■■「再会」〜にくらしいあなたへ〜(胎動編)■■  
 
■■【1】■■  
 浴室いっぱいに、爽やかな朝日が射し込んでいた。  
 
 その濃密な光の奔流の中で、素裸のまま樹脂製の椅子に座り、ゆったりとぬ  
るめのシャワーを浴びながら、『フォルモファラス家』の正式な“仮母”であ  
るティファニア=リィド=ローニィは、今朝目覚めてから何度目かの、甘くて  
熱い吐息を吐(つ)いた。  
 浴室の広さは、優に10メートル四方はある。  
 3方の壁全面に広がる半透明の防刃・防弾・坊衝撃、そして防爆性の樹脂性  
採光窓は、更に、燦々と降り注ぐ陽光から人体に有害な紫外線などを95%近  
くもカットし、他にも“母体”及びその胎内の『セグネット』幼体にとって有  
害となりうる、ほとんどの電波、磁力波、音波などの侵入を許さないようになっ  
ている。  
 しかも室温は、常に摂氏22度から25度の間に設定され、それも常時、彼  
女の体表面温度を赤外線サーモグラフィ(Infrared Thermography)によって正  
確に感知する事で、彼女が快適に過ごせるようバックアップされていた。  
 それは、『フォルモファラス家』の正式な跡継ぎとなる「御子」を宿す彼女  
への、当然の処置である。  
 これらは全て、風変わりで心配性の、現当主の采配であった。  
 聞こえるのは小鳥の囀りと、『城』である大樹の葉のざわめきと、そして浴  
室に流れる薬湯のせせらぎだけだ。  
 その、おそらく現在の地球上で最も安全であたたかな浴室に光の中に佇む彼  
女の、滑らかに透き通るような白い肌は、まるで磨き上げたように艶やかだ。  
全身のどこにもシミ一つ、ホクロ一つ見当たらないうえ、すらりとした手足は  
あくまで伸びやかで、けれど胸と腰はたっぷりと女らしく豊かに張っている。  
それは、「肥満(ファット)」とは純然と区別された「豊満(グラマー)」と  
いう意味では、人間の女性として、これ以上望むべくも無いほど完成されたス  
タイルだと言えた。  
 つまり、ひどく肉感的であり、あふれるほどの濃厚な性的魅力を発散してい  
るのだ。  
 だが、人間の頭より一回りも大きく見える両乳房の下には、こんもりと、誰  
が見ても明らかに「それ」とわかる膨らみが存在していた。  
 その白く大きく膨らんだお腹を、ティファニアはうっとりと見つめながら左  
手で優しく優しく撫でさする。  
「……んぅふ…」  
 膨らんだ下腹の表面を、時折、瘤のような握りこぶし大の膨らみが、ゆっく  
りと浮いては消えていた。  
 
 その度に、ティファニアの眉がピクリと動き、苦悶とも恍惚ともつかない吐  
息が漏れるのだ。  
 
 ――彼女は「妊娠」している。  
 
 正確には「子を宿している」と言った方が適切かもしれない。  
 三ヶ月前、愛しい義弟から子宮内に産み付けられた卵が着床し、擬似胎盤を  
形成した芋虫状の幼体が、その大きく膨らんだお腹の中に宿っているのだ。  
 彼女が何度目かの定期健診の際、自分の下腹部にある胎内に、ゆっくりとの  
たうち蠢く巨大な芋虫のシルエットを見た時、強烈に湧き上がったのは恐怖で  
も嫌悪でも、ましてや殺意でもなく、純然たる至福を伴った身を震わせるほど  
の喜悦であった。たとえ、一日に数十回にも及ぶ激痛に身を捩り涙していたと  
しても、愛しい義弟(ひと)の子供を「異種生物」たる自分の胎内に宿せたと  
いう悦びの方が、遥かに勝っていたのだ。  
 それに、定期的に訪れる陣痛めいた激痛より遥かに勝る肉体的快感が、その  
都度、ティファニアの心も体もたちまち癒してくれるのである。  
 
