「……」  
また、この夢か。  
僕は肩を大きく上下させながら、額に手をやった。  
あの惨劇からどれほどの時が流れただろうか。  
いまだ悪夢は僕を逃がすつもりはないらしい。  
「ふぅ……」  
 溜息をつき、枕元に置いた煙草に手を伸ばす。  
夜は長い。  
しかし、決して明けない夜はない。  
広がる闇に光が差し込む日は必ず訪れる。  
僕はライターの火をつけた。  
その仄かな光に照らされて、両脇で小さな寝息をたてる二人の輪郭がそっと浮き上がる。  
「白雪……いばら……」  
何一つ身に纏わず、無垢な表情を零す少女達に、僕の口元は自然と緩んだ。  
 
この先、僕を待ち受けているのは救いのない未来なのかもしれない。  
でも僕はそれでも構わなかった。  
どんなに酷い結末が待っていようとも、彼女達となら手を取り合って歩いていける。  
だから僕は生きていこうと思う。  
 
 
 
「おやすみ、白雪、いばら……りんご……」  
 
 
 
end  
 

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