宴の間から遥かに離れたフェレナンドの居室にも、皆の歓喜の声が響いていた。  
サンドリヨンを封印し、ファンダベーレが解放されたこの祝宴から一人切り上げたフェレナンドは、ベッドにゆっくりと腰を下ろす。  
 
「…ふぅ」  
ため息が自分の唇から漏れたことに気づくと、フェレナンドは自嘲気味に笑う。  
解放されてから既に数週間が経っているのに、囚われの身にあったことが、かくも体調に変化を与えているとは思わなかった。  
 
頭飾りを取ると、膝に両肘を置いて手を組んで目を閉じる。  
昼間に行われた恩賞式のあの出来事を思い出しながら。  
 
この戦の一番の手柄が三銃士にあることは、普段は口うるさい老臣たちも認めざるを得なかった。  
ひとまずは彼女たちの願いどおり、草太たちとの別れに必要な時間は与えたがそれはそれ。  
彼は三銃士一人ひとりに、好きな望みを叶えると約束したのだが…  
 
『んーとねー、ヴァルと一緒にちょっとウィーゼ村に帰りたいんだけど…』と赤ずきん。  
『私の戦いは…お父様をあの魔女から解き放つまでは…どうかお許しください』と白雪。  
旅立ちの前とは打って変わった凛とした表情に、フェレナンドは思わず目を細めた。  
ところが、いばらと来たら『ふわ…今は別にいらな〜い』といつもの調子。  
 
「それでは、いばらの分の願いをこの私に…」とのたまう白雪を華麗にスルーして、フェレナンドはいばらを見据えたが、わけが分からない。  
まあ、元々いばらの考えていることはよく分からないのだが。  
 
「本当に今はいらないのかい?」  
フェレナンドがそう問いかけたときには、既にいばらは立ったまま寝息を立てていた。  
なんとしても労いたいのだが、いらないと言われてしまってはもうどうしようもない。  
とは言え、いばらの言葉も気に掛かる。  
『今は』いらない。  
 
「考えていても仕方が無いか」  
立ち上がろうとしたそのとき、コツコツ…とドアを叩く音。そして、  
「フェレナンドさま…?」  
ドアを半分開けて、顔だけ覗かせるフェレナンドの悩みの張本人がいた。  
 
「いばら姫かい? お入り」  
「ふわ…失礼しまぁ〜す」  
いつもの寝ぼけた調子で部屋に入るなり、てっきり椅子に腰を下ろすかと思いきや、  
いばらはふらふらとフェレナンドのベッドに腰を下ろす。  
しばし呆然とするフェレナンド。  
寝ぼけていても、臣下としての礼儀はとりあえず心得ているはずなのに…  
いや? 心得ていたか? 自分の前でも平気で寝るし。  
 
フェレナンドのベッドに腰掛けて、うつむいたままのいばらにフェレナンドは苦笑する。  
まあ…これが三銃士らしくていいではないか。  
椅子を引いてベッドの横に持って行こうとした刹那、ぽんぽんといばらがお尻の横のシーツを叩く。  
うつむいているのでいまひとつ表情が読みにくい。頬がわずかに赤くて、長い睫毛が静かに震える。  
 
やれやれ…従うしかないか。  
隣に腰掛けてフェレナンドが顔を覗き込んだ刹那、ようやくいばらが口を開いた。  
 
「ふわ…何で宴の間から勝手に出て行っちゃったんですか?」  
「いや、辞去の挨拶はしたつもりだが…」  
「私が聞いてるのは、何で私に言わずに出て行ったか、ってことです!!」  
 
いばらが顔をずいっと寄せて唇を尖らせる。  
よく顔を合わせているとはいえ、ここまで間近に見るのは初めてのような気がする。  
いばらの息が自分の鼻筋にかかるのが妙にくすぐったい。  
いつもは見せない、じっと自分を見つめる視線が不思議と色っぽい。  
いや…いつも真っ白な頬が、首筋が、妙に赤い。  
そして何より……酒臭い。  
 
「いばら姫、もしや…お酒でも飲んだのかい?」  
「ふわ…あだすにも、酔いたいときぐらいあるんだぁ。だって、フェレナンドさま、なんにも言わずに出でっいっちまうんだもんなぁ」  
 
うわ…目が据わってるよ。と、内心感じても言葉に出さない辺りがフェレナンドの王たる所以だろうか。  
 
「フェレナンドさまは、いっづもそうだぁ。あがずきんや白雪を追っで、エルデさ行げって言っで、  
んで、帰っできたら、サンドリヨンにづかまってんだもんなぁ」  
「…あれは、ごめんね」  
 
