「ごめんね、ドラゴンさん・・」  
少女は、子竜の背中で揺られながら言った。  
あの後、何とか洋服は身につけたものの、下半身に力が入らず、立つことも難しい状態だったが、そんなときに子竜が側に来てくれたのだった。  
少女を乗せて、子竜は森を進んで行く――ふとその時、子竜が何かに気付いたように立ち止まった。  
――子竜は、じっと一点を見つめたまま動かない。  
「どうしたの?」  
少女は、疲れたのかな、と思って、その背中から降りようとした時、子竜の目線の先の存在が目に止まった。  
それは、小さな蜘蛛――  
少女が気付くと、蜘蛛はくるり、と向きを変え、草陰に消える。  
すると子竜はそれを追うように、少女を背中に乗せたまま歩き始めた。  
「あれ・・お家に帰るんだよ? こっちでいいの?」  
少女の問に、しかし子竜は構わず進み続ける。――時折、草の間をちょこちょこと動く蜘蛛の姿が見えた。  
しばらくして――少女の家がある場所のような、ちょっとした草の広場にたどり着いた。いつの間にか、蜘蛛の姿は見えなくなっている。  
「疲れたでしょ? 少しだけ、休もうか・・」  
少女は優しく子竜に言って、その背中からそっと降り、側の木の幹に寄りかかった。  
身体を休めたら、もう一度一緒に歩こう――そう思っていた、次の瞬間――子竜が突然、少女のスカートの中に頭を突っ込んだ。  
「えっ・・ちょっと、だめだよ! そんなところに、何も無いってば!」  
しかし子竜はそのまま少女の股間に頭を近づけ、そのデリケートな場所を下着こと、かぷっ、と口にくわえた。  
「ああっ!!」ピクン、と少女の身体が跳ねる。  
子竜はそのまま、もぐもぐと少女の股間を優しくしごいた。  
「・・あっ・・あんっ!! う・・やめてっ・・やめてようっ・・」  
それに対して、納得したように口を動かすのをやめ、少女が一瞬ほっとしたのも束の間、子竜はそこを口にくわえたままの状態で、ゆっくりと息を吐き出した。  
 
「ふわっ・・あったか・・・い・・」  
下着越しに股間に吹き込まれた子竜の吐息は熱く、少女はぞくぞくと鳥肌を立てる。そしてもう一度、子竜はさらにゆっくりと、熱い息をそこに吹き込んだ。  
「ふわああぁぁぁぁぁ・・・」  
身体中にもう一度鳥肌が立つのを感じ、全身から力が抜けて、快感だけが残る。その途端、少女の秘められた場所から、熱い液体がしょろしょろと力無く漏れ出た。  
「わ・・わたし・・・ああ・・あ・・・・」  
達する前に失禁したのは初めてだった。下着が熱く濡れ、すぐにそれは染みとなって広がる。  
そして、もう一度、子竜が息を吹き込んだ瞬間少女は、軽い叫びを上げて、尿を漏らしながら絶頂に達した。  
ううう、と快感のうめき声を上げている少女を無視するように、スカートの中から、ぺちゃぺちゃという何かを舐めるような音が聞こえた。  
「・・え・・・うあ、やっ・・だめっ!! おしっこ・・・おしっこ飲んじゃやだよう・・!」  
少女は興奮と恥ずかしさのあまり、耳の先まで真っ赤にしながら言った。  
ところが最初は下着から漏れていたものを舐めていた子竜も、それでは飽き足らなくなったのか、尿で濡れた下着をべろべろ舐め始める。  
間の布地が濡れている分、少女の股間に与えられる刺激は大きかった。  
「・・んあっ! 舐めたら・・あうっ・・ん・・だめ・・・・・・」  
少女は荒い息をつきながら、やっとのことで声を絞り出す。しかし――  
べちょ・・べちょ・・  
「・・んふわっぁぁぁーっ!!!」  
少女はあっけなく二度目の絶頂に達した。  
少女は思わず、スカートの中の子竜を股間に押し付けるように身もだえ、腰をくねらせてしまう。  
「ふあっぁ・・あっ・・。・・あ・・ごめんね・・・わたし・・」  
少女が言っても、子竜は一向に構わないと言った様子で、そこを舐め続ける。そしてついに、下着の合間を縫って、直接少女の秘肌に子竜の舌が届いた。  
 
