「突然だがグレーテル、戦いにおいて最も重要なものはなんだと思う?」  
 夕方、サンドリヨン城から出た私達は打倒三銃士を果たすべく話し合っていた。  
「力・・・ですか?」  
「違う、愛だな」  
「・・・・・・・・・・・・・・」  
 もうつっこむ気すら失せました。  
 お兄様はあれからすっかりエルデの鍵、すずかぜそうたの事ばかり話す。  
 私も愛してると言ってくれたが・・・どうなんだろうね、正直。  
「・・・じゃなくて。人間には絶対に必要不可欠なのは食事だ。」  
「それがどうかしたんですか?」  
 お兄様はそこからが本題なんだよベイベーみたいな感じで咳払いをした。  
「あの・・・なんて言ったか『にくまん』をつくる・・・女」  
「にくじゃが」  
「それだ。料理担当を良いことに、草太になれなれしくくっついているあの女をとっちめ  
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ではなく、捕らえれば、あいつらは食事を摂取できない、つまり  
力がでない三銃士などおそるるに足らん!」  
 それが本音ですか、お兄様。  
「ですがお兄様。三銃士だって料理位つくれるでしょう。上手いかどうかは別として」  
 お兄様は両手をバチンと叩きゆびを刺して、  
「そこなんだよ、グレーテル。お前にはそこをたのみたいんだ」  
 なんだろうかこの妙なテンション。  
「もう捕まえて来たから」  
 !!!!!!!!!!!!!!!  
「な・・・なにすんのよ!この縄解きなさいよ!!!」  
「こら〜!俺様も放しやがれ!!!!」  
「きゅぴ〜・・・」  
 りんご、ヴァル、キュピ。そいつらが何時の間にか縄で縛られていた。  
「・・・だいたんな人」  
「そら」  
 何かを投げ渡され、受け取る。液体・・・何かの薬品のようだった。  
「これは・・・」  
「ストリキニーネ。マチン科のマチンの種子に含まれるアルカロイドの一種。  
強い苦味が特徴的でその苦味を利用しそれを含んだ苦味薬(くみやく)と  
して本来は健胃薬、消化促進薬に用いる。  
 しかしこいつが最も有名とされるのが強い毒性だ。  
 中毒時には脊髄の反射・興奮性が高まり、全身的な強直性痙攣を起こす  
・・・つまり死ぬという事だ。」  
 わ〜、なんでもはかせ〜  
「ファンダベーレでは聞かない名前ですね。エルデのものですか?」  
「ローションを買うついでに買ってきた」  
 ローションのついでですか?お兄様。  
 そんな事はこのさい気にしない事にし、お兄様が言いたい事を、妹アンテナで  
確かに受け止める。  
「つまり・・・三銃士が食おうとするものにそれをしこめと?」  
「惜しい」  
 妹アンテナしょんぼり。  
 
「お前変身魔法とか使えるだろ?多分。この捕まえた女に変身して毒薬をしこめ。  
この毒薬はかなり苦味が強いからな。料理で味を誤魔化す必要がある。  
ひょっとしたら草太もそれを食うかも知れんが大丈夫だろう。主人公は死なないのがお約束だ。  
もし死んでもエルデには七つ揃えるとなんでも願い事が叶うものがあると、『ぶっくおふ』とやらに  
おいてある書物で見た事があるから大丈夫だ。」  
 もし、7つの玉が見つからなかったら、お兄様魔術師だから、なんたら戦争でサーヴァントでも  
従えて勝って下さい、なんて事は言えなかった。  
「ところでお兄様。りんごは分かるとして、なんでその二匹まで?」  
「共食い封じだ」  
 
