「ねえハーメルン!セックスしようよ」
「……はぁ!?」
赤ずきんの突然の申し出に、ハーメルンはそれまで吹いていた草笛の音程を外してしまった。
エルデの鍵をめぐる戦いが始まる、今より少し昔の話。
東の村に現れたナイトメアリアン討伐のための遠征の帰り、四葉騎士団は、森の中に野営のキャンプを作った。
四葉の騎士たちは、上機嫌で酒を酌み交わして、
俺はナイトメアリアンを3匹やっつけた、いやいや俺が相手したナイトメアリアンは山よりも大きかった、
などと今回立てた手柄のことを自慢しあっていた。
ハーメルンは、そんな喧噪を離れて、一人静かになれる場所を探した。
もともとハーメルンは、集団で行動するよりも一人のほうが気楽だ、と単独行動をとることが多いが、
今回はフェレナンド王たっての頼みということで、遠征に参加したのだ(そして、ハーメルンの音楽魔法は、たしかに戦況を大きく有利にしてくれた)
あまりキャンプから離れすぎないよう森を進んで、ほかより一回り大きな木の根元に腰を落ち着けた。
月のきれいな晩だったので、ハーメルンは少しセンチメンタルな気分にひたった。
月の光にてらされた木々はきらきらとして、森に魔法が満ちているようで、
その音楽をつかまえようと、ハーメルンは草の葉を一枚取って、草笛で即興の演奏を始めた。
いい気分で笛を吹いていると、木の影からひょっこりと、赤ずきんが頭を出した。
「あ〜、ハーメルン、こんなところにいたんだ」
幼馴染の少女はへにゃっと笑うと、ハーメルンの隣に腰掛けた。
「ハーメルンはみんなと一緒におしゃべりしないの?」
赤ずきんがハーメルンの顔を覗き込んできた。ローブや手甲は外していて、ラフな格好だ。
「騒がしいのは苦手なんだ…赤ずきんこそ、どうしてこんなところに来た」
「えへへ、ヨハンがおじいに無理矢理お酒飲まされて、酔っぱらって大変なことになっちゃってさ〜、逃げてきちゃった」
「ヒルデブラントにも困ったもんだな…」
キャンプの騒ぎがここまで聞こえてきて、ハーメルンはやれやれ、と言ったふうに首を振って、それからまた草笛を吹きはじめた。
赤ずきんはしばらくの間、静かにその音色に聞き入っていたが、急にぱっと立ち上がって、ハーメルンの前に座った。
「ねえハーメルン!セックスしようよ!」
草笛が調子外れな音を響かせた。
「…はぁ!?」
ハーメルンは思わず間の抜けた声をあげてしまった。
あんまり突然な申し出に、ハーメルンはこれまでの会話にそんな流れがあったのかどうか思い出そうとしたが、まったくわからなかった。
「ね〜いいでしょ?わたしまだしたことないんだ、だからしようよ〜」
赤ずきんが突拍子もないことを言うのには慣れているつもりだったが、今回ばかりはさすがにびっくりしてしまった。
それでもなんとか頭を落ち着かせると、
「なんでそうなるんだよ…」
と、しごく当然の疑問を口にした。
「だって〜、やっと騎士団の正規団員になれたんだし、今回の討伐で手柄も立てたんだよ?
わたし、もう一人前だもん。それなのに、いつまでもねんねえのまんまじゃ、かっこつかないよ」
ファンダヴェーレでは15にもなれば大人として扱われるので、決して早いことはないのだが……
それでも、髪が短ければほとんど男の子にしか見えない体型を見て、まだ赤ずきんには早いだろう、とハーメルンは思った。
ハーメルンの失礼な視線に気付くと、赤ずきんはぷうっと頬を膨らませた。
「なによぅ、わたしだってねー、すぐにばいんばいんのせくすぃ〜なオトナになるんだからね!
