来ていることを物語っていた。  
「うん」  
 段々と顔を近づけ・・・俺は美咲ちゃんとキスをした。  
「ん・・・っ?・・・っっっ!?!?」  
 俺は胸に強い衝撃を感じて突き飛ばされた。  
 実際には美咲ちゃんがその反動で俺から離れたんだけど。  
「な・・・何してるのよ!!!」  
 美咲ちゃんは目に涙を貯めて俺を睨む。  
「え?」  
「寝てる私に・・・酷い・・・ケダモノ!!!」  
 
「ちょ、ちょっと待ってくれ。俺は君がキスしてくれって言うから」  
「私が?・・・まさか・・・」  
 美咲ちゃんは両手で自分の後頭部を抑える。  
 何・・・してるんだ?  
「ん・・・んぐぐ」  
 変な呻き声が聞こえる。  
 同時に後頭部を抑えていた両手を離す。  
「ぷはぁ。死ぬかと思ったじゃない。もう」  
「へ?」  
 美咲ちゃんの口は動いていない。さっきから閉じられたままだ。  
「腹話術?」  
「そんなわけないでしょ。はぁ・・・こんなことで人間に正体を知られるなんて」  
 美咲ちゃんは俺に背を向ける。  
 彼女の後頭部。  
 長い黒髪を自分の手でかきわけると、そこにももう一つの口がついていた。  
「な・・・え!?あ・・・」  
「驚いたよね・・・私、二口女・・・妖怪なの」  
「お兄ちゃん。私にもキスして」  
「アンタは黙ってなさい!!あ〜もう・・・どうすんのよ」  
 二口女?  
 そう言えば漫画かなんかでそういう妖怪の話は聞いたことがあったような。  
 いやいや。そもそも妖怪って空想の産物じゃないのか?  
 あの口だって最新鋭のSFX・・・みたいな。  
「お兄さん。一応言っておくけど、このことは口外無用だからね」  
「大丈夫だよ。お兄ちゃんなら」  
「本当にあんたは・・・あんたが勝手なことするから、私が独り言女とか腹話術女とか言われるんでしょうが」  
 前の口と後ろの口が言い争ってる。  
「だって。後の口ってだけで、私は色々損してる気がするもん」  
「そういう種族だから仕方ないでしょうが・・・そもそも、仲間のみんなだってあんたのその自分勝手さは類を見ないって言ってるのよ」  
「仕方ないじゃない。他の人と違ってちゃんと意思を持ってるんだから」  
 夢じゃないんだよな。現実なんだよな。  
 夏の暑さにやられてるわけじゃないんだよな。俺は・・・俺は・・・  
 
「いいこと。今度から勝手な真似はしないで・・・私のファーストキスだったのに」  
「嬉しいくせに」  
「な!?」  
「お兄ちゃん。美咲ちゃんはそんなこと言ってるけど、本当はお兄ちゃんのこと」  
「わ〜わ〜わ〜わ〜〜〜〜〜〜」  
 美咲ちゃんがまた後ろの口をふさぐ。  
「ん〜ん〜〜〜・・・ぷはぁ。本当に死ぬかと思った!!私が死んだら美咲ちゃんだって死んじゃうんだからね!!」  
 呼吸器は前と後ろで別々なんだろうか?  
 って、そんなこと考えてる場合じゃなくて。  
「お兄ちゃん。私も美咲ちゃんもお兄ちゃんが好きなんだよ。毎晩毎晩・・・オナニーしちゃうくらいに」  
「ちょ、何言ってるのよ!!」  
「今まで誰かを好きになったことの無い美咲ちゃんが初めて好きになった人への告白」  
「美咲ちゃん」  
「私は・・・別に・・・お兄さんのことなんて」  
 美咲ちゃんは顔を真っ赤にしてうつむく。  
「一目惚れの初恋だもんね。ほら、お兄ちゃんに・・・素直になりなよ」  
「・・・あんたは素直すぎ・・・私なんて・・・可愛くないから・・・ダメだよ」  
 先ほどより顔を真っ赤にして俺のほうを見る。  
 可愛い。凄く可愛い。  
「可愛くないと思ってる子にキスなんてしないよ」  
「え?」  
「・・・もう一回キスしたい・・・いいかな」  
 美咲ちゃんはうつむくと小さくうなずく。  
 俺は先ほどと同じように彼女の頬に手をあてて俺のほうに顔を向ける。  
 閉じられた目から涙が零れ落ちた。  
「美咲ちゃん・・・可愛いよ」  
「・・・お兄さん・・・好き」  
 俺は美咲ちゃんと唇を合わせて・・・抱きしめた。  
 
