「ふぅ。いやぁ、助かりましたよ。ここに宿があって」
俺が駆け込んだのは山道の途中にあった古い旅館。
卒業旅行と称して1人で北海道を旅して回っているのだ。
「道外からの旅行者ですか?」
玄関で座って靴を脱いでいると、後ろから声をかけられた。
「えぇ。大学の卒業旅行です」
サークルメンバーとの旅行なのだが、俺1人だけ先行して北海道を満喫するつもりでいた。
「そうでしたか。ここらへんは雪が多いですから気をつけたほうがよろしいですよ」
「3月だとまだ冬なんですね」
北海道を舐めてかかっていた。まさかこんなに雪が多いとは。
俺は靴を脱いで立ち上がり振り返る。
「いらっしゃいませ。当旅館の女将を勤めさせていただいております」
綺麗な和服姿の女性が深々とお辞儀をする。
「では。こちらに記帳をお願いします」
名簿に記帳をする。
「河野忠さまでございますね。では、お部屋へご案内させていただきます。どうぞこちらへ」
30代前半だろうか。大人の色気のようなものを背中から感じる。
白い肌と長い黒髪。口には真っ赤な紅。斜め後ろを歩いていると、時折見えるうなじがなんとも言えない。
「さっきの名簿なんですけど、泊り客って俺だけですか?」
「えぇ。この時期はあまりお客様は来られないので・・・こちらの部屋です。どうぞ」
案内された部屋は綺麗な部屋だった。
窓の外は一面雪景色。こういうのを雪渓というのだろうか。あまり大きくは無いが川が流れている。
「綺麗な部屋ですね」
俺は時計を見る。午後4時。雪が降ってきて暗かったからよくわからなかったが、まだこんな時間か。
「ありがとうございます。ご夕飯は何時にお運びいたしましょう」
「何時でもいいよ。そちらの都合のいい時間で」
「では。午後7時からご夕飯とさせていただきます。大浴場は先ほどの廊下の突き当たりにございます」
「ありがとう」
「では。ごゆっくり」
女将は部屋を出て戸を閉める。
さてと。携帯は・・・あちゃぁ、やっぱ電波届かないか。ま、今日はのんびり休ませてもらうかな。
俺は着ていたものを脱いで浴衣を着る。そして、座布団を並べて横になった。
「ふわぁぁ・・・ねむ」
車の運転疲れのせいか、すぐに眠ってしまった。
「河野さま・・・河野さま」
「んっ・・・ふわぁぁ」
揺さぶられて目が覚める。
俺を揺さぶっていたのは美人女将だ。
「お食事の準備が出来ました」
「ん。もうそんな時間か」
テーブルの上には豪華な食事が並んでいる。
「うわ・・・俺、そんなに金無いですよ」
「これはわたくしからのサービスです」
「ど、どうも」
なんでいきなりサービスなんだ?
「じゃあ。いただきます」
女将が俺の隣りに座って徳利を持つ。
「それもサービス?」
「お客さま1人っきりですし。今日は特別に」
俺は女将の酌で日本酒を喉に流し込む。
旨い。そこらの居酒屋の酒とは根本的に物が違うな。
「女将は夕飯は?」
「この後ですが」
「じゃあさ。一緒に食べませんか。どう見ても俺1人で食えるような量じゃないし」
「しかし」
「いいのいいの。さささ」
俺は小鉢を女将に渡して、鍋から熱々の肉や野菜を盛る。
俺も一口食べる。
「ん。旨い。これ女将作ったんですか」
「はい。料理長も今日はお休みでして」
「すごいなぁ。こんなの1人で出来るなんて。さささ。女将も」
「はぁ」
女将は手に持った小鉢をじっと眺めている。
「どうかしました」
「いえ・・・あの、恥ずかしながら猫舌でして・・・お客さまの前でフーフーとするのもいかがなものかと」
「俺は気にしませんよ。それとも、俺がフーフーしてあげましょうか?」
女将が驚いた表情で俺を見る。
まぁ、当たり前だよな。
「では・・・お願いします」
「へ・・・あ。はい。じゃあ・・・ふー・・・ふー・・・もういいかな?あ、客が言ったからって無理しないでくださいよ。嫌なら嫌と」
