人里離れた山奥に病院らしきある。その建物の名は、医療法人新薬開発臨床医院。  
 要するに、国で認められていない薬品や、その医療法人が独自に作り出した薬品を  
人に投与し、その効果を調べ、治療する機関であるが、実際のところ、そこに集まる  
医師たちはマッドサイエンティストと呼ばれる医師たちのみで構成されており、日々  
自分の開発した薬を使い、人を狂わせることを目的、楽しみとしていた。  
 この機関は、本来国が認められるはずないが、政治家達を薬で洗脳あるいは賄賂な  
どを贈り、目を向けないようにしていた。  
 臨床実験の被験者になる人間は、莫大な借金を抱えたためにやむを得ず自分の体で  
稼ごうとした者、ここならどんな人間でも想像できないような高額の金買ってくれる  
と聞きつけた人間によって誘拐され売られた者、連帯保証人として巻き込まれた者、  
ホームレス、捨て子などがほとんどであり、この機関に入れられたものは、いかなる  
人権も通用しないのである。  
これは、狂った科学者達によって狂わされた者達の記録である。  
 
 
 医療法人新薬開発臨床医院。  
 ここへ連れてこられた「被験者」は、いきなり実験に使われるのではない。  
 まずその被験者自身の正確な身体データを測定せねば、その後の実験データに誤差が生じるからである。  
 そのため、被験者は入所から一ヶ月は、完全な監視下での生活を送ることになる。  
 
 ガチャリ。  
 扉の鍵が開く音に、少女は体を震わせる。  
 少女がいる部屋にはベッドがひとつあるだけだ。窓も机も、トイレすらない。そして少女自身は、背中で両手を戒められている。  
 やがて扉が開かれ、数人の医師が入ってきた。  
「94号、出ろ」  
 その事務的な口調に、少女はびくりと体を縮ませた。が、他の男たちが強引に少女の腕を掴み、ベッドから引き摺り下ろす。少女はそのまま、男たちに抱えられながら廊下に出た。  
 94号、それが少女の名前だ。もちろん本当の名前は別にあるのだが、ここではそのようなものは何の意味も持たない。  
 長い廊下を進み、「検査室」と書かれた部屋に入らされる。  
 その部屋の真ん中には、×字型の磔台がある。医師たちは手際よく、少女の両足をその台に括り、次に両手の拘束を外して台に縛りつけた。  
 少女は恥辱と恐怖に全身を細かく震わせているが、抵抗はしない。するだけ無駄だということが、この数日間ではっきりわかっているのだ。  
 医師たちが検査室を出て行く。代わりに十数台のカメラが、天井から下りてきた。カメラはそれぞれ、少女の全身、顔、胸、腹、性器などを分担して撮影している。  
 少女はこれから始まる恥辱の儀式を思い、つっと涙をこぼした。  
 
 
 やがて磔台の各脚が動き、×字型から十字型に変わる。そして両手両足を固定した枷が、ゆっくりと外側へ移動した。  
「……んぅっ」  
 限界まで伸ばされる痛みに、少女が呻く。少女のやや膨らみかけた胸と、その下の肋骨が浮かび上がる。これで身長・体重・両手両足の長さ・スリーサイズ等を測定するのだという。  
 しばらくして、今度は足の部分が左右に開き始めた。磔台は、十字型から土の字型へと変化する。何台かのカメラが動き、少女のまだ陰毛が生えていない秘部とその下にある菊座を撮影する。  
 そしてカメラの脇からマニピュレータが伸びてきた。マニピュレータはゆっくりと、少女の秘裂を左右に開いていく。カメラにつけられたスポットライトが遠慮なく少女の秘部を照らす。  
 やがて別のマニピュレータが動き、少女の秘裂に尿瓶を当てた。  
 少女に排泄の自由は認められていない。一日に摂取した食事の量と、排泄された量もすべて記録される。また、検尿・検便により得られるデータを記録することも重要なことだ。部屋にトイレがなかったのはこのためである。  
 万が一部屋で排泄行為をすれば、たちまち医師が飛んできてひどい罰を受けることになる。少女はカメラがじっとみつめるなかで、尿瓶にたっぷりと黄色い液体を排泄した。  
 尿瓶が片付くと、今度は別のマニピュレータが彼女の菊座に伸びてくる。菊座には直腸温および血圧を24時間監視するために、太いプラグがはめられていた。マニピュレータは無遠慮にプラグを抜く。少女はたまらず  
「あぅっ!」  
 と悲鳴を漏らした。  
 プラグを抜いたマニピュレータと入れ替わりに、便器が肛門の下に置かれる。少女は下腹部に力をこめ、排泄しようとした。が、先ほどまで太いプラグが入れられていたせいかなかなか排泄できない。  
 数分が過ぎた頃、別のマニピュレータが動く音がした。少女ははっと目を見開き、カメラ越しに様子を見ているであろう医師たちに懇願する。  
「ま、待って! もうすぐ出そうなの、だから……っ!」  
 しかし、少女の懇願も空しく、マニピュレータは少女の肛門に侵入する。そして冷たい液体を、大量に少女の直腸に注ぎ込んだ。  
「ああ……っ、いやあぁぁぁぁ……」  
 少女はそのおぞましい感覚に涙を浮かべ、頭を左右に振って拒絶する。が、カメラはそんな少女の様子を黙って撮影し続ける。  
 そしてマニピュレータが抜かれる。と同時に、少女は泣き叫びながら大量の排泄をするのだった。  
 
 力つきぐったりとした少女を、医師たちは手際よく磔台から外す。そして元通り手枷をはめ、元の部屋へと連れ戻す。  
 このような「検査」を、少女は毎日受け続けていた。しかも検査は一日一回ではなく、おおよそ8時間に一回ずつ行われる。  
 そして医師たちは検査のデータを見て、誰の実験に供するかを会議で決する。特にこの94号は、この施設に送られてくる被験者の中でもとりわけ幼く、医師たちの人気の的になっていた。  
 検査期間が終わるまであと数週間、彼女がそのとき誰の手に渡り、どのような「実験」に供されるのかは、まだわからない。  
 
 

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