サンドリヨン城を目指して旅を続ける三銃士とその他大勢ご一行。わけのわからん新興宗教はびこる村を結果的に半壊させた後、意気揚々と旅路を急ぐ……はずだったのだが、
「あう〜……」
「ったく……病み上がりであんな無茶するからだ」
野営用に設えられたテントの中で、赤ずきんは毛布にくるまり横になっていた。ぐったりした様子で、肌は火照り、目も熱に潤んでいる。
「ごめんねみんな……」
「いや、気にすんな。責めてるわけじゃねえ」
「ねえ白雪。赤ずきん、ちゃんと治ってなかったの?」
草太が尋ねると、白雪姫は眼鏡を抑えながら否定した。
「鱗粉の毒はもう残っていないはずです。これはヴァルの言うとおり、病み上がりで無茶したせいですわね。症状としてはただの風邪ですわ」
「風邪はひきはじめが肝心……ふわわ」
「っていうか、赤ずきんでも風邪ひくんだ……」
「りんごさん、それはひょっとして何とかは風邪ひかないという――」
「そんなつもりじゃないわよ!」
「うるさいぞお前ら」
適当な所でヴァルがつっこみを入れ、ひとまず静かになる。
「じきに日も暮れる。赤ずきんは明日までゆっくり休んでろ」
「うん。ありがと……」
答える声にはいつもの元気が全く無かった。
「一晩休むだけで大丈夫かな?」
草太が心配そうに尋ねるが、ヴァルは大丈夫だと答えた。
「頑丈なのが赤ずきんの取り柄だからな」
「そうですわね。さて、氷嚢を作りませんと……りんごさん、夕飯の支度をお願いしてよろしいかしら」
「分かった。草太、手伝って」
「うん」
「私は……ふわわ」
「いばら、今寝るなら最初の見張りは任せるぞ」
「了解……zzz」
赤ずきんの看病は白雪姫に任せ、めいめいが仕事に取り掛かった。
かなり熱の出ていた赤ずきんは、いつもなら軽く三杯は食べる夕飯を一杯だけに留め、すぐ横になった。
既に日は落ち、夜空には月がよく映えていた。
「赤ずきん、明日にはよくなってるかな」
「心配無い。さあ、俺達も明日に疲れを残さないよう、とっとと寝るぞ」
「何だか赤ずきんがいないと、ヴァルがリーダーみたいになってるね」
「ふわわ……こういう時は頼りになる」
「まあな。……って、本来は白雪かいばらがそういう役目をするべきだろうがっ! 三銃士だろお前ら!」
「私はあまりリーダーという柄ではありませんし」
「私は……ふわ……眠いし」
「いばらはさっきまでたっぷり寝ただろ! 夜の見張りはどうすんだ!」
「番犬に任せる」
「任せるなっ! ってちょっと待て! 番犬って誰の事だ!? 俺は犬じゃねえ!」
つっこみ役の苦労も倍加しているようだった。何だかんだで、赤ずきんは一行のまとめ役として上手く機能していたらしい。
夜……みんなが寝入った頃、草太はふと目を覚ました。何となく気になって、赤ずきんの様子を見てみる。
「うわ、汗びっしょりだ……」
荒く寝息をつく赤ずきんは、額に玉の汗を浮かべていた。全身も汗まみれだろう。
「早く拭いてあげないと、体が冷えちゃうよ……」
荷袋の中から汗拭き用のタオルを取りだした所で、草太はハッと気付いた。
(……ぼ、僕が拭くのか?)