そう言っていると、女将は俺の方に顔を向けて口を小さくあけている。
食べさせてくれってことかな。
「熱かったら言ってくださいね」
俺は料理を女将の口の中にいれる。
「ん・・・おいしい・・・丁度いい熱さです」
女将が微笑む。むぅ、なんかものすごく可愛らしいだ。
さっきまでとのギャップがあって、さらに可愛らしく見える。
「河野さま」
女将が俺の方に向かって上半身を倒す。
「女将!?」
俺の浴衣の前を開いて、トランクスの上から俺のペニスを撫ぜる。
雪のように冷たい手が俺のペニス包み込む。
「あぁ・・・久しぶりの男の方の」
トランクスの窓から器用に俺のペニスを抜き出す。
すでにギンギンになっているペニスを物欲しそうな目で眺めている。
「これも・・・サービス?」
「これは・・・わたくしのわがままです」
女将が俺のペニスを一気に口含む。
アイスキャンディでも舐めるかのように、丹念に丹念に俺のを上から下まで舐めまわす。
「はぁ・・・おいひい」
口の中も冷たい。けど、なんだろう。不思議な感覚で俺のペニスの勃起は収まらない。
「熱い・・・河野さまの・・・男根・・・熱くて・・・溶けてしまいそう」
亀頭を裏筋を袋を・・・全てを満遍なく舐める女将のテクニックは、そこらの風俗嬢顔負けのベテランだった。
「ぐ・・・女将。もう」
「らして・・・くらさい・・・すべて・・・お飲みいたします」
女将の口が最初よりも更に深く俺のを飲み込む。
女性の性器とは違った感触が気持ちよくて。女将の口の中に精液を出した。
「んっ」
女将の喉が動く。
そればかりか、まるでストローでジュースを飲むかのように俺の中の残った精液を吸いだされた。
「・・・はぁ・・・おいしい・・・河野さまの熱くて濃くて」
口の端から零れた精液を指ですくって、それを美味しそうに舐めている。
精液はまずいと聞いているが・・・彼女は本当に美味しそうに舐めていた。
女将が俺にしなだれかかってくる。
「河野さま・・・今晩は・・・床を共にいたしたく・・・願います」
それがどう言う意味かわからないほど俺は馬鹿じゃ無い。
今は彼女もいないし。いいよな。多分、女将とは最初で最後だろうし。
「俺でよければ」
顔を上げて俺の顔を見て微笑む。
なんだろう。今までの微笑み方と違う。そう・・・まるで獲物を狙う犯罪者のような。
「では・・・隣の部屋にお布団を敷いてまいります」
「あ、俺も手伝う」
それが起こったのは、俺が立ち上がった時だった。
テーブルの脚が曲がるタイプだったのか、俺がテーブルに手を置いて力を込めるとテーブルがこちら側に傾いたのだ。
「えっ」
まだ立ち上がっていなかった女将の体に向かって鍋が傾く。
俺は咄嗟に女将を右手で突き飛ばすと、左手で鍋を押さえた。
「くぅっ」
鍋は女将の方に飛んで行く事はなく、俺の左腕に支えられる形で止まった。
けど、熱されていた鍋の側面を押さえたのと、衝撃で飛んだ汁で、俺の左腕に焼けるような痛みが走る。
俺は静かに鍋を持ち上げると、床に落ちたコンロの上に乗せる。
「河野さま!!」
「あはは・・・女将は大丈夫?」
「はい。わたくしは・・・河野さまは早く冷やさないと」
女将が氷水の入ったポットの中身をタオルにかけ、俺の腕に巻きつける。
見た感じではただれたりしてはいない。真っ赤になっただけだから、しばらくヒリヒリする程度だと思う。
「大丈夫だよ。火傷ってほどじゃなさそうだし。それよりもせっかく料理を用意してもらったのに」
テーブルの上は滅茶苦茶だった。皿やらなんやらは全て床に散らばり、もう食べれるような状態ではない。
「料理はまたお作りします。あぁ・・・河野さま・・・わたくしのせいで」
「いやいや。原因は俺ですし。それに、すぐに冷やしていただいて。ありがとうございます」
「河野さま」
