序章
プラットホームに真っ黒で長い髪の少女が降り立った。一見するとごく普通の高校生だがどこか他とは違ったような雰囲気を漂わせている。
すれちがう同年代の高校生は見たこともない制服と美しい外見に目が釘付けになっている。
自動改札を抜け駅の構内から出た少女を暑い暑い日差しが迎える
少女は呟く
「信・・・どこかな・・・」
一章
朝、夏休みも半分を過ぎた頃、信はやっと覚醒しきった頭で電車の席に座っていた。昨夜は宿題を頑張りすぎたな等と考えているとアナウンスが目的の駅に着く事を教えてくれる。
信は夏休みだというのに毎日部活をしに学校に登校していた。
一昨日も昨日も今日も・・・そして明日も同じ生活をするのか、と心の中で溜め息をする。部活は三年生が引退したので二年の信達が引っ張っている。しかも信は副部長だった。
駅から出た信は眩しくて目を細めた。時刻は12時を回ったとこか。駐輪場へ向かう彼は見たこともない制服の少女を発見した。
しかも・・・可愛い・・・
「可愛いなぁ」
つい口からこぼれた言葉、一目惚れ?自問自答をしていると少女と目が合った。澄んだ瞳で見つめられて信はなんだか恥ずかしくなった。すると少女はこちらへ向かって歩き出した。え?俺なんかした?目の前まで来て少女は言った。
「あの、春日西高校ってどこだかわかりますか?」
何を言われるかひやひやしたがそんなことか、とほっとした。
「西高ならわかるよ。俺生徒だし」
「本当?よかったら連れてって?」
こんな可愛い娘に言われて断る馬鹿がどこにいる。
「いいよ」
二つ返事でそう言った。
真っ昼間から二人乗りなんてしたらポリスメーンに拉致られるので学校まで歩くことにした。少し部活には遅れるが30分あれば着くだろ。
「ねぇ、なんでうちの学校に行きたいの?」
さっきから気になっていたことを信は聞いてみた。
「んーと・・・人に会いにかな」
「へぇー、その制服ってここら辺のじゃないよね?どこから来たの?」
「・・・遠く・・・」
彼女はそれだけ言った。何か不味いことを聞いてしまったのかと慌てて違う質問をした。
「何歳なの?」
「16・・・あっ、でももうすぐ17あなたは?」
「俺は17、高二」
「じゃあ、同じ学年だね」
微笑みながら彼女は言った。改めて信はこの少女を可愛いと思った。
いつの間にか学校に着いていた。彼女との時間もここまでか、と少しがっかりしたが一応聞いてみた。
「これからどうすんの?」
「弓道場に行きたいんだけど。今部活してるかな?」
「してるよ・・・多分」
多分をつけたのはうちの部長はいい加減な奴なので100%とは言いがたかったから。
「もしかして弓道部の人?」
「うん、そうだけど?」
「部員に信って人いる?」
・・・俺?こんな娘知らんぞ?
「信は俺しかいないけど」
「え!?あなたが信だったの?あたしだよ。絢音」
絢音という名の知り合いは一人しかいない。しかも顔も見たことないメル友だ
「・・・・・・絢音?本当に?」
「本当だよ」
「なんでこんなとこいるんだよ?」
「会いに来ちゃった」
うつ向きながら絢音はそう口にした。
第二章へ続く