―――この時を、どれだけ待ちわびたであろう……?  
 
幾多の試練をくぐり抜け、奈落の淵より再び現世へと還って来た頼光の姿を目にした瞬間。  
九尾に四天のうちの三名をも封ぜられた晴明は今、いわば手足をもがれたも同然で。  
そんな絶望の中、一度は喪われたと思われた一筋の―――力強き光明が、  
再び己が前に現れたのだ。  
胸が張り裂けんばかりの感慨を抱きながらも、彼の者の苦労を慮った晴明は、  
頼光に向かって恭しく頭を垂れた。  
「よくぞ舞い戻られました。」  
感極まり、ともすれば涙を零しそうになる己を戒めつつ、努めて平常を装いながら晴明は言葉を紡ぐ。  
「貴方が異世に落ちてより、もう幾年が経ったでしょうか。」  
秀麗な眉目に愁いを湛え、頼光を見やる晴明の眼差しは、以前の鋭さが削がれて倦み疲れており、  
頼光を喪った後に彼女らに降りかかったであろう災厄の熾烈さを言外に物語っていた。  
「どうか、いま一度、私の刃となり……。」  
あの日の……炎に包まれた都の情景が脳裏を過ぎり、晴明はそこで一旦言葉を詰まらせる。  
 
彼奴の強大な力に抗うこと及ばず、数多の命が救う事叶わず目の前で喪われていく悲哀。  
己が命を賭し、育んだいとし子とも言うべき地を捨て、落ち延びなければならなかった屈辱。  
この地の者の為に良かれと思って齎した白珠は、しかし同時に浄化という名の粛清をも  
呼び込もうとしているのだった。  
 
「……無情の雨など、もう、見とうはない……。」  
現世と異世を繋ぐ門を見上げた晴明の―――常に凛と張り詰め、隙を作らなかった彼女が見せた、  
儚げな表情。  
それを目にした刹那、頼光の心の内に如何ともし難い衝動が走った。  
思わず手を伸ばし、晴明の身体を抱き寄せる。  
突然の行動に抗う事も忘れ、晴明はそのまま頼光の胸の中へと掻き抱かれた。  
「……頼、光……?!」  
戸惑いを隠せぬ晴明の声音に、頼光ははっと我に返る。  
「……すまぬ。」  
慌てて晴明の身体を離し、謝して背を向けた。  
―――何を、血迷った真似を……。  
頼光は大きく息を吐いて自嘲すると、晴明を直視出来ずそのまま歩き始める。  
遠ざかる頼光の背中を暫し呆然として見送っていた晴明だったが、気を取り直し、  
急ぎその後を追った。  
 
……この時、彼女は狼狽のあまり肝心な事を失念してしまったのだが―――それはまた、別の話。  
 
 
冴え冴えとした月明かりが差し込む簡素な庵の中。  
床に就いた晴明は中々寝付けず、何度も寝返りを打っていた。  
―――頼光が現世へと舞い戻り……そして今、同じ屋根の下に在る。  
その事を思う度に、心の臓がとくん、と鳴り響く。  
まだ問題は山積している。とても楽観視出来る状況ではない。  
それでも、何とかなるのではないかという希望が、再び晴明の内に宿ったのであった。  
彼が傍にいれば、きっと……抱いた期待に、晴明は自嘲の笑みを浮かべる。  
「……何とも、浅ましい考えよの。」  
かつては何の後ろ盾も持たず、己が力のみを頼りに登りつめ、朝廷でも類を見ない孤高の存在として  
名を轟かせた筈の自分が、一人の男の力に縋ろとしている。  
古の大巫術士と謳われた彼を黄泉返らせた時は、ただ、己が刃として利用する為だけであった筈なのに。  
……なのに今は、彼の存在それ自体を心の拠り所としてしまっている己がいた。  
そこでふと先刻の―――突然抱擁された時の温もりを思い出し、晴明は頬を染める。  
何故……彼の男は、斯様な真似を……?  
そして何故……私の心は、こうも千々に乱されておる……?  
脳裏を様々な疑念が過ぎり、揺れる心を抱え、到底寝付ける有様ではなかった。  
嘆息すると晴明はそっと床から抜け出して戸口に立ち、着実に真円に近づきつつある月を見上げる。  
「彼奴は今頃……四天の魂を用い、術を押し進めておるのだろうか……?」  
淡く差し込む月の光に誘われるかのように、晴明は薄物を羽織って外へと足を向けた。  
 
