「……んっ!……んむぅ……むふ……むぐぅっ!……」  
 
純太朗の下で口を塞がれた小夜が突き上げられる度にうめいている。  
口を塞ぐようになったのは幼い草太が目を覚まさぬよう、感極まった小夜の声を抑える為だった。  
一人暮らしの女の部屋に押し入った暴漢が声を上げさせない為に取ったようなその形。  
暗い衝動に目覚めた純太朗は時折それに加え妻の両手の自由を奪った形でするようになった。  
陵辱行為を思わせる変態じみたやり方に、それでも小夜は黙って付き合ってくれた。  
忌まわしい過去を思い出していたかも知れないのに。  
純太朗は腰の動きのピッチを落とした。ゆっくりと奥深くまで差し込み妻の秘裂の感触を味わう。  
こんなやり方をしていても小夜の肉襞は熱く柔らかく、適度な締め付けで肉棒を包み込んでくれる。  
 
「んん…?」  
 
夫の動きが緩慢になった事に小夜は怪訝そうな顔をした。純太朗は妻の口を塞いだまま尋ねた。  
 
「本当の気持ちを教えてくれ……こんな風にされるのは嫌かい?」  
 
思い詰めた様に問う純太朗に、小夜は頭を左右に振って答えた。  
 
「……私が満足できるならこれでもいい……そう思ってくれるんだね? ありがとう……」  
「……んっ……んぅうっ……んぁぅっ」  
 
礼を言った純太朗は再び腰を動かし始めた。小夜の塞がれた口から甘いうめき声が漏れる。  
 
「君の仕上がり具合はどうかな? そろそろイキたいんだが……」  
 
小夜はコクリとうなずいた。本当はまだなのかも知れないが、草太の事を考えるといつまでも  
引っ張る訳にはいかない。家に帰ったら改めて満足させてやるからと純太朗は胸の内で詫びた。  
 
「よし、それじゃあ……君の大好きなちんぽみるくをあげるよ…」  
「んん!? んぐっんんぁんんっ!!」  
 
純太朗がいたずらっぽくそう言った途端に小夜は目をむいて激しく頭を振った。  
余程『ちんぽみるく』という言葉がお気に召さないらしい。  
 
「ああ、ゴメンゴメン、間違えた……君が大好きなのは……私の精液…だね?」  
「んーん」  
 
小夜は嬉しそうに目を細め、ウンウンウンとうなずいた。  
 
「いやらしい奥さんだなぁ……じゃあ、下の口でたっぷり飲んでもらうよ」  
「んん……んっ、んっ、んぅっ……むぐ……んぐぅっ……」  
 
悩ましげなうめき声を漏らし、抵抗するように身をよじる小夜に純太朗は再び陵辱プレイに浸る。  
妄想の世界で純太朗が組み敷いているのは小夜。彼女は異世界からやって来た魔女。  
体の自由を奪われた彼女は純太朗の怒張した熱い肉棒で女陰を激しく貫かれている。  
魔力を持たないただの人間の男に犯される屈辱感に苛[さいな]まれながらも、観念した彼女は  
魔法を使う事もせず、純太朗のなすがままになっている。  
そして射精を許したが最後、もう元の世界に戻れず一生この男にすがって生きてゆくしかないという  
予感に怯えている――。  
都合のいい話なのは純太朗も分かっている。しかしこれは自分の頭の中だけの密かなお楽しみだ。  
強い力を持つ魔女の心と体を征服する。これ程熱くなれるレイプのシチュエーションがあるだろうか。  
妄想の中の小夜は肌を汗でぬめらせ、延々と腰を波打たせる純太朗の下で辱めに耐えている。  
 
“……はあっ…はあっ…はあっ……まだ…終わらないの?……膣[なか]に出すんでしょ……”  
“もちろん出すよ……たっぷりとね……”  
“…きっと赤ちゃん出来ちゃうわ……そうなったら私、もうあなたの奥さんになるしか道がない……”  
“嫌なら魔法を使って逃げてもいいんだよ……何故そうしない?”  
“……お願い……何も聞かないで……”  
 
体を前後に揺すられながら魔女の小夜はそう言って涙で潤んだ目を純太朗からそらす。  
 
(俺がこんな事を考えながらしていると知ったら、小夜さん怒るだろうな……)  
 
快感にうめき、眉間に皺を寄せる小夜を見おろして純太朗は妄想から我に帰る。  
しかもこれは全くの妄想ではなく、ある程度まで現実の事なのだ。その事実が純太朗をさらに熱くする。  
妻の素性を知ってからは魔女という明確な役割を与えたが、それ以前の妄想の中に出てくる小夜は  
元々異世界から来た謎の女という設定だった。昔話に出てくる雪女や鶴の化身の娘が下敷きにあった。  
犯されながら彼を罵倒する小夜、辱められ泣きじゃくる小夜と、色々な小夜をイメージしてみたが、  
いつの間にか“嫌そうな素振りを見せながら何故か自分を受け入れてくれる小夜”が一番しっくり来る  
ようになった。  
後になってその小夜が現実の小夜とオーバーラップする事に気づき、奇妙な暗合に彼自身驚いた。  
もちろん単なる偶然だと純太朗は思う。魔法も超能力も持たない自分に妻の正体を見通す事など  
出来るはずがない。  
 
