とんこう【遁甲】  
人目をまぎらわして身体を隠す妖術。忍術。  
(広辞苑より)  
 
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光あるところ影がある。  
「若君、お命頂戴!」  
刀を下に向けて天井から飛び降りた。変な感触。夜具を剥いでみたら藁人形だった。  
「話は全て聞いた!」  
襖をがらっと開けて、まだ前髪も剃ってない子供が入ってきた。寝支度して髪を解いてい  
るので、女の子のようだ。  
刀を向けると、バカにしたような顔をした。  
「言っとくけど、ボク鹿島神道流目録だよ」  
負けそうだ。  
「しからば、これにて、さよならっ」  
床に煙玉を叩きつけたら、煙幕じゃなくて、薬臭い霧が噴出した。  
「間違えた‥‥し び れ 薬 だ‥‥」  
「なにやってんの」  
若君はため息をつきながら窓を空け、部屋を換気すると、痺れて仰向けにひっくりかえっ  
た私のそばにやって来て、ちょこんと座った。  
「これでも源氏の末裔だよ。そんなもの効く訳ないでしょが」  
そうだった。かつて天武天皇が遁甲を能くしたと言われるように、日本を統べる一族は、  
忍者の総本家でもある。この少年、今川五郎はその一族の裔、源氏の中でもサラブレッド  
の血統だった‥‥  
「というわけで解毒剤あげる。舌噛まないでね」  
そういって懐から取り出した丸薬を口移しで飲ませてくれた。  
「名前ぐらい教えてよ」  
「シ、シジミ‥‥」  
「シジミちゃんか。シジミちゃんは何処から来たのかなー」  
「あっ何を」  
まだ体の自由がきかないのをいいことに、いきなり襟元を広げられ、お乳がぼろんとこぼ  
れ落ちた。  
「おお!」  
目を瞠って真っ赤になっている。ちょっと大きいおっぱいを見たからって動揺するなんて、  
まだ子供だ。胸を弄る手の震えが伝わってくる。  
「赤い蝶のしるし。美濃忍者か。いや‥‥今は織田の三郎さんとこだったな」  
揉まれたせいで、左の乳房の上の、小さな隠し彫りの刺青が浮き出てしまったようだ。  
「く‥‥わ、私をどうするつもり」  
「カンタレッラって知ってる?」  
 
管多零螺。遠く南蛮のローマの国の、ボルジア家に伝わるという、恐怖の毒薬‥‥  
「蠱毒とも、ホムンキュールとも言うけど。好きなように呼べばいい」  
言いながら私の武装やボディアーマーを手際よく剥いでいく。  
「武家諸法度によれば、任務に失敗して捕らえた女刺客は勝手次第、だよね? というわ  
けでシジミちゃんはカンタレッラの刑でーす」  
「ま、まさかさっきの薬が」  
「違う違う。ボクのこと。ボクの体」  
五郎は私を布団の上に転がしてうつ伏せにすると、妙に色っぽい仕草で寝巻きを肩から滑  
り落とし、のしかかって来た。指が脚の間に分け入ってくる。  
やっと自由が戻ってきた両手を押し込んであそこをかばった。  
私は悲鳴をあげた。彼の指が溶けて、私の肌に沁み込んで来たような気がしたからだ。  
「痛くは無いはずだけど」  
耳を軽く噛みながら彼が言った。錯覚じゃなかった。  
五郎の指は、まるで幽霊のように私の手を通り抜け、私を犯していた。どうなっているの  
か、空気みたいにつかみ所の無い指が、中で実体を取り戻し、くちゃくちゃ音を立ててか  
き混ぜている。  
「こんなこともできる‥‥」  
彼はもう一方の手も私のお腹にもぐりこませ、陰核を内側から刺激した。快感が電気みた  
いに背筋を這い上がってくる。体が勝手に反応して、私は恥辱にまみれながら夜具に体を  
こすり付けた。  
「さて、ルールを説明します。ボクが先にいったら、シジミちゃんの勝ち。自由にしてあ  
げます。逆だったらシジミちゃんは一生ボクのもの」  
「ああん」  
入り口が押し広げられ、熱い塊が入ってくる‥‥  
 
融けあって一つになる。  
五郎と私の肌は半分近くが一体化していた。彼が体の中にいるせいか、彼の神経網が形を  
とって感じられた。それはギヤマンのように透明な、美しく繊細な触手の束だった。  
彼の欲望が体の隅々まで沁み込んで来るけど、拷問というには遠慮がちすぎた。  
ふと、彼の心根に触れたような気がした。  
「優しいのね‥‥」  
「そんなこと言ってると、酷いことしちゃうぞ」  
乳房の中が急に温かくなって、根元の方から潤ってきた。乳汁が湧き出す感覚ってこんな  
なんだ、とちょっとびっくりした。  
だんだんお乳が張ってきて、布団に押し付けられた乳首の周りが湿った。  
「どう‥‥おっぱいが腫れて痛いでしょう」  
「飲みたいの?」  
五郎は返事の代わりに、練り粉をこねるみたいに乳房を乱暴に玩んだ。搾り出されたお乳  
が、食い込んだ指を伝って滴り落ちた。  
「あっ‥‥痛くしないで‥‥吸ってください‥‥お願い‥‥」  
私は貫かれたままくるっと裏返された。彼が乳首にむしゃぶりついた。  
 
もう一度転がって、今度は私が上になった。  
五郎は欲張って、乳房を両手で束ねるみたいに掴み、両方の乳首を一度に吸っていた。  
お乳が吸いだされるたびに、陶然とするような授乳感覚に襲われたけど、それをこらえて  
腰を動かした。  
計算外だったのは、彼と私の神経網がゆるやかに融けあっていたことだ。私たちは互いの  
快楽を交換しながら、戻ることのできない高みに昇りつめていった。  
あそこだけじゃなくて‥‥  
腋の下とか、うなじとか、おしっこの通るところとか、お尻の穴の周りとか、中の盛り上  
がった所とか‥‥  
体の中と外のいいところ全部に、彼の透明な触手が絡み付いていた。触手の群れは、溜まり  
に溜まったエキスに膨らんで苦しげに悶えた。  
私は突然、仮に自分が勝っても、もうこの少年から離れられないことを悟った。それがカ  
ンタレッラ。  
全ての触手の先端がはじけ、体じゅうに精液を吐き出した。私は全身でそれを貪ったけど、  
子宮がもっと欲しがった。私は彼を締め付けて、一滴も残さず吸い出した。  
 
私の胸に顔を埋めてい喘いでる彼の髪を撫でながら、額に口づけすると、お乳の甘い味が  
した。  
「ボクの勝ちだね」  
「あなただっていったじゃない」  
「だって、シジミちゃんはきっとまた来る」  
私たちは母乳と精液にまみれたままもう一度口づけした。  
「おっぱいの赤い蝶、また見せてよ」  
 
 

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