(お母さん……お母さんっ……)  
 
サンドリヨン城の中のほの暗い回廊。鈴風草太はその中をひた走る。  
回廊の両壁面には姿見大の鏡が取り付けられ、それが何十組も奥に続いている。  
その中に時折浮かぶ一人の女性の影。  
赤ずきんたちが止めるのも聞かず、草太はその影を追って走り続けていた。  
 
(何でお母さんが鏡の中に……)  
 
何度もそう思い続けながら走る草太。気が付くといつの間にか廊下の壁が無くなっていた。  
鏡は空中に浮かんだまま薄暗い広い空間の中に並んでいた。  
構わず走る草太の前に不気味な装飾を施された塔が現れた。鏡の列はその塔の前で途切れていた。  
塔の上部に玉座らしきものが見える。そして塔の基部にはその玉座の主らしき人影。  
暗黒魔女サンドリヨン。そしてその傍らには腹心の魔女トゥルーデ。  
草太は二人の前で脚を止めた。  
 
「ようこそ少年……よくぞここまで来たな」  
「…サンドリヨン……ここに来るまでの鏡に僕のお母さんが映っていた……どういう事!?」  
「……お前の言っているのは…これの事かな?」  
 
暗黒魔女はそう言って体を脇へ動かした。その背後に先程の鏡と同じものが浮かんでいた。  
鏡の中に目を凝らす草太。やはり一人の女性の姿が映っている。草太の母――鈴風小夜。  
 
「……お母さん!」  
 
草太はそう叫び、鏡に駆け寄ろうとした。それを見たサンドリヨンの唇の端が釣り上がる。  
 
「迂闊な…」  
 
彼女は草太に向かって軽く右手をかざした。五本の指先から光弾が飛び出す。  
五つの光は草太の両手首と両足首、そして彼の腹部に命中した。衝撃を受け倒れる草太。  
 
「うっ!……な、何を……」  
 
視界の端に二人の魔女を捉えながら草太の意識は急速に薄れていった。  
 
 
あれからどれくらいの時が経ったのか――体に寒気を感じ、草太は目を覚ました。  
 
(……どこだ? ここ……)  
 
倒れたままの草太の視界に細かい装飾の施された天井が見える。  
薄暗い周囲も広い空間という感じがしない。先程とは違う場所のようだ。  
草太が寝ているのは柔らかい布の上――どうやらベッドの上のようだった。  
 
「ん……んふ……ぅんっ……」  
 
近くで悩ましげな女の吐息が聞こえる。草太は身を起こそうとしたが、途端にベッドの上に引き戻された。  
 
「うっ!……あ、あれ?……僕、何で裸に……」  
 
草太はそこで自分が全裸にされているのに気が付いた。頭を巡らすと2脚の籐椅子の背もたれが見える。  
その一つにサンドリヨンが座っていた。いつものドレスではなく絹製らしき銀灰色の長いローブをまとっている。  
その前に全裸になった黒い肌の女がひざまずき、サンドリヨンの開いた両足の間に顔を埋めていた。  
 
(あれは……トゥルーデ…?)  
 
草太がいぶかしむのも無理はなかった。もちろん魔女の装束を身に着けていない彼女を見るのは初めてだ。  
その肌は墨を流し込んだようにどこまでも黒い。  
兜を被る為のものか、長く青白い髪はアップにして後頭部にまとめていた。  
ピチャ…ピチャ……という時折聞こえる湿った音は彼女が顔を寄せるサンドリヨンの股間からのものの様だった。  
女が女に陰部を舐めさせている――初めて見るその異様な光景に草太は戸惑いつつ興奮した。  
 
「気が付いたか……どうした? 女同士の絡みを見て劣情を催したか?」  
 
サンドリヨンが草太の視線に気付き、うっとりとした表情で問い掛けた。草太は自分の股間の異変に慌てた。  
 
「いや、こ、これは……それよりさっきの鏡は何? お母さんはここにいるの!?」  
「会えない事はない。だが私に付き合わなければ会う事は出来ない」  
「やっぱりいるんだね……ねえ、何でトゥルーデにそんな事…」  
「私は別に女同士の戯れに興味はない……こやつにこうして奉仕させる事に意味があるのだ」  
「意味って……どんな……?」  
「フフッ……いずれ分かる……もうよいぞトゥルーデ。今度は草太の“お宝”を綺麗にしてやれ」  
 
サンドリヨンに命じられたトゥルーデは草太の方へ向き直り、口元を拭いながらベッドの方へ歩み寄ってきた。  
草太は迫り来る魔女におののき身を起こそうとしたが、先程と同じく何かの力が働き身動きが取れなかった。  
 