エルデ行きを嫌がるいばらを何とか説得し、無理矢理送り出したのは事実。  
恐らくサンドリヨン軍の猛攻があるだろう、そしてそのときは投降しよう。  
ファンダベーレの鍵たる自分をサンドリヨンは殺しはしない。  
そこまでの読みはあったが、流石にかくも容易く自軍が敗れるとは思っていなかった。  
 
「んなことは聞いてねぇ!! んだったら、なんであだしに「づかまるづもりだ」って、ホントのこと言っでくれながったんだ?」  
 
顔を斜め45度に傾けて、ジト目で見上げる目。  
フェレナンドの脳内で「今のいばらをマトモに相手にするのは危険」との信号が働くのにそう時間はかからなかった。  
すっと立ち上がると、わざとらしくこんな言葉を紡ぎながら振り返る。  
 
「いばら、何か飲み物でも飲むかい? 水がいいかな?」  
 
いばらは返事をせず、ただ「うー」と下を向いて唸っている。  
やれやれ、とため息を漏らすと、フェレナンドは従者を呼びにドアに向かって歩き出した。  
水でも飲めば、多少は落ち着くかな?  
 
「誰か…いないか?」  
フェレナンドが部屋の外に声をかけた瞬間  
 
「………いばら?」  
 
不意に首筋に腕が回され、キュッと力がこもる。  
耳元で熱い吐息がすぅすぅと、フェレナンドの耳朶をくすぐる。  
微かだが、背中に柔らかい感触。  
 
「いばら?」  
 
二回目の問いにもいばらは答えない。  
ただ、回された腕に少し力がこもっただけ。  
フェレナンドは首筋に回された腕に手を伸べて、そっと触る。  
真っ白な腕は少し冷たくて、思ったよりも遥かに柔らかかった。  
 
「ふわ…フェレナンドさま、また…黙ってどこかに行くつもり?」  
「ん…そんなことはないよ」  
 
腕を押さえたまま、身体を反転させていばらと向かい合う。  
いばらの腕はすっと首筋から落ちて、フェレナンドの腰の辺りに回される。  
図らずもフェレナンドを抱き締めた姿勢になったのと、自らの行動に今更ながら驚いたのか、顔を真っ赤にしていばらは俯く。  
 
「いばら姫、私はどこにも行ったりしない」  
フェレナンドはいばらの首筋を撫でながら何とか状況を打開しようと必死であった。  
いばらに落ち着いてもらおうと頬に触れ、その手を首筋に移した瞬間、トクトクトクトク…と異常な速さの動悸に気づく。  
 
「いばら姫、大分飲んだんだね?」  
「だって…」  
 
俯いたままの言葉であっても、いばらの声はさっきとは打って変わって凛としていた。  
フェレナンドの手を首筋に乗せながら、フェレナンドに回した両手にギュッと力をこめて、いばらはようやく顔を上げる。  
桃色の髪がさらっと揺れた。  
 
「だって…………お酒でも飲まないと、こんなこと…できない」  
「……」  
「私がエルデ行くの嫌がった理由…知ってます? ずっと離れたくなかったから…フェレナンドさまから…」  
「いばら姫…」  
 
そのまま、まるでそうするのが当然のように、フェレナンドはいばらの頬に両手を添えてキスをした。  
 
「ふわ…フェレナンドさま…」  
 
ちゅ……ちゅぱ…  
ベッドに二人腰掛けたまま、何度もフェレナンドはいばらの唇をついばむ。  
そのたびに、いばらはうわ言のようにフェレナンドの名を呼んだ。  
 
「ん…はぁ…フェレナンドさま……ん…」  
「いばら…」  
 
フェレナンドが少しだけ差し入れた舌に、いばらは自分から舌を絡める。  
くちゅ…と淫靡な音が室内に響く。  
 
「フェレナンドさま…おいしい……」  
舌を必死に操って、フェレナンドの口から送り込まれる唾液を一滴たりとも逃すまいと絡め取る。  
 
「ん…ちゅ……フェレナンドさまぁ……ちゅ…んくぅ………ふわ!!」  
目をうっとりとさせて、ねだるような声で喘いでいたいばらが突然声をあげる。  
フェレナンドが手を下ろして、服の上からやや強めにいばらの胸に刺激を与えていた。  
初めて感じる刺激がくすぐったいような、不思議な感覚。  
 
