「別れよう」  
僕は彼女にそう言った。  
小さいころからずっと一緒にいて、気がついたら恋人同士になっていた。  
お互いはっきり好きと言ったことはなかった。  
彼女のことが嫌いではない。  
惰性の関係。  
それを終わらすためだ。  
「あたしのこと嫌いになった?それとも他の子が好きになったの?」  
僕の目をしっかりと見てそう聞く。  
「そうじゃないんだ。君だってわかってるだろ。  
こんなあいまいな関係は駄目だって。だから僕は…」  
「ふうん。」  
ぼくをじっとにらみつけていた彼女は、  
鞄からタオルを取り出し自分の右手に巻きつける。  
そして僕に一歩近づき…  
「え」  
 
ズゴッ  
 
彼女に思い切り顔面を殴られてアスファルトの上に尻餅をついた。  
僕はびっくりして彼女を見上げる。  
「今なら笑い話で済ませてあげるけど?」  
とても綺麗な笑顔でそう言った。  
 
 
 
 
 
僕らはまだ別れていない。  
 

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