 “あの夜”の『床見の儀』以来、彼には何度「愛された」かわからない。  
 
 もともと片手ではとても掴み切れない、目を見張るほど豊満だった乳房が、  
彼の子を胎内に宿してからは日に日に大きくなり、更に豊かに実ってしまった。  
自分の胸を抱き締めた時、両手の指先がそれぞれの肘で曲がるか曲がらないか  
…というほどの乳房というのは、それはものすごく異常な大きさなのではない  
だろうか?と、自分でも考えなくは無いのだ。  
 当然、その重たさも尋常ではない。  
 卵の着床前には既に片方の乳肉だけで1.5キロから1.7キロほどもあっ  
たものが、今では2.5キロを優に越え、それどころか3キロはあろうかとい  
う重量を彼女の片胸に与えていた。  
 つまり、両方で6キロ強の柔肉が、体の前方にくっついてぶら下がっている  
のだ。  
 ここまでくると、何気なく身体を動かすたびに揺れ動く様にも「ぷるん」と  
か「ぱゆん」とかいう“可愛い”擬音ではなく、どちらかというと「だぷん」  
とか「だゆん」とか「ゆさり」とか「ばるん」とか、とんでもない重量感を感  
じさせる擬音が自然と浮かんできてしまう。  
 当然、そのとんでもなく重たい乳房を支えるブラジャーが必要となるのだが、  
彼に「愛される」ようになってから、いつもいつでも彼がそうしたい時にそう  
出来るように、ゆったりめの布地の露出度が高い服を好んで着用するようになっ  
た彼女には、装着も取り外しも面倒な、鉄板が入っているのではないか?と思っ  
てしまうほどガチガチの硬いブラなど身に着ける気にもならず、結果、彼女が  
身体を動かすたびに乳房自体の重量で重々しく揺れ動くに任せてしまっていた。  
 
 もちろん彼女も、巨大でありながらツンと美しい形に張り出した乳房が、みっ  
ともなく垂れてしまうことを恐れないわけではなかった。  
 だが彼に「愛される」たび「痛覚麻痺」のために肛門から直腸内へと直接流  
し込まれる、彼の体内生成物である「シロップ」には、先述の効果の他に、全  
身の細胞の活性化、テロメアーゼの固定・生産によるテロメアの複製・維持に  
伴う細胞老化の緩和化の効果があり、そのため、巨大で重たいおっぱいを支え  
るクーパー靭帯の断裂や皮膚組織の劣化が極限まで抑えられている上、細胞の  
再生速度が並外れて向上しているため、ここまで巨大になりながらも自重でど  
うしようもなく下垂した以外は、特に皮膚の伸びなどが見られないのが救いだっ  
た。でなければ、あっという間にだらしなく垂れてしまうに違いない。  
 そして当然のように、彼女は豊かな乳房を持つ女性特有の、乳房の重量によ  
る肩凝りや頭痛、背中の痛みや腰痛、乳房下部の皮膚炎とは無縁だった。それ  
は単に「シロップ」のおかげというだけではなく、元々“仮母”のための使役  
用人類である彼女の体は、地球統合府の「機関」によって遺伝子レベルから  
『改良』されていたためと言えた。皮膚細胞も筋肉細胞も、腱も骨も内臓も、  
過酷な「出産」に耐え得るように強化されているのだ。その上で、身体中の細  
胞に染み渡るよう、たっぷりと注がれた「シロップ」のため、彼女の乳房は巨  
大でありながらその重量をものともせず、美しさを誇るかのように前方へと張  
り出しているのである。  
「…あふっ…」  
 彼女は甘い吐息を吐くと、シャワーのお湯を止め、手にたっぷりと泡状のソ  
ープを掬って朝陽にきらめく、透き通るほど白くはあるが病的ではないその美  
しい肌に塗りつける。  
 豊満と言うにはあまりに豊か過ぎる乳房に、両手で円を描くようにしてソー  
プを塗りつけてゆくと、彼女はそれだけで、硬く屹立した乳首がじんじんと熱  
く疼くのを感じた。  
 それはソープの刺激などではない。  
 もっと「切なさ」を伴うものだ。  
 乳白色のナチュラル・ソープは“仮母”専用に精製された低刺激性であり、  
むしろティファニアの瑞々しい肌に素晴らしく良く馴染んだ。  
 死んだ人間の脂で作られている…とか言われているが、たとえそうだとして  
もそんなことを気にする人間はこの世界にはいない。  
 遺体への冒涜だとか、倫理的にどうとか、そもそもそんな事を論じる土壌そ  
のものが無かった。それどころか「死んで何の役にも立たずに朽ちてゆくのは  
生物として間違っている」という考え方が主流だった。他生物の存在のおかげ  
で生きてきた生物は、死した後は同じように他生物の存在を支えるのが道理だ  
というのだ。  
 