「んぐっ……ん…んん……むぐぅ……はぅ……」  
 
純太朗の妄想の中の小夜のように現実の小夜もまた、夫の腰使いに息を荒くしている。  
唯一違うのは現実の小夜は既に純太朗を受け入れ悦んでいる事――。  
当たり前ではあるが、妄想は小夜が膣内射精をされる所で終わっている。  
帰る場所をなくし嫌々妊娠したであろう彼女を、あの世界の自分は幸せに出来たのだろうか?  
そして今の自分は――。  
 
「ああ小夜……君のような素敵な人を抱ける私は幸せ者だ……でも君はどうだろう?……」  
「んん?」  
「時々分からなくなるんだ……私が君に相応しい男かどうか……君は私と一緒で幸せかい?」  
 
いきなり何を言い出すのかと小夜は戸惑いの表情を浮かべ、頭を振った。そして舌を出し、  
口を塞いでいる純太朗の手の平を舌先で押した。小夜の意図を理解した純太朗は、今度は  
小夜の口から手を離した。  
 
「今更そんな事言わないで……私はこうしてあなたと一つに……ううん、あなたに抱きしめられる  
 だけでも幸せよ……何よりあなたや草太と平穏に暮らせるのが私の一番の幸せよ……特別なもの  
 なんて何も望んでいないわ……!」  
「…………ああ、小夜、小夜!」  
 
純太朗は顔を伏せ、小夜に頬ずりをした。妻を抱いている最中に弱音を吐いた自分が恥ずかしかった。  
 
「何でそんな気持ちになったか知らないけど……あなたは間違いなく私に相応しい旦那様よ……  
 さ、早く続きをして…………私のおまんこにちんぽみるく飲ませて…」  
「うん……え?……小夜、今…」  
「二度と言わないわよ!……死ぬほど恥ずかしかったんだから……」  
 
そう言って真っ赤になった小夜は純太朗から目をそらした。妻のそんな様子に彼は目をほころばせた。  
弱気になった夫を奮い立たせる為に、あれ程嫌がっていた言葉を小夜は口にしてくれた。  
下品とは思わない。純太朗は妻の心遣いが嬉しかった。  
 
「これはもう必要ないな……」  
 
純太朗は小夜の両手首を固めていた左手を離した。ただし大きな声を出させない為に右手は再び  
小夜の口を覆った。  
 
「んん?」  
「やっぱり夫婦の営みは悦びを分かち合わないとね」  
 
何故手首を離したのかといぶかしむ小夜に純太朗はそう言い、彼女の左脚を引き寄せて内腿を  
撫で回した。  
 
「んああぁっ!…あっ…むあぅ……はぅんっ!」  
 
一番感じる所を刺激され、小夜はくぐもった嬌声を上げた。純太朗は口を塞ぎ直したのは正解だと  
思いながら妻の内腿を撫でさすり続ける。  
 
「今日も感度良好だね……それじゃ一緒にいこうか」  
「ん……んむ……はふ……はぁ……」  
 
先程とは打って変わって純太朗はゆっくりとした抽送を繰り返す。ピッチを上げれば早く射精するのは  
分かっているが、出来る限り小夜も快感に浸らせたかった。内腿の性感帯を刺激される事で小夜も  
純太朗の下で体をくねらせ頭を激しく左右に振る。塞がれた口から切なそうな吐息が漏れる。  
もう少し煽ってやろうか――純太朗は妻の耳元に顔を寄せてささやいた。  
 
「済まなかったね…確かに君の可愛い唇はあんな卑猥な言葉を口にする為にあるものじゃない……」  
「ん?……」  
「君の唇は私と熱い口付けを交わす為にある……そうだね?」  
「ん…んん……」  
「君の唇は硬く逞しくなった私の男根を柔らかく、柔らか〜く包み込む為にある……そうだね?」  
「んん……んふぅっ……」  
「そして君の女性器と子宮は私に精液を注ぎ込まれる為にある……そうだね?」  
「んーん! んぐぅ! んぐぅっ!!」  
 
そうよ、欲しい、欲しい――小夜がそう訴えているのが純太朗には手に取るように分かった。  
 
「……私の亀頭の先端が奥に当たっているよ……受け入れ準備は整っているね?」  
「んん!! んむぅんっ!!」  
「よし……」  
 
クライマックスに備え、純太朗は左手を太腿から離し小夜の頭を押さえた。  
両肘を布団の上で踏ん張り、彼は腰の動きのピッチを早めた。小夜の呻き声も激しくなる。  
 
「んんっ! んっ!んっ!んっ! ふあぅっ!」  
「可愛いよ小夜っ…もうすぐだっ…避妊魔法を使っても妊娠するくらい、たっぷり出してあげるよっ…」  
「んはぁっ…ふぁっ!はっ!はぁっ!!」  
「あぁっ、出る、出るっ! 愛してるよっ小夜っ! ふんっっ!!」  
「んふううぅぅんん!!……」  
 
