理沙は瞬きしながら眼下に横たわる石本を見つめていた。  
「洗う、って……」  
「あらわからないの? 最初にここへ来たとき、私がやってあげたでしょ?」  
「……いえ、その……」  
「ああ。そういえばあのときも、理沙ちゃんのオシッコが私の体にかかったんだったわね。検査で肛門鏡を入れられて」  
 かあっと理沙の顔が赤くなった。石本は愉快そうに笑いながら記憶を辿る。  
「うふふ。あのとき理沙ちゃん、初めてご主人様以外の人にイカされたのよね」  
「……」  
「思えばあれからほぼ一ヶ月か。毎日アソコやお尻を苛められているのに、あれから一度もイッてないってのは感心するわ」  
「……」  
 理沙はぐっと唇をかんだ。その後、四肢切断手術の前に一人でこのお風呂に入ったとき、理沙は生まれて初めて自慰をした。自らの指先で達したのはそれが初めてであったし、そして最後であった。  
 俯いた理沙をみて石本が起き上がり、心配そうに理沙の顔を覗き込んだ。理沙は慌てて顔を挙げ、作り笑いを浮かべる。石本は再びゆっくりと横になった。  
「ほら早く」  
「は、はい……」  
 石本に催促されて、理沙は短い太腿をそろえた。その足先に短く切断された腕をつけるようにぺこりと体を折りながら、理沙は挨拶をする。  
「石本さんのお体、洗わせていただきます。粗相があるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします」  
「……なあにそれ? いつもご主人様にそうやって挨拶しているの?」  
 けらけらと石本が声を立てて笑った。理沙はそのまま石本の体の上に乗る。腕を伸ばして石本をまたぎ、彼女の腹の上でもそもそと動いて体を完全に乗せた。それでも四肢を大きく広げていないと切断された手足が床につかなかった。  
「失礼します……」  
 理沙は一言告げたあと、ゆっくりと体を動かしはじめた。石本が予め自分の体にボディソープをつけていたため、動きに合わせて柔らかい泡が広がる。四肢が短いせいで大きく動くことは難しかったが、その分体を密着させて丁寧に洗い続けた。  
「ふふ、なかなかうまいじゃない」  
 石本が理沙に微笑みかけた。理沙はふと恥ずかしさを覚え、石本の顔から視線をそらす。すると理沙の眼前に、石本の大きな乳房が現れた。体の左右に広がった乳房は理沙の動きに合わせ、たぷたぷと揺れる。理沙はその膨らみの頂点にある赤い乳首を口に含んだ。  
「あ、こら理沙ちゃん!」  
「……ん、石本さんのオッパイ、柔らかい」  
 溜息をつきながら、理沙は乳首を口の中で転がした。音がするまで吸い、甘く噛み、舌の先で突き、唇で愛撫する。セッケンの泡が少し口に入ったが、理沙はそれでも石本の胸から唇を離すことはなかった。  
「……こら、やめなさい……やめて……私、乳首は……」  
「あは。それじゃあ」  
 喘ぎ始めた石本をみて、理沙はにやりと笑った。そしてもう片方の乳首に唇を移し、愛撫を始める。  
「あ、こらあ!」  
「……石本さん、今まで散々私を苛めてくれたお返しです」  
 理沙は片手を石本の体に這わせ、乳房を愛撫し始めた。指先の繊細な動きとは違った感触に石本が仰け反る。理沙は振り落とされないよう、乳房にさらにむしゃぶりついた。  
「こ、こんなんじゃ……理沙ちゃんの罰にならな……はうっ!」  
 さらに理沙は自分の体を動かし続けた。理沙の小ぶりな乳房が石本の腹を撫でる。その固いスポンジのような触感とそのすぐ下にある肋骨のごつごつとした感触に、石本は性感が昂ぶってくるのを感じていた。  
「ひっ!」  
 しかし次に嬌声をあげたのは理沙だった。慌てて後ろを振り向くと、理沙の尻に石本の手が伸びていた。優しく肛門の上で円を描くように撫でまわすその指先に、理沙は石本の乳首から口を離した。  
「ふふ。理沙ちゃんの弱いところ、私はちゃあんと知っているんですからね」  
「そんな……卑怯……ですぅっ!」  
 石本の指が軽く理沙のアナルに入る。理沙は石本の乳房の谷間に顔をうずめた。石本がくすりと笑う。そして彼女は理沙の尻から手を離し、代わりに理沙の脇の下に両手を添えた。そのままくるりと理沙の体を回す。  
「え?」  
 理沙は突然の出来事に奇妙な声を上げた。いま彼女の目の前には、石本の秘部がある。そして理沙の秘裂は石本の眼前にあった。  
 
