貴方が御休みに為られて幾年が過ぎた事でしょう  
このぬるい生は何時まで続くのか  
古の人、死を司る貴方  
何故、我が身から死を奪い去ってしまったのか  
 
頼光  
口の端に上がっても音にならぬその名を呼び続けても聞こえませぬか  
生きてゆくのはこの上ない苦しみ  
貴方のその美しい姿が目に焼きつくも、永久に叶わぬ逢瀬は夢の中  
我は眠りを持ちませぬ  
ただ目を瞑れば満開に咲き乱れる桜花  
近付いても消えませぬか?醒めてしまうのが恐ろしいのです  
手を伸ばし触れた枝の冷たさがひやりと身体を走る  
貴方の仮初の身体は抱きしめる事も叶わず散ってしまいましたね  
胸を開き冷たい幹を抱きしめるとはらはらと散る花弁は何を語るのですか  
涙を流す事が出来たならきっとそうしているでしょう  
行く先を見つけられぬ想いが身体から溢れるのです  
受け止めて貰えるとも思ってはおりませぬ  
唯見逃して欲しいのです  
時折こうしている事を  
貴方への想いを  
 
抱きしめた幹に血が通うように脈打ち  
冷たい桜は貴方に変わり仮初、でもない身体で我を受け止める  
物言わぬその口が物言えぬ口に重なります  
流れぬはずの涙が溢れ  
あの時落下する身体を受け止めた、その腕が同じように私を抱きしめる  
もう二度と逢うこと叶わぬと触れる事叶わぬと  
諦めていた貴方に再びこうして逢え歓喜に戦慄く身体を  
そっと抱き上げあの時のように、否  
熱情を込めて貴方を見上げている私の髪を撫で付けた  
貴方の手は私の身体に滑り込み気付くと衣は剥がされていた  
息をする度震える乳房を貴方の手が撓め  
同時にその中心を爪先で弾く  
びくんと反返る身体を楽しむように貴方は何度も繰り返す  
柔らかい乳房は貴方の掌で形を自在に変える  
漏れた嬌声は私の身体の喜びを伝えられてますか?  
腕を貴方の首に絡ませ唇で会話するように重ねる  
貴方は私を組み敷いて下腹の方へと手を伸ばす  
その曲線にそって撫で裂け目に指を差し込む  
あの時白珠を抉り出した指は優しく優しく私の身体へと入ってくる  
奥まで差し込まれると中を掻きまわすようゆるりと動かす  
 
私の中の獣性が呼び起こされる  
身体すらも制御できない愚かで情けない我を蔑むがよい  
心なぞ、もっと抑えきれぬのだから  
脚を貴方に絡み付かせ  
仰ぎ見るようにその顔を覗き込む  
美しい貴方の黒髪が二人を包みこむように降りかかる  
顔を近づけ私の口を吸いながらも貴方の指は執拗に動き続ける  
その長い指は中でうねり、私の女を刺激する  
身体は荒い息のままの接吻と貴方の舌の動きで燃え立つ  
貴方の舌が私の上顎をなぞり、貴方の指が粘液を泡立てる  
出来得ることならば身体が貴方に溶けこんでしまえばよい  
捏ねていた指を引き抜き未だ息のあがっている私に休む暇を与えず  
ぐったりした両足を持ち上げられ広げられた  
恥ずかしい所を晒され思わず身を捩っても貴方から隠れる事なぞ出来ない  
蕩けそうになっているそこに貴方の顔を近づけると  
私の身体にえも云われぬ快感がはしった  
貴方が何故、舌を斯様な所へ滑らせるのか  
そのような事が何故、この身を悦ばせるのか  
止めどなく溢れる体液を啜われた時悲鳴に近い嬌声があがり  
貴方が軽く噛み付いた時、嬉しさに戦慄く  
 
その時、私は慎みも無い唯の獣となった  
自分の求めるものを探すように貴方の身体をまさぐり  
貪るように、所構わず吸い付く  
肩、首、胸、脇腹  
貴方の獣性を宿す所を慈しみながらそっと口をつけた  
滑々の皮膚と脈打つ血潮  
全てが狂おしいほどに愛しい  
喰らい尽くすように頬張りしゃぶり付く私をそっと貴方は押し留めた  
貴方が居なくなった淋しい唇にそっと唇を重ねて  
私の脚をもう一度開き貴方は私の中へと入ってきた  
腰を捕まえられて奥まで  
そのまま二人が一人に為ってしまえば良い  
私の中で脈打つ貴方  
最奥まで入りゆるりと引き抜き又衝く  
挿されるたびに溜息が辺りの空気を染める  
何度でも貴方を受け入れ抜かれる度に引き止める  
己の身体の正直さは些か呆れるほどだ  
貴方は息を荒げしかし動きは優しく私を責める  
私は貴方を締め付け苦しめる  
快楽を登りつめて行く先なぞ何も無いが  
二人で行けるなら私はそれで良い  
 
首を伸ばし何度も交わす接吻の度  
突きは激しく深く次第に私も腰を突っぱねるように動かした  
それでも身体の疼きは治まる事もなく互いに激しく求め合う  
どんなに身体を重ねてもきっと同じ  
それでも求めるのは貴方だけ  
その思いが暴走して狂おしいほど  
いっそ貴方なぞ居なければ良い、私なぞ忌み嫌ってくれればよい  
そう想うほど貴方が愛しい  
身体が壊れるほど貴方と快楽を貪りそのまま消えて無くなる事が出来たなら  
硬い熱い貴方を包みこむように私の中で締め付けると  
一瞬貴方の動きが止まった  
全てを私の中へ注ぐように深く繋がったまま二人はきつく抱合った  
下半身だけでない唇も繋がり腕も絡ませてそれでも満ち足りぬ  
どくんどくんと脈打ち何度も痙攣したように中で微かに動く  
何度もくり返しそれもおさまると貴方はぬるりと私から抜け出た  
貴方を喪ってしまった私は  
身体も心も気が違ったように貴方を求めた  
頼光、頼光、頼光  
もっと、もっと近くに感じたい  
頼光。貴方が遠すぎてこの身が寒いのです震えているのです  
貴方の居ない空虚から漏れる精が幻のよう  
最後の口づけを交わし貴方を確かめる  
 
 
背に回した腕に力をいれるとぱっと桜の花が散った  
そっと目を開けると静かな空  
頬に静かに一片、冷たい花弁が落ちた  
しかし心は充たされていた  
出会えて仕合せだったと思える  
永劫に逢瀬は叶わぬとも  
 

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