一種心地よい疲労感に理沙は目を閉じた。軽い睡魔が襲ってくる。
しかしそんな理沙の短い腕を石本が掴んだ。ぐっと引き上げ、理沙を無理矢理ベッドの上に起き上がらせる。
「……ん」
「ほらまだ午前中よ。リハビリはこれからなんだから、しっかり目を覚ましなさい」
まだ寝ぼけ眼の理沙を抱え上げ、石本は軽く理沙の尻を叩いた。そして理沙を床の上に降ろす。
吉川がワゴンから黒いラバー製の拘束具を手に取った。そして理沙の背後に回り、入院中に少し伸びた髪の毛をそっと持ち上げる。
「え、え? あの、どうして拘束具なんか……?」
理沙は嫌な予感に吉川を振り返る。しかし吉川は微笑みながら、理沙の首に首輪を嵌めた。首輪には等間隔に幾つものリベットが打ち込まれており、前には小さな南京錠がついている。
「どう? きつくない?」
「え? あ、はい。大丈夫です、けど……」
吉川は指一本分の余裕を持たせて首輪を締めた。ご主人様なら息ができないぐらいきつく締めてくださるけど……。理沙が複雑な感想を考えている間に、吉川と石本は次の拘束具を手に取っていた。
「じゃあ理沙ちゃん、腕を水平に上げて」
「えと、こうですか?」
理沙が命じられるままに腕を上げる。石本が腕の下からするするとブラジャー型の拘束具を通した。首輪と同様に黒いラバー製のそれは、まだ膨らみかけの理沙の乳房を三角形型に拘束する。今度は首輪と違ってきつめに拘束され、理沙は思わずうっと唸った。
「きつい?」
「いえ……大丈夫です」
答えながら理沙は、ちょうど胸の谷間、体の正面にぶらさがった南京錠をみていた。首輪とほぼ直線の位置にあるそれは、別の拘束具を固定するには少々おかしな位置にあった。
「あの……この鍵、何に使うんですか?」
「ん? 気になる?」
「え、ええ……」
「うふふ。もうすぐ教えてあげるから楽しみにしていなさい」
石本は言いながら、楽しそうに最後の拘束具を手に取った。それはT字状をした拘束具で、垂れ下がった部分の先端はD字型をした金属性のリングと二本の黒いロープにつながっている。石本はそれを吉川に手渡し、自らは理沙の脇の下に手を入れた。
「え、あ、あの?」
そしてぐいと理沙を抱え上げた。完全に持ち上げるのではなく、切断された足が立つ程度まで持ち上げ、そのままの姿勢で支える。理沙の足には久しぶりに体重がかかった。慣れない姿勢にバランスをとろうとした。
「なあに? まっすぐ立てない?」
「は、はい……」
「ずっと寝たきりだったもんね。これは念入りにリハビリしないといけないわね」
あははと石本が笑う。その間に吉川が理沙の腰に拘束具を巻いた。T字型の左右に伸びた部分がベルトのように理沙の腰を包み、へその下で南京錠により固定された。そして吉川は、ベルトの後ろについた太い拘束具を手に持った。
「理沙ちゃん。もう少し足を開いて、それとお尻をちょっとこっちに突き出して」
「は、はい……。こうですか?」
言われるままに理沙は姿勢を変えた。吉川は理沙の股の間から、手にした拘束具を前に回した。包皮を切除されたクリトリスに指先が当たり、理沙がびくんと震える。直後に石本と視線が合い、理沙は恥ずかしそうにぷいと顔を背けた。
吉川はそんな理沙の様子を意に介さず、前に回した拘束具をベルトの左右の脇部分に固定した。まだ絞られていないため肝心な場所に触れていないが、長さから考えるにリング部分がちょうど膣口にあたるのかな、と理沙は推理した。
石本はまだ理沙の体を支え続けている。吉川が立ち上がり、ワゴンの上から何かを手に取った。それは彼女の掌に隠れるほどの大きさで、吉川はそれを掌に大切そうに包んだままゆっくりと理沙の背後にまわりこんだ。
「え? あ、あの……なんですか?」
理沙が不安げに尋ねる。しかし吉川は優しく微笑んだまま、背後からそっと理沙の秘裂に手を伸ばした。
「……ひゃん!」
吉川の指が理沙のクリトリスをつまんだ。そしてそのまま秘裂をなぞり、膣口部分を重点的に刺激する。
「ひ、ま、まさか……」
「なあに? 処女を奪われるんじゃないかって不安なの?」