「え、え? あの石本さん?」  
「ふふ。やっぱりこれは罰なんだから」  
 石本が理沙の秘裂に両手をかけた。そしてまだ大人になりきっていないその割れ目を大きくくつろげる。  
「ほら理沙ちゃん、罰よ。私のここを舐めなさい」  
「え?」  
「ふふ。ご主人様のペニスを銜えたことはあっても、女のアソコを舐めたことになんてないでしょ? ほらほら、私をイカせるまで許してあげないわよ」  
 言いながら石本は、理沙の秘裂の一番上についている大きな陰核を指で挟んだ。ひい、と理沙が震える。さらに石本は体を少し起こして、理沙の秘裂に舌を伸ばした。指や道具とは異なるその感触に理沙は首を振って抵抗する。  
「や、やぁだあ……やめてください……!」  
「ふふ。理沙ちゃんのアソコ、とてもおいしいわよ」  
「だめ……だめです。そんなことされたら……私……っ!」  
「私が満足したらやめてあげる。ほらほら早く舐めないと、理沙ちゃんのほうがイッちゃうわよ?」  
 言い終わると石本は再び理沙の秘裂に舌を這わせた。膣口を舌先でこね回し、そのまま秘裂を這わせて尿道口付近で一旦停まる。そこで数回小刻みに動いた後、舌はさらに上にある大きな豆をノックした。  
 その動きにあわせて理沙の背中が震える。石本は新しい性感帯を探すように、理沙の秘裂の周辺やアナルの周りにも舌を進めた。  
 理沙は片目を開けて石本の秘裂をみた。黒々と生い茂った陰毛の奥に、大人の色香を漂わせる大輪の花があった。陰核は包皮から微かに頭を出し、陰唇は理沙の愛撫を待つように自然と開いている。理沙は覚悟を決め、その茂みの中に顔を突っ込んだ。  
 つん、と酸っぱい匂いが理沙の鼻を刺激する。ご主人様のアレとはまた違う匂いだが、不思議と不快感はなかった。そして理沙は舌先で石本の陰核を刺激する。唇と歯も使い、まずは包皮を剥くことから始めた。  
「んっ……そうよ。そこ、そこよ」  
 石本が鼻に抜けるような声を上げる。理沙は皮を剥かれた陰核を懸命に舐め始めた。石本も負けじと理沙の秘裂に舌を這わせる。  
「んっ……んう、うんふ……ふう」  
「くっ、理沙ちゃん結構うまいじゃない……これはちょっとヤバいかも」  
「……ふうっ!? 石本さん、それ反則っ!」  
 理沙が背筋を反らした。歯を食いしばり、必死に快感に抵抗する。その様子を見ながら、石本は理沙の肛門に添えた指を徐々に奥へと潜らせていった。  
「お尻、お尻……は、ダメぇ……」  
「ほらほら。しゃべっている暇があったら舐める」  
 笑いながら石本は理沙の肛門に突きたてた人差し指をリズミカルに抜き差しした。そのたびに理沙の体はびくりと震え、あわせて肛門がぎゅっと締まる。  
 石本は指を動かし続けながら再び理沙の秘裂に舌を這わせた。とろりと粘り気のある液体が舌でぬぐいきれないほど溢れてくる。石本は愛液で口の周りをべとべとに汚しながら丁寧に舐め続けた。  
 逆に、理沙は愛撫を続けることができなくなっていた。気を抜けばすぐにでも達してしまいそうだった。歯を食いしばり、必死に抵抗を続ける。  
「あは。イキそうなの?」  
「ごめんなさい、本当に……許してぇ……は、はあ……っ!」  
 理沙が大きく震えた。全身が激しく硬直し、喉の奥から絞りだすような声が漏れる。理性がはじけ、頭の奥から何かがくるのを理沙は感じた。  
「だ……だめぇ……!」  
 しかしその瞬間、石本は理沙の肛門から指を抜いた。秘裂に這わせていた舌も外し、一切の刺激をやめる。理沙は脳の中心で膨らんだ何かが急激にしぼんでいくのを感じていた。激しい息を整えながら石本を振り向く。石本は楽しげに笑いながら告げた。  
「ご主人様以外じゃ、イカないのよね?」  
「う……」  
「どうしたの? イカせてほしかったの?」  
「……」  
 理沙はしばらく恨めしそうに石本の顔を睨み続けていた。が、やがてぷいと向き直り、再び石本の秘裂に顔をうずめた。  
「あんっ。こらこら理沙ちゃん、そんなに激しく吸ったら、気持ちいいを通り過ぎて痛いわよ」  
 石本がマットの上に起き上がった。理沙を傍らに座らせる。そして湯船から桶に湯を取り、理沙の体にかけた。しかしそれでも理沙は、頬を膨らませて石本を睨み続けていた。  
 
