「精密発育検査・杉原菜月の場合」 7  
 
 
 顔を赤くはらししゃくりあげている女子生徒はそこらじゅうにいた。多くの人がとりまいて見  
る中、全裸での排泄など、拷問以外のなにものでもない。排尿時にはまだ涙をこらえていて  
も、排便となるとショックの大きさが違う。  
 菜月はかろうじてこの悪夢を逃れられたように思えた。どんなに強制されても出ないもの  
は出ないのだから。  
 だがそれは甘い考えだった。菜月のようにかろうじて人前での排泄をまぬがれた少女に  
対しても、対応する検査は用意されていたのだ。  
 菜月は、自分に出された次の移動先の指示が、排便を行わなかった生徒にのみ出され  
ていることに気づいた。その瞬間、すぐにいやな予感が生まれた。だがそんな予感があろ  
うがなかろうが、菜月に不幸を回避する手段などなかった。  
 看護師の言葉に従ってその区画に歩みを進め、そしてこれまでの検査でも同じであった  
ように「なにが行われているか」わかるところまで近づいたとき、いやな予感はまたしても現  
実のものとなったのだった。  
 そこでは、ベッドに裸で寝かされた少女が指や器具を肛門に突っ込まれ、直接便をかき  
出されていた。  
 検査で肛門に指を入れられるのは初めてではない。ただ、今度はただ指を入れられるだ  
けでは終わらず、その中にあるものをほじくり出されてしまうのだ。  
 通常の排泄とはまた別の苦痛と羞恥に、女子生徒たちはここでも涙している。  
「ほら、しっかり足を曲げて!」  
 怒鳴り声だった。看護師の女子生徒たちへの扱いはさらにぞんざいなものとなっている  
のだ。  
 検査が進むにつれて疲れがたまるのか、余裕が医者たち全体から失われている。ささい  
なことでも大きなストレスとなって当事者たちに蓄積されていくのだ。その結果、医師・看護  
師・生徒という違いは、ここにきてはっきりと力関係の差となってあらわれた。  
 看護師たちはそのストレスを発散させるように、少女たちを手荒く扱うようになっていたの  
だった。  
 大半の少女たちは、身体検査の延長のつもりで受けたのこの検査がただの健康診断ど  
ころではないものだと気づいている。自分たちは、学校の生徒全員にはとてもできない検査  
を受けさせるためにサンプルとして選ばれてしまったのだとわかったのだ。逆らうことは許さ  
れない。検査を拒否することのできる生徒なら、最初からこの場にいない。  
 女子生徒たち自身ですら気づいたことが看護師たちにわからないはずはない。多くの女  
子生徒はおとなしくまじめな少女たちで、自分たちに従いこそすれ逆らうことなどないことを  
悟ってしまえば、あとは当然の成り行きだった。  
 反抗や抗議した生徒に待っているのはより過酷な検査であることは充分に見せつけられ  
ている。  
「待ってる人は今のうちにパンツ脱ぐ! 準備しておくの!」  
 この状況で、看護師の剣幕に少女たちが逆らえるはずもない。女子生徒は検査区画に  
到着した端から下着を脱がされていく。パンツを片手に、露出した下半身をさらして列を作  
らねばならない。  
 菜月の前の生徒は横向きに寝て足を抱きかかえた姿勢で検査を受けていた。  
 そのうちに菜月は気づいたが、この場にはずいぶん若い看護師が多く集まっている。女  
子生徒たちに接するのも男性ではなく彼女たちだ。男性がほとんどいないのは単純によか  
ったが、若い看護師たちは年齢にふさわしく検査に不慣れでいるようだった。それがまた指  
導しているらしい年配の看護師をいらだたせ、言葉を険しいものにしている。  
「ほら、もっとがって突っ込みなさい、なにやってるの、だからやさしすぎなのよそれじゃあ」  
「あ、あ、痛い、痛い、やめてっ」  
「我慢しなさいっ。あ、あんたもなに抜いてるの、怖がってどうするのっ」  
 結局割を食うのは検査を受けている女子生徒だった。  
 女性ばかりになってかえって遠慮がなくなったのか、中年の看護師は少女たちの苦しみ  
をものともせず定められた手順をこなそうとしていた。  
 
