「ふぅ・・・やっと終わったか・・・・・」
思わず独り言を呟く。
剣道部に入部して3年経った俺でも、顧問の岡のシゴキは厳しいのだ。
新しく入った1年には地獄だろう・・・・・
(しかし、あと三ヶ月もしたら俺も引退か・・・そろそろ勉強もしなきゃな)
こんな事を考えながら歩いていると、どこからか誰かの泣き声が聞こえてきた・・
(オイオイオイ・・・今の季節に幽霊は似合わんぞ?しかもここって・・・・・)
首つり公園、昔は自殺の名所だった事からこの名前が付いたらしい。
(う〜ん・・・・・・・・確めてみるか?)
怖いという感情もあったが、やはり持ち前の好奇心には勝てなかった。
シクシク・・・ヒック・・グス・・・・
どうやら、奥の方にある桜の樹の陰からのようだ。
「ゴクッ・・」
唾を飲みこみ、ゆっくりと近付いて行く・・・
グスッ・・ヒック・・ハァ・・・・
近付くと、より明確に聞こえてきた。
自分の心臓の音が驚くぐらい大きく聞こえる。
ドクッドクッドクッドクッ
(ヤベェ・・本当に幽霊だったらどうしよう?やっぱ殺されんのかなぁ?)
ゆっくりと樹の陰を覗く・・・・・・・・・・
そこに居たのは普通の女の子だった。が、様子がおかしい。
まず、制服がズタズタだった。恐らく近くにある私立校のだろう。
次に、全身がビショビショだった。・・・・・・・イジメ?
「な、なぁ・・・?」
不用意に声をかけたのが悪かった。
その子は一瞬体を大きく震わせ、大声で泣き出した。
「いやぁぁぁ!!来ないでぇ!お願い!もう許してぇ!!!」
「えっ?あ、いや、その・・・」
(オイオイ、、俺は単に声をかけただけだぞ?)
「なぁ、あんたどうしたんだ?しっかりしろって!」
まるで駄々をこねる子供のように泣くので、思わず抱きしめて黙らせた。
「・・・ふっ・・ぐぅ・・ひっく・・」
・・どうやら泣き止んだようだが、こんな姿見られたら勘違いされかねないの
で、顔をゆっくりと引き離す。
「なぁ?あんた一体どうし・・・」
女の子の顔を見た瞬間言葉が止まる。
「・・・・・・・・・・さやか?」
さやかは、俺がまだ小さい頃に近所に住んでた女の子だ。
小学校に入る前、親父さんの仕事でどこかへ引越ししてしまい、それ以来会って
いない。
今目の前にいる少女は茶髪でショートヘアーだが、間違いなくさやかだ。
「さやかだろ?俺だよ、西村 新!」
さやかはしばらく目を何度も瞬きさせていたが、やがて事態を飲み込めたのか
「ふぇ・・?しんくん?・・・ふ、ぅ、うぇぇぇぇん!」
・・・また泣き出してしまった。