寝ている赤ずきんの体の汗を、拭く。服を脱がして、色んな所に手を触れるわけで――
「う……」
やはり草太も健康な男子。ついその行為を想像してしまい、体が熱くなった。
「…………って、誰か起こせば済む話じゃないか」
至極当たり前な解決策に思い当たり、ホッとすると同時に、やらしい想像をした自分が猛烈に恥ずかしかった。
「りんご……起きて」
「ん……草太? どうしたの?」
「赤ずきんがすごい汗かいててさ、拭いてあげないと」
「あ、うん……分かった」
眠たげに目をこすりながら、りんごは草太からタオルを受け取った。
「じゃあ、僕はちょっと外に出てるね」
ほんの少しだけ後ろ髪引かれる思いをしながら、草太はテントを出た。
夜とはいえ、外は月と星明かりのお陰でとても明るかった。人工の灯火に充ちた東京では見られない光景だろう。
「ふわわ……」
「いばら、見張りご苦労様」
「交替?」
「いや、次はヴァルだし……時間もまだだし」
「残念……ふわ」
傍の小岩に腰掛けていたいばら姫は、心底眠たそうに欠伸していた。
「草太はどこいくの?」
「ちょっと目が冴えちゃったから、その辺ぶらついてくるよ」
「ふわ……あまり遠くへはいかないように」
「うん」
いばら姫の言葉に頷き、草太は森の方へ歩いていった。
適当に周囲から見え難い木陰を見つけ、草太は幹にもたれ掛かり腰を下ろした。
「その、男として仕方ないことだからね?」
端から見れば一人言だが、草太は植物と会話出来る……つまり、周りの草花に一応言い訳をしているのだ。
まだ起きていた植物達は「大丈夫。気にすんな」と優しく理解を示してくれた。
安心した草太は、下着ごとズボンを下ろして、反り返っている自分のものを手で慰め始めた。
割と淡泊な性質の草太にとっても、女の子四人に囲まれての道中というのは、やはり悶々とする場面が多い。
エルデに居た頃は、まだトイレやお風呂で処理出来たが、ファンダベーレに来てからはこういう暇を取るのも一苦労だった。
「はぁ……はぁ」
自慰をする時、草太が頭に思い浮かべる対象は一定しない。しかし、やはり赤ずきんや白雪姫、いばら姫、それからりんごなど身近な女の子の裸体を想像する事が多かった。多少の罪悪感を抱えつつ。
「はぁ……赤ずきん……っ」
そして今は赤ずきんの事を思い浮かべている。不謹慎かもしれないが、熱を出して体を火照らせている彼女が妙に色っぽく見えたのだった。
「……はぁ」
忙しなく手を動かしながら、不意に申し訳ない気持ちが込み上げてくる。熱で苦しんでいるはずの赤ずきんを想像して、自分はこんな事をしているのだ。
「赤ずきん……ごめん……」
聞こえるはずもないがそう呟き、草太はふっと目を開けた。
そして近くの草むらから顔を出していたりんごと目があった。
「っ!?」
「あ……」
固まる草太とりんご。ちなみに前者は下半身丸出しで手をイチモツに添えている。
「りりりりりんご、ど、どうして……?」
「えと……草太がどこか行ったっていうから、ちょっと探す……つもりだったんだ、けど……は、早くズボンはいてよ草太……!」
顔を真っ赤にして目をそらすりんご。
「うわ!? ご、ごめん!」
大急ぎでズボンを上げる草太。
だが、
「い゛っ!?」
腹の底から苦悶の声を上げ、草太は身を折りイモムシのような姿勢になった。
「ど、どうしたの……?」
「……挟んだ……」
ほとんど涙声な草太。慌ててたものだから、ファスナーで大事な部分の皮(あるいは肉か)を挟んでしまったらしい。
女であるりんごには分からない痛みだ。しかし悶える草太の様子を見て、かなりの緊急事態を感じ取った。
「草太、大丈夫?」
「う、うん、大丈夫だから……りんごは先に戻ってて……」