 腸内の便を半ば強引にかい出された少女は真っ赤な顔で眼を強く閉じている。  
 やがてある程度の便が採れたようだった。手早くしりを拭かれた彼女はすぐにベッドから  
追われる。すぐに次の生徒が呼ばれる。  
 生徒たちは医者たちの実験に用いられる試料としか扱われていないのだ。  
 それでもそうやって便が出た生徒はましだった。  
 もともと便意などなかった少女たちの集まりでもあるし、指でかき回されても、棒を突っ込  
まれてもほとんどなにも採取できないことも少なくない。こういった場合でも検査はすぐに終  
わらず、といっても丁寧に処置されるわけでもなく、対象となった生徒はただ強引に検査棒  
をかき回され続けることになるだけなのだ。  
 少女が耐え切れなくなって悲鳴をあげるまでこの苦痛は終わらないようにさえ見えた。  
「次の人、こっちに来て!」  
 菜月の番だった。  
 
 この検査では看護師たちの機嫌が一番の不安だったので、怒らせないよう、これまで以  
上に従順にベッドに横になる。前の生徒と同じように、足を曲げ、しりを突き出すように。  
「あああ、なにやってるのよっ、もう!」  
(えっ!?)  
 予想外の言葉に菜月は固まった。  
「誰がそんな格好しろっていったのよっ、勝手なことしないでっ」  
 看護師は菜月の足を持ってピンと伸ばさせた。体の姿勢などすぐに変えることができるの  
だからそんな怒鳴りつけるようなことでもないのに、少しの手間も惜しいようだ。  
 看護師は菜月を仰向けに寝かせると、ひざを曲げて足首を交差させた。空中であぐらを  
かくような姿勢だった。  
「いい? 自分で足を持って、できるだけ頭の方に引っ張るの」  
 右足の先を左手で、左足の先を右手で持つこの姿勢では、肛門が天井を向いて口をの  
ぞかせるのだ。菜月が指示通りにしたことを確認したうえで、菜月の足を看護師たちが支  
えた。不意の動きに対処するためだろうが、ここでも菜月は動きを封じられて検査を待つ  
ことになったのだった。  
(横向きのほうがよかった……)  
 それだけのことでもずいぶん変わってくるというのに。  
 横向きに寝る姿勢なら、太ももにはさまれて一端が見えるだけのはずだった性器も、この  
姿勢となると太ももが開いてしまうため、割れ目から陰毛までもあらわになってしまう。  
 まあそうはいっても、これまでの検査を考えれば最低最悪の格好というわけでもない。  
 それに今回のメインは性器ではなかった。  
「力を抜いてね」  
 怒鳴り散らした看護師ではなく、若い看護師が菜月の肛門を露出させながらいった。菜月  
の意思とはあまり関係なくひくつくその穴に、看護師は指を突き刺す。  
(は、入ってくるー……あ、う、前の検査より深いんじゃ)  
 ゴム手袋で覆われた指を突っ込まれ、菜月の肛門は異物の侵入を脳髄に伝えてきた。ぐ  
りぐりと動かされ、びりびりとした触感が全身を走る。  
(ううう、うう――)  
「息を長く吸って、吐いて」  
「はぁーっ、はぁ――っ」  
 菜月の考えたとおり、以前の検査より長く、指は存分に腸壁をなでまわし、菜月を体内か  
らもてあそんだ。  
(なにこれ――)  
 例の昂揚が下半身全体に広がるように感じた。指の動きは執拗だったのだ。その感覚は  
じっと我慢するには大きすぎるものになりつつあった。  
「あ、あッ、もうやめ……、まだ終わらな……」  
 菜月のかすかな声に反応するように、指が引き抜かれる。  
 菜月の感触は急速に弱くなったが、腸内を捜索した指もまた、なにも得られなかったらしい。  
「――ダメみたいです……」  
「あ、そう。ちょっとどいて」  
 検査者が入れ替わる。  
 