 そのため、この世界では死んだ後にも遺体は細部に渡り有効に利用され、油  
脂分が抽出されてソープになっていたとしても、驚くに値する事ではないので  
ある。  
「…あっ…あっ…あっ…あっ…」  
 ソープを塗りたくり、くにくにと乳首を指で捏ねるだけで、ティファニアの  
口から甘い艶声が漏れる。  
 そして、ぷっくりと膨らんだ乳首からは、ソープではない白濁した液体が滲  
み出してきていた。  
 
 ――彼女の乳房は、今ではもうすっかり幼体のための『乳袋』と化している。  
 
 乳肉はみっちりと充実し、乳線はいつも乳液でぱんぱんにふくれているのだ。  
普通、発達した乳線は岩のようにこりこりと固いものだが、彼女の乳房は張る  
前と同じくらいにやわらかで優しい。  
 これも、義弟に注がれ続けた「シロップ」のおかげだった。  
 そして、子宮壁への卵の着床以来、あっという間に太く大きくなった乳首か  
らは、わずかな圧迫によって乳液が迸ってしまうようになっていた。  
「…んふっ…ふあんっ…」  
 ずしりと重たくて手に余る乳房を両手で掬い上げ、その重さに“にゅるっ”  
とこぼれ落ちるに任せると、乳房は自重によって“だゆんっゆあんっ”と揺れ  
動きながら、ソープとそれに混じった乳汁を床に飛び散らせた。  
 今のティファニアには、それすらも快楽として甘受してしまう下地がある。  
「…あっ…はぁ…」  
 涙に濡れて“とろん”と蕩(とろ)けた瞳に、かつての理知的で冷徹な光を  
探すのは、ひどく困難だった。  
 口元は緩み、頬から首筋にかけては入浴したためではない紅潮が目に鮮やか  
であったし、空気を求めて可愛らしく広がった鼻腔は、彼女が性的興奮に身も  
心も呆けていることを如実に語っていたからだ。  
 胎内に宿った、愛する義弟の子供…『セグネット』の幼体は、毎日、定期的  
に内臓を切り裂かれるような激痛を母体に与えている。だがそれと同時に、ま  
るで母体を労わるかのように、子宮内の幼体からは微量の体内精製物が分泌さ  
れていた。  
 それが擬似胎盤を通して血液内に流れ出し、血流に乗って母体の脳に到達す  
ると、分泌系の“スイッチ”をしたたかにキックし、ドーパミン、ノルアドレ  
ナリン、セロトニン、エンドルフィン、エンケファリンなどの快楽物質(脳内  
麻薬)を、大脳辺縁系の扁桃体や海馬体を損傷しない程度に、断続的かつ大量  
に放出させるのである。  
 そのため、痛みの後には必ず“濃密な快楽の時間”が訪れるという事を覚え  
た彼女の肉体は、今では激しい痛み“そのもの”を待ち望むまでに変化してし  
まったのだった。  
 