 お兄様と分かれた私はりんごに変身し、三銃士がいるらしいところに向かい、お兄様から  
逃げた事にして、三銃士たちとばったり会った。  
「りんごぉ!よかったよかった!!!ヘンゼルにさらわれた時には夕飯どうしようかと思ったよー」  
「そうだねー赤ずきん。僕なんかお腹が減り過ぎて、もう少しで赤ずきんを食べちゃうとこだったよ」  
「「はっはははははは」」  
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」  
「りんごさん?いなくなってましたの」  
「ふわわ・・・はやくめしつくれ」  
 40代前半の主婦か、りんごは。  
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」  
 暫くの沈黙。それはりんごに変身した私が黙っているからだ。  
 覚悟を極めてりんごとしての第一声  
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・いばらだゾっ!」  
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」  
 ガチン。空気が凍る音を聞いた。  
 しっ・・・しまったぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!  
 名前・・・名前もろに間違ってるしぃぃぃぃ!!!  
「うん!いつものりんごだね!!」  
 いや、違うし。疑えよ。  
 
「それじゃありんご。そろそろ御飯にしようか」  
「ごはんは何がいいんだゾッ!」  
 喋り方が滅茶苦茶なのは知っている。でも、感心の無い人間の喋り方なんていちいち  
覚えてられない。  
「そんなの肉じゃがにきまってるじゃん!」  
 栄養偏るぞ・・  
「肉じゃがたって・・・材料がないゾッ!」  
 4人は顔を見合わせ、こいつ何言ってんのって感じの表情をし、赤ずきんが喋る。  
「りんご〜何いってるの?いつものりんごだったら一番近くの村の畑から盗み取って、駄目なら  
出刃包丁で脅して材料をとってくるじゃない!!」  
「へ?」  
「そうそう。その時のりんごはカッコイイよねー」  
「あ、あ、あ、あ、あ・・・」  
「はい、いつもの包丁」  
「りんご、がんばれ」  
 まてまてまて。  
 
「まった。今日は調子が悪いから無理だゾッ!」  
 いや、そう言う問題じゃなくて・・・正義のヒーローって奇麗事だけじゃやってけないと言う  
訳だ。  
 無理矢理そう納得する事にした。  
 だが、私の断わりにも草太は口を挟む。  
「うそだー!風邪の時もポンポンが痛い時もちゃんと盗んできたりんごが・・・  
君、さてはりんごじゃないなー」  
「ぎくっ!!!!」  
「真坂(まさか)お前、りんごをさらってその隙に変身したグレーテルでは」  
 いや、推測にしては当たりすぎ。  
「私、急に元気になっちゃったなー」  
 
 人生で初めての盗み。・・・せめてお兄様のハートを最初に盗みたかった。  
 畑に忍び込み、ジャガイモ、にんじんを抜き取り、そこを去ろうとする。  
「誰だおめぇ!!」  
 ちっ見つかったか、  
 シュッ。農家のじいさんの喉下に刃先を突きつける。  
「命だけはとらないでやる・・・そのまま回れ右で・・・  
全力で去れっ!」  
「ひいいいいいいいいぃぃい!!!!」  
 去っていくじいさんを黙って眺め、次の得物である豚肉を探す。  
たしか肉屋が近くにあったはず・・・  
   
 ♪冒険だゾッ、だゾッ、語尾がだゾッに変わる世界で  
 思い(愛)があるから強くなるのよ。肉じゃがのためじゃない  
 お兄様助けて下さいっ!どこでも今直ぐ、助けて下さい。  
 