「全然大丈夫に見えないわよ! 顔からすごい脂汗出てるじゃない!」
「いや単に痛いだけだから……」
「ちょっと見せて」
「え!? そ、そんなの――」
「恥ずかしがってる場合じゃないんだゾ!」
聞く耳持たず、りんごは俯せていた草太を強引にひっくり返した。
「わ……」
痛みのせいで萎れてはいたが、記憶にある草太の男性器(幼稚園時代)とは全く違うそれに、りんごは息を飲んだ。
「り、りんご……そんなに見ないでよ。恥ずかしいって」
「な、何を勘違いしてるのよ! 怪我してないか見るだけだからね! 触ったりしてもそれはしょうがない事なんだゾ!」
聞いてもいないのに次々言い訳をしながら、りんごは草太のそれに恐る恐る手を伸ばした。
「あ、血が出てる……」
竿の部分の中程に小さな傷が出来て、そこから血が滲んでいた。
「もう、やっぱり怪我してるじゃない」
「こ、これぐらい平気だから」
ズボンを上げようとする草太を、りんごがすかさず止める。
「だめっ! 小さい傷でもバイキンが入ったら大変なんだゾ」
そうは言っても、ここには消毒薬も無ければ傷を洗う水も無い。
しばしの沈黙を経て、りんごが口を開いた。
「…………草太」
「はい?」
「勘違いするんじゃないゾ。これはあくまで手当だから」
「え、何を――うわっ!?」
りんごは小さく舌を出すと、草太の怪我をしている部分……肉茎の横をぺろぺろと舐め始めた。
「り、りんご、そんな事……」
「だっ、だから勘違いするなーっ! 怪我した所を舐めてるだけなんだゾ!」
そうは言われても、ごく当たり前の反応として草太の息子は大きくなってきた。さっきは中断して抜いていなかったので、勢いは全く衰えていない。
「わわっ……な、何してるのよ!?」
「何って言われても……」
生理現象ですのでどうにもなりません。……とは草太も言わないが、どうにもならないのは事実だった。触られているだけでもきついのに。
「もう……しょうがないなぁ」
顔を赤らめしながら、りんごは添えていた手をゆっくり上下に動かし始めた。
「り、りんご、そこまでしなくても……もう痛くないから」
「だって……このままじゃ草太が困るでしょ」
「そうだけど……う」
色々言いながらも、りんごに手で擦られて草太の息子はますます固くなっていく。ぎこちない手付きだが、自分でするのと全然違う新鮮な感触だった。
「お、男の子はこうすると気持ちいいのよね?」
「うん……でもりんご、どこでそんな……?」
「う……うるさい! さっき草太がやってたのを見様見真似でやってるんだゾ!」
怒鳴ると同時に握力上昇。
「痛っ!」
「あっ、ごめん……」
すぐ手の力を弱めて、優しく撫でるように上下させる。
「ねえ、りんご……出来たらその、先っぽとか舐めながらやってくれると――」
「調子に乗るなバカ!」
「ご、ごめん……」
また怒鳴られて口を閉じる草太。
「………………先っぽを舐めればいいの?」
「え?」
「何度も言わせるなバカっ! 先っぽを舐めればいいのって聞いてるの!」
赤面して吼えるりんご。
「は、はいっ! いいと思います!」
何故か敬語で返答する草太。将来尻に敷かれるのが目に見えていた。
「ん……」
りんごは小さな唇を亀頭に寄せ、そっと舌を這わせた。
「……んぅ……ん」
「うぁ……」
初めての感触に草太は背筋がぞくぞくした。
たどたどしく亀頭を舐めながら、右手は肉茎をしごき立てる。懸命に奉仕するりんご。左手で髪をかき上げる仕草が妙に色っぽい。
「あ……何か出てきた」
鈴口から漏れ出る液体を、りんごの舌がすくうように舐め取る。
「うえ……苦い」
「りんご……そんなに無理しなくても」
「む、無理なんてしてないんだゾ!」
りんごは躍起になったようにそこを舐め続ける。