「んあ……胸……」  
「いばら……胸、柔らかい」  
「ん……ふわ……くすぐったいよ…」  
 
そう言いながら、軽く身をよじる。  
それでもまだふくらみかけのふにふにとした感触がたまらず、フェレナンドは両手の動きを止めない。  
 
「ん……ふわぁ……フェレナンドさま……く……」  
「いばら、口が留守になってる」  
 
それだけ告げて、唇への刺激を再開する。  
『アルコールの味がする』口腔を舌で丹念に刺激しながら、ふとフェレナンドはそんなことを思う。  
既にいばらは頭をベッドの上に預け、覆いかぶさってくるフェレナンドをただ受け入れる。  
くちゅ…ちゅ……と二人の水音と、いばらの唇から時々漏れる「ふわ……ん…」との喘ぎ声がフェレナンドの頭をおかしくしそうになって。  
丁寧に銃士服を脱がせていくと、真っ白な肌が現れる。  
 
「あの…フェレナンドさま…恥ずかしい」  
「大丈夫」  
「私…胸とかないし…」  
 
それだけ言うと、顔を真っ赤にして目を逸らす。  
確かにまだ成長途上の胸は、やや膨らんでいる程度といったところ。その頂上にある突起も鮮やかなピンク色。  
フェレナンドは何も言わずにいばらの腕を引いて上半身を起こさせると、膝立ちで向かい合ってキスを再開する。  
 
「フェレナンドさま…ちゅ…ふわ…ダメ、おかしくなりそう…」  
いばらの喘ぎを楽しんでいると、フェレナンドは突然肉茎に刺激を感じて、思わず腰を引く。  
唇と胸の両方の刺激に耐えかねたいばらが、右手でフェレナンドをキュッと握っていた。  
 
「くぅ…いばら……それは…」  
「フェレナンドさま……気持ちいい?」  
 
淡々とした言葉とは裏腹に、にこりと笑うと手を上下に動かす。  
指に絡みついた先走りを潤滑油に、徐々にその動きを激しく。  
いばらの指はひんやりとして、そして柔らかい。  
 
「ふわ…さっきのお返し」  
「………いばら……それは…くぅ…」  
「ふわわ……気持ちいいんだ? フェレナンドさま……ん? あ…?」  
「く…いばら、そういう君こそ、もう濡れてる…」  
「ん……ふわ……フェレナンドさま、言わないで」  
 
薄い陰毛のやや下で、いばらの陰唇がくちゅくちゅと音を立てる。  
自ずとフェレナンド自身をさすっていた手の動きはおぼつかなくなる。  
 
「フェ……レナンドさまぁ、ダメです……くぅ…フェレナンドさま…」  
「いばら……手がお留守だよ」  
「ダメ……フェレナンドさまの指……ふわ…気持ちいい」  
 
そう言われて手の動きを再開させるいばら。  
フェレナンドに股間をまさぐられ、蜜壷でくちゅくちゅと音を立てる。  
時折耐えられないように下半身をくゆらせるも、フェレナンドの指は執拗にいばらを攻め立てた。  
目と口を半開きにしてぼんやりと正面の想い人を見つめる。  
そんないばらに気付いて、フェレナンドは再び唇を襲って、口の端からこぼれていた涎を掬っていた。  
 
「フェレナンドさま…ダメです……このままじゃ……ふわ……私……」  
くちゅ……くちゅ……くちゅ……  
「このままじゃ?」  
不意にフェレナンドの指が、いばらの一番敏感な肉芽を剥いた。  
ビクンと背を反らして、いばらは嬌声をあげる。  
 
「ふわっ……ダメです……このままじゃ、私だけ……」  
ちゅっ……ちゅっ……ちゅっ…  
「いばら、いいよ。そのまま……」  
「ダメです……私だけイクなんて……ふわ…ダメ……フェレナンドさま……ダメです!!」  
フェレナンドの指が速度を増す。フェレナンドの肉茎を握っていたいばらの手は完全に力を失い、  
ただ支えを求めるようにフェレナンドの肩に回される。  
ギュッと目を閉じて、ひたすら快感を受け入れていた。  
「ふわ……フェレナンドさま……もうダメ…このままじゃ…私もう………  
ねぇ……ダメ…くぅ…あ、あ、ダメ、あ、あああああああ」  
 
いばらの腰がくっと跳ね上がり、ガクガクと下半身を振るわせる。  
フェレナンドはヒクヒクと刺激を甘受するまだ幼さの残る陰唇を、絶頂の余韻を楽しむかのようにゆるゆると撫で続ける。  
その指はいばらの愛液で既に濡れそぼっていたが、いばらからは耐えることなく露が零れていた。  
 