 
晴明が庭に降り立つと、そこには既に先客―――頼光の後姿があった。  
その姿を目にしただけで逸る己の心を宥めつつ、晴明はそっと歩み寄る。  
背後に近づく晴明の気配に気が付き、頼光は長い黒髪を揺らして振り返った。  
「……寝付けぬのか?」  
静かに問い掛ける頼光の言葉に、晴明はこくりと頷いてみせる。  
「はい……。」  
そのまま晴明は押し黙り、天に在る月を見つめた。  
頼光も、そんな晴明の姿を無言で見つめる。  
―――重苦しい沈黙を破ったのは、晴明の哀しげな呟きだった。  
「……どうやら、自分で思っていた以上に、私は心弱きものだったようです。」  
「……。」  
どう答えて良いか分からず、頼光は黙したまま佇み続ける。  
晴明の方も特に返答を期待してはおらず、淡々と言葉を紡いだ。  
「私は……己が力を過信していた訳ではありませぬ。ですが……。」  
言いながら俯いた晴明の顔は黒髪に隠され、その表情を伺うことは出来ない。  
しかし、覇気のないその声色に、頼光の心はひどく揺さぶられていた。  
「貴方を喪いし後……口惜しい事に、私と四天の力だけでは、彼奴に到底及ばず。」  
きつく握り締めた、震える拳は自責と悔恨と―――慟哭の顕れ。  
「我がいとし子とも言うべき都は……蹂躙され、紅蓮の炎に包まれました。  
……それに飽き足らず、彼奴は……貞光を除く四天までも、我が手より奪い去りました……。」  
言葉の端に微かに混じる嗚咽に気付き、頼光が憚りつつも口を開いた。  
「晴明……もしや、泣いているのか?」  
「……子を喪って嘆かない親など、……手足を喪って苦しまぬ者など、居りますでしょうか?」  
目を伏せて力なく呟いた晴明の様子に、頼光の心が乱される。  
そっと目頭を拭うその仕草に、己の鼓動が早くなるのを感じていた。  
 
「……少々、お喋りが過ぎました。」  
言いながら晴明はゆっくりと首を振ると、顔を上げて頼光を見やる。  
「見苦しき様を晒しましたね、頼光……どうか、今宵の事はお忘れくださいませ。  
……夜が明けたら、今後の対策を練らねばなりませぬ。私はもう戻りますゆえ……。  
貴方も、まだ奈落より還りて間もない身。あまり無理はせぬよう、ゆるりとお休みなさいませ。」  
晴明はぎこちなく笑みを浮かべると背を向け、先に部屋へと戻ろうとした……が。  
そんな晴明の姿を見つめていた頼光は、己の内に湧き上がった感情を最早押し留めることが出来なかった。  
「……許せ。」  
謝する言葉を一言だけ呟き、そして―――背後から手を伸ばし、その身体を抱き締める。  
「!!……頼光?!」  
驚く晴明の顎を捕らえて上に向けると、その唇を己が口で塞いだ。  
「っ……んんっ…!!」  
息苦しさに薄く開いた唇の隙間から、頼光が舌を忍ばせる。  
何を、と思った刹那、晴明の舌は頼光に絡め取られた。  
突然の口付けが、晴明を混乱に陥れる。  
思考は霧散し、口腔を貪るが如く蹂躙する頼光に翻弄されるのみだった。  
「ふっ…う……ぅんっ……!!」  
そのくびきから何とか逃れようとする晴明だったが、しかし確乎りと押さえつけられてしまい叶わない。  
ようやく解放される頃にはすっかりと息が上がり、荒い呼吸を繰り返しながら晴明は問うた。  
「頼光……何を……?」  
「斯様に無防備な……弱き姿を、我の前に晒すなど……。そのような様を見せられて、  
どうして平静でおれよう?」  
―――己の前に曝け出された、その弱さが……儚さが、唯々無性に愛おしかった。  
 