石本が悪戯っぽく笑う。理沙は唇を噛み締めながら振り返って吉川の顔を見た。吉川も笑いながら、忙しく指先を動かしている。理沙は慌てて足を閉じようとした。しかし吉川はもう片方の手で理沙の足の内側を持ち、逆に足を割り開く。
「安心なさい。理沙ちゃんの処女を傷つけるつもりはないから」
「あぅんっ、そうじゃなくて、だめ……ひ、やめてぇ……」
「やめてって理沙ちゃん、大洪水よ? 溜まってるの?」
「ち、ちが……」
吉川に指摘され、理沙は顔を赤らめて反論した。しかし理沙は、手術直前の自慰から一度もエクスタシーに達していない。毎日の性器や肛門に対する刺激は彼女の性欲を刺激し、少しの刺激でも肉体は過敏に反応する。
「……あんまり遊んでいると怒られちゃうわね」
理沙が荒い息を吐き始めると、吉川はあっさりと愛撫を止めた。え……と理沙が一瞬声を上げるが、すぐに顔を赤らめて唇をかみしめる。
背後で吉川が、理沙の愛液で濡れた掌の中で先ほどの何かを揉み始めた。そして理沙の股の下にあった拘束具のD型金具を手に取り、ぱちんと何かを嵌める。それから吉川は、理沙のお尻に手を掛けた。
「……え?」
理沙が振り向く。吉川は肛門がある辺りを片手で大きく押し広げ、もう片手に拘束具を持っていた。金具には小さなアナルプラグのようなものがついている。プラグというよりはむしろスポイトに近い大きさのそれは、根元にいくつもの小さな突起がついている。
「な、なんですかそれ……?」
「ああ、それはね」
石本が説明をしようとする。そのとき、吉川が理沙の肛門にそのスポイト状のプラグを押し込んだ。
「うあ……っ?」
ごく小さな管が肛門に侵入する感覚に理沙は顔をしかめる。
プラグは、力を抜いていると挿入されていることがわからないぐらいに細い。しかし肛門に力を入れると、痔核を微かに刺激し、痛みというより痒みに近い感覚を与えてくる。さらに根元についた突起が肛門の外側に柔らかく刺さった。
「ひゃあん!」
「あらら。やっぱり理沙ちゃんはアナルが大好きなのね」
石本と吉川が声を合わせて笑う。理沙はなるべく肛門に力を入れないようにしながら尋ねた。
「はう……これ、なんですかっ?」
「単なる『アナルマッサージ』の器具よ」
「くっ……どうしてこんなものを……」
「痔は血行をよくすれば治るからよ。プラグの中には磁石が入っていて、突起とあわせて肛門を優しく刺激してくるのよ。だから痛くはないでしょ?」
「は、はい……でもなにか、お尻の穴が暖かくなって……っ」
「磁石のせいね。血行がよくなってきたのよ。その分、神経も敏感になってきてるでしょうけど」
「そ、そんな……!」
「遠慮しなくていいのよ理沙ちゃん。肛門に力を入れるのを繰り返して、早く痔を治しましょうねぇ」
言いながら吉川は拘束具を調整する。後ろの拘束具を絞り、D字型の金具がちょうど肛門の位置に固定されるようにした。また前のロープも引き絞られ、肛門から足の付け根を通って脇の左右までをきつく縛める。
「痛い……吉川さん、ちょっと痛い!」
「我慢なさい」
理沙の抗議をあっさり無視し、吉川は拘束を終えた。D型の金具とラバー製の拘束具が理沙の尻の肉を割り、そこから伸びたロープが太腿の肉を寛げている。
そして石本が理沙の腕をぐっと前にひき、理沙はそのまま前のめりに倒れた。
「くっ……!」
短い腕をつき、理沙は四つんばいになる。姿勢を変えたため拘束具がギチッと音を立て、理沙の体に食い込んだ。その痛みにお尻の穴を無意識に締めると、今度は痛みに変わるぎりぎりの快感が理沙の脊髄を駆け上がってくる。
「ふぅん!」
「あら。大丈夫、理沙ちゃん?」
「……は、はい……」
「あ。もしかして、縄がかかってないアソコが寂しいの?」
「そ、そんなことはない……です」
吉川が背後から理沙の秘裂を覗き込んだ。ひくひくと蠢く肛門と、その下で震える幼い秘裂。その秘裂の一番先には、包皮を剥がされむき出しになった理沙の大きな陰核が、さらにむくむくと勃起を始めている。
動物のような格好で床の上にいる理沙の首輪に、石本が細い鎖をつないだ。そして立ち上がり、ぐっと鎖を引く。たまらず理沙は顔を挙げ、下から石本を見上げた。
