晴明達が隠れ住まう、清浄なる天の麓。  
 本来であれば、晴明以外の者は立ち入る事罷りならない禁忌の土地であったが、  
都にあった屋敷を失った今、他に隠れ住まう場所も無く。   
 頼光と四天達は、一時的にこの地の晴明の庵に身を潜ませる事になったのである。  
   
 白銀の軍勢を打ち破った直後故か、妖鬼達の襲来も今はなく。  
 夜は既に深け、月の姿も無く、宵闇と静寂のみが漂っていたのだが。  
 
 暗闇の渡殿――そこは、晴明の閨へと繋がる廊下。  
 本来であれば、この様な時間には誰一人居ない筈であったが、何故か  
もぞもぞと動く一つの影。  
 耐えるように息を潜め、声を潜めてはいるが、その両の腕は妙に忙しなく動く。  
   
 其の影の正体は、四天王の紅一点、貞光。  
 普段は殆どといって良い程に顔色を変えず、表情の無い少女が――頬を赤らめ、  
甘い吐息を漏らす。  
 「……ぅ…っ……」  
 甘い声が漏れ、慌てて両の掌で口元を押さえる。  
 片方の掌の指は艶やかに濡れそぼっていた。   
 (…こんな………妾が…何とはしたない…こと…)  
 ゆるりと口元を覆っていた掌が滑り、懐に差し入れられる。  
 幼く、まだ膨らみの小さい胸を自らの片掌で弄れば、頂きの果実は硬くなり、紅く  
立ち上がった。  
 もう片方の掌は、ゆるゆると袴の隙間に差し入れられ、まだ幼い隙間を弄りあげる。  
 闇夜に濡れた音が微かに響き、その音にぴくりと身を震わせるが、止まる事無く  
己が花芯を、蜜壷を刺激して自慰に耽った。  
 (はしたない…でも、止みませぬ……っ…なぜ……)  
 理由は―――晴明の塗篭の中、その几帳の向こう。  
 貞光の目の前で繰り広げられた淫靡な光景を見てしまったが故なのだが。  
 
 貞光は、ただ何時ものように、朝、目覚めた際に使用する為の清水を晴明の閨に  
置きに来ただけであった。  
 ――そう、その行動は、普段と何ら変わらぬ、筈だったのだ。  
 
 晴明の閨に入ろうとした時、微かな…苦しげで、それ以上に――熱の篭った晴明の声  
が聞こえてきた。  
 (晴明…さま?)  
 貞光は不信に思ったものの、取り立てて騒ぎ立てず、盥を置いてそっと塗篭の扉を開く。  
 晴明の甘い声は更に大きく聞こえたが、それ以外にも誰かが居るという事がわかった。  
   
 音を立てないように、そっと几帳の隙間から覗き見た貞光は、そこで繰り広げられて  
いた光景に絶句する。  
 
 
(…晴明さま……頼光…さま…)  
 薄暗い閨の中に篭る、甘く熱い空気。  
 苦痛と艶が帯びた女の喘ぎ声と、男の荒ただしい息。  
 そこでは―――気貴き魂を持つ2人の男女が、お互いを求め、貪りあい、睦あい。  
 俗に言う『男女の情交』なるものを交わしていた。  
   
 互いの艶やかな黒髪が混ざり合い、絡み合う。  
 衣は乱れ、雪の様に白い晴明の肢体をかろうじて隠してはいたが、頼光の大きな掌が  
それらをゆるりと剥ぎとってゆく。  
 「っ…、頼光…やはりこれ以上は…」  
 少し抗う様を見せた晴明を頼光の唇が塞ぐ。  
 熱篭る紅い唇を吸い上げ、そのまま鎖骨に滑り落ち、胸の果実に舌が絡みつく。  
 片方の掌は女陰をまさぐり、淫靡に濡れた音を奏で始めていた。  
 「んっ…はっ…あぁ…っ…」  
 濡れた舌が果実を吸い上げ弄る度に、長き指で女陰を弄られ蜜液の音が大きく響く度に、  
晴明からは甘い吐息と喘ぎが漏れて身を打ち震わせる。  
 (せ…晴明…さま……)  
 快楽に落ちまいと耐えながらも、男の愛撫を徐々に受け入れ、艶やかに染まってゆく女。  
 普段はまず見る事叶わないであろう晴明の媚態に、貞光はどきりとする。  
   