草太の射精感が込み上げてくるが、いまひとつで達せない……りんごの稚拙さがもどかしかった。
「りんご、もっと……強くして……」
「ん……こう?」
りんごは手の動きを早め、少し考えてから……思い切って先端部分を口に含んだ。
「うわっ、ちょっと……」
大胆なりんごの行動に草太の方が驚いた。
「あ……こうするのダメ?」
「いや、ダメじゃないけど……」
むしろ大歓迎ですけど。……というのは草太も胸の内だけで留めておいた。
「ん……んっ」
先っぽをくわえたまま舌を動かす。技巧も何もないただ舐め回すだけのフェラチオだが、りんごの温もりが直に感じられた。
「りんご……ううっ」
草太のものを口に含みながら、りんごが少し視線を上げた。
「う……あっ」
りんごと目が合った瞬間、草太は果ててしまった。くわえられたままの性器から精液が噴き出す。
「んん!? う……けほっ、けほっ……」
予告も無しにいきなり口内で射精され、りんごは咽せてしまう。
咳き込むたび、白濁の液がりんごの口から糸を引いて落ちた。
「ご、ごめんりんご……」
「けほっ…………む〜」
口を拭い、りんごはギロリと目を鋭くして草太を睨め付けた。
「草太のバカっ! 出すならそう言ってよ! ちょっと飲んじゃったじゃない……すごく苦いし、口の中が何か変な感じだし……」
「ほんとにごめん……その、りんごがしてくれて、すごく気持ちよかったから……」
「そっ…………そんなこと言っても許さないんだからね……!」
りんごはふくれっ面のまま、服に少し付いていた精液をポケットティッシュで拭う。
草太も黙ってパンツとズボンをはく。
しばらくの間、気まずい沈黙が場を支配した。
「…………ねえ、草太」
沈黙を破ったのはりんごからだった。
「さっき、その……自分の手でしてた時」
「う、うん……」
「赤ずきんのこと……呼んでたよね」
「あ……聞こえてた?」
「うん、聞こえた。……赤ずきんのことを考えながら……してたんだよね」
「……うん」
「……それは…………やっぱり赤ずきんのことが好きだからなの?」
「え……あ、いや、それはその――」
「どうなの?」
「多分……違うと思うけど……」
「じゃあどうして?」
「それは……」
「女の子なら誰でもいいの?」
「そんなんじゃないよ!」
「…………」
猜疑的な視線のりんごに、草太はせめてもの誠意を示そうと真っ直ぐ目を向ける。
「じゃあさ……」
「何?」
「…………わ、私を想像してしたことは……あるの?」
「う……」
答えは『ある』……だがどう言うべきなのか、草太は迷った。
「どうなの?」
「ど、どうしてそんなこと聞くのさ?」
「質問してるのはこっちだゾ! ごまかすな!」
「はいぃっ……」
「で、どうなの?」
「すみません、あります……」
「ふ、ふーん……あるんだ」
「……」
「……」
またしても気まずい沈黙。
「…………ね、ねえ……そろそろ戻ろうか。あんまり遅いと心配されるだろうし」
無理に明るい声を出しながら草太が歩き出す。その服の裾をりんごが指先で摘んで止めた。
「りんご? ……どうかした?」
「草太……あの、私も……」
顔を伏せながらゴニョゴニョと何事か呟くりんご。声が小さすぎて草太には聞き取れなかった。
「何? よく聞こえなかったんだけど……」
「だっ、だから私も……その、草太の……」
肝心の部分がどうしても恥ずかしいらしく、ほとんど聞き取れない。草太は注意して耳を澄ませた。
「……?」
「……わ、私も、草太のこと……考えながら……したことあるの」
「え……そ、それって……その」
「だ、だから……お、おな……に」
りんごはもう湯気が立ちそうなほど顔を赤くしていた。
「草太……もし……もし、わ、私としたいなら……その、してもいいけど」