「無駄だ…私が先程お前に撃ち込んだ印でその体は私の意のままだ。許された動きしか出来ぬ」  
 
サンドリヨンの言葉に草太は腕や脚を持ち上げる事を試みたが結果は同じだった。  
加える力と同じくらいの反発する力が掛かり、体が自由にならない。  
そうこうする内にトゥルーデがベッドに上がり、草太の両脚を押し開いた。  
 
「な……何をするの……」  
「…恐れる事はない……」  
 
黒い魔女はおののく草太のペニスを掴み、しばし見つめた後で頭を屈め先端をぺろりと舐めた。  
 
「あうっ!」  
 
未知の刺激に体を痙攣させる草太。トゥルーデはペニスの包皮を引き下ろし亀頭部を完全に露出させた。  
 
「痛っ……あぁ、やめて…汚いよ…」  
「だから綺麗にするのだ……大人しくしていろ……」  
 
トゥルーデはそう言うとペニスのカリ首や裏筋を舐め回し、こびり付いている恥垢を丹念にそぎ落とした。  
むず痒い痛みと慣れない刺激に草太は再び体を痙攣させる。  
一通り舐め終えるとトゥルーデは唾液をたっぷり含ませた唇で草太のペニスをゆっくり包み込んだ。  
 
「あっ……う…うぅ……あぁ……」  
「んん……んむ……はぅ……あふ……」  
 
自分のモノがトゥルーデの口の中で嬲[なぶ]られている――いまや恐れよりも快感が草太の体を支配していた。  
上目使いで見つめながら頭を上下させるトゥルーデをどうにか見返す草太。  
その目に映るの魔女の姿はさながら獲物の肉をむさぼる黒豹のようだった。  
いや、黒豹の方がまだましかも知れない。恐ろしい肉食獣とはいえ、その目には野生の息吹が宿っている。  
トゥルーデのガラス細工のような赤い瞳には生気が感じられなかった。自分の意思で動いてるはずなのに。  
 
「どうだ、トゥルーデの口淫は? 自分でするより何倍も心地よいであろう?」  
 
いつのまにかベッドの傍にサンドリヨンが歩み寄っていた。はだけたローブの間に白い乳房が覗いている。  
 
「こやつも可哀想な奴でな……かれこれ10年も男に縁が無くて、いまやここもすっかり乾いてしまった……」  
 
そう言ってサンドリヨンはトゥルーデの尻に手を伸ばした。その直後にトゥルーデの腰がピクンと震えた。  
 
「だがお前と接した事で忘れていた感覚が蘇ってきたようだ……」  
 
サンドリヨンの右手が漆黒の肌の尻の向こうでしきりに動いている。  
草太の位置からは見えないが、どうやらトゥルーデの秘部を指で嬲っているらしい。  
主の攻めに草太のペニスをしゃぶりながらトゥルーデは下半身をもじもじと身悶えさせている。  
 
「んんっ、んっ、んっ、うんっ……」  
「ああっ……ま、待って、そんなにされたら…」  
 
トゥルーデの口の動きが早まるにつれ、草太の体の奥から何かが込み上げてきた。  
 
「どうした、そろそろか? 出して構わぬぞ。こやつの口はお前の精を受け止める為にある……」  
「そんな事言ったって…あっ……あっ、あ、あ……だ、駄目だっ、出るっ……!! ああっ!!」  
 
ペニスにまとわり付く快感に耐え切れず、草太はトゥルーデの口の中に勢いよく射精した。  
 
「んぶっ! ん……うんっ、んんっ……」  
 
立て続けに注ぎ込まれる精液に流石のトゥルーデも苦しかったのか、顔をしかめている。  
それを見た草太は何故かすまない気持ちになってしまった。  
 
「こぼすでないぞ……草太の出したものは全て綺麗に舐め取れ……余計なものが残ってないようにな」  
 
冷たく言い放つサンドリヨンにトゥルーデは無言のまま従った。精液を飲み込むと再びペニスを咥える。  
 
「ねぇ…どうして、うっ……トゥルーデにこんな事させるの? あなたの一番の部下でしょ…あぅっ……」  
 
毛づくろいする猫のようにペニスを舐めるトゥルーデ。その刺激に草太は息を詰まらせながら主に問うた。  
 
「腹心だからといって特別扱いする気はない…今はこれがこやつの仕事だ…それに先程言ったろう?  
 こやつにこうさせる事に意味があるのだよ」  
「意味ってどんな?……分からないよ……」  
「後で教えてやる。今はもっと大事な用がある……どうだトゥルーデ? まだ終わらぬか」  
 
