ぴちゃ・・ぴちゃ・・・
ここはどこだろう・・狭いし暗い。細い隙間からの光で辛うじて中の様子がわかる。穴の中・・・かな?
たしか・・・喧嘩して、ご神木のあたりで狩りを・・・
きっかけは些細なことだった。森で3匹の兎を狩った金髪の少女、エナは意気揚々と村へ帰ってきた。
いつもなら大猟自慢で終わるはずの日常。でも、凱旋一番にジェイクと会ったことで話がこじれた。
「よ〜エナ。今日の狩りはどうだった?」
片手で大きなイノシシを持ち、ブロードソードを肩に担いだ黒髪の青年。ジェイクがニヤニヤしながらこっちを見ている。
「なんだ、それだけか。弓なんか使ってるからいつも小物しか狩れないんだよ。」
エナはフンと鼻をならしながら
「こっちはたま〜にしか獲物を狩れない。どっかのバカと違って、毎日毎日安定して狩ってるのよ。」
「そ〜かそ〜か。言い様によって小物しか狩れないってのは、そうも言えるのか。」
その一言がエナの逆鱗に触れた。
「はん!あたしが去年狩ったでかいリザード以上の大物なんか狩ったこともないくせに生意気言ってんじゃないわよ!」
「ありゃまぐれだろ!それ以来兎しか狩ってないくせに!」
二人が始めた言い争いに、周囲の人間はまたか・・・とため息混じりにその様子を見ていた。
散々お互いを罵り合い。最後にエナが
「そんなに言うなら、リザード以上の獲物を狩ってきてやろうじゃないの!」
と大声で叫んで森へ走ったことで今回の痴話喧嘩は終了した。
怒気で顔を真っ赤にしながらエナは狩場をどこにするか考えていた。
夕暮れの森をむやみに走ればモンスターの餌食になりかねない。
だからと言って、今引き返せばジェイクに笑われて終わりだ。
「ご神木の辺りなら安全だし、大きな獲物もいるかな。」
ご神木とは森の中心にある20メートルはあろうかという巨木のことを指している。
村が出来る前からそこにあり、不思議とご神木の周囲にはモンスターは近寄らなかった。エナはそこにイノシシの巣があることを知っていた。
大きすぎて手を出していなかったが、ジェイクの鼻を明かすにはちょうどいい。
息をきりながらエナがご神木に着いたときに夕暮れが近づいていた。
「急がないと、完全に日が暮れちゃう。」
夜目が利かないわけではないが、夜の森で一人狩りをするのは危険だ・・・ん?
「なんだろう・・あれ」
エナがふと見上げると、ご神木の枝に赤い実のようなものがなっていた。
「すごい!ご神木に実がなるなんて!」
エナは幼い頃から『ご神木は実をつけない』と聞かされていた。
「そうだ・・・あの実を持って帰ろう。これでジェイクを馬鹿に出来る!」
エナはご神木に近寄り、実を狙って弓を構えた。しかし・・・
「落ちてくる!?」
赤い実はアケビのように口を開いて落ちてきた。エナへ向かって真っ直ぐに・・・
ここは・・・ご神木の実の中!?
開いていたはずの口は閉じられ、閉じた口の部分からわずかに赤い光が見えてくる。
どうやら日は暮れていないようだ。
力任せに口を開いて取っ掛かりがない上に脱出しようと試みたが、とても開きそうもない。
「誰か〜誰か助けて〜」
叫んではみたが、村からは遠く、助けが来るとは思えない。
それでもエナは叫び続けた。
「だれか〜・・・ジェイク・・・助けて・・・」
何時間経っただろうか・・・いや、外から入ってくる光はまだ赤く、大して時間は経っていない。
不安と疲労からエナは時間をより長く感じていた。
「ジェイク・・ジェイク・・・怖いよ」
そうしているうちに変化が起きた。実が揺れたのだ。助かった・・・
「誰?誰かいるの?お願いここから出して」
しかし、返事はない。モンスターかと思ったが雄たけびさえ聞こえない・・・
「実が・・・動いてる」
エナはようやく気がついて青ざめた。身の中の壁がほぐれて何本もの触手となり、それが動いていたのだ。
「や、やぁぁぁっ。こないでよ!」
触手はエナの体を確かめるようにまさぐるっていた。大きな四本の触手が手足を縛り、自由を奪っているため、身動きが取れない。それでなくても狭い実の中ではエナに逃げ場などなかった。
エナの自由を奪うと残りの触手は器用に服を破き、武器と一緒に吐き出していった。
これから行う行為に必要ないということだろう・・・
「お、お願いだから食べないで!私なんかおいしくないんだから」
ガチガチと震えながらエナは実に懇願していた。