 そして、今なお繰り返される彼との「愛交」によって、彼女はもう、彼の姿  
を見ただけで“じゅあん”とたっぷり濡れ、彼の声を聞いただけで乳首が“きゅ  
うん”と硬く勃起してしまうのである。こと、彼の外羽の色にそっくりな濃い  
黒檀色の制服を身に着けた召使い達――大切な“仮母”の世話をするために彼  
女に仕えるよう命ぜられた彼女のかつての仕事仲間達だ――を見るだけで、気  
付かないうちに熱く濡れた淫靡な吐息が漏れてしまうに至っては、性交狂(ニ  
ンフォマニア)と謗(そし)られても仕方無いに違いない。  
 だから、こうしてぬめるソープを乳房に塗りたくり、自らの手で愛撫などし  
てしまうと、もとよりぼんやりとした頭の中はたちまちのうちにピンク色のモ  
ヤでいっぱいになってしまうのだ。  
「…んッ…ふぅんっ…くぅんっ…」  
 それは、洗う…と言うよりも「捏ねる」と言った方がピッタリする両手の動  
きだった。  
 “きゅむっ”と掴み、揺らし、そして“絞る”。  
 乳首と乳暈(にゅううん)の上で、見る見るうちに珠のように盛り上がった白  
い液体が、すぐに“びゅっ”と迸りへと変わる。  
「あっは…」  
 わずかな痛みを伴うその行為は、すぐに快楽という御馳走に振りかける最上  
のソースとなる。  
 勃起した乳首は小指の先ほどの太さに膨らみ、勃起したその姿は乳房全体を  
まるで乳牛のソレのように見せていた。ただ彼女のそれは、乳房そのものがあ  
まりに豊かであるため、バランスとしては決しておかしいものではないように  
見える。そして乳首や乳暈には色素の沈着がほとんど見られず、まるで生娘の  
ように瑞々しいピンク色をしていた。  
 その乳首を、彼女は親指と人差し指でひねるようにして摘む。  
 “ぴゅっ”と乳汁が迸り、ソープと混じって濡れた床に“ぱたたっ”と滴っ  
た。  
 そしてソープで滑り、“ちゅるっ”と指から逃げる際の摩擦が、充血し、膨  
張し、勃起して屹立した乳首からの“じんじん”とした快美感をますます強く  
していった。  
「…ぁ…ああ〜……」  
 乳首を擦り上げながら、白くてやわらかくて重たい、たっぷりと豊かな乳肉  
を捏ね上げる。  
 彼女がお尻を乗せた椅子の天板は、ソープとは明らかに違う粘液のぬめりで、  
すっかりぬるぬるになっていた。  
 浴室には熱気と、薬湯の香りと、彼女の濃密なオンナの匂いと、乳汁の芳香  
が混じり合い、“むあっ”とむせかえりそうなくらい濃厚な性臭となっている。  
 
「…あぁ…いいの…いいのぉ…」  
 今のティファニアは、一日の大半をこうした快楽の海にたゆたうような、退  
廃的とも言える時間の中で過ごしていた。  
 胎内からは激痛と共に脳内麻薬による快楽のシャワーがプレゼントされ、外  
からは愛しい義弟から毎日たっぷりと「シロップ」がプレゼントされるのだ。  
気が狂わないのが不思議なほど、彼女の脳はいつも、いつでも白濁し、霞がか  
かったような非現実的な感覚の中に浸っていた。  
 いや、ひょっとしたら、もう狂っているのかもしれない。  
 それでも、狂っていることさえも、おそらく悦びでもって迎えてしまう彼女  
を、誰も引き止める事など出来なかった。  
 幸福感に身も心も震わせながらゆっくりと確実に壊れてゆく彼女の自我は、  
胎内に宿った『セグネット』の幼体と、その父親である愛しい義弟への愛です  
べて満たされているのだから…。  
 