サンドリヨンと草太が話している間にもトゥルーデは先端に吸い付き尿道に残っている精液をすすったり、  
ペニス全体を口に含んでぬめりを念入りに舐め取ったりしていた。  
 
「……これで綺麗になったはずだ」  
「よかろう。これで準備は整った……下がれ」  
 
サンドリヨンは身にまとっていたローブを脱ぐとベッドを降りたトゥルーデに渡した。  
くすんだ白い裸身が草太の足元から四つん這いでにじり寄る。  
 
「トゥルーデの口の中に出したばかりだというのに……若いだけの事はあるな」  
 
射精後に萎えていた草太のペニスはトゥルーデに舐められるうちに勢いを取り戻していた。  
 
「まずは挨拶せねばな……」  
 
そう言ってサンドリヨンはトゥルーデがしたようにペニスを手に取り、亀頭に軽くキスをした。  
ピクッと身を震わせる草太。  
 
「…まったく、おぞましい形をしている……こんな物を咥え込んで悦ぶのだから女とは因果なものだ…」  
 
サンドリヨンは身を起こし草太の腰の上で仁王立ちになった。黒く艶やかな茂みをかき分け秘裂を広げる。  
初めて直に見る女性器の入り口に草太は目を見張った。  
 
「もっとも男はこちらの方がおぞましいと感じるようだがな……どんな男もここに入りたがるのに、  
 見るのは嫌だそうだ……」  
 
何も言えず困惑する草太。サンドリヨンは含み笑いを漏らすと立ち膝で草太の腰の上に跨った。  
 
「な……僕をどうするつもり……」  
「トゥルーデも言っていたろう……何も恐れるな……失望はさせないつもりだ……」  
 
持ち主の意思とは裏腹に草太のペニスは期待に震えていた。サンドリヨンはそれを掴み腰を下ろしていった。  
入り口にあてがわれたペニスがジュルッ、ジュルッ……と音を立てて秘裂の奥へ飲み込まれてゆく。  
 
「あっ……ああぁっ!」  
「うっ……ふ…ぅうん……はぁぁ……」  
 
初めて体験する、自分の分身を包む女の秘肉の熱い抱擁。草太は堪らず切なげな声を上げる。  
サンドリヨンもまた、根元まで入った自分の中を満たす男の感触に満足げな溜息を漏らす。  
 
「フフ……どうだ草太? マレーンの膣[なか]に入った感想は?」  
 
ここでその名を出すとは――快感を覚えながらも草太は内心憤りを感じた。  
確かにサンドリヨンが見せた幻影の中で自分は少女時代の彼女に惹かれていたが――。  
 
「違う!……僕はこんな事望んでない……!」  
「虚勢を張らずともよい……男は目を付けた女を自分のものにせずにはいられない……  
 思いが叶ったのだ、良かったではないか」  
「……違うよ……こんなの……」  
 
魔女から目をそらし、歯噛みする草太。サンドリヨンは彼の頬を指先でそっと撫ぜた。  
 
「そう言うな……その気持ちは私も同じだ……もっとも、私の望みはこっちの方だがな!!」  
 
サンドリヨンはそう言うと右手を差し上げた。その手の平に赤く光る魔法の印が浮かぶ。  
ハッとなり、それを見つめる草太。サンドリヨンはその手の平を彼の胸に押し当てた。  
 
「どぅあああああぁぁっ!!」  
 
魔女の手の平から伝わる熱さと波動。草太は何が起こったか分からぬまま悲鳴を上げた。  
 
「あっ……がぁっ……な…何が……」  
「いにしえより伝わるエルデの鍵よ! 今こそ我の中へ!! 真の持ち主の元へ!!」  
「うわああああぁあぁっっ!!」  
 
草太の中で何かが震え、砕け散り、粒子化して下腹部の中心から流れ出し始めた。  
その勢いよく吸い出されてゆく何かの摩擦熱であるかのようにペニスが熱くなってゆく。  
 
「う…わ……も、燃えちゃう……爆発するぅっ!!」  
「苦しいか少年? 耐えて見せろ……破裂したお前のものが私の体内に残るなど御免だぞ……」  
 
言葉とは裏腹に一度はそんな経験をしてみたいと言いたげな、酷薄な笑みを浮かべるサンドリヨン。  
パニックに陥る草太のペニスへの加熱と圧力は増す一方だった。  
 
「あ…ああっ!……駄目だ……嫌だ!! 嫌だぁ!!」  
 
草太が限界を感じたその時、不意に流動が衰え、ペニスに掛かる圧力も下がっていった。  
粒子の残りがサンドリヨンの中に吸い込まれ終えた時、射精後よりも強い虚脱感が草太を襲った。  
 
