「お兄ちゃん…早く起きて」  
留渦はいつまでも起きない兄、耳雄に苛立っていた。  
今日は両親に会うためにパリに行く日なのだが、いつまでたっても  
耳雄は起きる気配がない。  
「もう…いい加減にして…!」  
そういって耳雄の布団を一気にめくりあげた留渦はそのまま  
固まってしまった。  
耳雄の上半身こそいつものTシャツであったがパンツをはいていなかった。  
さらにむき出しのペニスを何やら薄ピンク色の筒のようなものが包んでいる。  
天を指したそれが耳雄の寝息にあわせてぴくん、ぴくんと動いているのだ。  
ベッドの下には何枚かの写真があるのも見えた。  
いつも冷静な留渦だが、あまりの光景にさすがに動揺をかくせない。  
いつのまにか噴きだした汗が留渦の頬を伝う。  
マスターベーション。オナニー。自慰。  
マセた女友達から聞かされたことはある。  
男性なら密かに、しかし誰もが行う行為。  
男性の自慰行為のあれこれ。なかには道具を使う者もいるという。  
「オナホールっていうんだって〜」  
「やだやだ、キモ〜い」  
留渦自身はそういった会話には参加しなかったが、聞こえてくる  
会話の意味は漠然とわかるようになっていた。  
 
・・・  
しかし、現実に見たそれは留渦にとってあまりに強烈であった。  
これ…オナホール…?  
お兄ちゃんが… お兄ちゃんも… してるの?  
とくん、と留渦の小さな胸を何かがかけぬけた。  
 
「はうあっ!?」  
突然、耳雄が飛び起きた。  
自分のおかれている状況を理解し、頭が真っ白だ。  
昨日、センパイから無理やり渡されたオナホールを、つい好奇心から  
使ってみたくなり下半身に装着してみたところ思いのほか強烈だった快感に  
たちどころに射精してしまい、そのまま寝てしまったのであった。  
しかし、気がつけば、下半身むき出しの自分と、それを無言で見下ろす  
妹の留渦という構図。  
朝勃ちしたペニスには件のオナホールがしっかりホールドされたままだ。  
 
「い いやあ〜 風呂に入ったあと、そのまま寝ちゃって…」  
何とかこの場をごまかそうとする耳雄の言葉を留渦がさえぎる。  
「…オナニー?」  
「!!!」  
留渦はベッドの下からちらりと見える写真を手に取った。  
写真には体操着姿の留渦が写っていた。  
「私の…写真…」  
親友のみちこと一緒に微笑んでいる。  
耳雄に撮ってもらった体育祭でのスナップだ。  
留渦はその写真を呆然としている耳雄の前でひらひらとふった。  
「これを見て…してたの?」  
 
耳雄はあまりの展開に口をあんぐりさせたまま固まっている。  
「るるるる留渦っ オナニーなんて言葉を口に…うわあぁ」  
そこまでいいいかけた耳雄は次のことばを失った。  
寝ている耳雄の足の上に馬乗りになった留渦はすばやく手を伸ばし、  
装着されたままのオナホールを両手でしっかりと握りしめたのだ。  
留渦はその体勢ののまま耳雄の目をまっすぐに見つめている。  
「…してたんでしょ? …お兄ちゃん」  
オナホールを握った両手をゆっくり上に上げる。  
くちゅっと音がしてオナホールが持ち上がり、勃起したペニスの根本部分が見えた。  
「こんないやらしいものを使って…」  
今度は両手をゆっくりと下げる。オナホールは音を立て、ペニスを飲み込んでいく。  
「うああああっ 留渦…や、やめ…」  
「…私の写真を見ながら スケベなことを考えて してたんでしょ…」  
「ち、ちが…あああっ!? 」  
突然、留渦がオナホールを激しく上下に動かしはじめた。  
「実の妹に欲情して…! 変態 ヘンタイ ダメ兄…!」  
耳雄は留渦の様子がおかしいことに気づいた。  
いつも冷静で起こっているときも感情を出さない留渦だが、今は  
明らかに顔を上気させ、頬をピンク色に染めている。  
息も荒くなり、肩を大きく上下させている。  
心なしか、瞳もうるんでいるように見える。  
「   …留渦?」  
事実、留渦は自分でも抑えきれないくらいに興奮していた。  
兄のとてつもなく汚れた行為に、嫌悪感とは違う別の感情が湧き上がる  
ことに自分でも戸惑っていた。  
普段から、バカでがさつで乱暴で自分勝手な兄だが、自分のことを  
いちばん気にかけてくれているのもこの兄なのである。  
自分のために幾度も危険な目にだってあっている。  
留渦ももちろんそんな兄のことが嫌いなわけではない。  
その兄が、自分を単なる妹としてではなく、一人の女性として魅力を  
感じてくれていることに、不思議な嬉しさを感じるのだ。  
兄のあげる苦痛と快楽の入り混じったような声も留渦をいっそう興奮させた。  
もっと、もっと、気持ちよくなってほしい。  
手をいっそう激しく上下させる。  
ぐちゅっ ぐちゅう、と粘り気のある音をたててオナホールがペニスを  
しごきあげる。  
「お兄ちゃん…! 気持ちいい…? どう…?」  
「ちょちょちょっと るか…うおあおあああああっ !   あっ   あっ」  
耳雄はたまらず射精した。  
オナホールの中に大量の精液をぶちまけた耳雄は放心してしまっている。  
留渦もまた呆けたように自分の手のなかのオナホールを見ていた。  
「お兄ちゃん…射精した…の? 私の手で、せいえき…出たの?」  
留渦は自分の中に密かな喜びが目覚めていくのを微かに感じていた。  
「お兄ちゃん…」  
そして小さく震える手でオナホールをゆっくりと引き上げていった。  
 