冷静に考えれば滑稽だが、パニック状態のエナは必死に叫び続けた。
しかし、おおよそ服が吐き出され、完全に白い肌を露にしたエナは死を覚悟した。
「ああ・・・液が出てきた・・・あれで溶かされて食べられちゃうんだ」
実の中に溜まっていく透明な液を消化液だと思ったエナは死んだような顔でそうつぶやいた。
「ぅん・・・何?」
予想外の反応にエナは戸惑っていた。恐怖で青ざめた顔は見る見る紅潮し、体の中から疼きが沸きあがってくる。ホシイホシイホシイホシイ・・・・
気がつけば両手足の枷は外され、エナは両手で狂ったように胸を揉みしだいていた。
大きすぎず、だからと言って決して小さくはない美乳が自らの手でもみくちゃにされていく。
「はぁ・・はぁぁぁ・・・なんでこ・・んぁぁぁ」
胸だけでは飽き足らず、クリトリスを指でこねまわし、秘所からは洪水のように蜜が流れていた。
「だめ・・・ジェイク・・ジェイクたすけて」
自分が周りの触手を求めていることを感じながら・・・しかし愛する男の名をつぶやいてギリギリで理性を保っていた。しかし、『準備が出来た』と判断した実は無慈悲にエナに襲い掛かった。
「だめ・・・だめぇぇぇぇぇ」
絨毯のように敷き詰められた無数の触手がエナを愛撫する。
「んぁ・・・ぁぁぁぁぁぁああああ」
全身を駆け巡る快感を抑えきれず秘所から潮を吹きながらエナは叫んだ。すでに何回イッているか考えられないほどの快感がエナを支配している。
「いやぁ・・ふぐぅんんん」
叫ぶエナの口に太い触手が挿入され、ドロリとした液が喉に注ぎこまれる。
「ふぐぅ・・・・ぐ、げほっ・・・はぁはぁ」
液の注入が終わると太い触手がエナの秘所にあてがわれた・・・
「やだ・・・やぁ・・ジェイク。ジェイク・・・」
ジェイクはソワソワしていた。といっても、今日に限ったことではない。
エナを怒らせて、エナが走って行っては、心配そうにソワソワしている。
「そんなに心配なら見に行ってやれよ」
「うるせぇ!俺はあいつなんか心配してねぇよ」
これもいつものやり取りである。しかし・・・
「すまない。ご神木というのはあの大きな木のことか。」
そう聞くよそ者だけが今日の例外だった。
背中に青い刃の大鎌を背負い、青い髪をした冒険者風の男はジェイクにそう尋ねた。
「そうだが・・・あんたは?」
「見ての通り、よそ者冒険者だよ。ご神木に用があって来た」
そうか・・・とは言ったが、ジェイクは不信な目でその男を見ていた。
過去、ご神木が金になるなどということは聞いたことがない・・・
「心配しなくても明日の朝ご神木を調べたらさっさと帰るよ」
ああ、研究所の派遣か。そういった話も初めてだが、あれだけの巨木なら研究する奴もいるのかな・・・
「ところで・・・今日ご神木に近づいた奴はいるか?」
ジェイクが納得しかけたところで男はまた不思議な質問をした。
「ああ、多分エナがご神木の辺りにいる。」
エナがご神木のイノシシを狙っているのを知っていたジェイクは今日ご神木の周囲でイノシシを狩っていた。
怒ったエナがすぐ走って行ったところをみると、多分あそこにいるだろう。
「女か?」
「?・・・ああ」
男の顔が強張っていくのがジェイクにはわかった。
「気が変わった。すぐご神木へ行く」
「おいあんた!この辺は安全って言ってもモンスターが出るんだ。無闇に夜中歩き回るなよ」
「・・・遅すぎるとは思わないのか?」
図星をつかれ、ジェイクは言葉に詰まる。確かに、エナにしては遅すぎる。一人で夜の森にいる危険がわからないはずはないのに・・・
「どう思われようが俺は今行く」
そう言って男は歩いていく。
ジェイクは家に置いてきたブロードソードを手に取り男を追いかけていた。
「道案内ならいらん」
「勘違いするな。俺はエナが心配なだけだ」
「んぁ・・ふぁぁぁ・・」
エナの秘所と菊門には触手が一本ずつ挿入され、エナは腸で蠢く触手にあわせて喘ぎ声をあげていた。秘所に挿入された触手は子宮口で動かなかった。ただ、子宮に何かを注いでいることだけは確実に感じていた。
「あああああ・・・いい・・・いいよぉ」
誰も助けに来ない・・ジェイクは助けに来ない・・なら・・このまま狂ってしまおう・・
・・・・・ナ・・・
・・・・・エナ・・
聞こえるはずのない声。それが聞こえる・・・ジェイク
「エナ−!返事をしてくれ!」
聞こえる!幻聴じゃない。