「えっとそれは…………ほんとに、いいの?」
「いいって言ってるでしょ! このバカっ」
「ごめん……それじゃあ」
一つ深呼吸して、草太は静かにりんごの体へ手を伸ばした。
割れやすい卵を手に取るように、草太がそっとりんごの胸に触れる。まだ未熟だが、女の膨らみが服の上からもしっかり感じられた。
軽く力を入れて掴んでみる。
「んっ……」
「痛い?」
「ううん、大丈夫……もっと触っていいから……」
「うん……」
草太は両手を使って、膨らみかけの乳房を撫で回す。
りんごのそれは手の平に収まるほど小さくて、柔らかく、その奥に何か果物のような固さがあるのが分かった。
「ふぁ……あ」
少し力を入れて揉むと、そのたびにりんごは小さく吐息を漏らす。
「りんご……ほんとに痛くない?」
「うん……何か私、胸がちょっと敏感みたいで」
「そうなんだ……」
「……あの私、服……脱ぐね」
「あ、うん」
「…………ごめん。脱ぐ間だけ、あっち向いてて」
「え……わ、わかったよ」
裸を見られるのはよくても、服を脱ぐ所は見られたくないのだろうか……その辺の心理は草太にはよく分からなかった。
草太の背後で衣擦れの音がする。次いで服が地面に落ちたらしい音。
……しばらくの間を置いてから、
「こっち向いていいゾ」
その声に従い、草太は振り向いた。
下着以外全て脱ぎ落としたりんごは、両手を後ろで組んで立っている。震えているのは寒いからではないだろう。
「へ、変じゃない……?」
「うん。全然変じゃないよ……」
答えながら、草太はしばしりんごの姿に見とれてしまう。
月と星だけに照らされたりんごの裸身は、どこか神秘的な美しさを草太に思わせた。
「きれいだよ、りんご」
「ま、真顔でそんなこと言うなっ……」
「だって本当にそう思うから」
「う……」
火がついたように顔を赤くして、りんごは黙り込んでしまう。
落ち着いているように見える草太も、内心はだいぶ緊張していた。
「それじゃ……その、触るね?」
「うん……」
ブラを上にずらして、薄桃色の突起を浮かべた白い双丘を草太の手の平が包む。途端、りんごの体がびくりと震えた。
「んっ……ぅあ……」
ゆっくりと愛撫を受けるうち、少しずつりんごの吐息に甘い音が混じり始める。
「りんご、乳首が立ってきたよ」
「い、いちいち言わないでよ……あうっ!」
草太が小振りな乳首を口に含んで吸い上げると、りんごは声を上げ身をよじった。
「ふっ、んあ……そ、草太ぁ……」
小さいながらりんごの胸は確かに敏感だった。少し舐め回しただけで声を上げる。
立ったまま愛撫を続けていた草太は、気持ち赴くままりんごをその場に押し倒した。りんごの背にチクチクとした草の感触があったが、すぐ気にならなくなった。
草太が乳首に歯を立てると、りんごはますます昂ぶりを見せた。
「あっ、あっ……ん……〜っ!」
胸への愛撫を続けながら、草太は右手をりんごの下腹部に伸ばす。ショーツの上からそこに触れると、微かだが湿りを帯びているのが分かった。
「りんご。下のも脱がすよ」
「えっ……う、うん」
仰向けになっているりんごは、脱がしやすいよう少し腰を浮かせてくれた。
心臓をバクバクさせながら、草太はりんごのショーツをゆっくり太ももの方へずらしていった。
草太の目の前に、まだ多分に未成熟な女性器が露わになった。恥丘には薄く陰毛がしげり、その下の割れ目は微かに複雑な皺が寄っている。
りんごは目を閉じ、真っ赤にした顔を逸らせていた。
草太は割れ目に指を這わせ、軽くそこを広げてみる。初めて見る女性器の中だった。特有の匂いが鼻を突くが、不快ではない。
「こんな風になってるんだ……」
「あ、あんまりじっと見ないでよ……!」
「りんごだって、さっき僕のを見たじゃないか」
