目が覚めたとき、自分がどこにいるのかよくわからなかった。  
遠くで声が聞こえる気がする。  
「あら、目が覚めたようね。ご気分はどうかしら?ここがどこかって?病院よ」  
「病院?私、事故か何かに?どうしたのかしら?なにも憶えてない…」  
「そう、徐々に思い出すといいわ。時間はたっぷりあるのよ。  
ここはフリーライターのあなたが調べていた、医療事故や人体実験の噂の絶えない  
複合企業傘下の総合病院の別館の特殊研究棟の地下実験室。  
ふふふ、あなたの熱心な仕事振りに特別に招待したの、人体実験のサンプル患者と  
して。普通は入院費の払えない身元不明人や末期の老人が多いのだけど、若く健康な  
女性を迎えられてとても光栄だわ、あははは」  
私は、だるく重い体がまったく動けないように四肢がベッドの革ベルトで固定されている  
ことにやっと気づいたのだった。つづく  
 

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