「いやーっ!! うう・・ドラゴンさん・・お願いだから・・・・・うんっ!! ・・もう・・やめ・・」  
しかし全部を言い終わらないうちに、子竜の舌が秘所に突き刺さった。  
「はっ・・ああああああーーーーーっ!!」  
それだけで小さな絶頂を向かえ、少女は大きな声をあげる。  
「だめ・・これ以上されたら・・わたし・・また気絶しちゃうよ・・・」  
少女の意識は、度重なる性の絶頂で少しずつ不安定になってきていた。子竜を送ってあげなければ、という意識によって、なんとか気絶しないで済んでいたのだが、これ以上は耐えられそうに無かった。  
少女の哀願するような声が聞こえたちょうどその時、あろうことか、子竜は少女の幼い膣の中にある、ざらついた敏感な部分を舌で探し当ててしまった。  
「ああぁぁぁ〜っ!! そこっ・・そこだめぇぇぇぇ!!!」  
少女は急激に増幅した快感の疼きに、思わず叫んだ。  
子竜は、少女の反応が面白かったのか、あるいはそこの感触が好みなのか、その長い舌を少女のそこにずるずると這いまわらせた。  
膣全体がひくひくと痙攣し始め、子竜はそれを楽しむように、その場所や、もう少し奥にある、可愛らしい場所――少女の子宮口を、舌先や舌の腹で、惜しげも無く舐めまわした。  
少女は、途方も無い絶頂が急激に近づいて来るのを感じた。ぬめぬめした快感が、下腹部の中に広がり、そのまま全身を包んだ。そして――  
「おっ・・おなか・・・お腹が溶けちゃう・・あっ・・あっ・・・・・・〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!」  
子竜が舌に感じていた、少女の膣の中の味が、急に変わった。どろどろした、かすかにしょっぱいものが奥から現われ、子竜の舌を撫でて、出口へと降りて行く。  
そして白く濁ったそれは、多量の愛液と共に、子竜の舌が刺さった小さな穴から、子竜の口の中に噴き出した。そして同時に、さっき美味しいと思ったさらさらした熱い液体が、口の中に入ってきた。  
少女はというと、子竜を抱きしめ、腰をかくかく動かしながら、必死で凄まじい快感の波に耐えていた。少女はいつの間にか左手の親指を自分の口にくわえ、赤ん坊のようにしゃぶっていた。  
しかし、その快感は少女の弱々しい身体には過酷すぎ、少女は指をしゃぶりながらううっと呻いて、愛液を音を立てて二、三回噴き出した後、その首がかくん、と垂れた。  
子竜が、少女の膣から舌を引き抜き、スカートから頭を出して顔を上げると、少女は木の幹に寄りかかったままの格好で、首を力無く垂らし、意識を失っていた。しかしその親指は口の中にくわえられていて、少女は眠りながらも指をちゅうちゅうとしゃぶっていた。  
 
それから何時間経っただろう――  
少女は、強烈な身体の疼きに目を覚ました。  
「やだ・・わたし・・・・・あれっ・・?」  
起きようとして気付いたもうひとつの異変――身体が、動かない。  
「あれ、どうして・・? ドラゴンさん、どこにいるの? ちょっと・・助けて欲しいな。」  
返事は無い。――仰向けになった状態で、金縛りにかかっているようだった。首は少しだけ回せる。しかし、あと動く部分と言ったら、指先ぐらいなものだ。  
暗い。星が見える。  
時刻は、黄昏――。  
――なんとかして、動かないと・・・  
少女は力を込めたが、しかしびくともしない。よく考えると・・そこは地面の上では無いようだった。空中に吊るされている、そんな感じがした。  
その時、少女の額に、何かが乗っかった。  
「あ・・蜘蛛さん!」  
それは、昨日一緒に歩いた蜘蛛。こんな状況では、すごく心強かった。この広場への道案内役だったということは、忘れていた。  
 
「蜘蛛さん、助けて欲しいんだけど・・お願い」  
蜘蛛は、ぴょこ、と少女の服の上を移動して、足の下の方に消えた。  
――これをほどいてくれるのかな・・?  
少女は少し不安になって、出来るだけ周りが見やすいように首を動かした。すると――少女を縛っているものの正体が分かった。  
それは、蜘蛛の――糸!  
「えっ・・・・」  
少女の顔から、さっと血の気が引いた。ふとその時、少女は自分が下半身に下着をつけていないことに気付いた――。  
初めて――かもしれない。少女の柔らかい、穏やかな心に、冷たいものが走る。それは、恐怖。  
「助けてっ! ドラゴンさん・・! だれか、誰か助けてっ!!」  
少女は泣きそうな声で叫んだ。しかし助けの来る気配は無い。  
その時、少女が吊るされた、蜘蛛の糸が、かすかに揺れた気がした。  
「え・・・」  
あたりは、静まり返っている。少女は息を殺して、気配を探った。  
すると、またそこがわずかに揺れた。何かが・・・いる・・。  
「・・・・・蜘蛛・・・・さん・・・・?」  
恐怖に耐え切れなくなった少女は、思わずそう言った。しかし、明らかに違う・・・。そして、少女の足指に、感触が走った。  
にゅるっ・・  
「んあっ・・・!!」  
鋭い快感が、少女の身体を突きぬく。  
粘液に包まれた、妙な感触。ナメクジではない。もっと大きな、少女の拳ほどの生き物――  
ぬちゅ・・  
それは少女の足首をゆっくりと這い上がる。  
「ふわあああ!!」  
信じられないほどの快感が身体中に走った。意識を取り戻したときから、変な感じはしていた。身体が、熱く疼くような感じ。股間がむずむずとくすぐったいような感触。  
そう言えば、昨日、果実を食べたあともこんな感じだった。まさか、自分の知らないうちに――  
しかし、強烈な快感に、考えていたことは全て打ち消された。  
 