彼女の短いスカートから内側の白い下着がみえる。しかし理沙は、自分を見下ろす石本の微笑みに対し急に惨めな感情がわき始めていた。敗北感、被征服感、無力感。動物のように見上げるだけでこんなに悲しい気持ちになるんだと気づき、理沙は涙を流した。
石本はそんな理沙の感情と関係なく、鎖を引いて歩き出した。そして部屋の片隅に吉川が設置した機械まで理沙を連れて行く。
その時理沙は、初めて正面に機械を見た。それはランニングマシーンであった。ゴム製のコンベアーが斜めに置かれたその機械は、前の取っ手が異様に低い。そしてコンベアーのさらに後ろに三つの柱が立っている。
前の取っ手から後ろの真ん中の柱までは、一本の太いロープが張られていた。残り二本の柱には鞭がぶら下がっている。理沙はその形状に首を傾げたが、石本がじゃらっと鎖を引く。見上げた理沙に石本が笑いながら告げた。
「理沙ちゃん、機械に乗って」
「は、はい……」
おずおずと、理沙はゴム製のコンベアーの上に乗った。理沙の自重でコンベアーが動く。石本が鎖を引いて、理沙を機械の真ん中まで引き上げた。そして鎖を取っ手に固定し、理沙がコンベアーの動きに合わせて後ろへ下がらないようにする。
「ロープを跨ぎなさい」
「え? ……あ、はい」
理沙はまず腕を伸ばしてロープをまたいだ。その後足を大きく開き、ロープを越える。その途端、ロープが剥き出しの陰核や秘裂をこすり、理沙はくうっと唇を噛み締めた。
吉川が理沙の脇に屈みこむ。そして、首や胸、腹についた南京錠を外した。
「え……あの」
「ほら動かないで。作業しづらいでしょう?」
吉川が理沙に注意する。石本もしゃがんで、吉川が開錠した南京錠を手に取った。そしてロープをU字型の中に入れ、元通り枷にはめ込む。
「あの……この鍵、なんですか?」
不安げに理沙が尋ねる。吉川が胸の下の鍵を同様にかけた。石本は最後の南京錠を吉川に手渡しながら説明をする。
「この鍵はね、ロープを理沙ちゃんの体の中心に固定するための道具よ」
「ロープを……体の中心に?」
かちん、と腹の鍵もかけられた。そして吉川は、ロープがつながっている後ろの柱へ移動した。柱についた取っ手を回すと、それにつられたロープがぴんと張られていく。
「え……ひゃ、ああ……っ!」
それにつられて理沙の体が持ち上がった。ロープが秘裂に食い込み、固くなった陰核はロープをぐいと脇へ押しやる。
「準備できた? じゃあ鎖を外してあげるね」
石本が笑いながら、理沙の首輪についた鎖を外す。途端にコンベアーが理沙の体重にあわせてずり下がりはじめ、理沙の体が後ろへ下がる。その分だけロープが秘裂にくいこみ、理沙は思わず呻いた。
「あう……っ、痛ぁ……い……」
「ほらほら、ちゃんと歩かないとリハビリにならないでしょ?」
「ん……くうっ……」
石本に促され、理沙は四つんばいのまま歩き始めた。ロープが秘裂をこする。そして体を動かすと、胸や腰の拘束具がぎしぎしと音を立てて理沙の肌に食い込んだ。肛門のマッサージ器具が筋肉の動きに合わせて微かに理沙の肛門を刺激する。
「は……はぅ」
さらに、理沙の動きに合わせてコンベアーが速度を上げた。徐々に早くなる動きに理沙は手足をさらに早く動かす。モーター等はなく、純粋に理沙が動いた分だけコンベアーも動く仕掛けらしい。ただし斜めになっているので、コンベアーを制止させることはできない。
「あら、そんなに早く動いたらバテるわよ?」
「そうよ。一定速度でゆっくり動くようにしないと」
「は……そんなこと……言われても……」
じわっと汗がにじんでくる。慣れない運動に手足が悲鳴を上げはじめた。たまらず理沙が停まる。コンベアーだけが慣性で動き続け、理沙の体が後ろに下がった。ロープがぐいと引っ張られ、理沙の秘裂に大きく食い込む。
そのとき、機械が「ピー」という音を立てた。コンベアーがとまり、ぐいとロープが引かれる。
「ひゃ……。な、なに?」
強い力でロープを引かれ、理沙は腰を持ち上げた。石本が腕を組んだまま笑う。
「このロープはね、ある一定以上の力がかかると、こうやって自動的にロープを持ち上げるようになっているのよ」