オンナは愛を知って華麗に変身するのよ…って、白雪が言ってた」
どうやら赤ずきんに妙なことを吹き込んだのは白雪らしい。
でも、あいつは絶対にただの耳年増だ、とハーメルンは思った。
「なんで俺なんだ。ディートにでも頼めばいいだろ」
四葉騎士団隊長で、友人でもあるディートマルシュの名を上げると、赤ずきんはちょっとうつむいた。
「だって隊長は、ちょっと怖いし…」
赤ずきんはハーメルンの服の裾を、きゅっと掴んできた。いつも明るく、勇敢な赤ずきんから「怖い」なんて言葉を聞くのは意外だった。
経験はしてみたいけれど、やはり不安な気持ちもあるようだ。
だから、騎士団の中でも、昔からよく知っているハーメルンに頼んできた、ということなのだろう。
そんなことを考えていると、赤ずきんがハーメルンにそっと抱きついてきた。
「ね〜いいじゃん、減るもんじゃないんでしょ?」
そう言えば、赤ずきんにはなにかと人に抱きつくくせがあった。今でも白雪がよく抱きつかれてるような気がする。
赤ずきんの体はしなやかで、ハーメルンは思わずどぎまぎとした。
正直な話、あんまり見知った顔なので気乗りがしなかったが、
この一月にわたる遠征でハーメルンもいろいろと溜まっていたので、赤ずきんの誘いを受けることにした。
とりあえず、草むらに敷布を敷いて、その上に二人で座った。
雰囲気を出そうと、ハーメルンは赤ずきんにキスをしようとした。
赤ずきんの顔が近づく。こんなに近くで赤ずきんの顔を見るのは、いつ以来だろう?そう考えると、なんだか落ち着かない気分になった。
そして、いよいよの瞬間…というときに、突然赤ずきんが吹き出した。
「お前なあ…」
ハーメルンが抗議の声をあげた。
「ご…ごめんね、でもハーメルンとなんて…やっぱり、照れくさいなぁ〜」
赤ずきんはへらへら笑いながら、体をくねくねさせた。まったく、ムードもなにもあったもんじゃない。
頬が赤いのを見ると、照れているらしいが、その珍妙な動きに、ハーメルンはすっかり力が抜けてしまった。
とりあえず、キスは諦めることにした。気を取り直して、ハーメルンは赤ずきんを抱きすくめると、赤ずきんの首に口づけた。
「ひゃっ…あは、くすぐったいよ」
赤ずきんがくすくす笑う。ハーメルンはかまわずに首筋に舌を這わせ、肩にキスをした。
タンクトップをずらし、胸をあらわにすると、赤ずきんは少しだけ体を震わせたが、そのまま胸にキスすると、またくすくす笑いはじめた。
「あは、あははは!ハーメルン、そこだめだよ、くすぐったいってば、あははは!」
「うっさい」
もうムードとか雰囲気とかそういうのは諦めた。子供のころにさんざん振り回された仕返しとばかりに、ハーメルンはくすぐりを続けた。
「やぁー、やーめーてー、あはは!」
赤ずきんは身をよじって逃げようとしたが、ハーメルンはそれを逃がすまいと後ろから抱きついて、むき出しになった背中に口づけた。
きゃあきゃあ騒ぎながら、なんとかハーメルンから逃れようする赤ずきんと、一心不乱にくすぐり続けるハーメルン。
そこにはロマンチックな魔法が存在する余地はなく、まるで子供同士のじゃれ合いだった。
ようやくハーメルンが赤ずきんを解放すると、赤ずきんはすっかりぐったりしてしまっていた。
「はっ、はぁっ…も〜、だめって、はぁ…言ったのにぃ…」
赤ずきんは肩で息をしながら、少し恨みがましそうな目でハーメルンを見た。
赤ずきんはあんまり笑ったので、目に涙が浮かんでいた。肌は赤らんで、汗ばんでいる。
ハーメルンは、ふん、まいったか、などと子供っぽいことを考えていたが、息を荒くして、体を火照らせた赤ずきんが妙に色っぽく見えて、動揺してしまった。
そもそも、いま何をするつもりだったのかを思い出すと、口の中が乾いてきたので、ハーメルンは唾を飲みこんだ。
「赤ずきん…」
「やー、もうだめだよ」
ハーメルンが身を寄せると、またくすぐられると思ったのか、赤ずきんはくすくす笑って、ハーメルンの体をぐいっと押して、離そうとした。
しかし、ハーメルンはかまわずに赤ずきんに覆いかぶさると、
「…ひゃっ!?」
赤ずきんの足の間に手を差し入れた。赤ずきんは急な刺激に、変な声を出してしまった。
太ももをたどって、赤ずきんのそこに、優しく指が触れる。
「やっ、ハーメルン…」
経験したことのない感覚に、赤ずきんはおびえたような声を出した。
「…誘ったのは、そっちだ」
「そ、そうだけど…でも、ちょっとタンマ!」