生き物がももを這い上り、そして、膝の裏側に触れた。  
「いっ・・いやぁぁーっ!!」  
その瞬間、少女は、愛液を噴き出して達してしまう。  
「はっ・・はっ・・・あうっ!!」  
息を整えるまもなく、快感が次々と襲いかかってくる。  
そして太ももを少しずつ蠢き、付け根の辺りに挿しかかった瞬間、少女は再び絶頂を迎えた。  
生き物は向きを変え、なにかがひくひくとうごめいているあたりに向かう。  
「う・・そ・・だめっ・・・」  
にゅる・・  
「・・だめ・・そこにさわったら・・」  
ぬちゅ・・  
「おねがい・・・おねがい・・・やめてっ・・!」  
――うじゅるっ!  
「へああぁぁぁぁ〜〜〜〜!!!!!」  
少女は一瞬で三度目の、壮絶な絶頂を迎えた。  
愛液は凄まじい勢いではじけ、肛門からは腸液がぴゅっぴゅっと噴き出し、少女の服の中では、小さく可愛らしい乳首から、何かがこぽこぽと溢れはじめた。  
刹那、少女の手の指先、首にも、ぬめった感触が走る。  
――たくさん、いる・・・!  
それらはいっせいに、絶頂に達している少女に襲いかかった。  
首筋や両腕に張り付いて犯すもの、両の乳首に服の上から吸いつき、母乳をすするもの、果てには少女の唇に身体を入れ、少女の舌を愛撫するものまでいた。  
少女は全身総毛立ち、唇から泡を噴きながら、何度も何度も失神と絶頂による目覚めを繰り返していた。  
少女は夢か現実かも分からないような状況で、かすれた声で、叫んだ。  
「おねが・・い・・! わたしを・・そっとしておいて・・・! 穏やかに・・暮らしていたいだけなの・・  
わたし・・・は・・・・森・・・・」  
そう言いかけて、再び少女は気を失った。  
 
少し経って・・・・。  
少女は、どすん、という強い衝撃に、我に返った。  
気がつくと、少女は地面の上にいた。どうやら、蜘蛛の糸が切れ、木の上から落ちたらしかった。  
少女は、身体に覆いかぶさってきた糸をほどき、辺りをきょろきょろと見回した。  
もう日は完全に落ち、星の明かりだけが、その開けた場所を円く照らしている。あたりは静まり返り、少女の身体を貪っていた蟲はおろか、蜘蛛や子竜の姿も見えない。  
では、どうして蜘蛛の糸が切れたのか――自然に切れたにしては、乗っていた少女の身体は小さすぎる。  
しかし、深く考えている気持ちの余裕は無かった。好奇心よりも不安が先に立ってきて、とにかく一度家に帰ろうと思った。  
そばに落ちていた下着を素早く身につけ、少女は力の入らない脚で何とか立ち上がる。身体の疼きはあまり収まってはいなかったが、今はそれどころではない。  
いつもは穏やかで静かな森の夜も、今日はほんの少しだけ恐ろしかった。  
羽で飛ぶほどの力は残っていなかったので、少しふらつきながらも、少女は歩き始めた。  
――早く帰って、身体を洗って、休もう。それで、明日になったら、ゆっくり考えてみよう。  
森の生き物に起こっている行動の異変・・それは、少女に対してだけのものなのだろうか。少女は、森が変わっていくことを、何よりも恐れていた。そしてもし何かが起きているなら、自分が森を護らなくては、と思った。  
そんなことを考えながら、少女は広場を抜けようとした。ところが木々の中に入ろうとすると、そこにたくさんの何かが待っていた。  
「う・・・」  
葉や花の上、土の上、木の幹にまでびっしりとうごめいている、無数のナメクジ・・。  
少女は少し唖然として、立ち止まった。  
「・・ごめんね・・今は帰らせて」  
少女は向きを変え、少し走るようにして広場を横切ると、反対側から森の中に入りかけ、しかしそこで再び足を止めた。  
 
