朝、七時に起床・・・出来れば、何の問題も無いのだが、夜更かしさんな俺に、  
早起きの三文字は無い。時計をちらっと見ると、もう八時。目覚まし時計が、  
早く起きんかい!とでも言いたげに、鳴っているのだが・・・・・  
(学校までは走って五分。ちゃちゃっと着替えて、朝飯食いながら行けば、あと  
十分は寝ていられる・・・)  
温かな布団の中で、そんな事を考えながら、惰眠を貪ろうとするねぼすけ高校生  
な俺の名は、大槻誠。マコリンと呼んで貰って結構。今年十七歳になったばかりの  
フレッシュな若者ではあるが、深夜枠で放映している大人アニメが大好きで、眠り  
につく時間が遅い。故に、朝が苦手。  
(あと十分だけ、寝よう・・・)  
俺はそうと決め、目覚まし時計に手を伸ばす。・・・と、その時、  
「二度寝は駄目よ、誠」  
そう言って、誰かが俺の手を取った。  
「ああ・・・聡美か・・・頼む、その手をどけてくれ」  
「駄目。早く起きなさい。また、遅刻しちゃうわよ」  
誰か、というのは、我が家の隣に住む矢田聡美。こいつは、俺と同い年の女で  
あり、古い馴染み・・・手早く言うと、幼馴染って奴である。  
「愛してるから、静かにしてくれ・・・」  
俺が布団を頭から被り、聡美に対して言うと、  
「何が愛してるから、静かにしてくれ、よ!起きろッ!」  
奴は優しさのかけらも見せずに、叫びながら俺をベッドから蹴り落としやがった!  
途端、寒気に当てられ、子猫のように震えるマコリンこと、俺。  
 
「ほら、走るわよ!誠」  
「あい・・・」  
無理やり起こされ、着替えも適当に俺は聡美に手を取られ、学校に向かう。眠気  
が完全に抜けてはいないので、足取りも重い。対して、聡美の奴は溌剌としており、  
セーラー服のスカートをひらつかせながら、ぐいぐいと俺を引っ張っていく。  
「聡美、そんなに引っ張るなって・・・」  
「じゃあ、走りなさい!」  
幼馴染という間柄というのは、なんて面倒くさいのか、などと俺は思う。隣家同士  
である聡美の奴は、俺の部屋へノックもなしに入ってくるし、何かとおせっかいな  
面も多い。私生活に関しては、実の母親よりも小うるさく、宿題はやったか?とか、  
だらしない格好はいけない、などと、いつもいつも俺にまとわりついては、喚く。  
だから俺は言うのだ。愛してるから、静かにしてくれ・・・と。  
 
家を出てから一分ほど走った頃、俺たちの背後から、  
「相変わらず仲のいいこったな。お二人さん」  
という冷やかしが浴びせ掛けられた。声の主は、俺の悪友ジャック・斉藤。  
おとっつあーんが日本人で、ママンがおアメリカ人のダブルである奴は、俺同様  
ねぼすけ君で、登校時間もギリギリ。こいつも古い馴染みで、気が合う輩だ。  
「まるで夫婦だな、誠と聡美は。いやあ、妬けるね」  
ジャックはそう言って、俺たちの脇を走り抜けていく。  
「ジャック君。あたしと誠をからかうのもいいけれど、遅刻ギリギリの今、虚勢  
を張ってる暇なんかないわよ。ほら、足がもつれてる」  
「キョセイ?ああ、あのウッシッシって笑う人・・・」  
聡美が皮肉ると、ジャックが寒いボケをかました。こいつは、ダブルという特権を  
生かし、時々外人っぽくなる。しかも、わかりにくいギャグのおまけつきで。  
と、その時・・・  
 