「ん……っ」
理沙は震える手足に力を込めた。このままロープによりかかっていると、秘裂に深く食い込んで激しく痛む。手足の筋肉も痛むが、秘裂の身を裂かれるような痛みに比べればまだ我慢できた。
「そうそう、そうやって腰を持ち上げておきなさい。……それとこの機械には、もう一つ機能があってね」
「もう一つの……機能?」
そのとき、理沙の背後でひゅんと空気を切り裂く音がした。次の瞬間、尻の双丘に勢いよく鞭が振り下ろされる。
「ひゃああっ!」
予期せぬ痛みに理沙は悲鳴を上げた。おかしそうに笑いながら石本が口を開いた。
「これがもう一つの機能よ。真ん中の柱についたロープで体を持ち上げさせたあと、残り二本の柱につけられた鞭が同時にお尻に振り下ろされるの」
「い……痛い……痛いよぉ……」
「皮製のバラ鞭ですもの。ほらほら、休んでいるとまたセンサーが作動するわよ?」
石本が指摘したとおり、コンベアーが再び動き始めていた。理沙は慌てて前に這い出す。今までの痛みに加え、今度は鞭の痛みが足を動かすたびに理沙を苛んだ。
「ぐっ……ぐす……」
「あら、泣いてるの? そんな顔してたらご主人様、心配なさるわよ」
吉川の言葉に理沙がはっとして顔を上げた。前の取っ手には小型のカメラがついており、じっと理沙の顔を写し続けている。
「や、やあだあ! こんな顔撮らないでぇ!」
「こら理沙ちゃん、そんなふうに片手を挙げたら」
理沙は咄嗟に片手を上げて顔を隠した。そのため歩く速度が鈍り、体が後ろへ下がる。石本が叱るのとロープについたセンサーが作動するのは同時だった。
ピー。
ロープがひかれ、理沙の尻が持ち上げられる。はっとして理沙は慌てて前に逃げようとしたが、それより早く二本の鞭がぐるりと回って理沙の尻を盛大に打ちつけた。
「ああっ!」
「ほら、休んじゃダメでしょ」
「うう……」
「ああそうそう。後ろの柱にもカメラはついていますからね。理沙ちゃんの真っ赤なお尻や、ロープが食い込んだアソコが丸見えよ」
「ええっ……そんな……」
「恥ずかしいの? でもこの機械、退院後もずっと使っていくのよ」
「え……ええっ?」
歩きながら理沙が石本を見上げる。石本は笑いながら続けた。
「四肢切断した人は新陳代謝が鈍るから太りやすくなる、って言ったでしょ。あと、どうしても寝ていることが多くなるから、肛門括約筋や尿道周辺の筋肉が衰えやすくなるのよ」
「だから、入院中に限らず退院後も毎日この機械を使ってリハビリをし続けてもらわなくちゃいけないのよ。わかった?」
「うう……そんな……」
息をはずませながら理沙が呻く。痛みと快感で全身からは滝のような汗が流れてくる。
「そうそう。カロリー消費量などを考えると毎日最低3時間は運動をしてもらわなくちゃ。……ま、今日は初日だから1時間で許してあげるけど」
「い、1時間?」
そんな……もうこんなに苦しいのに……理沙は石本を見上げた。しかし石本は意に介さず、ベッドに戻って理沙の尿で濡れた布団を外す。
「あーあ、こんなにオシッコしちゃって。防水シートも変えなくちゃダメね」
「うう……」
「じゃあ理沙ちゃん、私はお布団を洗ってくるから、運動頑張ってね」
「え?」
理沙が顔を上げる。石本と吉川は、二人でそれぞれ布団とシーツを抱えて部屋を出て行こうとしていた。
「ま、待って……」
「なあに? 運動が苦しいの?」
「は……はい……1時間も……無理、です……」
息も絶え絶えに理沙が懇願する。たった数分の運動で、喉が渇いて声が思うように出ない。しかし石本は扉を開きながら告げた。
「ま、頑張ってね」
「そ……そんな……」
吉川が先に廊下に出た。石本が二重扉の内側を閉める。廊下側の扉に手を掛けたとき、部屋の中から「ピー」という機械の音が聞こえた。しばらくして「ひゃあっ!」という理沙の悲鳴が響く。
石本は廊下に出た。もう部屋の中の音は聞こえない。そして石本は、廊下にいた吉川と視線を交わした。ふふっ、と二人は同時に肩をすくめて笑った。
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