女将が立ち上がる。
「では、少しお待ちください。隣りの部屋に布団を敷いてまいります。その後に治療を」
「あぁ。別にそこまでしていただかなくても」
女将が部屋を出る。
まぁ、確かにこの部屋に布団を敷くわけにはいかないよな。皿とか料理が散乱しちゃってるし。
俺は女将に言われて隣の部屋に行き、敷いてもらった布団に横になる。
先ほど仮眠をしたせいか、それとも腕の痛みのせいか。一向に眠くはならなかった。
「河野さま・・・腕のお加減はいかがでしょうか」
「あぁ。まだ少しヒリヒリするけど平気平気。毎年、日に焼ければこんなもんだし」
実際はそれよりもずっと痛いが、女将を心配させても仕方が無い。
怪我が左手なのがせめてもの幸いだ。車はオートマだし、移動には問題はないだろう。
「お薬をお持ちしました」
女将の手には大きな葉っぱの包みがあった。
「さ。お手を」
俺は言われて手を見せる。
うん。やっぱり真っ赤になった程度だな。
「あぁ・・・こんなにも熱をもって・・・申し訳ありません」
女将の手は先ほどと同じようにひどく冷たい。
ただ、今はその手が俺の患部に当てられていて気持ちがいい。
「少し沁みますよ」
大きな葉っぱの包みを開くと、そこには軟膏のようなものが入っていた。
それを指で一すくいし、俺の腕に塗る。
「うぅ」
少し沁みるどこの騒ぎじゃない。めちゃめちゃ痛い。
塗り薬のあとは、油紙のようなものをその上に張り、包帯を巻いてもらった。
「これで明日には少しはよくなっていると思います」
「ありがとうございます。俺の不注意なのに」
「いえ・・・あの・・・」
「うあ」
女将が俺の胸に倒れこんでくる。
予想だにしていなかったこともあって、俺たちはそのまま布団の上に倒れこんだ。
「先ほどの河野さま・・・とても頼もしく見えました・・・初めて会ったわたくしなんかのために」
暗い部屋。だけど、女将の顔はよく見えた。それだけ・・・2人は近い距離で顔を合わせていたのだ。
「・・・河野さまの熱い体で・・・わたくしを抱きしめてはくだいませんか」
真っ赤な紅を塗った唇はとても魅力的で。
俺は彼女を抱き締め、その唇を奪った。
「んっ・・・ぁぁ・・・はぁ。河野さま」
抱き締めキスしてわかった。
女将は体中全てが冷たい。先ほど口でしてもらった時もそうだったが、女将の吐く息すらも凍えるような冷たさだ。
「・・・氷を抱いているようですか?」
「あ。いえ」
「いいのです・・・体質ですから・・・河野さまの体温で私を暖めてください」
俺は彼女の顔に唇を当て、下を這わせるように段々と下へ降りてくる。
頬。首筋。鎖骨。ゆっくりと和服を脱がし、露になった双丘に唇を当てると、彼女の白い体が赤みを帯び始めた。
「ぁぁ・・・んっ・・・そこは」
「綺麗ですよ・・・女将。名前を教えてください」
「はぁっ・・・雪花・・・雪の花と書いて・・・せっかです」
「いい名前だ・・・白くて綺麗な体にぴったりな綺麗な名前」
「ぁぁっ」
俺は固くなった突起を口に含む。
そこも冷たくて・・・まるで、新鮮なさくらんぼを食べている感じがした。
胸を満遍なく舌で愛撫しながら、手は雪花さんの脚を撫ぜる。
冷たくて滑らかで弾力のある魅力的な脚。
「河野さまの手が・・・あぁっ」
そのまま着物の中に手を滑り込ませる。
「下着つけてないんですね」
「・・・はい」
雪花さんは自ら脚を開き、俺が動きやすいように体を動かす。
俺は体勢を変えて雪花さんの両脚の間に入る。
「これが雪花さんの・・・綺麗だ」
「・・・はずかしい」
雪花さんのソコは綺麗なピンク色をしていて、白い肌に比べて妙に艶かしい姿をしていた。
人間離れした体の、もっとも人間らしい部分。
俺はそこに手をあてて、指を少しだけ入れる。
「はぁっ・・・熱い・・・河野さまの指が・・・熱くて・・・あぁぁっ」
