「うーん…何がいいかなぁ」  
店先で悩んでいる草太がポソリと呟く。それを聞き、骨キーホルダーに釘付けだった犬…もといヴァルが答えた  
「そんなに深く考える事は無い。あいつらならお前が選んだ物は何だって喜ぶだろー…ってか犬じゃねぇ!!!」  
「………」「キュピィ!」  
 
ここは平和を取り戻したエルデの温泉街。草太、ヴァル、ヘンゼル、キュピは赤ずきん達とは別行動を取っていた。  
そんな中、草太は赤ずきん達に渡すお土産を選んでいた。  
その頃赤ずきん達がどんな事になっているかも知らずに………  
 
 
「じゃあちょっとグレーテルの様子見てくるゾ」  
赤ずきん達を残し、元気よく部屋を飛び出すりんご。それを見送り白雪が愚痴をこぼした。  
「はぁ…せっかく草太さんとのお買い物デートのはずでしたのに。全く…とんだ足止めを食ってしまいましたわ!」  
深くため息をついて目線を落とす。それを見た赤ずきんが顔の前で手を合わせた。  
「ごめ〜ん、昨日はつい張り切りすぎちゃって〜…」  
赤ずきんも手を下ろして目を向ける。そこにはスヤスヤと寝息をたてるいばらの姿があった…  
 
〜〜〜小一時間前〜〜〜  
「みんなまだかなぁ…」  
草太達はだいぶ前に出掛ける支度を済ませ、ロビーで赤ずきん達を待っていた。実際はまだ10分程度しか遅れていないのだが、いてもたってもいられない草太には長く感じられたらしい。  
ついに我慢できなくなったのか、「ヴァル。ちょっと様子を見てくるね」とだけ言い、荷物を預けて駆け出した  
客室に繋がる廊下に出た草太。速度を落として角を曲がると、ちょうど部屋から出てくるりんごと鉢合わせた。  
「あ、りんご〜、みんなは支度できた?」  
一見すると準備万端なりんご…。だが、りんごは首を横に振って言う  
「それが…まだ寝てるの……いばら」  
りんごに連れられて部屋に入ると、そこにはスヤスヤと眠るいばらを赤ずきんたちが起こそうと四苦八苦していた  
「も〜、早く起きないと置いてっちゃうよ〜」  
「ダメですわね。これではテコでも動きそうにありませんわ…」  
ふぅ…とため息をついた2人が振り向き、草太に気付く。そしていばらが草太に問いかけた  
「草太さん…もういっそのこと、いばらさんを置いて行ってしまいません?」  
その問いかけに少しだけ考えて、口を開く  
「うーん…確かに起こすのはかわいそうだけど、明日は別の所に泊まるから…。ここも12時までに出ないとダメだって」  
「そうですの…困りましたわね」  
4人とも案が無くなり、口を噤む。部屋にはいばらの寝息だけが聞こえていた。  
しばしの沈黙の後、赤ずきんが口を開く  
「もうしょうがないし、草太たちには先に行っててもらおうよ」  
「え?…でも…」  
しかし、草太の言葉を遮るように白雪が草太の手を掴んだ  
「…しょうがありませんわね、じゃあ私達で楽しんで…」  
「白雪も残るんだよ!(ゾ!)」  
赤ずきんとりんごの声がステレオで響く。白雪は慌てて「じょっ…冗談ですわよ、冗談…じゃぁ予定を立てなおしましょう」と言いつつ、そそくさと出て行ってしまった  
それを見た一向はクスクスと笑い、いばらを残してロビーに向かうのだった。  
 
「じゃぁ…男女に別れましょう。私と3銃士、りんごちゃんとグレーテルが残っていばらを待つわね」  
草太の母、小夜がそう言って、皆をまとめる。グレーテルは一緒くたにされていささか不機嫌そうだが、しぶしぶ了承した  
「行き先は私が知っているから、皆は気にしないで楽しんでね。じゃあ一時解散」  
それを聞いた赤ずきん。「じゃあ、私達はいばらを起こしに行って来るね〜」と、元気よく駆け出す。早く起こしてさっさと合流するつもりなのだろう  
「じゃぁ、先に行くね。お母さん…」  
浮かない顔で歩き出す草太、それを見て小夜が呼び止め、声を潜めて囁く。  
「草太、この後はお土産屋さんでお買い物だから、5人にお土産を買ってあげなさい。きっと喜ぶわよ」  
「あ…そっか、そうだね。じゃあ先に行ってるね」  
草太は明るさを取り戻し、ヴァル達を追っていった  
〜〜〜〜〜〜  
 
「さ…て…いい加減そろそろ起きてもらわないといけませんわね」  
草太たちと別れてから約1時間。痺れを切らした白雪が、ズンズンといばらに歩み寄る。  
「どうするの?白雪」  
いばらに向かったまま、白雪が赤ずきんの問いに答える  
「それは………こうするんですのよ!」「コショコショコショコショ〜」白雪が服の上からいばらをくすぐりだす。  
「ちょっ、白雪〜やめなよ〜」  
「あら、他に方法でも思いついたんですの?…それにほら」  
白雪に言われていばらの顔を覗きこむと、いばらは苦悶の表情で手をばたばたとさせていた。  
「う〜ん…でも、何か嫌な予感がするんだよねぇ…」  
そんな事を呟く赤ずきんを尻目に、次第にエスカレートしていく白雪。服の中に手を滑り込ませていばらの全身を擽っていく  
「うぅ〜……ふわぁ……んッ……ふぁあ……あん………」  
次第にいばらからしっとりとした声が漏れてきた…。それを聞いて、白雪もやや頬を硬直させる  
「……何か…いばらさん…イヤらしいですわね…」  
「ねぇ白雪…そろそろやめてあげようよ〜」…トントン  
「ですから、他にいい案が浮かんでから言って下さいまし。このままでは草太さんに追いつく事は出来ないんですのよ」…トントン……無意識に手で払う白雪  
「でもぉ…ちょっとかわいそうかな〜って…」…トントン…無意識に手で払う赤ずきん  
「だいたい!昨夜の卓球大会であんなに必死になるお二人が…」…トントン………ポカッ  
「………もう!何ですの!…い……ま…………」  
「ッ!!!!!!!!」  
自分達の周囲の異変に気づいた二人は、声にならない悲鳴を上げた。そこには…  
……眠りこけるいばらから大量に伸びる、棘の無いツルがひしめき合っていた…  
 

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