「ほら理沙ちゃん、そんな怖い顔しないでよ」  
「……」  
「ごめんってば。確かにお尻を責めたのはフェアじゃなかったわね」  
「……」  
「あーもう。本当に悪かったってば。ね、機嫌直して」  
「……キス」  
 肩から湯をかけられたとき、理沙はぼそりと呟いた。湯をかけながら石本が聞き返す。理沙は顔を上げた。石本の顔を見て、笑いながら言う。  
「キスしてください。そうしたら機嫌なおします」  
「……んー」  
 石本は苦笑した。規則で患者とのキスや本番行為は禁じられている。それは最初の頃に説明したし、一度もしたことはない。石本から迫ったことはもちろん、理沙がねだってきたこともなかった。  
 ふ、と石本は溜息をついた。そして理沙の顎に手を掛ける。  
「……多分、いまの私の口の中、理沙ちゃんの味しかしないわよ?」  
 理沙は返事をしなかった。代わりにそっと目を閉じる。石本はちらりと周りを見回した。そしてゆっくりと理沙の顔に唇を近づけていく。  
 唇どうしが触れた。やがて石本の唇が少しずつ開く。その隙間から赤い舌が伸び、理沙の唇を軽く叩いた。理沙は大人しく唇を開いた。石本の舌が理沙の舌と絡まる。互いの唇は、お互いの口の中を激しく求めあった。やがて、ぷは、と息を吐きながら二人が離れる。  
 そして二人は顔を見合わせながら、同時に笑った。  
「……いつまで入ってるの? あとの予定がつかえてるんですけどー?」  
 そのとき、脱衣所の扉が開いて吉川が二人に声をかけた。二人はそれを聞いて、さらに笑った。  
「ん、どうしたの?」  
「なんでもないー。もうすぐあがるわ」  
「ふーん。薬の用意はできてるから、早くあがってきてね。あ、タオルと服はここに置いておくから」  
 吉川が脱衣所の扉を閉めた。石本は理沙にもう一度湯をかけながら尋ねる。  
「ね、理沙ちゃん。オシッコはしたくない?」  
「え? あ……と」  
 そう言われて、理沙はふと膀胱を意識した。部屋のリハビリ以来だが、すぐにトイレにいきたいというほどではない。それを伝えると石本は自分の体の泡を流しながら説明した。  
「このあと、さっき言ったようにアナルマッサージと尿道に薬を塗るわ。アナルはともかく、尿道は結構苦しいわよ?」  
「……あ」  
「綿棒で薬を尿道の奥まで塗るんだけど、塗ってる間はもちろん、薬を塗ってから一時間ぐらいはオシッコを我慢してもらわなくちゃいけないの。……だから、今のうちに膀胱を空にしておいたほうがいいわ」  
「はい……でもあの、ここで……ですか?」  
 理沙は周囲を見回しながら聞いた。言うだけ無駄だとは思っていたが、やはり風呂場での放尿には抵抗感がある。しかし石本はさも当然とばかりに頷いた。  
「ふふ。これだけ恥ずかしい目にあっていても羞恥心は残ってるのね」  
「……だって」  
「いいのよ。恥ずかしがる心を忘れちゃおしまいですものね」  
 でもそうやって恥らう姿が、余計に嗜虐心を高めるんたけどね……。心の中で呟きながら石本はもう一度自分の体を流した。そして、まだもじもじと内股を摺りあわせている理沙をみてにやりと笑った。  
「理沙ちゃん、四つんばいになりなさい」  
「え? ……あ、はい」  
 突然の命令に理沙はきょとんとしたが、すぐに言われたとおり四つん這いになった。ひくひくと蠢く小さな菊門を眺めながら石本がさらに笑みを浮かべる。  
「そのまま、オシッコなさい」  
「……ええっ!?」  
 理沙は驚いて後ろを見た。石本は理沙の真後ろに座り、目を細めて理沙の秘部を見つめていた。ぎゅっと肛門が締まる。  
「でもあの……こんな、犬みたいな格好で……。それに、これじゃ内股がオシッコで濡れちゃいます……」  
「そうね。じゃあもっと足を開きなさい。あ、なんならオス犬みたいに片足を持ち上げてする?」  
「う……」  
 おずおずと、理沙は足を開いていった。唇を噛み締めながらふと顔を上げると、大きな鏡の向こうに子犬のように震える自分の姿が映っている。理沙は顔を伏せ、目を閉じて膀胱に意識を集中した。  
 