「それはそうだけど……ひゃうっ!?」
草太がいきなりそこへ舌を這わせて、りんごは悲鳴みたいな声を上げた。
「や、やだっ、そんな所、汚いよ草太!」
「全然汚くなんかないって。それに、さっきりんごも僕のを舐めたんだし」
「それとこれとはちが――あぅっ」
陰核を刺激され、りんごの体が震えた。
草太の舌がりんごの愛液を舐め取る。もうそこは十分な潤みを帯びているようだった。
草太もズボンとパンツを下ろして、正常位の体勢になる。りんごが手を添えて、先端を膣口に導いた。
「りんご……入れるよ」
「うん。来て……優しくだゾ」
ゆっくりと草太が腰を押し込んでいく。かなり入口が狭く、先端をくぐらせるだけで一苦労だ。
亀頭の半ばまで入ったが、これだけでお互いきつかった。
「っ……つぅ」
「りんご、大丈夫?」
「平気……続けて」
「分かった……」
草太はより深く入れようとするが、固くてそこから先へはなかなか進めない。
(これが処女膜なのかな……破って大丈夫なのかな、これ……)
ぐっと力を込めれば破れそうだが、本当にそうしていいのか迷いが生じる。
「草太……いいから、来て」
「でも……何か、恐い感じが」
「草太が恐がってどうするのよ!? 本当に恐いのはこっちなんだゾ!」
「ご、ごめん」
「ほら、早く……草太となら、我慢できるから」
「じゃあ……いくよ?」
最後の確認をする草太に、りんごが頷く。
草太は呼吸を詰め、一気に突き入れた。
「いっ……〜っ!」
歯を食いしばるりんごの目から、ぼろぼろと涙が零れた。結合部から一筋、二筋と破瓜の血が流れ出る。
「り、りんご……やっぱり痛いの?」
「見れば分かるでしょバカっ! うう……こんなに痛いなんて……っ……」
「ごめん……」
「謝るなバカっ!」
「う、うん……ねえ、抜いた方がいい?」
「そんなわけないでしょ! 動かないでよ、痛いんだから……」
あまりのきつさに草太も痛かったのだが、さすがにそれを言うのは憚られた。
りんごの言うとおり、草太は繋がったままじっと動かずにいる。
そうするうちに、少しずつりんごの呼吸が落ち着いてきた。
「りんご……まだ痛い?」
「ん……だいぶマシになってきた」
「動いても大丈夫かな?」
「ちょっとずつだゾ……」
「それじゃあ……」
草太は深く入っていた肉茎を、慎重に引いてみる。
「痛っ……」
「あっ、やっぱりまだダメ?」
「ん……平気。ジンジンするけど、我慢できるから」
「続けるよ?」
「うん」
ゆっくりと引き抜き、入口近くからまた奥へ差し込んでいく。草太が動くたびりんごは苦しそうな息を吐くが、それも次第に静まってきた。
何度か出し入れするうちにだいぶほぐれてきたのか、草太も抵抗なくりんごの中で動けるようになってくる。
「りんご……少し、早くしてもいいかな」
「う、うん……」
りんごの腰に手を回して、草太は勢いをつけ腰を打ち付けはじめた。
「っ、あっ……いっ」
まだ消えていない破瓜の痛みに、りんごが苦悶する。
少しずつ強く、りんごの秘所を草太の肉茎が貫き、引き、また貫く。湿った音が辺りに響く。
「りんご……りんご……っ!」
「ぅ……草太ぁ……いいよ、もっと……してっ」
草太に貫かれるたび、りんごの中で痛みの中に甘さを伴う、矛盾した感覚が広がっていた。
激しく強く、だけど柔らかくて暖かい。苦しいけれど幸せで、奇妙な気持ちだった。
もっとこの気持ちを感じたくて、りんごは草太の背に腕を回し、強く抱きしめた。
「りんご……?」
「もっと、奥まで……来てっ、草太……!」
腕だけでなく足も絡めて、りんごは無我夢中に草太を抱きしめる。
草太もそれに応え、力強くりんごを抱きしめた。
お互いに深く繋がり、むさぼるように性を交わし合う。