ぞろぞろという、複数の何かが動く音。――そのとき、少女の肩に何かが落ちてきた。  
「いやっ!」  
思わず少女は叫んで、それを手で払う。するとそれは地面に覗く木の根にぼとり、と落ちた。それは、少女の拳よりも少し小さく、何かの幼虫らしかった。  
「ご、ごめんなさいっ・・大丈夫だった?」  
少女は焦って身をかがめると、小さくのたうつイモムシを自分の手の上に乗せた。  
「怪我は・・無いかな? わたし、驚いちゃって・・・ほんとに、ごめんね」そう言ってイモムシを地面に戻しかけて、少女ははっとした。  
いつの間にか木々の奥から、似たような幼虫がたくさん集まってきていたのだ。  
少女は焦って立ち上がり、虫を踏まないようにして、広場の真ん中に駆け足で戻る。  
「・・どうしよう」  
見ると、ナメクジたち、それに今の幼虫の群れが少女に向かって這い進んできている。それだけではない。  
先ほど少女が吊るされていた木の上から蜘蛛が糸を伝って近づき、あたりには蛾や蝶の類がひらひらと舞っている。  
いつしか、森の様々な生き物たちが、少女を取り囲むように集まってきていた。  
少女は、逃げ場が無くなったことを悟って、小さくため息をついた。  
「・・わかったよ。あなたたちから逃げるなんて、おかしいよね。  
あなたたちの、気の済むようにしていいよ。わたしは――わたしは大丈夫。死んじゃったりしないから・・」  
少女はそう言って、ちょっと悲しそうに微笑んだ。  
虫たちが嫌いなわけではない。犯されるのが嫌なのでもない。ただ、無理やりそうされることによって、自分の心が森と離れていってしまうような気がして、それが悲しかったのだった。  
少女は知らなかった。少女と森が、一心同体であるように、森とそこに住む生き物たちも、ひとつの存在であるということを――。  
少女は目を閉じて、虫たちの責めを覚悟した。  
しかし、いくら待っても虫たちは動き出さない。ただ、少女を見つめて、そこにたたずんでいるだけだった。  
 
――どう・・したのかな。  
その時、静まり返った空間に、ばさばさと言う羽ばたきが聞こえた。  
見ると――  
「ドラゴンさん・・」あの子竜が、虫たちの上を、ゆっくりと少女に近づいて来る。その口には、何かがくわえられていた。  
子竜は、少女の目の前にそっと降り立った。  
「翼・・・治ったんだね」少女はちょっと嬉しくなって、微笑んでそう言った。  
子竜は、クルルル、と喉を鳴らし、口にくわえたものを少女に差し出した。  
「なあに? それ」  
星明りに照らされたそれは・・今まで、少女が見たことも無いような、美しい花――。  
「わあ・・・きれい。これ・・わたしにくれるの・・?」  
すると子竜は、うなずくようにして、それを少女の手に乗せた。  
「・・ありがとう」  
そう言って少女が手で子竜の顔に触れようとしたとき、やや強い風が少女や子竜、そして虫たちに吹きつけた。  
その風は、やけに暖かく、そして、甘い匂いがした。  
少女が、はっとして立ち上がると、もう一度、暖かな風が優しくあたりを舞った。  
それが奇跡の始まりの合図だったのかもしれない。  
刹那少女が見ている前で――突如として、あたりが淡い光に満ちた。星の光ではなかった。  
良く見ると、その不思議な光は上から降り注いでいるのではなく、地面や、草や木、或いは空気が発していた。  
さらにその光の中の地面から、いくつもの芽が芽吹き、信じられないような早さで茎を伸ばした。そしてその先端に花が開くと、その途端、あたりに満ちた甘い匂いが一段と濃くなり暖かさを増した。  
少女が声を失って見とれていると、少女を隙間無く囲っていた虫たちがぞろぞろと蠢き、少女の正面に一本の道を開いた。その道の先を見ると、そこにとても美しい、一本の花が咲いていた。その花は、少女が手に持っているそれと同じものだった。  
 
少女は、その瞬間に全てを理解した。  
虫たちや子竜が起こした行動、それは、異変を表すものではなかった。  
それは、今までずっとあったもの。少女が森と共に過ごしてきて、そしていつの間にか芽生えていたもの。  
――もし草木が動けたなら、虫たちと同じことをしていたかもしれない。  
それが叶わないものだったから、虫たちが代わりにそうしただけのこと。虫たちは、森の心を代弁しただけだった。  
少女が心に持っていたものを、森もまた感じていたのだった。  
――それは、愛――。  
もし、心底恋しいひとがそばにいて、心を許しあっていたら、触れずにいられるだろうか?  
もし、そのひとが微笑んで触れてきたら、抱きしめずにいられるだろうか?  
触れたくとも、抱きしめたくとも、森は――草や木は、動くことが出来ない。  
出来ることと言ったら、綺麗な花を咲かせてあげること。美味しい果物を食べさせてあげること。  
それに、虫や動物で、肉体的な快楽を与えてあげることぐらいだった。  
しかし――奇跡は起こった。  
森は、少女に愛をささやくことが出来たのだ。  
あたりに満ちた光がゆっくりと消え、もとの闇に戻っていく。  
その中で、少女は小さくつぶやいた。  
「・・私も、愛しています」  
 