「たすけて・・・助けてジェイク!」
ご神木の下からエナの声がした
「ご神木の下だ!」
見るとご神木の下に大きな赤茶色の実が落ちていた。
あの中からエナの声がする。
「待ってろ!いま出してやる」
実のすぐ近くから聞こえる声に安堵するエナ・・・
しかし、理性の戻ったエナは自分の状況を思い出した。
こんな姿を見られる・・・最も見られたくない男に・・・
「待って・・・だめ!開けないで」
しかし、エナの願いとは裏腹に実の口はあまりにあっけなく開いてしまう・・・
持ってきた短刀を実の筋に当てると、思いのほか簡単に実が割れた。
中から出てきたのはあられもない姿のエナだった・・・
「見ないで・・・お願い」
「エ・・・ナ・・」
言葉が続かない。何を言うことも出来ない。考えられない。
「・・・とにかく川で汚れを落とそう」
呆然とする俺たちは冷静な男の言葉に従うほか無かった。
近くの川でエナの汚れを落とし、俺の上着をかけてもエナは泣き止まなかった。俺は自分自身が許せず、エナに言葉をかけることすらできない。重い沈黙が流れた・・・
「え・・・痛い」
痛い・・・なんだろうこの痛み。いままで感じたことの無い痛み・・・
「痛い・・・痛いよ。ジェイク助けて・・・」
「わかった!すぐ病院へ連れて行くからな。我慢しろよ。」
我慢なんか出来ない。今すぐ病院へ走っていかなきゃ・・・
私はふらふらとした足取りで村へと向かっていた。
「無理に立つなよ!おぶってやるから」
「だめだ・・・村へ行ってもあんたは死ぬ」
死ぬ?エナが?
「なにいってんだよ!エナを病院へ・・・」
「『ご神木』の種を植え付けられている。いま村へ行けば村ごと『肥料』になるだけだ」
無慈悲な言葉が浴びせられる。
「今の痛みは『宿り主』を集落へ向かわせる為に種が出しているものだ。
村へ行けば全身から根が出てあんたも村人も死ぬ。
このままいても、肥料が減るだけだ。根は出るだろう」
腕からエナの震えが伝わってくる。
「俺がいま出来るのは・・・これだけだ」
男は大鎌を構え、エナの腹に狙いを定めた。
「どうしようもないのかよ・・・」
「ない」
死ぬ・・・私・・・死ぬの?自分に向けられた大鎌が自分の運命を告げている・・・
「言い残すことはないか?」
死ぬ・・・死んじゃう・・・でも死ぬ前に
「私・・・ジェイクを愛してる。今まで素直になれなくてごめんね」
愛してる・・・一番言って欲しかった相手に言ってもらえた・・・
「俺も・・・お前のことを・・・」
ドス・・・・大鎌の青い刃がエナの腹を正確に刺した。
「なんで・・・」
腹から引き抜かれた鎌の先には黒い大きな塊が刺さっていた。あれが種か・・・
「どうして待ってくれないんだよ・・・」
引き抜かれると同時にエナの体から力が抜けた・・・
「俺も・・・俺もエナに伝えたかったのに・・・」
震える声でなんとかそれだけがしゃべれた
「生きてる奴は墓前で伝えろ。お前を待つ間も彼女は苦しむんだ」
そう言うと男は森のご神木のほうへ向かっていった。
反論できない・・・そう・・伝えてもエナはすぐ死ぬんだ・・・
エナの頬を撫でて、もう開かない口へキスをした。
「ごめん・・・エナ。俺もエナを愛してたよ」
「・・・・・・本当?」
男が物憂げな表情でご神木を見上げている。
『なんとかしたよ。まあ、あのまま村へ行けば大丈夫だろう』
ご神木から聞こえるはずの無い声が聞こえる
『すまんな。しかし・・・もう少し説明してやってもよかったんじゃないか?』
『あの手の馬鹿は切羽詰らないと本心を出さん。あれでいいんだよ。』
『その言葉、そっくりそのままお前さんにやるよ』
男が薄く笑っている。しかし、すぐに顔を曇らせた
『・・・どうしようもないのか?』
『ああ、1000年はなんとかなったが、本能が抑えられん。
この辺りのモンスターも減ったことだし、潮時だ』
『寂しくなるな・・・』
『不死の兵器の運命だよ・・・こればっかりはしかたない』
『そうだな・・・なにか言い残すことはないか?』
男は悲しそうに大鎌を構えた・・・
『次は・・・花に生まれ変わりたいな』
ドス・・・鎌が刺さった部分から見る見るご神木は枯れていった。
葉は緑から赤へ・・・その葉がいっぺんに散っていく・・・
後日ジェイクとエナの結婚式が行われた。
ブーケには最近見つかった白い小さな花が使われていたらしい・・・