 これは秘め事だ。  
 
 これ以上は見てはいけない。  
 
 ここに居てはいけない。  
 
 そう心では思いながらも――なまじ目の良い貞光には、目の前で繰り広げられている情事  
の全てが見えてしまう。  
 つい、それらをまんじりと見つめてしまう貞光には、勿論歳相応に『好奇心』というものもあった。  
 
 施される頼光の愛撫に、晴明の熱の篭る喘ぎはとどまる処を知らず。  
 湿った音と喘ぎが混ざり、閨の中は熱篭った淫靡な空気に包まれてゆく。  
   
 瞬きする事も忘れ、食い入るように2人の情交を見詰めていた貞光も、  
徐々に淫靡な「気」の内に取りこまれる。  
 きゅっと几帳を握る小さき指先は震え、無表情に等しかった白い顔は  
紅く染まり、潜めながら小さく吐く息も熱を帯びてゆく。  
 
 「くっ…んっ…!」  
 晴明の身体がびくりと震え、陰部を馴らし嬲っていた頼光の指が引き抜かれる。  
 いやらしく蜜を滴らせ絡まる指を頼光は丁寧に舐めとってゆく。  
 「あっ……」  
 その様が酷く淫らで恥かしく、晴明は顔を両の腕で隠して背けたが、  
頼光はそれを許さずに己が顔に向かせる。  
 「頼…光……」  
 「…晴明……良いか…?」  
 互いの熱い目線が絡まり、どちらともなく深く口付ける。  
 そのまましばし戯れ、深く触れていた唇が離れると、頼光の陽根が濡れて  
愛蜜を溢れさせる晴明の中へとゆっくりと進入を果す。  
 「…くっ…ん……は…あああぁ!!!」  
 苦痛と、快楽の混ざる甘い嬌声。  
 「……っ……!!」  
 初めてみた男と女の結付。  
 その光景を、晴明の悲鳴にも似た喘ぎを聞いた瞬間、力無くぺたりと貞光の  
身体が床に崩れる。  
 (身体が…あつ…い……?)  
 
 己が身に起こった変調に、さしもの貞光もうろたえを隠せなくなる。  
 そろりと手を衣に差し入れ、酷く熱くなっている部分―――に手を触れると  
そこはぬちゃりと湿った音を立てた。  
 (酷く…濡れている……?これは一体……?)   
 そこは、既にしとどに濡れそぼり、蜜を滴らせていた。  
 恐る恐る幼い指が、まだ成長しきっていない薄い割れ目をゆるりとなぞり上げる。  
 「っ……!」  
 背筋を這いあがる、ぞくりとした感覚。  
 それは初めて味わう感覚だが、酷く甘美で。   
 思う様にゆっくりと指を動かせば、甘美な感覚は更に増してゆく。  
 「………っ……ん……」  
 ただなぞるだけの動きはそのままつっぷりと割れ目の奥深くへと進入を果す。  
 「…っ……!」  
 初めての異物感に咄嗟に指が引き抜かれるが、物足りなさに再度指を這わせ、  
また挿入する。  
 (…こんな………妾が…何とはしたない…こと…)  
 心ではそう思っていても、指の動きは止まる事を知らず。  
 その動きは―――何時しか、晴明を突き上げる頼光の動きに合わせていた。    
 
 
 頼光と晴明が淫らな結合を果たして幾刻が経ったであろうか。  
 長くもあり、短くもあり。  
 熱と快楽に浮かされた身は既に「刻」というもの自体の感覚を希薄なものにしていく。  
   
それは、ひたすらに自慰に耽る貞光も同じであったのだが。  
漏れそうになる声を必死に押えながらも、指と掌は快楽を求め、つたない動きで  
花弁を、花芯の上を擦り弄り。  
   