 
■■【2】■■  
 大き過ぎる乳房を両手で持ち上げながら、その乳首から迸る白い乳をピンク  
色に濡れ光る唇で自ら吸おうとしたティファニアは、不意に聞こえた“ギュイ  
…ギュイ…ギュイ…”という、まるでゴムか何かを擦り上げるような音に、嬉  
しそうに背後を振り返った。  
【義姉(ねえ)さん】  
「…ぁ……シグ……来てくれた…の…?」  
 左右に割れハサミのようになった下顎と、細長い副口吻を擦り合わせ、“ギュ  
イ…ギュイ…ギュイ…”と音を立てるのは、『セグネット』の雄体が雌体に対  
して行う無意識の求愛行動の一つだった。  
【そのままでいいよ】  
 『フォルモファラス家』の風変わりな現領主、シグフィス=フォルモファラ  
スは、大きく膨らんだお腹と、人の頭よりひとまわりも大きな二つの乳房が与  
える重量で咄嗟には立ち上がれないティファニアのため、浴室の入り口から足  
早に彼女へと歩み寄った。  
「ぁ…あ…シグ…シグぅ…」  
 そんなシグフィスに彼女は恍惚の表情を浮かべ、まるで赤子が母親にするよ  
うに両手を彼へと差し伸べた。  
 乳房だけで6キロ前後、胎内の幼体は現在2.2キロ。妊娠状態の体脂肪増  
加を合わせて、3ヶ月前から比べて10キロほども増加しているのだ。  
 かつてのように素早く機敏に動けず、そしてお腹の子を慮(おもんぱか)っ  
て、彼女はどうしてもゆったりとした動きになっていた。  
【寂しかった?ごめんね一人にして】  
「ぅうん…いいの…来てくれたから…いいの…」  
 
 重たい「子袋」と「乳袋」を細身の身体につけた愛する義姉のソープまみれ  
の身体を支えながら、シグフィスは泡がローブに付くのを全く気にせず、自分  
の身体に強くしがみつく彼女の美しい金色の髪を優しく優しく撫でた。  
 たっぷりと重たいやわらかな乳肉が、彼に押し付けられるままに形を変える。  
 目を瞑りうっとりと髪を撫でられるままに身を任せ、ティファニアは熱くて  
甘くて、そして切なげな吐息を吐いた。  
 
 『セグネット』は、肉体的快楽よりも精神的充足感こそを求め、それを何よ  
りも至上のものとしている。そのため、人間のセックスに相当する、産卵管や  
送卵管を相手の体内に挿入する行為には、特に快感らしい快感を感じていない。  
 それは彼女の愛する義弟も例外ではなく、彼は肉体的充足感ではなく精神的  
な繋がりこそを求めて、ティファニアの心と体を共に愛した。  
 ただ、その頻度は人間の比では無かった。  
 彼はまるで挨拶するように、一日に何度も彼女の体へ“愛を注ぎに”訪れる  
のだ。  
 それは、愛する義姉の胎内で毎日、わが子が彼女に対して耐え難いほどの  
“激痛”を与え続けていることへの贖罪だったのかもしれない。もちろん、ティ  
ファニアにとってその“激痛”とは、たとえようも無いほどの“幸福の甘い痛  
み”だったのだが、女ではない…人間ですらないシグフィスに、それを理解す  
ることは出来なかった。  
 そしてシグフィスはそれゆえに痛覚麻痺のための「シロップ」を、毎日、何  
度も、それこそ溢れるほど彼女の直腸内に注ぎ込むのが、自分が彼女にしてあ  
げられるただ一つの事だと信じていた。  
【義姉さんのおっぱい…好きだよ】  
「…ふぁっ…あんっ…」  
 乳首がいやらしく勃起し、乳汁をじくじくと染み出させている巨大な乳房を、  
シグフィスは繊細な動作を苦も無く行えるマニピュレーターで掴み、撫で、そ  
して揉み込んで揺らした。  
 心を通い合わせてから一回りも大きくなった彼女の乳房の、そのやわらかさ、  
あたたかさ、やさしさを、シグフィスはすっかり気に入っている。乳首から迸  
る白い乳の匂いも、幼かった頃の、まだ彼女の母親であるセランがいた頃の幸  
せな記憶を喚起させてくれるから、彼はことさらティファニアの乳房を弄ぶの  
を好んでいた。  
「ぁふあっ…あっ…あんっ…あっ…」  
 “たぷたぷ”と揺って弄び、先端で乳汁を滲ませながら赤く熱く大きく膨れ  
た乳首と乳暈を摘み、擦る。するとティファニアは「彼に触ってもらえて嬉し  
くてたまらない」といった風情で身を震わせながら頬を赤く火照らせ、涙のいっ  
ぱいに溜まった瞳を伏せた。  
 