 思いましたました いつも胸の奥に・・・貴方を♪  
 
 普通じゃ、  
 
「りんご、何歌ってるの?」  
「はっ・・・!」  
 歌ってたか・・・余りにも過酷な現実に意味不明の妄想が  
クッションとなってくれたみたいだ。  
「何も歌ってないゾッ!それより御飯ができたゾッ!ほわわ」  
 問題が山積みだった。肉じゃがの作り方が分からない上、毒薬を  
しこんだせいで味見さえも出来なかった。  
 結果、醤油をお情け程度にかけたじゃがいものいためものが完成した。  
「わぁ!いつもより美味しそうな肉じゃがだね、りんご」  
 どこがだ。  
「「「いただきまーす」」」  
 もぐもぐもぐもぐ  
「どう、お味の方は、だゾッ!」  
「「「ふつー」」」  
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もういいよ。傷付いたとか、もう言わない。  
 それに、これで三銃士ともオサラバだ。バイバイじゅ〜すぅぃ〜戦隊。  
「あっ・・・草太っ・・・体が、熱い」  
 先に反応したのは赤ずきんだった。そりゃ、あんだけかっこめば毒の周りも  
早いだろう・・・しかし、それは決して苦しそうではなく、寧ろ・・・何かを求めるように  
瞳が潤んでいた。  
 何か様子が変だ。しかもこの症状…どこかで見た事がある。荒い息、熱い瞳、  
内股で、太股をモジモジとさせている。  
「媚薬!?」  
 そう思いビンのラベルを見ると。  
『ビンビンRX』と記してある・・・媚薬確定だろう。  
 
「草太、変なの、ここがむずむずするよ〜」  
 何時の間にか裸になっていた赤ずきんは足を広げ、秘所が  
露になる。  
「…そう言えば赤ずきんとははじめてだったね」  
「うん…やさしくしてね」  
 赤ずきんに優しくキスをする。  
「あの、草太さん…私もむずむずして、私にも」  
「冗談はよそうよ白雪」  
「が〜ん」  
 この光景から分からない程私もマヌケじゃない…と思いたい。  
 お兄様がすとなんたらとか言う毒薬を渡そうと思ったら間違えて媚薬を  
渡した。詰まり、失敗だ。  
「さて、私はおいとま…」  
「まてりんご」  
 腕を捕まえられ、私は何時の間にか唇を奪われていた。  
「む、むー」  
 唇を離すと、そこにはいばらがいた。  
「りんご、何を仕込んだかはあえて聞かないけど…」  
「けど、何かしら?」  
 もうりんご口調もやめた。正体ならとっくにばれているだろう。  
 しかし、何故キスをした。  
「お前には私を慰める義務がある。」  
 そう言って、木の根が私といばらをくっつける形で縛り付けた。  
「なっ何のつもり!?」  
 その答えばいわずとも理解できた。  
 いばらは私の手を掴むと服の中に私の手を入れた。  
触り心地の良い布が当たる。  
「私を満足させて見ろ。それまでは…離さない」  
「…分かった、分かりました。」  
「ふわわ…よろしい」  
 いばらはそう言ってまた唇を重ねる。  
 今度は舌を使ってネットリとしたキス。  
 ざらざらとした自分とは違う部位を感じるのがこんなにも気持ち良い  
とは知らなかった。  
 
 唇が離れる。  
「ん、素直な子は好きだ。次は私のここを指を使って可愛がってくれ」  
 パンツの中に手を進入させるとその感触に少し驚いた。  
 …有体に言うならば毛だった。毛が少し生えていて慣れない感触が  
妙に恐かった。  
「どうした?真坂毛が恐い…なーんて事を言ったりして。りんごは生えてないの?」  
 認める。生えてない。  
「そっ、そんな事ないわよっ!」  
 勇気を振り絞り、いばらの濡れに濡れていたヴァギナに指を入れ、弄る。  
「んっ…はっ…あああぁ…」  
「いつもこうやって自分のも慰めてるのか?」  
「…・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・咬むわよ」  
 はぁはぁと扇情的な吐息が顔に掛かり、私の方がどうにかなってしまいそうだった。  
 私は何を思ったか、イバラの胸を弄っていた。  
「んっ…いいっ、気持ち良い」  
「さっさと終わらせなさい…じゃないと、貴女の事、お兄様の次に好きになっちゃいそうだから」  
「それは良い事をきいた。夜は長い、まだまだからかって遊べそうだ」  
 いばらの笑顔が可愛らしい。  
 …そう見えてしまった。今日の私はおかしいのかも知れない。  
「…ばか」  
 
 一方その頃。  
 ぐさっ。  
「ぐっうっ…」  
 ばたんと倒れたヘンゼルの背中には深く出刃包丁が突き刺さっていた。  
つづくかも    
 

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