「ふぅ」
にーさんとねーさんが、町の方へ行ってるのでしばらくはわたし一人。
気楽ではあるのだけれど、やる仕事が倍増してかなり大変。
「えぇと……」
頭の中のメモ帳を一枚ずつ開きながら、一番キツイ肉体労働の洗濯物の回収をこなす。
にーさんがいるなら、物を持ってもらう事が出来るのに……と改めてありがたさをかみ締める。
さてと、次はにーさんの部屋のシーツかな。
「……お邪魔しまーす」
ノックを3回した後、私は泥棒さんの様にこっそりと部屋に入る。
無論、こんな挨拶する必要も忍び足をする理由も無いが、にーさんの部屋に入るのは実は初めて。
「ありゃ?」
いろいろ期待して部屋を見回すが、驚くほど物が無い。
元々この部屋は来客が来て宿泊する際に使用する筈なんだけど、泊まる人は皆無。そして家政婦さんもいないので使われる事無く放
置されていたのをねーさんが割り当てたのだ。
とはいえ、備え付けの棚やテーブル程度しか置いてなくて生活してるって雰囲気ががほとんどしない。
……まったく、もうっ!
「にーさんの、ばーか……」
多分だけれど、いつでもこの部屋から出れるようにしているのだろう。
理由は、この前議会でバッカス老が話したアレだろう。……なに言われたかはわからないけど、にーさんらしいといえばらしい。
この約束のお陰で、ねーさんとにーさんを仲良くさせる企みを大幅に早める結果になってかなり強引なる上、リゼットねーさんへの
協力が欠かせなくなったのも痛い。
――それでも、わたしの全力をもって仲良くなってもらう。
「やめやめ、さっさとお仕事お仕事」
あんまり突き詰めると、自分の内側にまで切り込んでしまう。それだけは絶対に避けたい。
頭を思いっきり振って面倒事でいつか解決しなきゃならない事を片隅に押し込んで、ベットの上にあると思われるシーツを剥がしに
向かい、固まるわたし。
なぜなら、にーさんらしくも無くベットの上はぐちゃぐちゃ。
ねーさんに強引に連れていかれて、ベットメイキングする暇すらなかったからこんな状況になっているのだろう。
んー折角だから、ベットの寝心地を調べてみよう。
「よいしょっと」
わたしは、靴を脱いでにーさんのベットに寝そべる。
もう何時間も前に行った筈なのに、にーさんの体温が残っているような気がする。
体温だけじゃなくて、にーさんの微かな残り香が染み付いているみたいで、わたしは顔に手で丸めたシーツへ押し付ける
……本当に、本当にちょっとだけだけどにーさんの汗の匂いがする。多分寝汗なのだろうけどそれでも私にとっては大収穫。
「ん、ふ……」
変態ちっくだが、わたしとしてはかなり幸せ。しかも誰も居ないからやりたい放題なのだからたまらない。
「ん〜♪」
自分の服に匂いをつけるようにベットの上を転がるわたし。
いつも通りに冷静だったなら"なにバカな事してるのよ"と突っ込みは入るとこだが理性はオフ。……だけど、数十分もしていると流
石に疲れてくる……けど、
「…………な、何してるのよ!?」
思わず、胸の辺りを触っていた事に気付いて頭が冷える。
じ、自分一人でした事は……実は一回だけ。すぐに怖くなって止めたけど。
ここの壁は以外に薄くてそんな声なんか出したらねーさんに聞こえてしまう。って、今誰もいない?
「いやいやいやいやっ!」
それ以前ににーさんを餌にそういう事するには抵抗があるというか、ねーさんに悪いというか……でも、ちょっとだけなら、いい、
かな? じゃなくてっ!
「はぁ、はぁ……」
にーさんのベットの端から端まで何度も転がるなんていう慣れない運動の所為か息が簡単に切れる。
本当に、最初だけなら……言わなきゃバレないよね……?