ぐぷぷぷ…という音を立ててゆっくりオナホールは引き上げらていく。  
白く泡立った液にまみれてペニスが徐々にその姿を現していく。  
「留渦!見ちゃダメだっ やめなさい…」  
耳雄は恥ずかしさと背徳感で叫んだが腰から下が抜けたように動けない。  
ぬるぬると持ち上がっていくオナホールが射精直後の敏感なペニスを  
刺激しているためだ。  
ぶるん、と音がしてついにオナホールが外れ、ペニスがむき出しになった。  
己の精液と、汗と、オナホールに使用されていたローションで  
あやしくぬめぬめと濡れひかり、いやらしい匂いが湯気とともに立ちあがる  
ペニスに留渦の目は釘付けになっていた。  
さすがにもう勃起はせず、くたりと倒れているそれに不思議な愛情を感じた。  
自分の手には先ほどまで使用されていたオナホールがある。  
先ほどとは違い逆さに持っているため、ペニスを入れる穴が上にあり、  
中を見ると、中には白いどろりとした液体がたっぷりと溜まっているのが見えた。  
「これ、お兄ちゃんの…精液だよね?」  
耳雄は恥ずかしさで顔を隠しながらうなずいた。  
「そそそそうだよ!もう許してくれよ、留渦〜」  
私のことを考えて、こんなにどくどく射精したんだよね…?」  
「ああああ だからもう…あっ留渦!?」  
耳雄があっと思う間もなく、留渦はオナホールの口部分に顔を近づけると、  
傾いたオナホールから流れて出た精液の一部をぺろりと舐めとった。  
留渦は複雑な表情のまましばらく精液を口の中で転がしてからこくりと  
のどをならして飲み込んだ。  
「ちょ、ちょっと、留渦さん?」  
「ん んむ… あんまりおいしくないね…」  
美味しくないどころではなく、ねばねばとのどにまとわりつくうえに  
生臭い液体であったのだが、留渦は不思議とそれほど不味いとも思わなかった。  
口から糸を引く精液を恥ずかしげにぬぐいながら留渦は目を細めた。  
「そ、そうかそうか、お兄ちゃんは飲んだことないからわからないけどな!」  
「さ、お兄ちゃん、スッキリしたでしょ?早く起きて準備してね」  
「お、おう!」  
さっきまであんなにヤバい雰囲気だったのに、何でいまこんな状態に?  
耳雄にはまるで理解できない。留渦はもうちっとも怒っていないようだ。  
微笑んでいるようにさえ見えるのは気のせいだろうか?  
ま、とにかく良かった良かった。  
「お兄ちゃん、私の写真、こんなにたくさ… あれ?」  
留渦の表情から笑みが消え、急にドス黒いオーラが湧き上がった。  
留渦が写っているものは最初のみちこと一緒に写った1枚だけで、  
あとは全てみちこだけの写真だったのだ。  
制服姿のみちこ、水着姿のみちこ、みちこの顔のアップ、みちこだらけだ。  
 
「…お兄ちゃん、これって…?」  
後ろを向いて服を着ていた耳雄は留渦の変化に気がつかないっでのんきに答えた。  
「あ、いや、オカズに使ってみたら思いのほか良くて…うぼわ!?」  
みなまで言わさず、留渦のボディブローがクリーンヒットした。  
くず折れる耳雄の前に留渦の声が聞こえた。  
「本当にダメ兄…!」  
 
 
失神から目覚めると、留渦の「妹やめます」という書置きが残されていた。  
 
 

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