赤ずきんはぱっと飛び起きると、ハーメルンから少し離れて、スー、ハー、と深呼吸をした。
「…ん、よし。いいよ、ハーメルン…」
しばらくそうしてから、決心したように、赤ずきんはハーメルンの膝の上に腰を下ろした。
肩が少し震えている。ハーメルンは赤ずきんをなだめるように、後ろからそっと抱きしめると、首筋やうなじにキスを降らせた。
「あ、ん…んぅ…」
くすぐったがってばかりだったさっきとは、反応が違っていた。
「赤ずきん、手…」
赤ずきんに腕を上げさせると、タンクトップを脱がして、胸をまさぐった。
「んっ、…やっぱり胸は、こそばいよ」
赤ずきんがそう言ったので、ハーメルンは、そのまま下腹部に手を伸ばし、ズボンをずらして、下着の上から、そこに触れた。
慣らすように、ゆっくり時間をかけて撫で摩ると、赤ずきんの息がだんだんと荒くなってきたのがわかった。
「ハーメルン、慣れてるんだね…」
「…別に…」
実のところ、傭兵のように行動しているといろいろなことがあって、ハーメルンはすでに経験を済ませていた。
「オトナなんだあ、ハーメルン…ふふっ」
なんだかからかわれてるような気がして、ハーメルンは複雑な気分だった。
下着の中に手を差し入れると、そこはしっとりと潤んでいた。
赤ずきんは体をびくっとさせたが、抵抗はしなかった。
やがて、ハーメルンの指先が、赤ずきんの小さなクリトリスに触れた。
「───っっ!!?」
びりっと、しびれるような刺激が背中を伝わって、ハーメルンの腕の中で、赤ずきんの体が跳ねた。
「やっ、そこ、ヘンっ…だめ!」
赤ずきんはハーメルンの指から逃れようと、腰をくねらせたが、ハーメルンは赤ずきんを離さず、
赤ずきんから溢れ出たぬるぬるとした粘液を擦り付けて、敏感な部分への刺激を続けた。
「はっ、はっ、や、怖いっ…よ…!」
未知の刺激に耐えるように、赤ずきんはぎゅっと目をつむって、体を固くさせた。
赤ずきんはもぞもぞと落ち着かなく体を動かすと、ぱっと体の向きを変えて、ハーメルンに飛びかかるように抱きついた。
あまり勢いをつけて抱きついたものだから、ハーメルンは後ろに倒れて、木の根に頭をぶつけてしまった。
「痛……おい、赤ずきん…?」
赤ずきんは、ハーメルンを抱く腕に力を込め、胸に顔をうずめたまま、何かもごもごと言った。
「ご、ごめんね…でもわたし、こうしてないと、切なくて……っ」
顔を上げてハーメルンの方を見ると、赤ずきんの目はとろんとしていて、顔は耳まで真っ赤になっていた。
「ね、ハーメルン…つづき…」
今まで、一度も見たことのない赤ずきんの顔。ハーメルンは促されるままに、下腹への刺激を再開した。
「ふっ、う、あ…あっ…」
押し殺した声が、森の中に響いた。
「あっ…ひ、あ…ッ」
赤ずきんの声がだんだんとうわずってきて、ハーメルンを抱く腕にぐっと力がこもった。
剣士として戦う赤ずきんの力はとても強く、爪が背中に食い込んだが、ハーメルンもすっかり興奮して、夢中になっていた。
ハーメルンの指の動きがだんだんと早くなって、赤ずきんは、瞼の奥が真っ白に焼けるようで。
「あ、っ、へんだよ、ハーメル…っあ…ッ!─────ッ!!!」
達する瞬間、声を上げるのが怖くて、赤ずきんは、ハーメルンの肩に噛み付いた。
肩から血がにじんで、ハーメルンは痛みに顔をしかめた。
がくがくと体をふるわせて、赤ずきんは、その瞬間の余韻を味わった。
「はっ、はっ…はひっ、はぁーっ…う、…う…」
快感の波が過ぎ去ると、赤ずきんはぐったりして、ハーメルンにもたれかかった。
ハーメルンは赤ずきんの体をそっと横たえ、ズボンを下ろして、窮屈になっていたものを取り出すと、赤ずきんにあてがった。
「ふぅー…ぅ…はー、めるん…?」
「赤ずきん…力を抜け」
まだぼうっとしている赤ずきんの腰を浮かせると、そのまま一気に突き入れ
「!?!…いったぁ─────いッ!!!!」
…られなかった。
赤ずきんのそこはあんまりきつくて、半分ほど入ったところで、それ以上進むことも、戻ることもできなくなってしまった。
赤ずきんが強く力を入れるので、ハーメルンのものが痛いほど締め付けられた。
「つッ…赤ずきん、力、抜けって…!」
「痛いよぅ、ストップ、ストップ!お願いハーメルン、ホントに痛いの!ホントに無理!」
赤ずきんは必死で泣き叫んだ。
さんざんな騒ぎの後、やっとのことで赤ずきんからものを引き抜くと、
二人ともすっかり疲れて、ぐったりとお互いの背中にもたれかかった。
赤ずきんは、下腹を撫で摩りながら、
「うぅ〜…あんなにイタイなんて、聞いてないよぅ…」
と、涙をぽろぽろとこぼした。
「ほらな、やっぱり、お前には早いと思ったんだ…」
とハーメルンが呟いた。
だって、と赤ずきんはハーメルンを見つめたが、ハーメルンは疲れてげんなりしてしまっていた。
「ほら、あんまり長いことキャンプを離れてると、ヴァルが心配するだろ」
と、手振りでキャンプの方を指し示した。
「でも〜…」
赤ずきんはちらり、と大きいままのハーメルンのものを見つめた。
見られているのに気付くと、ハーメルンはあわててズボンを上げてそれを隠した。
「これは自分でなんとかする。お前はさっさと戻れ」
少し赤面して、ハーメルンは答えた。
赤ずきんは困ったような、考え込むような顔をした。
それからハーメルンの方にずいっと体を近付けた。
「そんなのダメだよ。わたしから誘ったんだし、ちゃんとセキニン取らなくっちゃ」
そう言って、ハーメルンのズボンに手を伸ばすと、力づくで脱がせてしまった。
「おい、赤ずきん!?」
「わあっ…」
固くそそり立ったハーメルンのそれを目の前にして、赤ずきんは感心したような声をあげた。
「なんかすごいねー、昔はもっとかわいかったのに…」
赤ずきんはのんきなことを呟きながら、それをつんつんとつついた。
「お、お前な…」
ハーメルンが腰を引いて逃れようとすると、
「あ、だめだよハーメルン!」
と、赤ずきんがハーメルンのものをギュッと思いっきり掴んできた。
「いッ!?」
強く掴まれてハーメルンが悲鳴を上げると、赤ずきんはあわてて手を離した。
「とと、ごめんねハーメルン…そうそう、男の人はデリケートなんだから、硝子細工を扱うように優しくすること…だっけ」
変な知識を口に出して再確認すると、赤ずきんは優しくそれに手をあてがって、上下に摩りはじめた。
「っ、う…」
ハーメルンの喉から声が漏れる。
赤ずきんは一心不乱に摩ったが、慣れない手つきはぎこちなく、もどかしかった。
「なあ、赤ずきん、口で…」
「ふぇ、口?…こう?」
赤ずきんが、亀頭に口づけると、ハーメルンのものがぴくりと跳ねた。
赤ずきんはちょっとびっくりして、それからにんまりと笑った。
「へえ、こーゆーのが、きもちーんだ…」
赤ずきんは手を上下させながら、先端を舐めたり、キスをしたりした。
「ん、どう…かな?」
赤ずきんはそれをしごきながら、ハーメルンに尋ねた。
「あ、ああ…悪くない」
「そお?えへへ、よかった」
へにゃっと笑ってみせる赤ずきん。そのいつもの笑顔と、淫靡な行為とのギャップが、ハーメルンを高ぶらせた。
射精感が込み上げてきて、ハーメルンは体を震わせた。
「赤、ずきん、出るッ…」
「ひゃっ?!」
赤ずきんが口を離した瞬間、ハーメルンは果てて、白濁液が、赤ずきんの顔を汚した。
「う〜、ナニこれ、変な味…」
少し口に入ったらしく、赤ずきんはしぶい顔をして、それを手に吐き出した。
「悪い…大丈夫か」
「ん、平気…それよりハーメルンは?気持ちよかった?」
「あ、ああ…」
「えへへ、そっか」
ハーメルンは、脱がされたズボンからハンカチを取り出すと、にこにこ笑う赤ずきんの顔をそっと拭いてやった。
服を着て身なりを整えると、それからしばらくの間、木の下で赤ずきんとハーメルンは寄り添っていた。
「あーあ、あんなに痛いなんて、びっくりしたよ。白雪は『初めは痛みがあるかもしれませんけど、すぐにすばらしい瞬間が訪れますわ』とか言ってたのに」
「お前な、あんまりあいつの言うことを鵜呑みにするのはやめた方がいいぞ…」
「そーする。…でもね、キスされたり、触られたりするのは、とってもすてきだったよ…」
そう言うと、赤ずきんは身を乗り出して、ハーメルンの唇に、唇を重ねた。
「っ…!?」
ハーメルンが驚いて固まっていると、赤ずきんは立ち上がって、キャンプの方に戻っていった。
「ね、ハーメルン。わたしあれが好きになっちゃったみたい。…今度、ちゃんとしたのをしようね!」
途中、一度だけ振り向いてそう言うと、赤ずきんは小走りに駆け出して、
やがてその姿は見えなくなってしまった。
ハーメルンはしばらく赤ずきんは去っていった方を見ていたが、ため息をつくと、木に背中をもたれた。
どうも俺は、昔も今も、赤ずきんに振り回される立場にあるらしい。
そんなことをぼんやり考えると、ハーメルンは空を見上げた。
今夜は、月のきれいな晩だった。