純太朗が腰を押し付けると小夜の膣[なか]でペニスがぐわっと膨らみ、精液が勢いよくほとばしった。  
更に続く脈動と共にドクッ、ドクッと白い余韻が注ぎ込まれる。小夜の上で純太朗はグッタリとなった。  
 
「はあぁっ……はぁぁっ……はぁっ……小夜、ありがとう……最高だったよ……」  
 
純太朗はどうにか身を起こし妻の横に寝転んだ。ようやく開放された小夜の口から荒い息が漏れる。  
 
「はぁ……はぁ……どういたしまして……私のお腹も喜んでる……でも、なるべくなら草太の横で  
 するのは勘弁して欲しいわ…落ち着かないもの……」  
「ああ…それについては私も反省しているよ……スリルを感じながらするなんて、世間で言うほど  
 面白いものじゃないな……」  
 
済まなそうに言う純太朗の言葉を聞きながら小夜は半身になり、夫の胸に顔を預けた。  
 
「……やっぱり私はあなたと二人きりになれる場所で……ゆっくり、じっくり愛し合いたいわ……  
 あ、そうだわ、二人きりといえば…」  
「ん? 何だい?」  
「昼間の話だけど……私、ラブホテルで初夜を過ごすの嫌じゃなかったわよ」  
「そう?」  
「周りを気にしないで済む分、思いっきり励めたし……あの時の私を見て引いた?」  
 
小夜が気にするのも無理なかった。初夜の彼女は壊れてしまったかと思えるくらい大きな嬌声を上げ、  
激しく純太朗と求め合っていた。  
 
「ちょっとね……でもあの時の君の乱れっぷりを見て、この人には遠慮しなくていいんだと思えたのも  
 事実だ……」  
「そう思ってくれたなら、私も自分の恥ずかしい姿を見せた甲斐があったわ」  
「どういう事?」  
 
いぶかしむ純太朗にフフッと笑みを漏らし、小夜は身を起こして純太朗の腰に跨った。  
 
「あれであなたをリードしてあげたかったの……結婚前のあなたって腰が引けた感じでしてたでしょ?  
 折角夫婦になったんだから、遠慮なく私を味わって欲しかったの……」  
「……いやはや、君には敵わないな……さすが千年分のキャリアはある……おっと、御免よ……」  
 
千年分のキャリアという言葉に小夜の顔が険しくなったのを見て、純太朗は身を硬くした。  
 
「何か言ったかしら〜?」  
 
引きつり笑いを浮かべながら、小夜は純太朗の首にそろそろと両手の指を這わせた。  
しかし若干、その指を意識しながらも純太朗は度を失う事なく小夜に答えた。  
 
「女としては年齢[とし]の事をとやかく言われたくないだろうけど、私は悪い意味に捉えてないよ。  
 それにそれだけ長く生きてきた魔女に夫として認めてもらえるなんて、男冥利に尽きるじゃないか」  
 
本気ではなかっただろうが――純太朗の首を絞めようとする手の動きが止まり、小夜は夫の顔を  
まじまじと見つめた。  
 
「……体の方も相当、年季が入っているのよ……嫌な想像とかしない?……」  
「それこそ今更、だよ。年季が入っているったって、肌にはまだ張りと艶があるじゃないか。  
 おっぱいだってホラ、こんなに柔らかい……」  
 
そう言って純太朗は下から二つの乳房を持ち上げ、しっとりとした肌の感触を楽しむように揉んだ。  
 
「あんっ……はぁんっ……もう、あなたったら!……」  
 
小夜は乳房を揉む手を掴んでそっと払い、純太朗の上に覆いかぶさって彼の唇に吸い付いた。  
突然の事に驚いた純太朗だったが、手持ち無沙汰でいるのも勿体無いと妻の尻を撫で回した。  
 
「ん……んふ……む……ぅうん……」  
 
ひとしきり夫と舌を絡めあった後、小夜はゆっくりと唇を離した。  
 
「まだしたいかい? でも続きは家での方が……小夜?……」  
 
自分をじっと見おろす妻の表情を見て純太朗は奇妙な違和感を覚えた。いつもの小夜ではない。  
いや、顔立ちはいつも通りだがその瞳には老成した光が宿っている。純太朗はその眼差しが昼間、  
彼女をこの世界の者ではないと見抜いた自分を見据えていた時のものと同じだと気付いた。  
純太朗を見つめる、その彼女の目が少しずつ潤み始めた。  
 
「……私の過去と…この体を受け入れてくれたあなたに感謝してる……愛してるわ、純太朗……」  
「……お褒めいただいて光栄ですよ、賢者シルフィーヌ」  
 
かしこまったその言葉に小夜は微笑み、再び体を伏せて純太朗の――愛しい夫の頭をかき抱いた。  
 
「もう賢者じゃないわ……あなたの妻[おんな]よ……」  
 
 
 (終わり)  
 

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