「はあっ……はぁっ……はっ……はっ……」  
「ふうっ……うぅん…………フフッ……収まった……これで私のものだ……」  
 
サンドリヨンは一呼吸すると草太から離れた。ジュルッと音を立てて女陰からペニスが抜ける。  
持ち主と同様に草太のペニスもグッタリと萎え切っていた。  
ベッドを降りたサンドリヨンはトゥルーデに命じ、ひざまずいた彼女に主の濡れた陰部を再び舐めさせた。  
 
「……今のは……鍵の力?……僕から奪ったの……?」  
「そうだ……エルデとファンダヴェーレ、私の中で二つの鍵が揃っている」  
「二つ?……まさか…」  
「フェレナンドは既に籠絡した。あっけないものだ」  
「そんな……フェレナンド王も……」  
「そう落胆するな……わざわざエルデから赴いてくれたのだ。お前には相応の礼はする」  
 
サンドリヨンはもういいと言いたげにトゥルーデの頭に手を置いた。  
     
「行ってやれ……トゥルーデの体は草太、お前にとって最高の褒美になるだろう」  
 
黒い魔女は立ち上がるとベッドの傍へ歩み寄った。ガラス玉のような生気のない目で草太を見おろす。  
ベッドに上がると彼女は草太の横に座り、彼の体をゆっくり撫で回し始めた。  
その様子をローブを羽織ったサンドリヨンが籐椅子に腰掛け、脚を組んで愉快そうに見つめる。  
 
「な…何でトゥルーデなの……」  
「嫌か? そう言うな。これがそやつの最後の仕事になるのだ」  
「最後……って、どういう事?」  
「……お前の相手を務めた後、トゥルーデは消す」  
「消す!?……それって殺すって事!?」  
「フッ……そうではない。“消す”のだ」  
「言い換えたって同じじゃないか!!……あんな事言われてるんだよ!! トゥルーデはそれでいいの!?」  
 
酷薄なサンドリヨンの物言いに流石の草太も憤慨したが、トゥルーデ自身は至って冷静だった。  
 
「サンドリヨンの命令ならば私は従うだけ……お前は余計な事を考えずに私を抱けばいい」  
「そんな……あぅっ……」  
 
草太を撫で回す手は彼の下腹部に伸び、今度はしおれたペニスと睾丸を揉み始める。  
トゥルーデに撫でられた部分からは温かい感触が広がり、脱力した体に再び力をみなぎらせていく。  
回復魔法かそれに類する術なのだろうと草太は思った。彼女がそんなものを使うとは意外だったが。  
トゥルーデにしごかれていた草太のペニスも次第に熱く硬く怒張し始めた。  
 
「そろそろ頃合か……トゥルーデ、這って尻を突き出せ」  
 
サンドリヨンに命じられたトゥルーデは草太から離れ、彼の足元で四つん這いになった。  
 
「せっかくの機会だ……草太、今度は自分の意思でしてみないか?」  
「自分で……?」  
 
草太は頭を上げた。試しに腕を動かすと今度は楽に持ち上がった。  
 
「男女の絡みにも色々な型がある……獣の恰好を嫌がる男はまずいない。お前も男の端くれなら、  
 どうすればいいか分かるであろう?……」  
「……好きにしろったって、無理矢理させる事に変わりないじゃないか……」  
 
そう抗議したものの、草太の目はトゥルーデの下半身に釘付けになっていた。  
黒い肌の尻の中心にある菊門、そしてその下にある青白い茂み。  
草太の視線を意識してかトゥルーデは股間に手をやり、中指と薬指で秘裂を開いた。  
その様を凝視する草太の胸の内に、かつてない程のどす黒い欲望が湧き出してきた。  
――挿入[いれ]たい。犯したい。  
この女[ひと]の子宮[なか]に射精したい――。  
 
「……分かったよ……」  
 
あくまでも“しぶしぶ”という姿勢を崩さずに草太は起き上がり、立て膝でトゥルーデの後ろについた。  
いきり立つペニスを掴み、サーモンピンクの膣口に押し当てる。先端にヌルッとした感触が伝わる。  
 
「い、いくよ、トゥルーデ……」  
 
おずおずとした草太の呼びかけにトゥルーデはコクリと小さくうなずいた。  
恐ろしい魔女だとは分かっているが、その仕草に草太は奇妙な愛おしさを感じた。  
膣口の中にペニスを送るとぬめりが砲身を包み込む。草太の全身が総毛立つ。  
トゥルーデの腰を掴み、草太はゆっくりと抽送を始めた。  
 