「んん…微妙……」
自分の胸を揉んでみるがお風呂場で体を洗うときと大して変わらない。
こういうのは、やっぱり餌か何かで自分の心をなんとかしないとダメらしい。
「あ……これは……」
目に入ったのは人差し指の小さな傷。
確か一週間以上前にねーさんと仲直りする為に料理を作ったときに作ってしまった傷だ。
その傷を見ていると、心の何かがひび割れ、中から染み出てくる。
「わたしは……にーさんが、好き」
痛い。
たった、たった一言を言うだけで胸の奥がちくちくと痛くなる。
「……っ」
もちろん、受け入れられたら嬉しい。
にーさんが断るという可能性もあるけど、そんな事しない、と確証もないのに何故か思う。
そうなったら……ねーさんは、どうなるだろう?
それを思うと嬉しさが痛みへと変わって、わたしは答えを出せなくなる。
「……"にーさん"」
けれど、今、この時は――"にーさん"はわたしだけのにーさん。
「あむぅ」
"にーさん"にキスするように口に含み、唾液で濡らす。
咥えた先から、あの苦いけどどこか甘みのある味がする気がする。
……そんな事を考えつつ、舐めるのに集中していたら、いつの間にか空いた片手が胸を優しく揉む。
「ん、ふぅ!?」
たったひと揉みしただけでわたしの背筋にざわざわと何かが通る感触。……多分、これが"快感"というヤツなのだろう。
(気持ちいいか、ロレッタ?)
「あふ、うん……っ。もっと…ふぁ、ん……」
何故か聞こえるにーさんの声然したる疑問を持たず、もっと、もっと欲しいとお腹の奥が騒ぐ。
それにわたしは、服のボタンを煩わしく思いながら外し、下着の紐を緩め、中の胸を外気に晒して応じる。
「あぅ、ん、んぁ……」
ふんわりとした柔らかな感触がじわじわと熱っぽいものに変わっていく。
その感触をいつも確かめてる筈なのにいつもより張っているような気がする。
(ここ触るけど、怖い?)
「……怖いけれど……今は"にーさん"が居てくれるもん」
にーさんのイメージが、照れ隠しのように荒っぽくわたしの頭を撫でる。……髪がくしゃくしゃになるまで撫でられてもう泣きそう。
そう何分も撫でられていると、いきなり"にーさん"が軽く人差し指で ピンっと弾く。
「ふ、あ……っ!」
不意を打たれたわたしは、素直に裏声が出てしまう。
いきなりなんて、ひどいよにーさん……と、頬を膨らませるけど笑って受け流される。
「ん……んあっ!」
今度は胸の頂の周りをなぞり、時折てっぺんを軽く弾く。
そんなわたしの反応を楽しむように、焦らして緩急つける"にーさん"はちょっとイジワルだ。
(ロレッタは胸が弱いのかな?)
「し、しらな、――にーさんっ! もっと、もっ、と……あぁっ!」
さっきまで弄っていた先端をコリコリと摘んで、ビリビリとした痺れが小刻みに流れてがわたしの身体が小さく何度も跳ねる。
……身体が跳ねる度に、ぎゅ、ぎゅ、と抱きしめられてもう泣きそう。
「は、あっ、あ、あぅっ……?」
突然、手を離す"にーさん"。
なんで途中でとめちゃうの? と言いたかったけど、息も切れたわたしはそこまで言う気力はない。
(こっち、どうしたのかなっ? ってね)
「え? やだぁ……っ」
スカートを"にーさん"に捲り上げられて、白い下着の一部が内側から出る液体でしっとりと濡れているが見える
(下着まで濡らしちゃって、そんなに胸がよかったか?)