 
【また、大きくなった?】  
「…んぅ……もうブラ…入らないの…」  
 シグフィスが問うと、ティファニアは上目遣いに彼を見ながら子供のように“こくり”と頷いた。  
【今、どれくらいの大きさ?】  
「…このあいだまで…Iかぁ…Jカップくらいだったからぁ……いま…JかKくらぁい…だと…おもうぅ…ん…」  
【…Kって…どのくらい?】  
「…Jの…つぅぎ…ぃ…ぁ…」  
【…そうじゃなくて…】  
 この時代、女性のブラのサイズ表記は過去と変化していない。  
 つまり、トップとアンダーの差が2.5センチ大きくなるに従い、  
カップもランクアップしてゆくのだ。  
 7.5センチまではAAカップ、10センチまでがAカップ……Fカップは22.5センチまでで、  
Kカップともなれば35センチにもなり、仮にアンダ  
ーが70センチだとすれば、ティファニアの現在の乳房は105センチのKカップという事になる。  
 ティファニアは同年齢の女性と比べると全体的にほっそりとしたシルエットであり、  
首も腕も伸びやかでどこかたおやかな感じがする。  
そんな女性の胸部に100センチオーバーのKカップがぶら下がっている光景というのは、  
一歩間違えれば喜劇にしかならないだろう。  
 しかも、Kカップというのは不確定なのだ。  
 実際にブラを着用した場合、周囲から肉を集めて形を整えるため、1〜2カップはアップする場合が多い。  
 そうすると、ヌードサイズがKカップだとしても、着用サイズはLとかMカップになる事が予想される。  
 人工物の注入など、人為的な豊乳手術をしない状態で107.5センチのLカップ  
または110センチのMカップともなると、これはもう「異常」であった。  
「…ぁ…ふあっ…んっ…」  
 Kカップの具体的な大きさを尋ねるシグフィスには答えず、  
もう既にティファニアは彼の指の動きに没頭してしまっていた。  
“はふっ…はふっ…”と吐息を荒くして、無意識に“くねくね”と腰を揺する。  
そのたびに、みっしりと身が詰まり、片方だけで3キロ近くもあるパンパンに張った乳房が  
“ゆらゆら”と…いや、“だゆん”“ゆわん”と揺れ動く。  
 降り注ぐ朝陽の光の中で、グラマラスな素裸の全身にたっぷりとソープを纏い、  
昆虫型知的生命体に愛を求めて取り縋る、美しいブロンドの女性の姿は、ひどく背徳的な匂いがした。  
【義姉(ねえ)さん…】  
 数ヶ月前まで、あれほど理知的で冷静で、時に冷徹でさえあった瞳が、  
今はただ自分のためにこんなにもだらしなく蕩けて、熱に浮かされたように涙を滲ませている。  
 
