・・・・・・・・・・・・・・・・。
心地よい曲が流れている。
(あ、この曲知っている・・・なんて曲だっけ・・・?)
「う、うーん・・・・」
あれから何時間たったのだろうか。「僕」はようやく目を覚ました。
(体が重たい・・・・・・・・ここは・・・どこだ・・・?僕は・・・何をしていたんだっけ・・・?)
僕は今までの経緯を思い出そうと試みたが、思い出そうとすると頭がズキズキ痛むので途中で思い出すのを断念した。
(何かスースーすると思ったら僕全裸になってるじゃないか・・・)
厳密に言えば全裸ではなく、お腹の辺りにマワシのようなものが巻きつけられていた。
恐る恐るゆっくりと目を開けてみるが、真っ暗で何も見えない。
突然、周りの景色が真っ白に染まった。
(うぅ、眩しい・・・!眩しすぎて目を開けていられない・・・)
ガチャ!という音とともに声が聞こえてきた。
「やっと目が覚めたようね。」
声の主は女だった。まだ目を開けられないので顔はわからないが、口調と声質で女だとわかったのでとっさに恥部を手で隠した。
「お前は何者だ!一体ここはどこなんだ!?僕をこんな格好にして何が目的なんだ!」
「まあ〜よくも家畜の分際でそんな舐めた口を聞けるわねえ。」
「なんだと!」
「まあいいわ。今回だけは見逃してあげましょう。時期にそんな口も聞けなくなるだろうしね。1つずつ答えてあげるわ。」
フトシは女の態度が気に食わなかったが、下手に逆らってまた暗闇の中でほったらかしにされるのが嫌だったので黙って聞くことにした。
「1つ目、私はここの経営者。つまりお前のご主人様。2つ目、ここはお前を育てるための豚小屋。3つ目、私の目的はお前に立派な種豚になってもらうこと。以上よ。」
「なんだってあんたにそんな権利が!!ウグッ!」突然お腹に激痛が走った。
僕のお腹の周りに巻きついたマワシのようなものがグイグイとお腹を締め付けている!!。
「もう一度そんな舐めた口を聞くつもりなら胴体が千切れるまでほっておくわよ。」
「す・・・・すいま・・・せん・・でした。・・・許・・して・・くださ・・い。」
「ご主人様は?」
「ご・・・ご・・・主人・・様。」
「よし。」
女がそう言うと、だんだんと締め付けが緩くなっていった。
「私に逆らったら、またそのマワシがお前を締め付けるわ。以後気をつけることね」
まるで西遊記の孫悟空の気分だ。いや、僕の体型的には猪八戒か・・・。
「自分の立場がわかった?お前は私のペット。家畜なの。わかったらブヒーとお鳴きなさい。」
「ブ、ブヒー」屈辱で顔が真っ赤になりながらも、命令どおりに僕は鳴いた。
そうこうしてるうちにすっかり目は光に慣れたようで、僕は辺りを見回してみた。
(これは・・・・)
室内のはずなのに・・・なぜかところどころに草が生えていて泥溜まりまである。
それに、僕が思っていたより全然広かった。
「ウフフ、どう?お気に召したかしら?」
「それはそうとお腹空いてるでしょ?食事持ってきたわよw」
とても良いニオイがする。
僕はたまらずにバケツをのぞいた・・・。
「ありがとうございますご主人様。お腹ぺこぺこだったんですよ・・・ってこれはッ!?」
バケツの中身は・・・・・何か色々なものがゴチャゴチャと入っている残飯だった!
「おいしそうでしょ?おかわりもあるからいっぱい食べなさい♪」
困惑する僕を見て魔女は楽しそうにしている。
「こ、こんな豚の餌みたいなの食べれるわけないじゃないか!」
「そんなことないわよ。お前には相応しい食事だわ。ま、食べたくなければ食べなくてもいいけどね。」
「アラ!もうこんな時間じゃない!これからちょっと用事があるからこれで失礼するわね!・・・・・・・それとひとつ良いことを教えてあげるわ。もし今から24時間何も食べないでいられたらお家に帰してあげるわ」
「ホ、ホントですか?」
「魔女に二言はないわ」
(って魔女だったんかい!)
ツッコミたい気持ちを抑えながら僕は啖呵を切った。
「よーしじゃあ今から一日我慢してとっとと帰らせてもらいますよ!」
「ま、がんばんなさいな。じゃあ、また後でね」
そう言うと魔女はさっさと出ていった。
(一日何も食べないなんて簡単さ!それに食べるものと言ったら残飯しかないしそんなもの誰が食べるか!)