「はぅっ……ぅうんっ……あっ……あっ……」  
 
これがあの暗黒魔女なのかと思うほど切なげな声を漏らすトゥルーデ。  
要領を掴んだ草太はその声を聞きながら腰をリズミカルに押し付ける。  
 
「初めてにしては上出来だな……トゥルーデ、新妻のようにもっと可愛らしく喘[あえ]げ。  
 男はその声を聞く事で更に奮い立つ……」  
 
サンドリヨンはそう言いながら籐椅子の傍らの一脚テーブルからグラスを手に取った。  
後背位で交わる草太とトゥルーデを愉快そうに眺めながらグラスの中の酒を口にする。  
 
「さて……何故トゥルーデに卑しい事をさせるのか、という話だったな……」  
 
サンドリヨンは勿体つけるように脚を組み直し、顔に掛かる髪を撫で付けた。  
 
「そやつは元の名をシルフィーヌと言ってな……千年前、私を封印した七賢者の一人だ……」  
「し、七賢者!? トゥルーデが!?」  
 
予想だにしなかった話に草太は驚愕した。サンドリヨンを封印した七賢者の一人。サルタンと同じ……。  
以前会った老賢者の容貌を思い出した途端、顔から血の気が引いた草太は思わず腰を引こうとした。  
しかし既にサンドリヨンが先手を打っていた為、果たす事は出来なかった。  
 
「ハハッ……案ずるな。お前の相手は老婆ではなく若い女だ。千年前と同じ姿というふざけた奴だがな」  
 
若い女と聞いて草太は少しだけ安堵した。  
無礼は承知だが、年老いた女性を犯しているというのは気持ちのいいものではない。  
しかし見た目が若くても千年以上生きている人物を“若い”と呼んでいいものかどうか。  
 
「……その人が何で……」  
「10年前、復活した私にそやつらは戦いを挑んできた……しかしあらかたの賢者どもは既に死に、  
 残っていたのはそやつと老いぼれが一人だけ……勿論私にかなう訳がない。  
 老いぼれは賢明にも撤退するよう呼びかけたが、シルフィーヌは諦めず深追いしてきた。  
 実力の差を思い知らせる為、私はそやつを叩きのめし、転送魔法でここへ拉致した。  
 仲間を消されたと思った老いぼれは尻尾を巻いて逃げ、それきり挑んでは来なかったよ……」  
 
機嫌良さそうに武勇伝を語っていたサンドリヨンはそこで一区切りし、グラスを口にした。  
 
「…八つ裂きにして城に送りつける事も出来たが私より劣るとはいえ、そやつの魔力は魅力的だった。  
 そこで洗脳し、暗黒魔女トゥルーデとして蘇らせた。仇敵もいまや私の忠実な下僕だ……」  
「だけど……洗脳って元の人格を壊しちゃうんでしょ? そんなのひどいよ……」  
 
腹心であるにも拘らず、奴隷のようにも扱うのはそういう事かと草太は理解した。  
自分を封印した相手を殺さずに屈服させ、心を壊し、意のままにできる人形に仕立てる。  
かつて仕えた王家やファンダヴェーレの国々を襲わせるだけでなく、卑しい真似をさせて怨みを晴らす。  
おそろしく屈折した女だと草太は思った。  
 
「お願い草太……もっと突いて……」  
「えっ? あっ、ゴ、ゴメン」  
 
切なげに懇願する声を聞いて草太は我に帰った。話に気を取られて腰の動きが緩慢になっていたらしい。  
抽送を再開する草太。その声の主がトゥルーデである事に気付くのにしばらくかかった。  
 
「んあっ! あっ、あっ、あっ、いい、もっと……あんっ、ぁはぁん……」  
「いい調子だトゥルーデ……ねだる時も可愛くな。可愛く振舞えばそれだけで男は堕ちる……」  
 
黒い魔女のぬめる温かな膣に突き入れながら、草太は皮肉っぽく言うサンドリヨンを睨んだ。  
無論サンドリヨンはそんな草太の視線など意に介していない。  
 
「どうした? 私を睨む暇があるならトゥルーデをもっと可愛がってやったらどうだ?」  
「やってるよ!……トゥルーデ、どう? 気持ちいい?」  
「あんっ、はんっ……いい…気持ちいい……草太、突いて……もっと突いて!」  
 
演技かも知れないがトゥルーデに甘い声でねだられると草太も応えられずにはいられなかった。  
それがサンドリヨンの言うとおりになっているのは面白くなかったが今更やめる事も出来ない。  
サンドリヨンに対する苛立ちも含め、勢いをつけて腰をトゥルーデの尻に叩き込む。  
 