 数ヶ月前まで、何の感情も込められていなかった声は、  
今では芳しい花の香りを連想させるほど甘ったるい愛の調べを奏でている。  
 そして、数ヶ月前までは喉元までぴっちりと召使い服に覆われていた彼女の豊満な体は、  
今ではいつもいつでも彼を迎えられるように露出の高い開放的な姿へと変わっているのだった。  
「…ぁあ〜〜……おっぱい…おっぱいきもちいいの…いいの…きもちいぃ…」  
 けれどそれは、愛を知り、性を知って奔放な性愛に埋没したからではない。  
 ただひたすらに、愛しい義弟のためだけに、彼女自身が自ら意識しないまま行っていることなのだ。  
「シグ…ぁあぁ〜…シグ…愛してるわ…愛してる…シグ…愛してるのぉ…』  
 彼女の目は彼の姿を見つめるだけに開かれ、彼女は彼の声を聞くためだけに耳を澄ます。  
 彼女の紅唇は彼への甘い愛の唄だけを紡ぎ、彼女の両腕は彼を抱締めるために存在する。  
 彼女の豊満な乳房も、今では幼体を宿して大きく張り出してはいるが、  
かつては絞り上げたように細かったウエストも、豊かに張りながら“きゅんっ”と引き締まった尻も、  
白く伸びやかな四肢も、日に透かした蜂蜜のようにきらめく金色の髪も、全てが彼のためだけに存在していた。  
 シグフィスには、それがたまらなく嬉しい。  
 だからその実、彼女がゆっくりと“壊れて”いっているのだということに、  
彼は気付かなかったし、また気付こうともしなかったのだ。  
【“欲しい”んだね?そんなに切ないの?】  
 シグフィスの言葉に、ティファニアはとろけたキャンディのような、  
甘ったるい…それでいてひどく淫蕩な笑みを浮かべ、無言のまま“こくこく”と何度も何度も頷いた。  
 お腹の中の幼体(芋虫)に負担を掛けないように、  
ティファニアは椅子からゆっくりと下りて膝立ちになり、そしてそのまま椅子に両手をついて軽く両足を開く。  
むっちりとした太腿の奥、尻肉の狭間で、赤く充血して“ぱっくり”と口を開けた秘部は、  
とろとろと『蜜』を滴らせながら、『花』のように陰唇を花弁として濃密なオンナの香りを立ち昇らせている。  
 シグフィスは彼女の尻の後に屈み込むと長いローブの前をはだけ、後肢を肩幅に開き、  
長く伸びた下腹を前へと折り曲げた。  
 そして彼の、黒く光を弾く外皮に覆われた長い腹は、  
獲物に毒針を突き刺す蜂の腹部さながらにゆっくりと弧を描いて、  
下からティファニアの、淡い翳りが茂った股間を目指す。  
「…っ…あっ…ぁあ〜〜…」  
 
 甘い期待感に震え、胸を高鳴らせていたティファニアは、  
不意に子宮内で“ぐりぐり”と幼体が身じろぎし、  
それが…その胎動が与える激しい痛みに、背中を丸めて椅子へと突っ伏した。  
 椅子の上には、自分があそこから“とろとろ”と垂らした蜜液が水溜りのように溜まっている。  
それが、“ゆさゆさ”“ぶるぶる”と揺れる豊満なKカップの乳房に垂れて、  
そして朝日を受けてきらめきながら糸を引いて落ちてゆく。  
【もう少し我慢して。今、あげるから】  
 金色に輝く美しい髪を撫で、伏せた体からどうしようもなく重たい自重によって吊り下がった  
重々しい巨大な乳房を揉み上げながら、シグフィスは愛しい義姉に囁く。  
マニピュレーターの指の間からやわらかな乳肉が溢れて、白い背中に金髪を散らせた義姉は、  
彼に答えるかのように身を捩りながら甘い吐息を吐いた。  
 そうして彼は、黒く硬い腹の先端から黒光りした鞘を突き出すと、  
麻痺毒の注入管が変化したピンク色の管を剥き出しにして、  
時折“きゅっ”とすぼまりを見せる彼女の可愛らしい肛門にぴたりと狙いを定めた。  
 彼女のそこは、既に塗り広げる必要が無いほど彼女自身の『蜜』でぬるぬるに濡れている。  
【いくよ】  
 ソープとは明らかに違うぬめりを纏わり付かせると、シグフィスはその肉筒を、  
“ぬるんっ”と可愛らしい後の蕾へと挿し込んでいった。  
 ほとんど、何の抵抗感も無かった。  
「ふあっ…おしり……おしりがぁ………」  
 もっともっと…と、義姉の尻が“くねくね”とくねり、“ひくひく”と収縮を繰り返す窄(すぼ)まりが、  
“きゅ”“きゅ”“きゅ”と断続的に肉筒を締め付ける。  
 そのキツイ締め付けに構わず、シグフィスが“ずぶずぶ”と直腸の奥へと肉筒を押し込むと、  
「…ああっ!!…あああぁあぁっ!!…ああぁあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」  
 彼女の美しい造形の顔から頬を伝って涙がこぼれ、鼻水が漏れ、涎が顎を伝い糸を引いて床に垂れ落ちた。  
【義姉さん…キモチイイ?】  
「ぁうあ…ぁううぉおお…」  
 “ずにゅっ…にゅっ…ずにゅっ…”と、細かな蠕動運動を繰り返しながら直腸を進み、  
抜き出され、そしてまた奥まで侵入してゆく。  
 ただ挿し込めばいいものではないということを、シグフィスはこの3ヶ月に学んでいた。  
 ゆっくりとした小刻みなピストン運動を加える事で蕾の入り口を刺激し、  
愛しく可愛いこの義姉が、ひときわ喜びに涙する事を知ったからである。  
 
