「あ…ん…あぁ…」  
薄暗い閨の奥から、女の喘ぐ声が聞こえる。  
声の主は、稀代の陰陽師と称される晴明その人で在った。  
対に、その音色を奏でるのは、古の巫術士と謂われる男…。  
彼女に身を重ね、豊かな胸を弄んで居る。  
「ら…頼光…其れは間違っておりますっ…あっ」  
胸の頂を執拗に攻められ、声も絶え絶えになりながらも、晴明は異を唱えた。  
「何が違うのか?風習や奉事は疎かにしてはならぬと…昨年はその様に申していた…と記憶して居る」  
「はぁ…んっ…然し…あっ…」  
彼女が言葉を紡げぬ様、頼光は房の実をついばんだ。  
「そう言えば…」  
頼光は顔を上げると、徐に彼女の膝を抱え、広げた。  
「なっ…」  
何をするのかと驚きの眼差しを向ける彼女に、一瞥をくれると、頼光は身を沈め、甘露な蜜の滴る花弁を分け、ひくりと揺れ動く花芽を食んだ。  
「あぁっ…いやぁ…んっ…あぅっ…」  
房の実と同じ様に、吸い、ねぶり、甘く噛む。与えられる刺激が鮮烈過ぎて、晴明の発する声は、既に言葉では無くなっていた。  
「もう良いだろうか…?」  
ふと攻めを解き、頼光は彼女に尋ねた。  
「そんなの…もう遠に…」  
契りの事だと口を開きかけた晴明だが  
「鬼祓い…」  
ぽつりと吐き出された言葉に彼女は我が耳を疑った。  
「何と…?」  
「節分とは…豆を食み、身に宿る鬼を祓うのだと…綱が…」  
晴明は唖然とし、眉間に手を当て溜め息を吐く。  
(…また綱ですか…)  
彼女は再度溜め息を吐くと  
「もう良いです…為れば…さぁ、今度は貴方の楔で我が身を清めて下さいませ」  
「諾した…」  
 
薄暗い閨の内、意味を違えた鬼祓いの儀は終わりを迎えた…。  
 
 

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