「あぅんっ! あんっ! あっ!あっ!あっ! して! もっとして! あぁんっ!」  
 
気分が高揚してきたのか、トゥルーデは髪留めを外し頭を振った。青白く長い髪が背中に広がる。  
その後ろ姿に草太は何か引っかかるものを感じた。  
気にはなったもののサンドリヨンにまた何か言われるかと思い、腰の動きは止めずにいた。  
 
「はぁんっ! あっ!あっ!あっ! くっ、来るのぉっ! あぅっ! あぁんっ!」  
 
トゥルーデの激しい嬌声を聞きながら突くうちに草太の内側から射精感が高まってきた。  
サンドリヨンはその様子を見逃さなかった。  
 
「盛り上がってきたようだな……草太、トゥルーデに上を向くよう命じろ」  
「えっ!?…何で?」  
「最後くらい、そやつが女になった時の顔を見てやれ……」  
「……分かったよ……トゥルーデ、悪いけどこっちを向いてくれる?……」  
 
草太は動くのを止め、トゥルーデの秘裂からペニスを抜き取った。  
 
「はぁ…はぁ……お願い、すぐに入れて……」  
「も、勿論だよ……」  
 
トゥルーデは草太が離れると四つん這いから正常位で寝る体勢をとった。  
両脚を立ててMの字に開く。股間の茂みが草太を誘うように濡れている。  
 
「早く来て……欲しくてたまらない……」  
「うん……いくよ……」  
 
トゥルーデの上に覆いかぶさった草太はペニスを掴み手探りでトゥルーデの秘裂にねじ込んだ。  
愛液の溢れる膣口は草太のものをすんなりと受け入れた。  
 
「んああぁっ!! 早くして! 奥まで突いて! あっ!あっ!あっ!あぁっ!」  
 
草太が動き始めるとトゥルーデは再び激しく喘いだ。目を潤ませ、唇の端から唾液がこぼれる。  
こんなになるまで乱れていたのか――そう思いながら向き合ったトゥルーデの顔を見つめる草太。  
しかしその顔を見るうちに彼は妙な違和感を抱いた。先程と同じく何かが引っかかる。  
記憶の奥底にある何かが――。  
 
草太のその戸惑いを打ち破るようにトゥルーデが両脚を彼の腰に絡み付けた。  
 
「あ!…ちょ、ちょっと、このままじゃ中に出ちゃうよ!?」  
「あっあ……いい、膣[なか]でいいから! 出して!いっぱい射精[だ]して!!」  
 
そう叫んでトゥルーデは草太をしっかりと抱きしめた。ちょっとやそっとでは振りほどけそうにない。  
 
「もう、知らないよ! このまま行くよっ! うんっ!うんっ!うんっっ!」  
 
腹をくくった草太は自身もトゥルーデの肩を掴み、思いっきり突き入れた。  
 
「あっ!あっ!あぁっ!いい! あっ!いいのぉっ!!」  
 
これがファンダヴェーレ中を恐怖させた魔女なのかと思うほどトゥルーデは女らしい声で喘ぐ。  
色を別にすればその肌は普通の女性と変わる事なく滑らかで、どこまでも柔らかく温かい。  
その体に男の印を刻みつけようとしている事に草太はいつしか暗い愉悦感を抱いていた。  
サンドリヨンやシルフィーヌの事も、母親の事さえも頭の隅に追いやりその瞬間を目指した。  
 
「あっあっあっ!…草太っ!…駄目…私……駄目ぇぇ……っっ!!」  
「ううぅんんっっ!!」  
 
ひと際大きいストロークで突き入れた瞬間、トゥルーデの膣[なか]で草太の精液がほとばしった。  
更に二度、三度と突き入れるたびに大量の熱いものが脈動と共に放たれる。  
トゥルーデは草太の体を壊しそうな程の力でしがみ付き、歓喜に打ち震えた。  
 
「あっあ……あぁぁ…………はぁっ…はぁっ…はぁっ……」  
 
全てが終わり、トゥルーデのしなやかな脚が草太の腰から離れVの字に伸びる。  
草太もまた彼女の上で息を荒くしながらぐったりと伸し掛かっていた。  
 
「天晴れだ鈴風草太……これでお前も一人前の男になったな」  
 
ゆっくりと拍手をしながらサンドリヨンは二人の傍に近づいてきた。  
 
「トゥルーデもご苦労だった……これでお前の役目は全て終わった。元の姿に還るがいい」  
「えっ……?」  
 
のろのろと草太が振り仰ぐとサンドリヨンがトゥルーデの頭に右手をかざしている。  
手の平から降り注ぐ暗い紫色のオーラを浴びたトゥルーデはうっと短くうめき静かになった。  
 