「……。」  
頼光の腕に掻き抱かれ、晴明は戸惑いを隠せない。  
この男の腕の中では、自分が自分ではなくなってしまうような……そんな心許ない感覚が、  
晴明の内に生まれていた。  
「晴明……。」  
熱の篭った掠れた声で晴明の名を呼ぶと、頼光は艶やかな晴明の髪を、幼子をあやすかの如く  
優しく梳りながらその耳元に低く囁く。  
「何もかもを己が過ちとして背負うでない。不覚にも奈落に落ち、恐ろしい程の時間を無駄にした  
我にも多大な咎がある。  
その背に負いし重き荷を、我にも分かち、負わせてはくれまいか?」  
「頼光……っ……。」  
見開かれた晴明の瞳から、静かに涙が零れ落ちていく。  
頬を伝う涙を拭う頼光の掌に、晴明は己の手を重ね合わせた。  
「……頼光……このように心弱き私を、蔑みはしませぬか?」  
頼光の表情を伺いながら、不安の混じる声音で問う晴明に、頼光はゆっくりとかぶりを振る。  
「……否。不甲斐なき様を晒した我の方こそ、貴女に疎まれても道理。」  
「そんな……あれは私の油断ゆえ……貴方を疎む事など、断じてありませぬ!」  
眉根を寄せる晴明に、苦笑を浮かべて頼光が呟いた。  
「……そうして全てを背負うでない、と、今しがた申したばかりであるが。」  
「っ……。」  
俯いた晴明の身体を、頼光はそっと抱き寄せる。抗う事なく、晴明は頼光の胸の内へと頭を預けた。  
「……頼光……夜が明ければ、常日頃の私に戻ります。ですから……。」  
そこで晴明は言葉を詰まらせる。頼光の衣を握る白き手が、微かに震えていた。  
「ですから、……今宵だけ、貴方に……縋っても、良いですか?」  
意を決して顔を上げた晴明が、頬を朱に染め、切なげな眼差しを向けて問う。  
晴明の言葉の意味するところを察し、頼光は刹那返答に詰まるが。  
己に向けられる真摯な表情に、小さく嘆息すると、額に優しく口付けを落とす。  
「晴明……貴女が、望むなら。」  
頼光の応えに安堵の表情を浮かべると、晴明はそっと頼光の袖を引いて、消え入りそうな声で言った。  
「……では……私の部屋に、参りましょう。」  
 
晴明の部屋に戻ると、敷いたままの夜具は既に温もりを失い、冷たくなっていた。  
「本当に……良いのだな?」  
再度問う頼光にこくり、と頷く晴明の両手首を押さえて組み敷き、唇を重ねながら、  
纏った衣を脱がせていく。  
露になった両の胸に手を添えると、晴明の身体がぴくり、と強張った。  
「…あ…んっ……。」  
頼光の掌にも余る膨らみを、ゆっくりと揉みしだき始めると、鼻にかかった甘い声が上がる。  
中心の突起を摘み、指の腹で捏ねるように転がしながら、顔を寄せて柔らかな胸元に舌を這わせていった。  
時折きつく吸い上げ、白い肌に幾つもの紅い痕を刻みつけていく。  
「あ、……はぁっ……。」  
次第に荒くなる吐息が頼光の耳を擽り、その官能を刺激した。  
しっとりと汗ばむきめ細かな肌の感触を味わいながら、頼光は徐々に掌を下腹へと伸ばす。  
「……や、あっ…っ……。」  
大腿をそっと撫で上げ、脚の付け根に触れると、晴明が羞恥で顔を背けた。  
其処は既に潤いを湛えており、晴明が悦楽を感じている事を如実に示している。  
滴る愛液を指に絡め取りながら、頼光は秘部を探っていった。  
「…ふっ……ぅんっ…。」  
甘ったるい声が自分の声ではないようで、晴明は口元を押さえて声を堪える。  
それでも口の端から漏れる吐息は熱を帯び、艶かしさを含んでいた。  
頼光の無骨な指が、熱く熟れた柔肉を押し広げると、その入り口へと指を添える。  
「……はっ…あぁっ……。」  
指先に力を込めると、くちゅ、と湿った音を立てて晴明の内に呑み込まれていった。  
 