「それは、『世界丸出しハウマッチ!』や、『イレポンPM』で一世を風靡した、  
名司会者じゃあああああああああッ!ヘイ、ジャック!」  
と、叫びながら誰かがジャックの後頭部に、飛びまわし蹴りをくらわした。当然、  
ジャックは、糸の切れた操り人形のように宙を舞う。ああ、ギミアぶれいく・・・  
「おはよ♪誠」  
「おす。杏子、今日も元気いいな」  
「えへへ、それがウチの売りやさかいな」  
ジャックの脳天に蹴りを放ったのは、矢崎杏子という同級生。メガネをかけている  
のに、頭の上にゴーグルなんか乗っけてる変な奴だ。足元を見れば、奴はエンジン  
つきのローラーブレードを履いてやがる。これで蹴っ飛ばされたジャックは、遅刻  
間違いなしという所か。まあ、くだらないギャグを飛ばしてばかりいるあいつには、  
これが良薬となりますように。これで、一行にもう一輪花が添えられる。  
「なあ・・・誠。考えといてくれた?この前の話」  
杏子が後ろ向きにブレードを滑らせつつ問う。・・・のだが、見当がつかないので、  
「なんだっけ?」  
「嫌やわ、忘れたん?ウチを、女にしてって頼んだやんか。そしたら、誠もいい  
返事したやん」  
俺が問い返すと、杏子は頬を染めながらそう言った。その瞬間、聡美が足を止め、  
「誠!それ、本当?」  
と、俺に食いかかって来る。形相が鬼の様だ。  
「さあ・・・?そうだっけ?」  
俺は生返事で杏子に話を振る。いや、本当に記憶に無い。  
「うん、ほんまよ。この前、誠が居眠りしてる所に囁きかけたら、うーん、うーん  
て返事したもん。これ、OKってことやろ?なあ、誠」  
「それは寝ぼけていただけでしょ!杏子、いい加減にしなさいよ」  
俺を間にはさみ、聡美と杏子が争いだした。やっぱり、  
愛してるから静かにしてくれ!と、思う。  
 
「大体、聡美は誠の何なん?婚約者って訳やないやろ!」  
「そ、そりゃあ・・・そうだけど・・・隣人として、誠の事を放っておく訳には  
いかないし・・・」  
杏子が食いかかると、聡美は窮した。何と言っても、杏子は積極的で行動力に満ち  
溢れている。対する聡美はどちらかと言えば控えめで、内気なジュリエットって感じ。  
言っておくが、俺は別段色男でもなければ、金持ちって訳でもない。なのに、この  
二人はいつもこうやって、俺につきまとうのだ。正直、悪い気はしないのだが、  
もうちょっと仲良く出来ないものかと、はらはらさせられているマコリンこと、俺。  
「聡美!あんた、誠の何なんや!はっきり言い!」  
「あ、あたしは・・・誠の・・・幼馴染よ!文句ある?」  
「大ありや!ウチはな、誠とステディな関係になりたいんや。そうなると、聡美は  
お邪魔虫でしかないからな。強制排除したる!」  
「なによ、やる気?」  
言い争いは更にヒートアップし、今や二人は一触即発の状態にある。ここは、天下の  
往来なので、キャットファイトが始まりでもしたら、と俺は危惧し、混乱の末、ひとり  
阿波踊りを始めてしまう。こうなると、男はだらしないもので、何も出来ないのだ。  
と、思った瞬間、俺の体が宙に浮いた。何故?ついで、  
「何やあッ!」  
「あれー・・・」  
杏子と聡美の叫びと共に、両名は誰かの体当たりを食らって、飛んでいく。杏子は  
関西人らしくギャグを交え、欽ちゃん走りっぽく飛んでいる。何で、そーなるの!  
「・・・ま、誠・・・遅刻・・する・・よ」  
体当たりを食らわした人物は俺を小脇に抱えながら、そう言って微笑んだ。  
 
「ま、真由美か!驚かせるなよ」  
「ご・・ごめん・・ね」  
俺をまるで小荷物のように抱えている大女。それが、橋田真由美。身長が百九十二  
センチもあるバレーボール部のホープである。なりに反して、こいつは人見知りが  
激しく口下手で、俺以外の人間とは滅多に口もきかない。  
「走る・・・よ・・誠」  
「ちょっと、降ろしてくれ・・・わあッ!」  
俺の言葉を遮って、真由美が唐突に走り出す。そのストライドは力強く、俺を抱え  
ているというのに、びゅんびゅんと風を切りながら突き進んでいく。真由美は、特注  
のセーラー服のスカートを翻しながら、あっという間に学校まで走り抜けた。  
「真由美、パンツ見えてたぞ」  
「・・・エッチ」  
校門の前で、俺は真由美をからかった。今でこそ、俺をも凌ぐ大きな体に恵まれては  
いるが、小さい頃は泣き虫とあだ名され、よくからかわれていた真由美。その都度、  
俺は彼女をかばい、いじめっ子を撃退してやったので、それを恩に着ているのかどうか  
は分からないが、こいつも俺にいつも付きまとっている。まあ、同級生ではあるが、  
妹分って所だ。そして、俺は真由美の腰に手を回し、  
「杏子と聡美、蹴っ飛ばしてたぞ」  
「気が・・・つかなかった・・」  
「そうか、今度からは気をつけような」  
「う・・ん」  
と、奴を優しく諭してやる。朝、まともに起きられないような人間が、何をいわんや  
ではあるが、兄貴面するのが正直嬉しいマコリンなのです。  
 