「元の姿にかえる……って……?」  
「まだ分からぬか。トゥルーデの人格を消し、シルフィーヌに戻すのだ」  
 
トゥルーデを消す、とはそういう意味だったのかと草太はようやく納得した。  
 
「だけど……何で今…」  
「お前を母親に会わせる為にはシルフィーヌに元に戻ってもらう必要があるのだ。まあ見ていろ」  
 
母親に会える――そう聞くと草太も黙ってはいられない。だがシルフィーヌと母とどういう関係があるのか。  
体を起こそうとしてみたが、ラストスパートが激しすぎたのか脱力感がひどく力が入らない。  
身を預けたまま草太は固唾を呑んでトゥルーデの変化を見守った。  
肌の黒さが徐々にあせて明るい色になっていく。入れ替わりに青白い髪や睫毛の色が濃くなっていく。  
消えゆくトゥルーデ。彼女は賢者シルフィーヌの体を基に作られたアンドロイドの様な存在だった。  
草太の腕の中では可愛い女だったが、本来の彼女はファンダヴェーレに災厄をもたらす魔女である。  
居なくなるのは喜ばしい事なのだろうが、サンドリヨンにあっさり捨てられるのは哀れでもあった。  
しかし感傷に浸ってはいられない。トゥルーデが消えるという事はシルフィーヌが戻る事でもある。  
おそらく洗脳されトゥルーデに変えられる以前の状態で蘇るはずだ。  
意識を取り戻した彼女にこの状況をどう説明すればいいのだろう――?  
そんな事をつらつら考える草太の目の前でトゥルーデは元の姿に近付きつつあった。  
 
(この人が賢者シルフィーヌ………えっ…?)  
 
ここにきて草太は先程感じた違和感の正体にようやく気付いた。  
似ているのだ。草太の知っている人物に。異様な肌や毛髪の色に惑わされ気付けずにいた。  
だがそんな事はあり得ない。あり得ないはずだが――。  
 
「ああ、そうだ。大事な話を忘れていた」  
 
出し抜けにベッドの傍らに立つサンドリヨンが切り出した。どことなくわざとらしい口調で。  
 
「シルフィーヌはかつてエルデに赴いていた事があってな……そこで一人の子供をもうけた」  
「えっ!?」  
 
再びサンドリヨンの口から出た思いがけない話に驚く草太。トゥルーデはいよいよ本来の姿に近付く。  
明るい象牙色の肌。栗色の髪。見覚えのある髪型と顔の輪郭。草太の最も身近な女性――。  
 
「彼女はそこでは……鈴風小夜と名乗っていた」  
 
変化が収まると同時にとどめの様なサンドリヨンの言葉。もはや疑う余地はなかった。  
 
「そう……“彼女”がお前の母親だ」  
「…お母さん!……」  
 
夢で――エルデで幾たびか見た悪夢の中で魔物に連れ去られた母。  
その母が今、目の前に――自分の下にいる。何故。どうして此処に。  
そして草太は忌まわしい事実に気付く。自分が犯していたのは実の――。  
 
「どうして……一体どういう事なの……」  
「お前が生まれる前だ……私の復活を予見したフェレナンドの父は『エルデの鍵』を確保し、  
 私の目から隠す為、そやつをエルデに赴かせ『鍵の力』を持つ子供を産むよう命じた。  
 『エルデの鍵』はエルデで生を受けた者にしか授からないからだ……。  
 だが私が復活した時、先王は重大な誤りを犯した。エルデでお前を育て守護していたシルフィーヌを  
 呼び戻し、私にぶつけて来たのだ……かつての英雄を担ぎ出す事で臣民を安心させようとの思惑が  
 あったのやも知れんが、その甘い考えがどんな結果をもたらしたかはお前も知っているであろう?」  
 
草太は何も言えなかった。母――鈴風小夜が賢者シルフィーヌであり暗黒魔女トゥルーデであった事。  
その事実を草太は受け入れられず煩悶していた。  
 
「与えられた使命とはいえ好きでもない男の精を受け入れ、欲しくもない子供を産まされ……  
 シルフィーヌもさぞや辛かったであろうな……」  
 
そう言って含み笑いを漏らすサンドリヨン。それを聞いて草太はかぶりを振った。  
 
「そんな事ないよ!! お母さんは僕もお父さんも…」  
「ならば聞いてみるがよい。夫と幼い自分を捨てた本当の理由を」  
「違う!! 捨ててなんか――」  
 
草太が反論しかけたその時、小夜がうめき声を漏らした。  
 
「……そ……た……うぅ……」  
「お、お母さん!?」  
 
草太は慌てて飛び起きた。おずおずと手を伸ばし母の肩をそっと揺する。  
――と、小夜の目尻から涙がこぼれた。トゥルーデが流していたような歓喜の涙ではない。  
表情も含め、見るからに悲しそうな苦渋の涙だった。  
 