「やっ……あ、……はぁっ……。」  
内壁を擦りながら、開いた指で花芽を弄んでやると、唇を震わせて嬌声を上げる。  
指を動かすたびに卑猥な水音が立ち、溢れた愛液が指を伝い敷布へと染み込んでいった。  
「あっ…いや、頼光……あっ……!」  
女陰に顔を寄せ、奥から絶える事無く湧き上がる淫水を舐め取っていく頼光の  
生温かい舌の感触に、晴明が身を捩る。  
外と内、双方を同時に攻め立てられて、晴明は徐々に快楽の頂点へと追いやられていった。  
「は…あぁ……っ…!!」  
晴明の身体がぴくん、と跳ね、内を弄っていた頼光の指を軽く締め付ける。  
「……っ…んっ……。」  
前戯だけで軽く達してしまった晴明が、悦楽に潤んだ瞳を頼光に向けた。  
「……頼光……。」  
切なげに己が名を呼ぶ声が、頼光の欲望を駆り立てる。  
差し伸べられた手を取り、赦しを乞うが如く、その甲に恭しく口付けた。  
「晴明……。」  
既に猛りそそり立つ自身を秘所へと宛がうと、滴る蜜を撫で付けるように周囲を擦る。  
押し当てられた肉の熱さに身体を強張らせた晴明の腰を確乎りと押さえ、頼光は腰を進めていった。  
「ひっ…ああっ……!!!」  
身を裂かれるかの如き激痛に瞠目し、悲痛な声を上げる晴明の様に慌てて己を引き抜く。  
女陰より滲んだ血が淫水に混じり伝い落ち、晴明の大腿を、夜具を朱に染めていた。  
 
「よもや……初めて、だったとは……。」  
口元を押さえ、戸惑い呟く頼光の言葉に、晴明は痛みの為に血の気の失せた顔を向ける。  
「……初めてでは、いけませぬか?」  
誘われた時の様から、てっきり慣れているものだと……少なくとも、既に経験はあるのだろうと  
思っていた頼光は衝撃を隠せない。  
「いや……しかし、……すまぬ。」  
朝廷でも孤高の存在であった晴明の性格を鑑みれば、生娘であっても何の不思議もない。  
独り高潔を保っていた筈の彼女が、己のような存在に縋りつくに至ったその苦悩は、  
果たして如何程であったのか。  
慮ってやれなかった自分の浅はかさが、……そして、劣情のままに清廉なる彼女の身を  
穢してしまった己が憎々しかった。  
「……何故、貴方が謝るのです?」  
晴明は身体を起こすと両手を伸ばし、頼光の頬にそっと触れる。  
「貴方に縋りたいと……望んだのは、私です。」  
そのまま頼光の首へと回した腕に力を込め、掠れた声で耳元に囁いた。  
「それとも……斯様に、浅ましき女は……お嫌ですか?」  
拒まれるのではないかという不安にうち震える晴明の身体を、頼光が力強く抱き締める。  
返事の代わりに、その唇を優しく封じた。  
「……んっ……ふっ…ぅんっ…。」  
濃厚な口付けを繰り返した末にようやく晴明を解放すると、その艶やかな黒髪を優しく梳く。  
「嫌いであれば、元より拒んでおる。拒めなかったのは……我も、貴女を欲していたからだ。」  
偽らざる頼光の言葉に、晴明の瞳からつう、と一筋の涙が零れ落ちた。  
止め処もなく流れ続ける涙を、頼光が優しく拭っていく。  
 