 
 衣ずれの音と、濡れた音。  
 熱い吐息と、淫らに篭った閨温と。  
 そこ全体がまるで熱病を患ったの如く、浮かされるような夢現の感覚の中。  
 急速に限界が近付き、頼光が晴明を抱きしめると、殊更強く突き上げた。  
 「晴明…っ!」  
 「ひっ…!!ん…っ…くっ…、あああぁっ!」  
 「………っ!!!」  
 
 頼光が達したと同時に晴明が達し――――貞光も身を強張らせ、初めての「感覚」  
というものを味わう。  
 頬を桜色に染め、貞光の身体にびくりと数度震えが走り、そのままへたりと力を無くす。  
 まだ男を知らない硬い秘所は自戯ですっかりと蕩け、大量の蜜が溢れだして小さな指を  
しとどに濡らし染めていた。  
 
 
 一方の晴明は、内に熱が注ぎ込まれたと同時に達した白き身が淫ら小刻みに震えてそのまま脱力する。  
 今だ頼光と繋がった個所から微かに血の混ざった蜜液と白濁液がつうっと伝い滴り、夜衣を濡らす。  
 「…っ」  
 その瞬間、血の臭いには一際敏感な頼光の表情が僅かに曇る。  
 汗と涙で濡れる晴明の仄かに紅に染まった貌に触れ、張り付いた絹糸の如き漆黒の髪を丁寧に掻き分けた。  
 「すまぬ…貴女の媚態に己が身の加減が利かなかった。大丈夫か…?」  
 労わる様に、愛おしげに問い掛ける頼光に、晴明はゆるりと首を振り、潤む瞳を向けると  
そろりと細き二の腕を絡ませる。  
 「…いいえ……構いませぬ…それよりも、どうか……」  
 あまりにも切なくか細き声で貞光には聞き取れない言葉であったが。  
 頼光は愛おしそうに黒髪を透き、荒く甘い息を吐く晴明の頬に額に瞼に口付けを落とす。  
 甘えるように身を擦り寄せる晴明の細腰を掴み、挿入したままの塊をずるりと動かした。  
 「らいっ…!!…んっ…あっ…あぁっ…!!」  
  (………。)  
 上がる晴明の嬌声に、貞光の身体に甘美な電流と同時に、奇妙な違和感が突き抜ける。  
 晴明は内を雄で激しく侵され、抉られる衝撃に身を捻り振るわせ、甘美な悲鳴を上げた。  
 その媚態に欲情し荒く猛々しい息を吐く頼光は殊更に動きを早め、貪るように晴明の朱の唇を  
吸い上げる。  
 閨の中は喘ぎと、荒い息と、激しく濡れた音が響き。  
 強く激しく互いを求め合い、情事を紡ぐ―――その光景に。  
 
 貞光は、何故か軽い嫉妬を覚える。  
 「………。」   
 感じた違和感は――――嫉妬である事に、貞光の心は急速に冷めていく。  
 熱の冷めやらない身体に反する、沸きあがる不快な感情。  
 それが何かはわからなかったが、己が心と身が反比例するかの如くの感覚。  
 「………っ……」  
 (いけない…これ以上、ここにいては……)   
 力の入らない身体を叱咤し、どうにか立ち上がった貞光は、音も立てずに  
その場から足早に立ち去った。  
 
 急き足で渡廊を抜けた瞬間―――  
 「あっ……」  
 「おっと!!」  
 何時もなら、互いの気配で絶対このような事は起きないのだが――出逢い頭に、綱と勢い良くぶつかった。  
 綱は避けようとしたのだが、動きの速い貞光を避ける事もできず、体格差と勢いから  
跳ね飛ばされて倒れそうになった貞光を綱はとっさに支え抱き込む。  
 「……!!」  
 勢い良く逞しい獣の胸に支え抱き込まれた瞬間、貞光の心の臓は大きく跳ね上がった。  
 
 
 
 

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