僕は時間を潰すためにさっさと寝てしまおうと思って横になった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
確実に30分は目をつぶりじっとしているのだが全然眠くならない。
それどころかグーグー鳴るお腹の音が段々大きくなってちょっとはあったはずの眠気もふっとんでしまっていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
あれから3時間は経過しただろうか・・・・・。【実際には1時間もたっていないのだが】
意識が朦朧とする・・・・。
気がつくと、僕はいつの間にかヨダレを垂らして餌の入ったバケツを覗いていた。
良いニオイがする・・・
バケツを覗いているとお腹の中から声が聞こえてきた・・・。
『食べようぜ・・・ここから出ちまったらこんな美味いものは二度と食えないんだ・・・
それにお前は誰よりも食べることが好きだったはずだろ・・・?さあ・・・食え、食うんだ!』
その声を聞いていると、だんだん残飯が輝いて見えてきた・・・。
「なんて美味そうなご馳走なんだ・・・・食べたい・・・」
そう呟くと、僕は食欲を抑えきれずにバケツに顔を突っ込んでいた。
(・・・・・・・・・うッ!?美味いっ!!なんて美味いんだ!こんなに美味いものは食ったことないぞ!)
豚男はバケツの中身を一心不乱にガツガツべチャべチャとまるでブタのように貪り食っていた。
「ゲェ〜ップ!!」
お腹いっぱいになってすっかり満足した僕はついゲップをしてしまった。
あれほど嫌だったはずなのにおかわりも含めて全てたいらげていた。
「いや〜それにしてもおいしかったなあ・・・」
・・・・・・・!?
僕が悦に入っていると突然、急激な痛みが体を襲った。
「ウグッ!グアァアアアアア!!!!!!」
両手両足が突っ張ったので僕は四つん這いになった。僕の目の前で腕と脚が短くなっていく・・・。指は溶けて融合していき、不恰好なブタのヒヅメの形に変化していった・・・。
人間の歯が抜け落ちて新しい豚の歯が生えた。
「フゴッ!ブゥーブゥー!」
顔から鼻が押し出され大きなブタの鼻になる。
それに合わせ鼻の穴も大きく拡がっていく。
「ブヒィー!!!!」
髪の代わりに豚特有の剛毛が生えた。
それとともに耳がびらびらと大きくなっていくのを感じた。
コンプレックスの原因のひとつだった短小包茎は長く厚くなっていった。
それからゆっくりとコルク栓状に伸びていった。
そして最後に豚になったことの証明であるクルっと丸まった尻尾がケツから生えた。
「ブヒィー!!ブギィー!!ンゴッンゴッ」
僕は自分に何が起こったのかわからず、鳴きわめいてそこら中を走り回った。
力尽きるまで走り続けバテたころようやく僕は自分が何になったのか悟った。
そうか・・・僕は『豚』になったんだ・・・。
思いっきり泣こうと頑張ってみても豚の鼻がブイブイと鳴るだけだった。
こんなことになって泣きたいはずなのに泣けない自分が情けなかった。
僕が途方に暮れているところに先ほどどこかへ行ったはずの魔女が現れた。
「ウフフッ・・・その姿とってもお似合いよ。前よりも百倍はカッコイイわよ。」
「ブギィッ!ブヒィー!ブヒッブヒッ!!」
「残念だけれど、何を言ってるのか全然わからないわ(笑)」
「ブーブー!!」
「そんなに怒鳴っていると彼女に嫌われちゃうわよー」
「ブ・・・ブヒ?(え・・・彼女?)」
僕が振り向くと、そこには一匹の雌豚がいた。
「ブヒ♪」
彼女は可愛らしく鼻を鳴らすと、体を寄せて鼻をこすりつけてきた。
「あら?彼女はあなたのこと気に入ったみたいよ。」
その時既に僕には魔女の声は届いていなかった。
(なんて可愛いんだろう・・・)
僕は彼女に見惚れていた。彼女の耳、彼女の鼻、彼女のふっくらとした体型すべてを愛おしく感じていた。
僕と彼女は見つめあいながら鼻と鼻でキスをした。
その瞬間、僕の頭の中は『交尾』の二文字でいっぱいになった。
僕は彼女の後ろに移動して、自分の豚鼻を彼女の膣に入れた。
彼女は湿った鼻の感触と荒い鼻息のせいでくすぐったそうに体を震わせている。
彼女は目を閉じ、そして、彼女の顔は恍惚の表情を映しだしていた。
ゆっくりと、僕は彼女の背中の上に重々しく乗っかった。2、3回の試したあと、僕はゆっくりと挿入した。
そしてためらわずに性を解き放った!
「ブギィー!!ブフッブヒィブヒィイイイイイ!!!!!!!!!!!」
1分もかからぬうちに二匹は絶頂に達していた。
雄豚のだらしなく弛んだ顔をみると先ほどまで人間だったようにはとても見えない。
「ブヒィ!」最後の一発をしぼりだすころには雄豚から人間だったころの記憶は完全に消えていた。
その様子を伺いながら魔女はつぶやいた。
「これであなたの願いは叶ったわね♪」
実は豚になった男は魔女に自分の願いを叶えてもらおうと依頼していたのだった。
その願いとは、「一生食うことに困らないようにすることと、デブでブサイクな自分に彼女を作ってください」という欲張ったものだった。
魔女はただその願いを叶えただけなのだ。
ただし、それ相応の報いをかねたものだったが。
仲良くじゃれあっている豚を見て魔女は微笑んだ。
それから、二匹の邪魔をしないようにそっとでていった。
後には幸せそうな表情で泥遊びをする二匹の豚のつがいが残されたのだった・・・。
終わり