 ベテランであろうその看護師は、この場のリーダー格だった。彼女は菜月の眼前まで来て  
わざとらしくゴム手袋を手にはめなおす。不安な表情のまましりをかかげる菜月に対し、嗜  
虐的な光を双眸に宿らせたように見えた。  
「はい、力入れないー」  
 彼女の指はぬるりと肛門に入り込んだ。  
「あぅッ」  
「うーん、確かにダメそうだわ」  
 彼女の指は前任者よりもしりの穴にぴったりとフィットし、その上で充分に侵入するものだ  
から、菜月の体内を存分に刺激した。  
 少女たちの短い悲鳴は慣れっこなのだろう、菜月の声に反応はない。  
「今日はもううんこしたわけ?」  
 指を動かしながら、彼女は尋ねてくる。  
「どうなの、朝うんちしてきたか聞いてるのよ」  
「し、してきてません」  
「聞こえてるんならさっさと答えなさいよ。じゃあ最後にうんちしたのはいつ?」  
 これらの質問、あるいは回答に類するものは前もって全部問診表に書いてあったはずだ  
った。女子生徒たちは検査カードを常に持ち歩かされているのだから、聞くまでもなく検査  
カードの回答と問診表の質問を照らし合わせればわかることなのだが。  
 あえて菜月に直接聞いたのは、確認に多少なりとも手間がかかるためだろう。……それ  
とも別に理由があったのだろうか。  
「き、昨日、の夕方くらい、です」  
「どんなうんちだったの?」  
 会話の最中も、指を動かすのは忘れていない。  
 断続的に襲ってくる下半身の衝動に、息も絶え絶えに菜月は答えている。  
「普通です、ふ、普通の」  
「普通じゃわからないでしょ。便秘気味だったとか、下痢だったとかあるでしょうが。自分が  
どんなうんちしたのかもわからないのあなたは、――」  
 彼女はなにを思ったのか、突然黙ったが、  
「で、どうだったのよ」  
 そのまま続けた。  
「え、あ、その、便秘でも、下痢でもなかったです。だから普通くらいの、いえ……えっと、粘  
土くらいのやわらかさで」  
 菜月は看護師の追及をかわそうと思いつくまま答えている。  
「粘土ねえ。いっぱい出たんでしょう?」  
 その看護師はなぜか笑っていた。  
「え、そ、そんなにたくさんじゃ……最近はちゃんとで、出て、あっ、なにを、や」  
 答える言葉は急に乱れた。  
 肛門に深く差し込まれた指に加え、曲げられた足の横から滑り込ませたもう一方の手で、  
腹側からの圧迫が行われたのだ。  
 両手で内臓が挟みこまれるおぞましさに、菜月は質問に答えるどころではない。  
「あひっ、いっ、うっ、やっ」  
「ちょっと、まじめに答える気あるの? やらしい声出してんじゃないわよ」  
 彼女は自分で手の動きを激しくしておきながら、菜月を責めたてた。  
 いいながらその間も菜月のしり穴をいじり続ける。  
「そ、そんなんじゃ、今のは、強く押さえるから、声が」  
「人のせいにするの。でも今の声は苦しい声じゃないでしょ」  
 看護師の指がしりの穴から抜かれる。唐突になにを――と思う間もなく、彼女はいった。  
「あなたさあ、さっきからずっと感じちゃってるでしょ? 検査の最中なのに」  
「え?」  
 とまどう菜月は置いてきぼりにされた。  
「あんたたち、足持って広げなさい」  
「は、はい」  
 いまさら気づいたが、どうもこの看護師は若い看護師たちに充分なにらみを利かせている  
らしい。彼女の指示は反発も質問もなくすぐに実行されたのだ。  
 