「んっ・・・あ・・・ダメ・・・」  
「気持ちいいんだ?」  
 全裸の美咲ちゃんが布団の上で体をよじる。  
 俺は、彼女の乳首を口に含み指で小さなクリトリスをいじる。  
 一生懸命にシーツを掴み、抵抗している彼女がいじらしくって、とても可愛らしかった。  
 俺は美咲ちゃんを横向きにして、その背中から抱きしめる。  
「ん・・・あ。お兄さんの・・・大きい」  
 俺のペニスが美咲ちゃんのお尻にあたった。  
「ひゃっん」  
 後ろからヴァギナとクリトリスを交互にせめる。  
 俺は空いた方の手で髪を掻き分ける。  
「え?」  
「こっちも」  
 俺は後頭部の小さな唇と口付けをかわした。  
「んっ・・・あ・・・お兄ちゃん」  
「どっちも俺の好きな美咲ちゃんだからな」  
「・・・ありがとう」  
 今のはどちらの口から発せられたのだろう。  
「お兄さん・・・最後までしてくれるよね」  
「いいのか?」  
「うん。私も・・・もう一人の私も・・・お兄さんと一緒になりたいから」  
 俺は微笑むと美咲ちゃんを抱きあげ、ソファーに座る。  
「いいな」  
「うん」  
 小さなヴァギナに俺のペニスの先が突き刺さる。  
 きつい抵抗感。それを無理矢理破る。  
「んっっ」  
 背中に回された手が俺の背中をひっかく。  
「最後まで・・・やめないからな」  
「うん・・・やめないで・・・最後まで・・・奥まで・・・お願い」  
 俺はゆっくりと美咲ちゃんの体を沈めてゆく。  
「あ・・あぁ・・・はぁふぅ・・・んっっ」  
「お兄ちゃんのが・・・くるぅ」  
 ズブズブと狭い膣を俺のペニスが犯してゆく。  
 俺のが3分の2ほど入ったところで、奥に到達したようだ。  
「あ・・・届いてる・・・お兄さん」  
「うん」  
 
 俺は美咲ちゃんを抱きしめてキスをする。  
「痛い?」  
「うん・・・少し」  
「じゃあ、痛みがひくまでこのままでな」  
「ありがとう」  
 俺たちはお互いに抱き合ってその時間を過ごした。  
「・・・お兄さん・・・いいよ。大丈夫」  
「もう?」  
「私たちは痛みに強いから」  
 俺の顔を見て微笑む。  
「じゃあ、動くよ」  
 俺は美咲ちゃんの腰の辺りを掴んでゆっくりとその体を上下させる。  
「ふあ・・・お兄さんのが・・・いっぱい」  
「お兄ちゃん。すっごく気持ちいい」  
 二つの口から熱い吐息がこぼれる。  
「美咲ちゃんの中。温かくて気持ちがいいよ」  
「わた・・・わたしも・・・気持ち・・・いい」  
 口付けを交わして、舌を絡めあう。  
 少しの刺激を与えるだけで、彼女のヴァギナはさらに締め付けてくる。  
「よっと」  
「きゃっ。あぁっ」  
 俺は美咲ちゃんの体を抱き上げて俺に背中を向けるように座らせる。  
「んっ。さっきとは・・・違う場所が・・・ジンジンする」  
 俺は先ほどと同じように体を動かしながら、口付けを交わす。  
 今度は後ろの美咲ちゃんと。  
「っ・・・んっ・・・は・・・ぁぁ」  
 後ろの美咲ちゃんは、前よりもずっと貪欲に俺の舌に舌を絡めてくる。  
 唾液が混ざり合い、俺が彼女の口に流し込むとそれを美味しそうに舐め、飲み込んだ。  
「お兄さんの・・・すごい・・・ゾクゾクしてくる」  
 腰の動きが自然と激しさを増しはじめる。  
「ぁ、ゃ、ぁ、ぁぁ、は・・・はげ・・・しい」  
「深いよ・・・お兄ちゃん・・・もう・・・もう・・・私たち」  
 二つの口から限界を感じ取ると、俺は一際大きく腰を動かし・・・奥で精液を吐き出した。  
 
