あきゃきゃ……あきゃきゃ……。  
 
辺りに響く耳障りな啼き声に、晴明は目を醒ました。  
今のは、一体……?  
単を纏って表に出ると、そこには―――  
「なっ……!!」  
どんよりと暗雲立ち込める空に舞うは、二匹の異形。  
その姿を目にした瞬間、晴明は肝心なことを失念していた事を思い出した。  
頼光が現世へと舞い戻って来た際、嬉しさのあまり……  
 
異 世 へ と 繋 が る 門、 あ け っ ぱ な し ……!!!  
 
さっと蒼褪める晴明の傍らに、やはり異状に気付いて外に出てきた頼光が、呆然とした様子で立ち尽くす。  
「晴明……あれは……異世の番人、だな。ついてきてしまっていたのか……。」  
過日の事を思い出し、同じ事に思い至った頼光がぽつりと呟く。  
「おや、まぁ……。大層にぎやかにございますねぇ。」  
いつの間にか傍に来ていた貞光が、頬に手を当ておっとりと言った。  
「そういえば、頼光さま……今、晴明さまのお部屋から出ていらっしゃいませんでした?」  
にっこりと笑いながらも鋭いツッコミを入れる貞光に、頼光と晴明は一瞬絶句する。  
どう取り繕うかと思案したところに、丁度良く他の四天王が現れた。  
 
「晴明!!何かヘンな化け物が空飛んでるぞ!?何だありゃ!?」  
どたどたと駆けてきた綱と公時、そして季武に詰め寄られ、晴明は扇を広げて明後日の方向を向く。  
「あれは……異世の住人。どうやら現世へと迷い出て来てしまったようですね。」  
言いながら晴明は、殊更大きく溜息を付いてみせた。  
「滅する事は叶わずとも、異世へと送り返すことなら出来るはず。  
私は異世へと繋がる門を閉じる役目を担うゆえ、誰か、あやつらを門まで導くのです。」  
『つか、その門最初に開けたの誰だよ!?』  
皆が抱いているであろう疑惑には、敢えて気付かなかったフリをする晴明。  
「でも晴明さま……そのような事なら、投げを使える晴明さまご自身が応じる方がよろしいのでは?」  
その心中を知ってか知らずか、のほほんと痛い所を突く貞光に、晴明は扇で顔を隠して目を伏せる。  
「……私は今、腰を痛めているゆえ、重い物を持ち上げるのは……。」  
苦し紛れの言い訳に、綱が笑いながらからかうように言った。  
「何だぁ晴明、ヤリすぎか?!お盛んなのはいいが修祓に差し支えない程度にしろよ?」  
「なっ……何を言い出すのです!!昨夜は二回しか……!!」  
「……墓穴を掘っているぞ、晴明。」  
「かっかっかっ、若いのぉ……善哉善哉。」  
 
その後しばらく晴明は、頼光に寝所への立ち入りを禁止したとかしないとか。  
どっとはらい。  

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