――少女は、虫たちの中で、泣いていた。  
嬉しくて、幸せで、泣いていた。  
目からぽろぽろとこぼれて止まらない涙を、しゃくりあげながら、何度も服の袖でぬぐう。  
子竜が、心配そうにその顔を覗きこんでいた。  
――少し落ち着いてから、少女は手に持った美しい花を眺めていた。そしてちょっと考えてから、その花を髪の毛に挿し、それから、いつもみたいに三つ編みの方が似合ってるかな、と少し思った。  
「みんな、ありがと・・」  
少女は、子竜や虫たちに言った。  
そして、ゆっくりと服のボタンを外し、腕を抜くと、それを脱ぎ去った。続いてスカートのとめ具をはずし、ふわり、とそれが地面に落ちると、最後に残った白い布を、ちょっと恥ずかしそうに、下ろした。  
少女の身体に身についているものは、髪にささった花飾りだけだった。  
「あの・・ね。さっきみたいに、してほしいな」  
少女は言って、服を横にどけ、その場に座った。  
もう恐怖は無かった。ただ、自分が拒み続けてしまったという罪悪感と、自分の全てを愛して欲しいという気持ちが入り混じっていた。  
それに落ち着いてみると、身体の疼きも強烈に湧き上がってくる。  
裸の恥じらいも手伝って、少女はいつの間にか目を潤ませ、脚をもじもじと動かしていた。  
ふと、子竜が少女の脚に触れた。愛撫と言うより、なにかを急かしているような、そんな感じだ。  
どうやら、身体の向きを変えろと言っているらしかった。  
「どうすれば、いいのかな・・?」すると、子竜は自分の身体でそれを示し、少女は真っ赤になってしまった。  
「・・わかった・・・」  
少女はそう言って地面に膝を突くと、尻を高くつき上げるように四つんばいになった。  
 
――うう・・恥ずかしいよう・・  
少女は恥辱で耳の先まで真っ赤にして、しかし少女のそこはすでに濡れ、臀部がピンク色に染まって、少女の身体が興奮状態にあることを示していた。  
そして――一気にすると少女が疲れてしまうという気遣いだろうか――虫たちの一部が、少しずつ、少女に触れ始めた。  
子竜の舌が、少女の股間をぺろり、と舐め上げ、少女はひんっ、と変な声を出してしまう。子竜はくすぐるように、膣口と肛門を交互に舐めた。  
少女がその刺激にうっとりしていると、肛門に何かがぬるり、と入って来た。一瞬子竜の舌かとも思ったが、感触が違う。  
少女は少し顔を上げ、後ろを振り返ってみた。  
すると、美しい羽の蝶が、そこに身体を差し込んで、犯していた。  
「はっ・・あっ!! そこ・・違うよう・・んんっ!! ああ・・え・・?」  
喘ぎながら見ていると、その蝶よりも一回り大きな蛾がひらひらと少女の股間に舞い降り、その身体を同じようにして、今度は膣口に差し入れた。  
「あっ・・ああああーっ!!!」  
膣口から少量の愛液がたらたらと溢れ、少女の脚を伝って流れた。  
そしてそれを境に、蛾と蝶が交互に身体を出したり入れたりして、刺激をくわえ始める。  
「そ・・それ・・すごく気持ちいい・・よ・・ああ・・ああ・・!」  
今日の朝、カエルにその間の肉を揉まれた感触がよみがえってくる。  
二匹の身体が出入りするたびに、直腸と膣の間の肉が擦れて、強烈な快感を生み出していた。  
ゆっくりとした動きが、じわじわと少女の性感を高め、優しく、高まりに押し上げていく。  
少女はそばに置いてある服をぎゅっと強く掴むと、身体をふるふると震わせ、絶頂を迎えた。  
肛門と膣口がきゅうう、と締まり、二匹の身体をくわえ込み、続いてそこから、ぷぷっと音がして、愛液がしぶく。  
背中を上に向けているせいか、二対の羽がいつもより激しく痙攣し、擦れて音を立てた。  
虫が身体を少女の穴から引き抜くと、少女は満足げに息をついた。  
しかしすぐに、次の感触がやってくる。  
脚をなにかが這い上がってきて、それは数を増していく。  
 
見ると、今度は蛾や蝶の幼虫たちだった。  
その中には、さっき少女がはたいてしまったイモムシも混じっている。  
「ちょ・・ちょっと待って! あのね、わたし・・あうっ!!」  
少女は何か言いかけるが、最初の幼虫が少女の秘所に到達し、言葉が中断されてしまう。  
幼虫たちはそこに集まってきて、思い思いに動き回った。  
なんだかじれったいような感覚に、少女は不満そうなうめき声を漏らす。すると、例のイモムシが、少女のクリトリスに近づき、その包皮の中に口を差し込むと、甘く、そこを噛んだ。  
「くううう・・うっ・・!!」  
少女はたまらない感覚に声を上げ、同時にその膣口がぱくぱくとひくつく。すると、まわりで動いていた幼虫たちが、そこに集まり、一匹が頭を入れた。  
「・・あ・・あ・・入っていく・・あそこに・・入っていくよう〜!」  
一番小さいものでも、少女の親指くらいはあった。それらが少女の膣口に、頭を次々と挿し入れ始める。  
「だめっ!! だめだめだめーっ!!」  
少女の叫びに構わず、先頭の虫が、少女の中に完全に隠れてしまう。そして次から次へと、うごめく虫たちを、少女の股間は飲み込み始めた。  
一匹ずつ、幼虫を膣に迎え入れていくうち、少女は下腹部にうごめく感覚に、突き上げられて言った。少女は腰をさらに高くつき上げ、頭をいやいやするように横に振ると、絶頂の叫びを上げた。  
「・・うふぅぅぅぅぅぅぅん!!!」  
少女は粘液を噴き出し、かくかくと膝を揺らして達すると、身体をぺたり、と地面につけた。  
「はあ・・・はあ・・・・」  
荒い息をついている少女に、ナメクジたちが群がり始める。すると少女は慌てて叫んだ。  
「ちょっとだけ、ちょっとだけ待って! お願いっ」  
少女は起き上がって、そばの服で股間を隠す。  
「あのね、あのね・・」  
少女は少し顔を伏せて、小さい声で言った。  
「わたし・・お腹すいちゃった」  
 