「・・・ごめんな」  
 俺は汚れたソファーを拭きながら、シャワーから出てきた美咲ちゃんに謝る。  
「なにが?」  
「中に出しちゃったろ。気持ちよくてついな」  
「あぁ。うん。大丈夫だよ。まだ私たち子供つくれないから。安心して。お兄ちゃん」  
 あれ?前の口が動いて無い。  
「ひょっとして。美咲ちゃん寝ちゃった?」  
「というか。気絶。お兄ちゃんの濃い精液を受けて気絶しちゃった」  
「えぇぇ!?」  
 体は後ろの美咲ちゃんが動かしているんだろうが、目を瞑って口も開いてないのに動いてしゃべっているのは少し怖いかも。  
「お兄ちゃんのすっごく濃くて量が多いんだもん」  
 それだけ気持ちよかったってことかな?  
 美咲ちゃんが俺の隣りに来て寄り添ってくる。  
「お兄ちゃん・・・私もお兄ちゃんのこと好き・・・だからね」  
「うん。ありがとう」  
 俺たちはその日、一緒の布団で抱きあって眠りについた。  
 
「もう会えないって・・・なんで」  
「この夏が最後なの。人間たちと一緒に暮らせるのは・・・子供の・・・まだ欲求の少ない間」  
 夏ももうすぐ終わり。海の家も終了し、俺たちはバイトから開放された。  
 今は。美咲ちゃんを彼女の『家』まで送っている途中だった。  
「欲求?」  
「うん。食欲と・・・性欲・・・大人になると今の3倍は食べるし・・・性欲だって」  
 美咲ちゃんは助手席で俯いてしまっている。  
「そっか」  
「ごめん」  
「謝ることじゃないよ・・・同じ学校の友達ともお別れしてきたんだろ」  
「うん」  
 一生懸命に涙をこらえる姿が俺には、たまらなく辛かった。  
 今日に限って後ろの口も何も言わない。いや・・・彼女も何も言えないのかもしれない。  
「ここでいいよ」  
「ここって」  
 山道の途中で美咲ちゃんはそう言う。  
「村のみんなは人間が嫌いだから」  
「一人で大丈夫か?」  
「帰ってくるのはしばらくぶりだけど・・・生まれ育った場所だよ。平気」  
「・・・じゃあ」  
「うん」  
 美咲ちゃんが車を降りる。  
 一度も振り返らずに山の奥へと歩を進る彼女に、俺は何も言葉をかけることは出来なかった。  
 
 
「と、いうことが4年ほど前にあったわけだ」  
 テーブルの向かい側で翠と睦月は興味深々といった感じで聞いていた。  
「なるほどのぉ。主殿がワシらに対してあまり驚かなかったわけがようやっとわかったわ」  
「ん?」  
「元々肝が据わっておったのだろうが、過去に二口と会ったことである程度の抵抗が減ったのじゃろ」  
「あぁ。そういうのはあるかな。妖怪とか・・・そういうものが居るんだなって信じるようにはなったし」  
 そんな話をしていたら、ドアベルが鳴った。  
 誰か来たようだ。  
「はいは〜い」  
 翠が立ち上がって玄関へと向かう。  
「こんにちは。今日、隣りに引っ越して来た者ですが、挨拶に伺いました。家主さんはいらっしゃいますか?」  
 あぁ。そういや引越し業者が着てたな。隣だったんだ。  
「おにいさ〜ん」  
「ん。どうも、はじめま・・・あ?」  
 玄関先に立っているのは一人の少女。  
 最後に見た時から成長しているとはいえ、間違いない。  
「・・・お兄さん?」  
「美咲ちゃん?」  
 ウソだろ。さっき話ししていた、もう思い出にしかなっていなかった・・・美咲ちゃんが・・・なんでここに?  
「美咲。挨拶終わった?」  
 もう一人。今度は大人の女性が玄関に顔をだす。  
 まさか。  
「あれ。先輩?うわ。なんでこんな場所にいるの?」  
「ん?おぉ。貴様は人魚娘ではないか。ふむ」  
 睦月が俺の後ろから顔を出して言う。  
 ってことは、やっぱり間違いないんだよな。高校の時、付き合ってた瑞樹か。  
 唯一、全てに取り残されている翠は俺と彼女たちを交互に見比べていた。  
「・・・ふ〜ん。お兄さん。随分いいご身分じゃないですか?」  
「へ?」  
 美咲ちゃんが靴を脱いで俺の目の前に立って、俺を見上げている。  
「ばか〜!!!!」  
 美咲ちゃんのアッパーが俺の顎に付き刺さった。  
「あ〜あ。せっかくお兄ちゃんに会えたのに。ま、いっか。お兄ちゃん。またよろしくね」  
「先輩。私もあの日のこと忘れてませんからね。ビシビシ行きますからそのつもりで。ってわけで、おじゃましま〜す」  
 二人は倒れている俺をまたいで部屋の中へと入っていく。  
「大丈夫か?主殿」  
「・・・お兄さん。大丈夫?」  
 あ・・・あはは・・・ダメだ・・・悪夢だ・・・  
 
つづく  
 

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