いばらは刺激に耐え切れず、ギュッとフェレナンドに抱きついた。  
既に痛いほどいきり勃っていたフェレナンドの肉茎が、いばらのヘソの辺りに当たる。  
あまりの柔らかさに、それだけで射精してしまいそうになったが、グッと我慢した。  
 
「ふわ………本当にこの格好でいいんですか?」  
「いばらが好きに動けた方がいいと思ってね」  
 
仰向けに寝転んだフェレナンドの下腹にいばらは跨ったまま、そんなことを聞いていた。  
とはいえ、まだ腰は浮かせており、挿入には逡巡していて。  
流石に主君を下にすることには抵抗を感じたのだが、フェレナンドの許しは既に出ている。  
 
「ふわ…それじゃ……挿れますね……」  
「ん……」  
 
フェレナンド自身を掴んで少し位置を調整すると、いばらはゆっくりと腰を下ろす。  
すぐにフェレナンドの先といばらの入り口が当たり、くちっと音を立てた。  
 
「ふわ……当たってる……フェレナンドさま……当たってるだけでも…気持ちいい」  
「私もだよ…いばら」  
 
いばらの入り口はまるで吸い付いているみたいに、肉茎の先を捕らえたまま離さなかった。  
しばし恍惚の表情を浮かべていたが、いばらは意を決したかのように、ゆっくりと腰を落とす。  
 
ずっ…ずっ…ずっ…  
「いばら……暖かい……」  
思わずそんな言葉が口について出るほど、いばらの膣壁は暖かく、そしてキュッとフェレナンドを包み込む。  
「あ……ふわ……フェレナンドさまのも……凄い堅くて…」  
いばらが声を発するたびに、ひくひくと膣が肉茎を締め付ける。  
ようやく最後まで腰を落とすと、結合部からいばらから溢れた愛液がじんわりと染み出していた。  
 
 
「フェレナンドさま……動きますね……」  
それだけ言うと、いばらはゆっくりと腰を上下する。  
 
ずちゅ…ずちゅ…ずちゅ…  
 
少々ぎこちないものの、確実に腰を上下させる。  
フェレナンドはまるで呆けたように、ぼんやりといばらを見ながらすべすべの腿を撫でる。  
元は真っ白な肌を上気させて、いばらは懸命に腰を振る。  
揺れるほどの胸はまだないものの、細い腰を淫らに揺らしている。  
半開きの目はすこし涙目なのに、口元がゆるりと微笑み、唇の端には涎が光っていた。  
 
「ん……あ……ふわ……フェレナンドさま、すっごく堅くて……」  
ずちゅ…ずちゅ…ずちゅ…  
「あっ……ダメ……いきなり腰突き上げないで…ください」  
ずちゅ…ずちゅ…ずちゅ…  
「あの……ああ……いいです……くちゅくちゅいってて……いいです」  
 
あまりにも淫靡な光景に、フェレナンドは少し悪戯を思いつく。  
先ほどまで執拗に腿を撫でていた手を、いばらの腰に回し、がっしりと掴む。  
そしていばらが腰を上げた瞬間を見計らうと、ぐっと抑えた。  
 
「ふわ? ……フェレナンドさま? どうしたんですか?」  
突然の刺激の中断に、いばらは眼を見広げてフェレナンドを見下ろす。  
フェレナンドがそのとき浮かべた顔をもし他の誰かが見たとすれば、サンドリヨンの再来を思いついたかもしれない。  
 
「いばら……何がいいんだい?」  
フェレナンドの問いかけに、いばらは腰を必死に動かそうと悶える。  
「フェレナンドさま……動かせてください……」  
「答えられたらね。ねえ、いばら? 何がそんなにいいんだい?」  
 
フェレナンドの真意を汲んで、いばらは繋がったままで頭を振る。  
フェレナンドは、髪がさらさらと揺れるのが妙に綺麗だと思った。  
と、キュッといばらの膣が締まり、フェレナンドの先端だけが快楽に包まれる。  
 
「ほら……いばら、今ちょっと考えたね? いばらの中、キュッて締まったよ?」  
「ふわ…フェレナンドさま……」  
「そんな目で見てもダメ。自分の口で言ってごらん?」  
 