「……んっあっ!…ぁいやっ…いやっ…いやぁっ…あ〜〜〜…」  
 人として、女として、決して愛しい人には見せたくないような無様に呆けた快楽の顔のまま、  
ティファニアは“いやいや”と首を振りたくって啼いた。  
 ひしりあげ、泣きむせぶように、搾り出すように、ティファニアは啼いた。  
 こればかりは、何度味わっても慣れるという事が無かった。  
 むしろ、彼女には身体が“馴染んだ”がために、  
より的確に快美感を拾い上げて脳へと送り込んでいる気が、した。  
「っ〜〜…あ゛っあ゛っあ゛っあ〜〜〜…いっいぐっ…いぐのっいぐっいぐのっ…いぐぅ…いぐうぅ…」  
 お尻を嬲られただけで、あっという間に高みに押し上げられ、  
いつ果てるとも無い絶頂へと達してしまう。  
【いいよ?イッていいよ。そうすれば痛くなんかないだろう?】  
 頭を優しく撫でられながら乳を弄ばれ、それと同時に直腸内へと肉筒を差し込まれて、  
そのバイヴのような蠕動運動に身も心も翻弄された時間は、あっと  
いう間の出来事のようにも、果てしなく続く煉獄の責め苦のようにも彼女には感じられた。  
 やがて、胎内で身じろぎしたことを詫びるかのような、幼体(芋虫)からの精製物の分泌の効果が現れ、  
激しく揺さぶる快感と押し寄せる幸福感に声も無く身を震わせるティファニアの直腸へ、  
今度は溢れるほどたっぷりの「シロップ」が、お腹の子の父親(シグフィス)から注がれる。  
 
 子とその父に、同時に犯され、愛され、癒され、そして狂わされているみたいだった。  
 
 二人とも、自分の子供でも、自分の夫でもないのが不思議なくらいだった。  
 白濁し、真っ白に焼き付いた意識の中で、ティファニアは滂沱した。  
 
 どうしてシグフィスを「夫」と呼べず、お腹の子を「わが子」と呼べないのか。  
 
 ―――わかっている。  
 
 それは自分が『セグネット』ではなく「人間」であり、“仮母”だからだ。  
 シグフィスは昆虫型地球外知的生命体であり、  
お腹の子は人間の子とは似ても似つかない芋虫の形をした幼体だからだ。  
 
 けれどそれは他ならぬ自分自身が望んだこと。  
 
 それでもいいからと、自分自身が望んだこと。  
 
 愛しい人の愛が欲しかった。  
 愛の結晶である赤ちゃんが欲しかった。  
 でも、彼と自分では種族が違う。生物としての有りようが違う。  
 なぜ神様はこんな気持ちを自分に与えたのか、彼女は神を呪った事もある。  
 でも、彼女は自分で選んだのだ。  
 愛しい人の愛が手に入れられないのなら、愛しい人との間に赤ちゃんが得られないのなら、  
せめてお腹を痛めて産んであげることだけが、自分に出来るたった一つの『愛の形』なのだと、そう信じたから。  
 そしてそうすることで、愛する人が『愛されて産まれてきた』のだと教えてあげられると、そう信じたから。  
 だから。  
 快楽の波に翻弄され、呑み込まれ、自分という存在さえも見失いそうになりながら、それでも彼女は。  
 
 幸せだったのだ。  
 
         −おわり−  
 
■■「再会」〜にくらしいあなたへ〜(胎動編)■■  
 

楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル