♪じゅ〜すい、じゅ〜すい、じゅっじゅっじゅっじゅ、じゅ〜すい、  
じゅ〜すい、じゅ〜すい、じゅっじゅっじゅっじゅ、じゅ〜すい〜♪  
 
よく意味はわからないけど、楽しそうに歌を歌いながら僕の前を跳ねている少女  
パッと見は7〜8歳位に見える  
多分それくらいの年齢だろう  
彼女が跳ねるのと同時に腰の鈴がリンリン鳴っている  
放っておくと、どこかへ走り出してしまいそうだったから、僕が少女に着けたものだった  
 
僕はとにかくこの少女に話かけてみる  
「キミの名前は?キミは赤ずきんじゃないの?」  
 
彼女から返事は無い  
彼女と出会ってから、ずっとこんな調子だ  
 
もう一度思い出してみる  
なぜ僕はここに居るのか?  
ファンダヴェーレに僕たちは確かに居た  
昨日は旅の途中で立ち寄った村で、親切な村人にお世話になり、寝床として納屋を借りることができた  
そこでみんなで寝たんだ  
赤ずきんはヴァルに寄り添うように、白雪・いばら・りんごは並びながら、僕は少し離れた壁に寄り添うように寝た  
 
そこまでは間違いない  
でも・・・  
 
起きたら、僕はエルデに・・・  
つまり、僕が元々生活していた世界に居た  
しかも、僕の部屋のベッドに・・・  
 
その隣には、赤ずきんを小さくしたような少女が寝息をたてて・・・・  
 
最初は何が起きたのか良く解らなかったけど、この少女と外に出てみて解った  
ここは確かにエルデだ、しかも僕が暮らしていた町だった  
 
とにかく、みんなを探す為に僕と赤ずきんによく似た少女は町中を歩き回っている  
この少女は何を聞いても答えてくれない  
でも、とても楽しそうにしている  
 
「みんな見つからないね、デパートの方に行こうか?」  
 
満面の笑みで少女は答えた  
少女は歌う意外に言葉を発しない  
でも、なぜか少女の言いたいことや気持ちが伝わってくるんだ  
 
心配いらない・・・絶対にみんな見つかるよ・・・・って  
 
そんな少女の笑顔が僕をこんなに落ち着かせてくれる  
不思議な少女だなぁ  
 
 
「――――――――やっぱり誰も居ないね」  
 
デパートの屋上にも誰も居なかった  
この世界に来てから、僕達は誰とも逢っていない  
まるで、この世界には僕達しか居ないようだ  
 
 
――――――クイッ  
そんな僕の不安な気持ちを感じ取ったのか、少女が僕の袖を引っ張る  
「大丈夫。絶対みんなに逢えるよね」  
 
 
――――――コクリ  
少女がうなずく  
 
 
この笑顔は不思議な力を感じるんだ  
とても心が安らぐ、そんな不思議な力  
 
 
―――――でも  
 
・・・・・・・・・・時折見せる  
   
―――――僕は  
 
・・・・・・・・・・切ない横顔  
 
――――――この力を  
 
・・・・・・・・・・何度も見てきた  
 
――――――知っている  
 
・・・・・・・・・・誰よりも近くで  
 
 
――――――――――ずっと僕のそばに居た1人の少女を  
 
 
もう日は落ちかけていた  
結局町中を歩き回ったけど、誰一人として出会うことは無かった  
「今日はもう帰ろうか?」  
 
 
――――コクリ  
少女が屈託のない笑顔でうなずいた  
夕焼けの残り日が顔を真っ赤に染めている  
 
 
この笑顔・・・・僕の想像は確信へと変わる  
 
 
そう言えば、昔にもこんなことが有ったね  
あれは・・・・キミが大切にしていた帽子が風に飛ばされた時だったよね  
帽子を追いかけて、道路に飛び出しそうになったり  
見失った後は、必死に町中を探し回った  
いつしか、二人して迷子になって・・・  
お巡りさんに家まで送ってもらったよね  
 
いつしか少女の表情が変わっていた  
笑顔から、驚きに満ちた表情に  
 
 
 
 
「―――――――覚えてたんだ?」  
 
 
 
「当たり前じゃないか・・・・僕とりんごの大切な思い出なんだから」  
 
初めて聞いた少女の歌声以外の声は、僕がずっと聞き続けてきた懐かしい声だ・・・  
 
「そろそろ姿を見せて欲しいな・・・・りんご」  
 
パァっと世界が光に包まれた  
眩しさで目が眩みそうだ  
 
いつしか少女の姿は消え、僕が良く知ってる女の子の姿になる  
ずっとそばで見続けてきた僕の幼馴染に・・・・・・  
 
やっと逢えたね  
 
「もう!気付くのが遅いゾ!」  
「ごめんね、りんご」  
優しく抱き寄せる  
 「でも、どうして赤ずきんの姿に?」  
「そ、それは・・・・」  
 「どうしたの?顔真っ赤だよ?」  
「う、うるさい!いいから草太は早くここから出る方法を考えてよ!」  
 「いや、突然そう言われても・・・・」  
 
そう、僕達はまだこの世界が出れたわけじゃないんだ  
 
「う〜ん・・・・あたしも気付いたら草太のベッドに居たし・・・」  
 「えっ?じゃぁ、りんごは僕より先に起きてたの? 起こしてくれればよかったのに」  
「だ、だ、だって・・・一緒の布団で寝るのなんて、幼稚園の時以来だったし・・・・」  
 「あ、あ〜・・・・そう・・・だったね・・・」  
 
何か気まずいなぁ・・・  
あ、やばい・・・・意識したら・・・・落ち着け〜落ち着け〜僕の分身よ〜  
 
「あれ?草太どうしたの?」  
 「い、いや・・・なんでもないよ」  
「でも、少し様子が・・・・って、や、やだ!!草太のH!変態!!」  
 「い、いたっ!!り、りんご!た、叩かないでよ!」  
抱きしめたままだったから、りんごに気付かれてしまった・・・  
 
「う、うるさい!うるさい!なんで、こんな場所でそんな状況になってるのよ!!」  
 「しょ、しょうがないじゃないか・・・生理現象なんだから・・・」  
「やだやだ!もう! 早く何とかしてよ!!」  
 「ま、待って、落ち着けば大丈夫だから!」  
「わ、わかったから・・・早く治してよ・・・・」  
 
 「う、うん。」  
僕はりんごから手を離そうとした  
「このままで!」  
 「えっ?いや、このままだと・・・・その・・・落ち着かせるのは・・・」  
「だって・・・・離れたらまた・・・はぐれるのは嫌だもん・・」  
 
か、可愛い!  
りんごのことは昔から可愛いと思っていたけど、この可愛さは今までと違う  
 
やばい・・自分を抑えきれない・・・・・  
 
「草太?どうした・・むっ?」  
 「ちゅっ・・」  
抑えきれませんでした・・・・  
 
唇を離すと、りんごが顔を真っ赤にしていた  
「草太と・・・・・キス・・・・しちゃった・・・」  
 「ご、ごめん・・・・・・りんごが・・・その・・・可愛すぎて・・・」  
 
顔を真っ赤にしながらりんごが俯いてる。なにか、喋ってるけど・・・声が小さくて・・  
「・・・・か・・・・ば・・・」  
 「りんご?・・・・聞こえな」  
「ばか!ばか!ばか!ばか!ばか!ばか!草太のばか!」  
りんごの叫びが僕の言葉を遮った  
 「うわっ!・・ご、ごめん!嫌だったよね?」  
「違うの!なんで!?なんでこんなにムードの無い状況でするの!!」  
 「え?いや、それは」  
「まだ告白もしてないんだゾ!・・・まだ・・・好きって言ってないのに・・・」  
 
涙目になってるりんごを強く強く抱きしめる  
 「ごめん、りんご・・・・」  
スーッと息を吸い込み、心を落ち着かせる  
「りんご、僕は・・・りんごが好きです」  
「あ、あたしも・・・草太が、大好きだゾ」  
 
「・・・・ん」  
 
そのままキスをした  
触れ合うだけの優しいキスを  
 
「嬉しい・・・・大好き・・・」  
 「うん。僕も大好きだよ・・・」  
 
少しすると、落ち着きを取り戻したりんごが頬を薄く赤く染めながら、恥ずかしそうに言った  
「草太の・・・・落ち着いた・・・・?」  
最初は何のことか解からなかったけど・・・・  
 「あっ・・・うん・・・もう大丈夫・・・・」  
そう、僕のいきり立っていた分身は落ち着きを取り戻していた  
「そう、よかった・・・」  
 
なにが良かったのだろう?とにかくりんごはホッとしたようだった  
そのホッとした顔が可愛かったので、僕のパンツがぬるぬるで気持ち悪いこの状況も良しとしよう  
たとえキスだけで我慢できなかった情けない事実があろうとも、これは僕の中にしまっておこう・・・・・  
 
 
そのまま、僕達は抱き合ったままいつしか眠りについて・・・  
 
 
目を覚ますと、そこは昨日眠りについた納屋の中だった  
特に変わった様子も無かった・・・僕とりんごが抱き合って眠っている以外は・・・・  
 
「ちょ、ちょっと!!りんごさん!!私の草太さんに何しているんですか!?」  
「む〜、ちょっと白雪!『私の』って何よ!草太はわ・た・し・の草太なんだから!!」  
「なんだ・・朝から・・・って、これはどういう状況なんだ?」  
「あっ、ヴァルおはよう。」  
「おう、草太・・・・どうしたんだ?これ?」  
「あ、あははははは・・・・」  
 
「楽しそう〜!あたしも混ぜてぇ〜!!」  
「ふわわわわ・・・赤ずきんが混ざるならあたしも・・・・」  
「駄目よぉ!草太は私の草太なんだからぁ!」  
 
 
朝からドタバタしながら、今日も旅に出た  
 
結局あの世界?夢?のことは謎のままだった  
 
楽しそうに先頭を歩く赤ずきん、赤ずきんの隣にヴァル、いつも眠そうないばら、その横には白雪が、最後尾に僕とりんごが・・・  
 
 「そういえば・・・なんでりんごは赤ずきんの姿をしていたの?」  
僕は最も疑問に感じていた部分をりんごに聞いてみる  
「だって・・・・・草太がいつも赤ずきんのことを見ていたから・・・草太は赤ずきんのことが好きなのかな?って思ったら、気付かないうちに赤ずきんを小さくしたような姿になってて・・・」  
 
「それ、だけ・・・?」  
「むぅっ。それだけって言うけどね、私には一番大事な問題だったんだゾ!!」  
いまにも掴み掛かりそうなりんご  
 「ご、ごめん。・・・・・・僕が赤ずきんを見ていたのは、赤ずきんがりんごの小さい頃に似てるなって思ってたからだよ。」  
 
予想外の答えだったのだろう、りんごはポカンとした表情だ  
「私に・・・?似てる?」  
 「うん。小さい頃のりんごって、赤ずきんみたいにいつも楽しそうに跳ねてたなぁって・・・」  
「そ、そう?」  
 「うん。いつも楽しそうだったよ。・・・・そんなりんごを見ているのが僕は大好きだったんだよ。」  
「・・・・うん。そうかもね・・・・よし!!行くゾ!!草太!!」  
いきなり僕の腕を引っ張って、りんごが走り出した  
 
 
走り出す僕らのリズムに乗せるように、聞き覚えのある鈴の音がりんごから聞こえた  
 
 
fin  
 
 

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