まるで魔法にかかったように、いばらは口を開く。  
それでも抵抗があるのか、何度か言葉を反芻した。  
 
「あのね……えっと……フェレナンドさまの……」  
「私の?」  
「フェレナンドさまの……………」  
 
言わないかな? そう思い、フェレナンドが腰を自由にしようとした刹那  
 
「フェレナンドさまのおちんちんが、気持ちいいんです!  
 だって、さっきからずっと、私の中で、出たり入ったりして、すっごくいいんです!  
 あのね……もっともっと動かせてください!」  
「よくできたね」  
ずちゅ…そんな音が部屋中に響いたかのように、フェレナンドは思い切り両手でいばらの腰を引き寄せる。  
 
「ふわあああああああ、あああ、ダメ、すごくいいです!   
 いいの! すごく気持ちいいです!」  
ガクガクと上半身を震わせたのを、慌ててフェレナンドは起き上がって抱きしめる。  
いばらを抱きしめたまま胡坐の上に乗せて腰を振る。  
 
ずちゅっ……ずちゅっ……ずちゅっ……  
「あああ……フェレナンドさま!! 凄くいいです! フェレナンドさま…」  
「いばらも……腰の動かし方…すごくいいよ…」  
ずちゅっ……ずちゅっ……ずちゅっ……  
「ああ!! フェレナンドさまの…またちょっと大きくなった……ああ…」  
「いばらも……またちょっとイッたね? いばらの中、またキュッと締め付けてる…」  
 
ずちゅっ……ずちゅっ……ずちゅっ……  
フェレナンドの腰に両脚を回したまま、いばらの腰はまるで別の生き物のように動いている。  
フェレナンドが目の前の乳首を甘噛みすると、再びいばらが嬌声をあげる。  
「だって、フェレナンドさまの凄く気持ちいいから……あのね………フェレナンドさま、もう、ダメです……もうイキます……」  
「いばら…私も、もう……いばらの中、すごくぬるぬるしてて…暖かい……」  
「ふああああ、ダメです……こんなにくちゅくちゅされたら、私……」  
 
ずちゅっ……ずちゅっ……ずちゅっ……  
お互いの腰の動きが大きくなる。  
胸を責めていた顔を上げると、フェレナンドはいばらの唇を吸う。  
いばらはギュッと目を閉じて、快感に身を委ねていた。  
 
「ふわ……あああ、ダメ、私……フェレ……ドさま……もう…」  
「いばらっ、私もっ……」  
「ああああ、いいです、私、もう…ああああ、フェレナンドさまの精子、奥に当たってるの……  
あああ、ビュルビュルって当たってる…あ、あああああああああああああああ」  
 
いばらの膣が三度キュッと肉茎を締め付けるのを感じながら、フェレナンドはいばらを抱きしめたまま、いつ終わるとも知れない射精に酔いしれていた。  
 
――――  
 
「ふわわ…フェレナンドさま……?」  
「ん……なんだい?」  
 
照れたように枕を抱きしめて口元を隠すと、いばらは躊躇いがちに告げた。  
 
「あのね…んと……ご褒美のお願い。思いついたんですけど…」  
「何でもいいよ。言ってごらん?」  
「んと…えっと……私が寝ちゃって……」  
「寝ちゃって?」  
「ふわ……あのね……寝ちゃっても……目が覚めたとき……傍にいてね?………くぅ」  
 
すやすやと寝息を立てたいばら。  
 
「もちろんだとも。その願い、確かにかなえよう」  
 
ささやくような声で、いばらの耳元でつぶやくフェレナンド。  
そう、今後何があろうと、勝手にどこかへ行くことはしない……フェレナンドにとってはまた、己への誓いの言葉でもあった。  
そんなことを考えつつ、フェレナンドの瞼もゆっくりと下りていく……  
 
―――  
 
朝、フェレナンドが目覚めたとき、いばらは既にベッドにはいなかった。  
彼女の替わりに、枕元に一枚のカードが残されていただけである。  
フェレナンドは目覚めてすぐ驚いた様子を見せたが、カードを読むと静かに微笑んだ。  
彼自身、なんとなく予想は出来ていたのかもしれない。  
 
『フェレナンドさま  
  まだフェレナンドさまが寝てるのに、いなくなっちゃうけどごめんなさい。  
  白雪なら一人でも大丈夫だとは思うけど、念のため、多勢に無勢かもしれません。  
  だから、助けに行ってきます。しばらく外してしまうけれど…許してください』  
 
いや、フェレナンドが目を細めた原因は、最後の一文かもしれない。  
この一文を書くのが照れくさくて、逡巡した挙句、ついに思い切りだけで書いたような、走り書きだったからかもしれない。  
 
 『私が目覚めたとき、傍にいてくれて、ありがとう。』  
 
 
                                    おわり  
 

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