 
「わあ、美味しそう」  
少女は、積み上げられた果物に目を見張った。  
「ありがと、ドラゴンさん」  
運んできた子竜にそう言ってにっこり笑うと、子竜は少し照れたように顔を背けた。  
「それじゃあ、いただきます。・・みんなも、一緒に食べようね」  
少女は、虫たちの所に果物を置き、自分も一つを手にとって、かじった。  
こりこりと言う食感が、とても美味しく、少女はすぐにそれを平らげた。  
続いて二つ目を手に取り、口に持って行こうとした時、子竜が何も食べずに空を見上げているのに気付いた。  
「ドラゴンさん」  
少女は、手に持った赤い果物を子竜に差し出す。  
「お腹、すいてるんでしょ? こんなにいっぱい、ひとりで運んで来てくれたんだもの」  
子竜は少しだけこっちを向いて、少しだけばつが悪そうに、その果物を受け取った。  
子竜がそれを食べ始めると、少女も安心したように、食事を続けた。  
――少女が、白く柔らかな果実を、食べているときだった。  
「ん・・・?」  
少女は身体の中に妙な違和感を感じた。そう言えば、下腹がやけに張る。  
「・・お腹がきつい・・」  
少女は少し苦しそうな声を出す。  
何かがお腹の中で、動いているような感じ。・・いや、事実、動いている――  
少女ははっとした。自分の身体に入っていった幼虫たち。それを忘れていたのだ。  
「あ・・ふうっ!!」  
今度は、その声にはっきりと快楽の色が混じる。  
果物に乗っかって口を動かしていた蜘蛛が、ちょこちょこと少女に近づき、その顔を心配そうに見上げる。  
「だ・・大丈夫だよ。・・ただ・・・・はうっ」  
少女はビクン、と身体を震わせた。  
中の幼虫たちは、出口に向かって少しずつ、膣を這い進んでいる。  
そのうち、少女の膣口の奥に、一匹の頭が見えた。  
 
「あ・・う・・・産まれる・・・」  
少女がかくかくと膝を痙攣させると、その間に見える小さな場所から、処女膜を押し広げ、緑色の幼虫がのろり、と産み出た。  
その瞬間、その甘い衝撃に、少女は軽く達してしまう。  
すると、膣の痙攣が幼虫たちを助けたのか、すぐに次の虫が入り口にその姿を覗かせた。  
「はっ・・はっ・・・今・・出してあげるからね・・」  
少女は、切なそうに微笑んで、膣にわずかに力を込めると、ぷぷっ、と愛液を隙間からしぶかせて、再び達しながら二匹目を産み落とした。  
その後数秒置きに、少女は虫の幼生を膣から産み落とし、その一匹ごとに絶頂を迎える。  
少女の足元にはいつの間にか十匹ほどの、身体を濡らした幼虫がうごめいていた。  
「次の子で・・・最後・・かな」  
少女は肩で息をしながら、果物を持っていないほうの手で、自分の下腹部を優しくさする。  
そして、最後の幼虫が、その身体を外に覗かせた。  
「も・・もう少し・・だよ・・・頑張って」  
少女は自分の膣口から身体の半分を出してもがいている虫に、震える声で優しく言った。  
そして、身体の残りの部分が一気に押し出されると同時に、少女は叫び声を上げて痙攣した。  
その口元から、固形物の混じった涎が、だらだらと溢れた。  
「ふーっ・・ふーっ・・・」  
少女は苦しそうに呼吸して、絶頂の余韻が過ぎ去るのを待った。  
身体が少し落ち着くと、少女は口をぬぐって、濡れた幼虫たちに話しかける。  
「あなたたちも・・お腹、すいたでしょ? 一緒に、食べようね」  
そう言って、一番甘そうな果物を一つ、幼虫たちの真ん中に置いた。  
 