「頼光……ならば、……続けて、くれませぬか?」  
消え入りそうな声で続きを促す晴明の身体をそっと夜具に組み敷くと、羞恥に頬を染める晴明の前髪を払い、その額に口付けて囁いた。  
「……晴明、力を抜かれよ。」  
両脚を抱えて開き、露にした女陰に陽根を押し当て、今度は労わりながらゆっくりと侵入していく。  
「くぅ……んっ…。」  
熱い肉塊が再び身体の内を犯していく痛みに、晴明は眉根を寄せ、きつく瞳を閉じて堪えた。  
「っ……大丈夫か?」  
何とか根元まで咥え込ませると、頼光は大きく息を吐いて問う。  
「……平気です、頼光……。」  
些か蒼褪めた顔で、しかしぎこちなく微笑んでみせる晴明の様が愛おしかった。  
逸る心を必死に抑え、繋がったまま動きを止めて晴明の身体中に掌を這わせると、  
色好い反応を見せる箇所を攻め立てる。  
緊張と疼痛に身体を強張らせていた晴明の身と心を解きほぐすように愛撫を続けながら、  
出来るだけ負担をかけぬよう、頼光はゆるゆると動き始めた。  
「っ……くっ……ふぅ…っ……。」  
少しずつではあるが、晴明の口から漏れる吐息が艶を帯び、苦痛以外のものを感じ始めている様子を見せる。  
己の内に生まれつつある未知なる感覚に戸惑いつつも、晴明は頼光の為すがままに受け容れていた。  
「……晴明……。」  
低く、心地良い声で名を呼ばれるだけで、身体の奥深くから熱いものが湧き出してくるのが解る。  
溢れた愛液は頼光の動きを助け、挿出の度に粘着質な音を響かせていた。  
 
「あっ……や、んっ……。」  
頼光が円を描くように内壁を擦る度に、奥を突く度に、じわじわと身の内から溶かされていくような  
錯覚に苛まれる。  
鈍い痛みを伴いつつも、身体の熱は徐々に煽られていく……これが、女の性なのだろうか?  
次第に激しさを増していく頼光の動きにも慣れ始め、律動に呼応して甘き喘ぎを漏らす。  
縋るように背に回された指先に時折力が込められ、爪を立てられたが、彼女の感じる痛みは  
この比ではないであろうと、頼光は苦痛を紛らわせるべく一層の愛撫を施した。  
「んっ…っ……は、…あぁっ……。」  
貫かれたまま身体中を弄られ、晴明が頬を上気させ、切なげな吐息混じりに首を振る。  
無意識であろうそれらの嬌態が、更に頼光を煽り立てていった。  
一つに繋がった処から与えられる熱と快楽に晴明の思考は霧散し、なけなしの理性もその輪郭を失っていく。  
背筋を駆け上ってくる得体の知れない衝動に身を任せ、最早、何も考えられない頭の奥で何かが爆ぜた。  
「あ……あ、あっ……!!」  
意味を成さないあえかな嬌声が上がり、晴明がきつく頼光を締め付ける。  
「く…っ……。」  
促されるままに頼光も達し、晴明の内へと己が欲望を解き放った。  
 
荒い呼吸を繰り返す晴明から、頼光はゆっくりと陽根を引き抜く。  
「っ…んっ……。」  
今まで己を穿ち続けていたものが抜ける感触に、晴明の身体がぴくん、と震えた。  
「……あ、っ……。」  
中に注ぎ込まれた頼光の精が破瓜の血と淫水に混じり合い、女陰から滴り落ちる感触に、  
晴明が小さく声を上げる。  
頬を伝う涙に気付き、頼光はそっと手で拭った。  
「すまぬ晴明……辛かったか?」  
苦痛の為だと思った頼光が謝する言葉に、晴明は瞳を閉じてかぶりを振る。  
「いいえ……違います。寧ろ……嬉しかった。」  
 
『……我も、貴女を欲していたからだ。』  
頼光が己を求めてくれた先刻の言葉を反芻し、微かに笑みを浮かべる。  
たとえそれが、己に対する同情からであったとしても構わない。  
彼を突き動かす程の激しい想いが、確かに其処には在ったのだから。  
 
「頼光……。」  
添えられた大きな掌に、甘えるように頬擦りをする。  
今だけは、何も考えず……只、愛おしい男の腕の中で心安らかに過ごしたかった。  
初めての情交を終えた身体を襲う気怠さに、晴明はそのまま深い眠りへと誘われていく。  
微かに寝息をたて始める晴明の髪を優しく梳りながら、頼光もそっと瞳を閉じた。  
 
 
そうして永く暗き夜が明けて、気高き『安倍晴明』が甦る。  
喪われし刃を再び手にし、囚われし四天を救い出し、都に立ち込める暗雲を晴らす為に―――。  
 

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