「ふぁっ……あ、ああっ、草太! 草太ぁ!」
「りんご……イク、よ……うぅ!」
りんごの体温を全身で感じながら、草太は果てた。奥深くで肉茎が何度も脈打ち、精液をりんごの中へ注ぎ込んでいく。
「はぁっ……あ……出てる……草太のが、中に……」
二人は抱き合ったまま脱力し、しばしの余韻に息を吐いた。
草太のものを引き抜くと、破瓜の血の混じる精液がりんごの秘所から零れ出た。
「……やっぱり痛かったよね、りんご」
「これぐらい平気……大したことないんだゾ」
「そう……?」
行為の最中はものすごく痛がっていたが……それを言うのは止めておいた。
この上なく気恥ずかしい空気の中、二人は後始末をして、戻ってからみんなに怪しまれないよう身繕いをした。
「それじゃ、そろそろ戻ろうか。いい加減、遅くなってきたし」
「……ごめん、ちょっとだけここで休ませて」
「え……あ、うん」
すっかり格好を整えたりんごが傍の木陰に腰を下ろし、草太もそれに倣って横に腰掛けた。
「…………ねえ、草太」
「何?」
「何か……不思議な気がする。こうして草太と繋がったなんて」
「そうだね…………でも、不思議っていうなら、僕達が今いるこの世界がもう不思議なんだけど」
「あ……そうだっけ」
見上げたりんごの目は、満天の星空を映している。この夜空はファンダベーレのもの。ここは自分達が生まれ育った世界とは別なのだ。
「……ねえ、草太。ファンダベーレに来る時だけど」
「うん?」
「最初は私のこと、普通に捨てて行こうとしてたよね」
「す、捨ててって、人聞きが悪いよ!」
「言い訳するな。私、結構ショックだったんだゾ」
「それはその……ごめん」
「ダメ。許さない」
「そんなぁ……」
情けない声を上げる草太を、りんごが上目遣いに睨み付ける。
「……許してほしかったら、一つ言うことを聞いて」
「い、言うことって?」
恐る恐る尋ねる草太に、りんごは小さく呟いた。
「…………キスして」
「え……?」
草太の目が点になる。りんごはあたふたと赤面しながら言葉を継いでいった。
「だ、だって順番が滅茶苦茶でしょ! 何でキスがまだなのに、セ……セックスしてるのよ……!」
「あー、それは確かに……」
「呑気に納得してるなバカっ!」
「ごめん」
「だから謝るなバカっ! 草太のバカバカバカっ!」
「そこまでバカって言わなくても……」
「だって草太はバカじゃない。昔っから変に浮いてて友達も少なくて、そのくせお人好しで、私の知らないうちにおかしなことに巻き込まれて、挙げ句の果てに別の世界なんかに引っ張り込まれて……本当にバカなんだゾ」
「……そうかもね」
りんごの言うとおりだと思ったので、草太は反論もせず頷いた。
「…………でも……」
「?」
「でも……私はそんな草太が好きなんだゾ。バカでお人好しでも、すごくすごく……好きなんだゾ」
顔を俯かせ、絞り出すような声音で、でもはっきりとりんごはそう言った。
「……本当に順番が滅茶苦茶……何で今さら告白してるんだろ」
「りんご……」
「べっ、別に責任取れなんて言わないんだゾ! でも、せめて……今ぐらい、その……」
「分かったよ」
「え?」
顔を上げたりんごの唇に、草太のそれが優しく重ねられた。
「っ!?」
「これでいいかな?」
「ふ、不意打ちなんて卑怯よっ!」
叫ぶように怒鳴りつけ、りんごは地を蹴って立ち上がる。そのまま草太を放ってずんずん歩き出した。
「ちょ、ちょっと待ってよりんご! 何で怒るのさ!?」
「知らないっ!」
素っ気なく言い捨てるりんごの顔は、もう熟れすぎた木の実みたいな色をしていた。
空には相変わらず月と星が照り、柔らかな風が木々を揺らしている。梢の触れ合う音色が、まるでささめきのように二人を包んでいた。