 
夜も更けて――  
子竜が、少女の裸の膝に頭を乗せ、気持ちよさそうに眠っている。  
起きているのは、少女と虫たちだった。  
すばしっこい動きで、何かが少女の手に飛び乗る。  
「あ・・蜘蛛さん。ふふっ」  
少女は、蜘蛛を自分の肩の上に乗せると、空を見上げた。  
明かりが何も無い分、星がとても美しく輝いている。  
「きれい・・・」  
少女はつぶやいて、小さくため息をつくと、子竜を起こさないように、そのままそっと横たわった。  
土や、草の感触が、直接肌や羽に伝わってきて、心地良い。  
蜘蛛が少女の腕をちょこちょこと歩きまわり、それがくすぐったくて、少女は少し笑った。  
仰向けに、星を見上げていると、何かが少女の耳に触れた。見ると、ナメクジがぬらぬらと耳の先にうごめいている。  
「ふふ・・一緒に、星を見る?」  
そう言って少女はナメクジに笑いかけた、しかしその時。  
「んっ・・」反対の耳からも、同じような感触がやってくる。いつの間にか、少女の両の耳に数匹ずつ、ナメクジが集まってきていた。  
「ちょっとやだ・・くすぐったいよ・・ん・・・」  
耳に上ってくるナメクジたちの感触に、少女は自分の息使いがほんの少し荒くなっているのに気付いた。  
耳たぶや、耳の裏にも、ナメクジの身体が這っている。くすぐったさが快感に変わるまで、あまり時間を必要としなかった。  
「わたし・・・・うっ・・・星を見てたのに・・もう・・・」  
少女の頬はピンク色に染まり、はっきりと少女が興奮している事を示していた。そのうち、ナメクジが数を増してくると、少女はさらに切なそうな声を出し始めた。  
「うっ・・ふ・・ん・・・。・・・この子・・たち・・耳だけでわたしを・・あうっ・・・」  
少女は、いつの間にか脚をすり合わせ、腰をゆっくりと、細かく前後に動かしていた。  
 
「あ・・れ・・・。・・・気持ち良くて・・・なんだか・・・耳が・・・と、溶けそう・・・」  
少女の秘所には、何もいなかった。辺りは静まり返り、淫らな音も聞こえない。にも拘らず、少女は星の照らす中、ゆっくりと、静かに、性の絶頂へと持ち上げられていった。  
「あ・・・あ・・・あふっ・・・・!!!!」  
少女が小さく叫ぶと同時に、秘所からぴしゅっ、ぴしゅっ、と何度か熱いものが噴き出す。  
少女はたまらなそうにぶるぶると身体を震わせ、鳥肌を立てながら、熱く切ない吐息をゆっくりと吐き出した。  
くたり、とその肢体から力が抜けると、ナメクジたちも満足したようにその場から離れた。少女の声からか、身体の震えのせいか、子竜が目を覚まして、顔を持ち上げる。  
「ドラゴン・・さん・・ごめん、起こしちゃったね」  
少女はそう言って子竜の頭を力無く撫でた。  
「もう・・この包帯、取っちゃおうね」少女は身を起こすと、子竜の翼に巻いた包帯をそっとほどき始めた。  
そして、寄り添ってくる子竜や虫たちを見て、思わずつぶやいた。  
「・・大好き・・・」  
少女は無意識に発してしまった自分の言葉に、少しだけ顔を赤らめた。  
「さ・・取れたよ。もう大丈夫だからね」少女がそう言って、ほどいた包帯を自分の服と一緒に置き、再び横たわる。  
星空に目をやった時、何かがひらひらと少女の胸の上に舞い降りた。  
少女がきょとん、とした表情で見ていると、美しい羽を持つそれは、少女のほんのわずかな膨らみの片方に上り、その真ん中の、小さな桃色の突起に触れた。  
「うっ・・」少女が小さくうめきを上げ、蝶はそこを舐めるように、刺激し始める。  
「・・あっ・・それ・・・ちょっと・・・すてき・・・・だな」  
少女はうっとりとした表情で、つぶやくように言った。そして、数十秒後、少女は軽い峠を迎えた。  
「あ・・・だ・・だめっ! 蝶々さん・・出ちゃう・・・・」  
直後、少女の両の乳首に、白く濁った水の玉が生まれ、蝶はそれを美味しそうに舐めとった。  
 