雪花さんのソノ中も冷たかったが、火照った俺の体には丁度よかった。
微かに勃起した陰核を舐めてみる。
「ひぃっ・・・あぁ・・・すごい・・・そこ」
「どうしてほしいですか?」
「舐めて・・・もっと・・・いっぱい・・・気持ちいい場所を」
俺は雪花さんの腰を両手で掴んで、顔を秘部に密着させて全体を優しく舐める。
「はっはっ・・・河野さま・・・すごい・・・気持ちいい・・・あんっっ」
特に陰核を刺激するたびに背を反らせて体を細かく震わせる。
「河野さ、あ・・・もう・・・わたくし・・・最後は河野さまの・・・男根で」
俺は起き上がると、上から腰を掴んで彼女の体を引き寄せる。
「いきますよ」
「はい」
雪花さんの秘部を一気に貫いた。
「ふぁぁっっっっっ・・・」
一突きすると、雪花さんは体から力が抜けぐったりとした。
「・・・すごい・・・河野さまの・・・たった一回で頭が真っ白くなってしまいました」
「雪花さんの中もすごく気持ちがいい。冷たくて・・・複雑に動いて俺のを刺激してきますよ」
「ふふ・・・相性いいのかもしれませんね」
俺は雪花さんの笑顔を見ながら、ゆっくりと腰を引く。
「はぁっ」
そして勢いよく打ち付ける。
「ぁぁっっっっ・・・はぁ・・・すごい・・・河野さま・・・久しい殿方の」
俺と雪花さんは狂ったかのように激しく腰を動かす。
「あ、あ、あぁ、はっ、んっ、ぁぁ、はぁっ」
奥に到達するたびに、雪花さんの膣は俺のモノを締めつけてくる。
「河野さま。もう、もう」
「俺ももうダメだ」
腰の動きがお互いに速くなる。
「は、ぁぁっ」
雪花さんの背が反らされると同時に、俺も膣内に射精をした。
「はぁ・・・はぁ・・・河野さま」
「雪花さん」
俺たちは東の空がうっすらと明るくなるまで行為を続けた。
何度出したのだろう。
こんなにも気持ちのよかった女性は初めてかもしれない。
「もう・・・朝・・・ですね」
俺がそう言うと雪花さんは暗い顔になる。
「はい」
「お別れですね」
「・・・はい」
「雪花さん。また来ますね」
身支度を終え、俺は車の前に立つ。
「・・・もう。会う事は無いでしょう」
「え?」
雪花さんからのキス。
けど、昨夜のように冷たくは無い。温かい優しいキス。
彼女の瞳から零れ落ちる涙は・・・まるで氷のような輝きを放っていた。
「最後に楽しい一時を過ごすことが出来て・・・嬉しかった」
「雪花さん?」
「・・・さようなら・・・」
俺は雪花さんの別れの言葉の後の記憶が無い。
次に覚えているのは、山道を下って麓の町に入ったところだった。
俺はいぶかしく思いながらもコンビニに入る。
「あの」
「ん?」
初老の男性定員が俺の呼びかけに答えてくれる。
「そこの山の旅館なんですが」
「は?そこの山に旅館なんてないぞ。山向こうの町中にならあるが」
「え?でも、そこで綺麗な女将さんが」
「はっはっは。狐にでも化かされたんじゃないのかい?」
狐にって・・・マジ?
「もしくは・・・雪女か・・・まぁ、それは無いか・・・雪女ならアンタはとっくに死んでるからな」
「雪女って。怖がらせないでくださいよ」
「あれは。悲しい生き物じゃよ・・・この辺りでも多く話が残っているぞ」
「悲しい?怖いじゃなくて?」
「恐ろしい・・・が、それ以上に悲しい」
雪女か。確か、気に入った男を氷の柩に入れて連れ帰るとかなんとか。やっぱ怖いだけだよな。
「雪女はな。誰を好きになることもできないのだよ。誰かを好きになると、その想いで体が熱くなり・・・自らの想いで溶け死ぬのさ」
「え?」
「まぁ、ただの御伽噺・・・雪女なんぞこの世にいるわけがない」
もし・・・本当に雪花さんが・・・いや。そんなことは無いな。考えすぎだ。
旅の思い出。決して忘れられない思い出として、俺は胸に深く刻み込んだ。
『・・・さようなら・・・愛しています』