 羞恥と緊張のためか尿意は先ほどに比べかなり強くなっている。それでも理沙の尿道は、彼女の意思に反してなかなか緩んでくれない。  
「どうしたの、出ないの?」  
「……」  
「あ、なんなら手伝ってあげましょうか?」  
「いえ、結構ですっ」  
 はあっと一息長い溜息をついた。覚悟を決め、下半身の余分な力を抜いていく。次の瞬間、理沙の秘裂から黄色い液体がちょろっと溢れ出た。  
「……あら、でもすぐとまっちゃったわよ?」  
「うう……石本さん、恥ずかしいです……。せめて、後ろからどいてください……」  
 理沙が涙をこぼしながら訴えた。歯がカチカチ鳴る。石本は無言で立ち上がった。そしてゆっくりと理沙の前に回りこむ。理沙が顔を上げると、石本は理沙の正面に座っていた。彼女はそっと理沙の顎に手を掛ける。  
「い、石本さ……」  
「ほら。後ろからどいてあげたわよ? 早くオシッコなさい」  
「そんな……あの」  
「ふふ。犬のようにはしたなくオシッコをする理沙ちゃんの顔、私に見せてちょうだい」  
「やだ……そんな、恥ずかしい……許して」  
「ふうん。じゃあ後ろからみせてもらおうかしら」  
「ひ……っ!」  
 理沙は歯を食いしばった。膀胱がじわりと膨らんでいく。足ががくがく震え、尿道が少しずつ緩んでいくのがわかった。石本が冷たい笑顔を浮かべながら理沙の泣き顔をみつめる。やがて理沙の下半身から、小川の流れるような音が響いた。  
「あは、やっと出たの?」  
「ん……ぅ」  
 しかしその音は、理沙の体がびくっと震えるたびに途絶える。それからしばらくの間をおいてまたちょろちょろと小川が流れ始め、またすぐに止まる。それを幾度か繰り返したあと、数滴の雨だれが落ちて理沙は薄く目を開いた。  
「い、しもとさぁん……」  
「終わった?」  
 こくりと理沙が頷いた。石本は理沙の頭をくしゃくしゃと撫でた。そして理沙の目頭からこぼれた雫を指先でふきとり、もう一度理沙の体を湯で流した。  
 
 二人が脱衣所から出ると、吉川は電話を片手に書類を書き込んでいた。  
「はい……はい、午後イチからですね。はい、他の患者さんの予定はこちらで調整しておきます」  
 そして吉川は石本に目配せした。石本も無言で頷き、理沙を診療用のベッドに寝かせた。その間も吉川は忙しく書類にペンを走らせている。  
「……そうですね。211号室が空いています。あの部屋でしたら問題ないかと……」  
「え、211号室?」  
 石本が理沙の頭に枕をあてがいながら呟き、吉川の背中を見た。理沙もつられて頭を起こす。吉川はそれからしばらく電話を続けていたが、やがて電話を置くとふうと溜息をついて立ち上がった。  
「急患? 211号室を使うなんて珍しいじゃない」  
「そう。先生から、今日の午後イチで急患がくるって。なんかいろいろ曰くのある患者さんみたいよ」  
「あの……?」  
 頭上で繰り広げられる看護師同士の会話に、理沙が割り込んだ。二人の視線が同時に理沙に降りてくる。  
「……211号室って、なにかあるんですか?」  
「ん? ああ、そうね。理沙ちゃんなら説明してもいいかな」  
 石本がくすりと笑いながら続けた。  
「211号室以外の病室も、基本的に理沙ちゃんの部屋と一緒のつくりなの。うちに来るのは大抵、従順な子が多いから」  
「でもたまに、ものすごく反抗的な患者だったり、あるいはもっと過酷な治療をする場合があってね。そういう患者たち専用の部屋なのよ。211号室は」  
「え……? あの、もっと過酷な治療って」  
 理沙は目を丸くした。四肢切断はかなり過酷な手術だと自分では思っていた。しかしそれより凄いものがあるのだろうか。ごくりと理沙は唾を飲み込んだ。  
 ふう、と吉川が溜息をついた。ぱんと一度手を叩く。  
「さて。じゃあ211号室の準備もあるし、手早く理沙ちゃんの治療をしちゃいましょうか」  
 
   (続 く)  
 
 

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