少しずつ、周りの虫たちが自分に集まってきているのに、少女は気付いた。  
「みんな・・・・」  
少女は、わかったよ、というように、少し微笑んだ。  
蝶が、少女の乳首を再び刺激し始める。同時に、ぬらぬらした感触が身体中から這い登ってきた。  
ナメクジかと思ったが、それだけでなく、他の生き物も混ざっていた。貝の類だろう。その感触は、ナメクジのそれとはわずかに違っていた。  
少女が、はっ、はっ、と荒い息をつき始めると、蜘蛛がその秘所のあたりに飛び移り、そこを、複数の脚で撫でる。  
少女は、声も無く、軽く達した。  
息つく間もなく、少女への刺激は続く。蜘蛛が少女のクリトリスを探し当て、その包皮で遊び始めたのだ。  
皮を何度も剥いたり戻したりされていく内に、少女はすぐに次の絶頂を迎え、今度は声を上げて達してしまった。  
見ていると、少女のそこに、カエルとトカゲの相の子のような、ぬめぬめとした肌の、妙な両生類が近づいて来る。  
そしてその粘液に濡れた頭と、長い首を少女のそこに、ゆっくりと挿し入れ始めた。  
「ああーーーっ!!」  
少女のそこはきゅうう、と締まり、それが両生類をさらに奥へ招き入れてしまう。その生き物は、さらに首を深く潜らせながら、少女の膣壁や処女膜を、舐めたり、口でくわえたりして、犯していく。  
そして処女膜が強くくわえられた瞬間、蜘蛛が遊んでいたクリトリスの包皮をにゅるり、と剥き、中の小さく丸いものを直接、手で揉むようにしごいた。  
「・・うわあ・・あ・・・・すっ・・すご・・い・・よう・・・・。  
く・・ううううう〜〜〜っ!!!」  
少女は激しく身を震わせ、再度絶頂に達した。膣口と尿道口から粘液が噴き出し、乳首からはぴゅっぴゅっと何度か白いものが飛び出る。  
凄まじい快感が、少女の下腹全体を包み込むように広がった。  
「はあ・・はあ・・・・あうっ!!」  
快感は少女が落ち着くのを待ってはくれなかった。  
 
膣の中が快感に火照り、ひやりとした両生類の舌がかえって心地良い。体中をうごめくナメクジたちも、少女の快感を大きく膨らませていた。  
しかし、少女は誰にも触れられていない背中に寂しさを感じ、力の入らない身体で何とか起き上がる。  
そして羽を切なそうに広げると、虫たちは待っていたかのようにそこにも集まり始めた。  
「くううん・・!!」  
羽を犯され、少女は可愛らしい声を出してしまう。さらに背中にもナメクジが這い、背筋から言い様の無い快感が襲う。  
「・・・わたし・・・また・・・出そうだよう・・!」  
少女がたまらなそうな声で言うと、虫たちは少女にとどめを挿そうと、それぞれの動きを変えた。  
膣の中の両生類は、壁のざらついた部分を執拗に舐め始め、蜘蛛は、クリトリスを直に揉みしごき、そして甘く、噛む。同時に虫の幼虫が、少女の肛門に身体を潜り込ませる。  
少女は壮絶な快感に、失神をもたらすほどの絶頂が来るのを感じた。しかし、それによって、自分の身体にまだ満たされない部分があることに気付いた。  
少女は、絶頂に一直線につき上げられながら、かすれた声で、子竜に言った。  
「ド・・ドラゴ・・さん・・・お・・ねがい・・口付け・・して・・・  
早く・・はやく・・・・・!」  
子竜はすぐに少女の唇に自分の口の先をつけると、その中に舌を挿し込み、少女の舌に絡ませた。  
そして次の瞬間――。  
「んっ・・・・んっ・・・・・・!」  
少女の全ての細胞が、甘い叫びを上げた。  
「――・・・・・・・・・っ!!!!!!」  
可愛らしい、少女の膣の入り口。そこに差し込まれた、両生類の身体の隙間から、ぶしゃあっ、と大きな音を立てて、まるで放尿のように愛液が噴き出し、それがだんだんと白く濁っていく。  
同時に肛門から液体が飛び出し、草の間に染み込んでいった。  
乳首からは断続的に母乳が噴き、口から涎が、その小さな鼻からは鼻水が流れる。  
少女は、身体の快感のためだけではなく、心が満たされた喜びで、涙を溢れさせていた。  
そして、その絶頂に上乗せするように、更なる性の絶頂が少女を襲った瞬間、少女の意識は闇に飲み込まれていった。  
 
 
少女は、暖かな光に、目を覚ます。  
気がつくと、そこは自分の家のベッドの上だった。  
「・・・・ふう・・・」  
少女は身を起こし、靴を履くと、そばのローブを身にまとった。  
窓から外を見ると、太陽は高く上り、どうやらもう昼近いようだった。  
身体に一切の汚れは無い。  
子竜か誰かが洗い落としてくれたのだろうか――。  
少女は、椅子に座ると、自分の髪に触れた。そして・・そこにある花飾りを、手に取り、眺めた。  
夜に見るのとはまた少し違う、穏やかな美しさがそこにはあった。  
少女はふと、部屋の隅に何かが落ちているのに気付いた。  
それは少女の着ていた服と、汚れた包帯だった。  
「・・ありがとう」  
少女は誰にとも無くつぶやく。  
森と私を、強く結び付けてくれて――。  
少女は、もう一度花飾りを髪に差し、そっと立ち上がる。  
窓を開くと、さわやかな風が流れ込んできた。  
少女は幸せそうに微笑んで、その風を深く吸い込み、吐き出す。  
少女は、今まと同じに穏やかな、しかし、少しだけ何かが違う日々が始まろうとしているのを感じた。  
 

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