「お母さん……大丈夫?……僕だよ、草太だよ……?」  
「……草太……やっと…会えたのに……こんな事に…なるなんて……うっ……うぅ……」  
「こんな事…って……お母さん……まさか……」  
「……ええ……見ていた……感じていたわ……トゥルーデの中で……」  
 
草太は絶句した。母は憶えていたのだ。トゥルーデにされた自分が息子と何をしていたのかを。  
 
「サンドリヨン!! どういう事!? 洗脳したんじゃなかったの!?」  
「洗脳はした。トゥルーデに仕立てやすくする為にな……そしてトゥルーデにしてから改めて  
 シルフィーヌの意識を蘇らせた……トゥルーデという牢獄の中で手も足も出せぬまま、  
 私に命じられたトゥルーデが…自分の体が、ファンダヴェーレを蹂躙する様を見せつける為にな!!」  
 
どこまで歪んでいるのかと草太は思わずにはいられなかった。  
過去の怨みがあるとはいえ、そこまで執拗に相手を苦しめようとする感覚が理解出来なかった。  
 
「……私を憎むのは分かるわ……だけどどうして草太にこんな事させるの!?」  
「お、お母さん……」  
 
歯ぎしりしながらやっとの思いで身を起こす小夜。草太は手を貸そうとしたが、躊躇した。  
母の顔には並々ならぬ怒気がはらんでいた。  
 
「愚問だな……親子の感動の再会を演出してやったのだ。気に入らぬか?」  
「勝手な事を……あぅっ!」  
 
ベッドを降りようとした小夜の体がだしぬけにバランスを崩し、頭を足があった方に向けて倒れた。  
 
「な、何?……ああっ!!」  
「お前の体にも既に操り人形の印を打ってある。逃れる事は出来ぬぞ……」  
 
見えない手で掴まれたように小夜の両腕が横に伸ばされ膝が立てられる。  
ベッドの上で彼女は大の字になり、草太に向かって太腿を開く格好になった。  
 
「無様だなシルフィーヌ……草太、お前のふしだらな母親はまだやる気十分のようだぞ」  
「いい加減にして!! 悪魔だってこんな悪ふざけしないわ!! あなた何なの? 何が望みなの!?」  
「……10年待って出てきた言葉がそれか……つまらぬ女だ……」  
 
呆れたようにそう言い終えたサンドリヨンの目が急に険しくなった。  
 
「私は千年の間、闇の底に封じ込められていたのだ……それを思えば私の下[しも]の露を舐めたり、  
 息子の逸物を咥えたりする事など、どうという事はなかろう」  
「やめて! 子供の前でそんな言い方しないで!!」  
 
怒鳴りながらも身動き出来ず、もがくだけの小夜を見てサンドリヨンは溜飲を下げたように目を細めた。  
 
「先程のは最高だったぞ……息子のものがお前に押し入った時…」  
「!…やめて……」  
 
忌まわしい記憶を呼び覚まされたように小夜が怯えた表情になる。  
 
「そして息子がお前の子宮に精を注ぎ込んだ時、お前がトゥルーデの中で泣き叫んでいるのが  
 手に取るように分かったぞ……!!」  
「やめて!! やめてったら!!」  
 
言葉の陵辱に小夜は顔をしかめ涙を流した。むせび泣く母を見て草太は黙っていられなくなった。  
ベッドを降り、母を守るようにサンドリヨンの前に立ちはだかる。  
 
「やめてよ!! そんなにお母さんをいじめて何が面白いの!? 昔の怨みがあるから!?」  
 
必死の形相で訴える草太にサンドリヨンはあざける様に、威圧的な声で応えた。  
 
「……聖人君子を気取る奴らに私の心は見えぬ。知りたいならお前も闇に染まれ。  
 そうすれば少しは“マレーン”の気持ちが動くやも知れぬぞ……」  
 
闇に染まれ、という言葉にたじろぐ草太。勿論そんな誘いに乗るわけにはいかない。  
草太を見据える、血の色を思わせるサンドリヨンの赤黒く邪悪な瞳。  
かつてエルデの少年との再会を夢見、ガラスの靴を軽やかに鳴らして駆けて行った少女。  
その面影をその瞳の中に求めるのはもう無理なのかと、草太は暗然とした思いで立ち尽くしていた。  
 
 
 (終わり)  

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