「誠!今、空いてる?」  
一時間目が終わった頃、杏子が俺を尋ねて来た。頭にばってん印のバンソーコー  
なんぞを張っている。関西人気質がいつまで経っても抜けていない。  
「なんだよ、杏子」  
「別に用はないんやけどな。ちょっとお茶でもしいひん?」  
「放課、十分しかないぞ」  
「ええやん。ちょっとだけ」  
杏子は何やら含みを持った笑顔で、俺をいざなう。何故か奴は屋上へ向かう階段を  
上り始めたので、訝しがる俺。  
「どこ行くんだよ」  
「屋上。空気が綺麗で良いんえ」  
我が校の屋上といえば、校内カップルの発展場として名高く、公然としたラブホテル  
と揶揄されているような場所である。そこに、杏子は行こうと言っているのだ。  
「あのさ・・・杏子」  
「黙って、ついて来!」  
杏子の気勢に押された訳では無いが、俺は黙って彼女の後ろについていく。妖しいと  
いうか、杏子の持つ一風変わった雰囲気に、惹かれているのかもしれない。  
「空気、綺麗やね」  
屋上につくと、杏子が両手をいっぱいに広げ、そう囁いた。風が彼女のスカートを  
掬い、ちょっぴりパンチラ。うむ、いいバイブレーションだ。  
「なあ、誠」  
「なんだ」  
「もう、ええやろ?ウチ、女にしてえな」  
杏子はそう言って、俺を見つめる。なんかこう、ロマンティックな会話がないのか  
なあ、なんて思うが、こういうさっぱりとした所も、彼女の持ち味なのである。  
 
「そうは言っても・・・」  
俺は即答が出来なかった。正直、杏子の事は好きではある。が、同じように聡美の  
事も好きだし、真由美の事さえ気になっているのだ。  
(ずるいな、俺・・・)  
と、懊悩するマコリンこと俺。なにも、全員と体の関係を持ちたいとか思っている  
訳ではない。どちらかといえば、みんなで面白おかしく学生生活を送れれば、と  
俺は願っているのである。勿論、彼女たちから寄せられる好意には、気がついていた。  
だが、結論を出すには、俺たちは若すぎるのではないか、そう思っている。  
「みんな好きってのは・・・答えになってないかな?」  
俺がそう言うと、  
「誠は優しいな」  
と、杏子は笑った。そして、  
「でも、その優しさがみんなを傷つけるって事もあるんやで」  
ふふっと口元を歪めながら、付け足した。  
「・・・・・」  
俺たちの間に、気まずい沈黙が流れる。しかし、俺は答えが出せなかった。  
「まあ、ええわ」  
不意に杏子が口を開く。穏やかな表情と、可愛らしい笑顔を見せながら、杏子は  
つかつかと俺に詰め寄り、  
「今、答えは要らんけど、手付けだけもろとく」  
そう言いながら、唇を重ねてきたのであった。  
 
「ずるい男でもええから、ウチの事好きでいてな」  
杏子は耳元で囁きながら、俺のズボンに手を伸ばしてくる。危うし!マコリン。  
「きょ、杏子ちょっと、待ってくれ・・・」  
「あかん。待たれへん」  
ジッパーがジーッと下ろされていくと、急に心細くなった。だって、杏子の手が  
俺のポコチン君を握っているんだもの・・・女の子の手って、ちめたい!なんて、  
思ってる場合か、俺!  
「今日のところは、これで勘弁しとくさかいに、おとなしくしとき」  
杏子はそのまま跪き、俺のポコチン君にそっと唇を寄せた。ああ、これはもしや・・・  
「あむ・・・」  
と、鼻にくぐもった声を漏らしながら、杏子はポコチン君をぱくり、と咥え込む。  
「ううッ!」  
と、これは俺の声。舌がにゅるりとポコチン君に這わされるという感覚など、初めて  
味わうマコリンこと俺なので、杏子の口唇愛撫に驚きを隠せないでいる。  
「下手でごめんな・・・誠」  
ぺろぺろとアイスでも舐めるかのごとく、這わされる杏子の舌。正直、上手いとか下手  
とかいう話ではなく、ポコチン君を舐めてもらっている事実に、俺は気もそぞろなのだ。  
「やめてくれ、杏子・・・で、出ちゃうよ」  
情けなくも、オナニーの十倍くらい気持ち良い(当社比)!と、俺は思っているので、  
いつザ・メーンが彼女を汚してしまうかと、心配。すると、  
「飲んであげるから、遠慮せんで・・・ええよ」  
杏子はそう言って、ふたたびぱくりとポコチン君を咥え込んでいった。その瞬間、  
放課の終わりを告げる予鈴が鳴ると同時に、  
「だ、駄目だ!出るッ!」  
俺は大量のザ・メーンを杏子に味わせてしまう。どくん、どくんと次々に子種が  
送り込まれると、杏子は眉をしかめながらも、そのままザ・メーンを飲み干して  
いった。  

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