 若手の看護師二人が菜月の両足をそれぞれ抱きかかえる。  
「え、ちょっと、な、なにするの、やだっ……」  
 空中のあぐらは解かれた。  
 自分で支える必要がなくなって腕は楽になるが、おなかの上まで引き上げられていた足は  
その体を曲げた姿勢のままで、左右に無理やり引っ張られてしまう。その結果、両足のVの  
字を作らされてしまった。菜月は診察台のとき以上の大開脚をさせられる羽目になっている。  
(な、なんで……?)  
「ほらみんな見なさい、この子ったら」  
 満足気な笑みを浮かべて、彼女はまったく無防備になった菜月の性器に指を触れた。  
「んっ、ん」  
 指で菜月の陰唇を二、三度なで上げてから、その手を菜月や他の看護師にも見えるよう  
に顔の高さに掲げた。  
 指同士をこすって、そこに液体が付着していることを示している。  
「ぬるぬるだわ。まったく、なに興奮してるのよ、最近の子は恥ずかしいって言葉知らないの?  
 ほんと、いやらしい娘ね」  
 女性ばかりとはいえ、大勢の前で自分の性器をなぶられた上、その衝動のしるしを暴露  
され、菜月の顔は真っ赤になった。  
「――な、ち、違います、そんなこと……っ」  
 菜月はあわてて否定するばかりだった。  
 だが、その看護師は菜月の言葉をさえぎって罵りを口にする。  
「なにが違うのよ。これはなに? あんたがエッチなことばかり考えてるから、こんなふうに  
びしょびしょに濡れてるんでしょ。はしたないったらないわ。あ、それともこれ、おしっこ?  
 漏らしちゃったわけなの?」  
「違います、違います――」  
「なにが違うのよ、ほらっ」  
 菜月が強く抗議できないでいるうちに、看護師は菜月の性器へ指を伸ばした。その標的  
は少女の肉体のもっとも繊細な部分、クリトリスだった。  
 当然のように指で押しつぶされ、菜月はたまらず悲鳴をあげた。  
「アアアッ!」  
 菜月はとっさに鋭い痛みを想像したが、押し寄せてきたのは大きな快感だった。この年配  
の看護師はどんな経験からだろうか、絶妙な力加減で肉の芽をもみあげる。今までこの部  
分に直接触ることさえまれだった菜月に、この刺激はあまりに強い。  
「ひっ、やめ、やめて」  
 自分をいたぶる手を払いのけようと必死に腕を振り回そうとするが、  
「押さえてなさいっ」  
 前もって役割が決まっていたかのように、看護師たちはまたしても迅速に行動した。  
 抵抗しようとする菜月に対し、周り中から手が伸びて体の自由を奪うのだ。すでに抱きか  
かえられていた両足に続いて、両腕や肩を押さえつけられ菜月の行動は封じられた。  
 どうも患者を拘束することに関してはかなり手慣れているようだ。  
「みんな近くによって見てあげなさいよ」  
 動けなくなった菜月に向けて、看護師は笑いながらいった。  
 結果から見れば、菜月はそれほど強く抵抗したわけではない。物理的にできないという以  
上に、いまだ未熟な少女には状況が過酷過ぎたのだ。  
 それにしても、どう見ても菜月はこの看護師のストレス解消のためのおもちゃにでもされ  
てしまっている。明らかに検査の範疇を逸脱しているというのに、彼女をとがめる者はいな  
かった。  
 看護師たちはなんとなくわかっているのだ。さまざまな事情から、この程度のことが自分  
たち以外に漏れることはないだろうと。それは差はあるにしても、菜月自身も含めたこの場  
の全員の了解事項だった。  
 
 
 
(続く)  
 

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