「あ……ぅ……っ」
恥ずかしくて何も言えないわたしは体を丸めることしかできない。すると、"にーさん"で下着の上から、つつっ、と濡れたシミをゆ
っくりとなぞる。
「あっ…んぅ」
胸を弄られた時とは違う甘い痺れ。
それと同時に、得体の知れないものが纏わり付いた気がして怖くなる。
「ん……っああ!」
目を閉じて恐怖をしのごうとするとすると、"にーさん"は胸の頂を摘んで、濡れた布の上から強く弄ってくる。
ぬちゃぬちゃと音が立てれば立てるほど、嫌でも下着が湿ってくるの分かってシーツの端を"ぎゅぅぅ"と掴んでしまう。
「は、あ……んあっ!」
そうやって一生懸命やり過ごそうと思っても、"にーさん"は下着をずらしてぷっくりと小さく膨れた豆なような物を軽く撫で上げる。
「にーさぁ、んっ……! やぁぁぁ!?」
ただそれだけで背筋が異様に痺れ、跳ねる。
もうわたしの身体は、伝えられた刺激に嬌声を返す事しか出来ない。
「ふぁ、あっ、あっ! ヤダっ……こわ、いっ、こわいよっ!」
"にーさん"は弱点を見つけたかのように、そこを摘んだり弄繰り回したりと容赦なくもてあそぶ。
今まで薄かった恐怖がまた絡み付いて、どこかへ引きずり込もうと強く引っ張る。
それがとても怖くて恐ろしくて、助けを求めるわたし。
(ロレッタ、居てやるから安心しろ)
そっと耳元で優しく囁く声。そして瞼の裏には安心できるあの微かな笑み。……今のわたしにとっては全てが本物だ。
「う、うんっ、にーさ――!」
不意打ちのように思いっきり押し込まれて、わたしの意識は落ちた――。
「ん……あ?」
股の辺りが妙に涼しくて目の醒めたわたし。うぅ、日が暮れてる……?
「あ……っ」
何をしていたか、何を考えていたかを思い出してすごい勢いで顔が火照る。
あぁぁぁっ……ど、どうやって言い訳しよう? って誰も居ないんだから黙ってればいいんだろうけどあぁぁぁぁ!?
「ロレッタ、どこー?」
「隠れてないで、出てこーい」
と、近くの方からネリーとクリスの声……って、マズイ!
「ん……ネリー、この部屋にロレッタ居るわね」
「……そうみたいだね
な、何でばれてるのー!?
そう思ったけど、罠かも知れないのでとりあえず沈黙しておく。
それと同時に鍵を閉めようとして気づく。鍵が……壊れてる事に。
「ロレッター、隠れてるつもりなんでしょうけど洗濯物がおちてるわよー」
「ほんと、ちっちゃい体で何食べたら胸が大きくなるのかしら?」
「――ちっちゃい言うなっ!」
しまった。
「そ、それにしても何であんた達入ってるのよ?」
苦しい話題転換だとは思うけど、この隙に鍵の代わりを見つけようと部屋の中を見回すが、物が殆ど無いにーさんの部屋にそんな都
合のいいものは見つからない。
「何度ベル鳴らしても反応無い上に、鍵も掛かってないから心配して見にきた友達に言う台詞〜?」
本当にいい友達だなぁ……平時ならだけど。
しかし、今回ばかりは厄介だ。
「う……、今着替えてるから……」
今のわたしの格好は、服は皺だらけな上に胸元のボタンも全部外れて恥ずかしい格好この上ない。
とりあえず格好だけなら間違いじゃない。と、自分を納得させつつ、ドアの向こうへ言い訳する。
「……えーと、確かココ、リョウさんの部屋だよね……?」
クリスの疑問の声であちらだけでなく、ドアを超えてわたしの所まで雰囲気が凍る。
「「……な、なにやってんのっ! アンタ!?」」
「だ、だからー」
2人は思いっきりドアノブを引くが、わたしも全力でそれを止める。……こ、こんな弱み見せらないっ!
あぁ、神様――この際何でもいいけど――わたしには悩む暇すらないのですか?