「あのー、ス、す、す…………」  
プルプルと小さく肩を震わせながらおかっぱ頭の幽霊少女お菊は目の前の少年、  
遠野マサルに言葉を伝えようとしていた。  
 
長らくこの家に住み込みこんでいたお化け達がいなくなり、  
家族の一員という関係になったが、  
『家族の一員』ではなく、本当の家族の一員に成りたい。  
今まで思い続けてきた胸の内を今日こそはっきりと伝えたい。  
お菊は決心すると、マサルの前に座り先ほどから必死に思いの内を伝えようとしていた。  
(がんばれ私! 今日の星占いでは勇気を出せばいい結果が出ますって言ってたじゃない)  
顔を真っ赤にさせながら、何とか言葉を、思いを伝えようと必死に成っていた。  
 
だが。  
「? ああ、ごめん……」  
 
お菊が言葉を言い終わらないうちに少年は申し訳なさそうに頭を下げた。  
(ふえ!? 私告白しないうちに振られちゃった!?)  
「ほんと、ごめん……」 なおもマサルはだめ押しに頭を下げる。  
「あ、ああううぅぅ、い、いいんです、わたし、ワタシ…………ふえええんん!!」  
我慢できずにお菊はその場で大きな声を上げて泣き始めた。  
 
「わ、わわ、な、泣く事無いじゃないか!!」  
「だ、だって、だって、ふええええええんん!!!!」  
「お菊ちゃん、そんなにスキーに行きたかったの?」  
「だって!――――ほえ?」  
 
突然のマサルの質問にお菊はピタリと泣きやむ。  
お菊の後ろのテレビからは、広瀬香美の歌が流れている。  
「す、す、スキー?」  
「うん、僕と姉さん、昔一緒にスキーに行ってひどい目に在った事があるんだ、  
それからどうしてもスキーに行く気がしなくなって」  
「え、え、え?」  
「あれはサイテーだった、炬燵のお化けが襲いかかってくるんだよ、今思うとあれのせいで僕はお化けが苦手になったのかも」  
「は、はあ」  
「そう言う訳だから、悪いけどスキーだけはダメなんだよ」  
 
「そう言えば危うくあんた炬燵性感マッサージの誘惑にはまるとこだったわね」  
二人のやり取りを傍で聞いていたマサルの姉、麗子はポツリとつぶやく。  
 
「……姉さんは……タイタニックにころっと騙されてたけどね」  
「な、タイタニックは国民栄誉賞物よ、ムキー!!」  
突然猿のような奇声を発するとマサルに襲いかかり、攻撃を始める。  
「な、なにすんだ!! 姉さんは僕が助けなきゃタイタニックのディカプリオみたいになってたろー!! モギャー!!」姉の攻撃を必死に防ぐマサル。  
「あんただって私が助けなきゃ今頃コタツヘルスでホントに昇天してるじゃない!! ウキャー!!」  
 
「は、はわわ、マサルさんも、お姉さんも止めてください」  
突然始まった人間の兄弟による醜く愚かな闘いに終止符を打つため、お菊ちゃんはおろおろと仲裁に入る。  
「止めなくていいわよお菊ちゃん! こんなやつ少し痛い目を見ないと解んないのよ!!」  
そう言いながらマサルをうつぶせにし、その上に座ると思いっきりマサルの背中を後ろに折り曲げる。プロレスでいうキャメルクラッチと言うやつだ。  
「ぐわあああー!! 背骨が死ぬ! 姉さんこのままでは背骨ごと死んでしまうよ!!」  
「死んでしまえー!! このコタツヘルス・マニアめー!!!」  
「むがー!!!!」  
「や、やめてください!!」  
 
 
 
数時間後  
 
 
 
「くそ…………危うく僕がお化け達の仲間入りする所だった、なんて手加減がないんだ」  
マサルは炬燵の中で傷をいやすべくダラダラしていた。  
「いてて……ん?」  
ダラダラと炬燵に潜り込んでいると急に違和感を感じたマサルは布団をめくってみた。  
 
「あ……、う、うらめしや〜」  
炬燵の中に潜り込んでいたお菊と目が合う。  
「わ、な、何してるんだお菊ちゃん!!?」  
 
「あ、あの、私マサルさんを驚かそうと思って、炬燵お化けになったら驚くかなぁって思って」  
「い、いやそんなことより、なんで……お菊ちゃん……」  
「は、はい?」  
「何で僕のズボンを脱がそうとしてるの?」  
 
炬燵の中にもぐりこんだお菊は汗だくになりながらマサルのジーンズを膝の辺りまで摺り降ろしている。  
「あ、コタツ……ヘルスです……」  
小さな声でポソリトつぶやく、熱さのためか、真っ白なお菊の頬がぽっと赤く染まる。  
「な!? なんですと!!?」  
「先ほど麗子お姉さんからヘルスって何か聞きました……」  
そう言うとお菊ちゃんは目をつむりながらマサルの下着に手を掛ける。  
「わ、わわわ、お、落ち着きたまえお菊ちゃん!! 今ならまだ戻れる!!」  
「え? もしかして、マサルさん、私の事……嫌い…………なん、ですか?」  
「そ、そうじゃなくて、ええと、うう」  
と、  
 
ギュ  
 
お菊ちゃんの手が下着ごしにマサルに当たる。  
 
「むにゃ!?」  
「う、うわあ!」  
 
慌てて二人は炬燵から飛び出る。  
 
「う、うううう今まで生きてきて、何度か見た事はありましたけど、さわったのワ初めてですぅ」  
「う、うわあ今まで生きてきた中で、僕の物が幽霊とは言え、女の子の手に触れられた!!」  
 
二人は互いにドキドキしながらその場を動けずにじっとしてしまった。  
 
 
数時間前  
 
「お菊ちゃん、あいつにはガンガンいかないと駄目よ」  
「ふぇ、でも私……」  
「そう言えば前にトイレの花子さんが言ってたわ、マサルの事が好きになりそうって」  
「え!? 本当ですか!?」   
「毎日トイレで会うたびに愛を育んでたのね、まさに臭い中ってことね」  
「あ、あわわわ」  
「マサルの事が忘れられなくて、戻ってくるかもね」  
「あううぅぅ」  
「いいじゃないの、アイツの裸だって見てるんだから、思い切って行っちゃいなさい!」  
「………………」  
 
 
 
今  
 
「(駄目だ、こんな所でくじけてたら!)マサルサン!!」  
「な、なに!?」  
「す、好きです!!」  
 
「スキーです!!」  
「旅行です!!」  
「うらめしYAHAHAHA!!」  
 
「お、おい、突然はいってくんなよ!」  
「あ、すいませんマサルさん」  
 
突然新しいお化け達が二人の間に割って入って来た。  
もうスッカリと大騒ぎに成り告白どころではなくなって来る。  
「な、な、なんでこんな時に入って来るのよ!! バカ――――――!!」  
お菊ちゃんの怒りが爆発し、その時の恐怖により幽霊たちの間で  
『怒ったお菊ちゃんは最恐』 と言う噂がたった。  
 
か、どうかは定かではない。  
 

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