赤ずきんたちが鈴風親子や木ノ下りんごを招待した五波温泉の旅館。  
 
「すみません純太朗殿……いきなり押しかけた身でお世話になって……」  
「構わんよ。折角みんな揃ったんだ。ゆっくりして行けばいい」  
「6時の夕食までには草太たちも帰って来るでしょうから、隣の部屋で休んでいるといいわ。  
 軽くお風呂に入ってきてもいいし……はい、これタオルセットね」  
 
 
フェレナンド王の伝言をたずさえて来たハーメルンを純太朗と小夜は旅館に招き入れた。  
ただ“いつもの恰好”のハーメルンは従業員や他の泊り客の好奇の視線をしこたま浴び、  
小夜は内心気が気でなかった。  
 
「私への連絡係になったのはいいけど、その恰好は目立ち過ぎるわね。この次来るまでに、  
 あなたに似合いそうなエルデ用の服を用意しておくわ」  
「恐縮です……ではまた後ほど……」  
 
ハーメルンが辞去した後、純太朗は座卓の前に座りテレビのリモコンを手に取った。  
小夜も急須と湯飲みをテーブルの上に置き、茶を入れる用意を始めた。  
 
「……ここのテレビはアダルトビデオやってないのか……残念だな」  
「あなた!……子供たちも一緒なのよ。やっていても見させないわよ」  
「ハハ……冗談だよ。それにしても温泉なんて何時以来だろうな……草太が小さい頃もみんなで  
行こうと言ってはみたものの……」  
「話題には上っても、いつも立ち消えになってたものね……あ、そうそう、旅行といえばやっぱり  
 新婚旅行は忘れられないわよね〜」  
 
小夜が差し出した湯飲み茶碗を手に取ろうとした純太朗は、その言葉にピクッと体を震わせた。  
 
「あ、あれか……あれは済まなかった……ずっと根に持っていたのかい?」  
 
15年前、婚姻の手続きは済ませたものの、純太朗と小夜は結婚式を行わなかった。  
事故の後遺症で記憶に欠落があり、また身寄りがいるかどうかも分からないと言う小夜の  
身の上を尊重しての措置だった。  
それでも純太朗は彼女を思いやり、時間と費用をやりくりして新婚旅行らしき事はした。  
東京をよく知らないという小夜の為にバスツアーによる都内観光。  
純太朗一人では決して行かないような、ちょっと値の張るレストランでの食事。  
そこまではよかった。問題は肝心の新婚初夜を過ごした場所だった。  
 
「ファンダヴェーレには新婚旅行の習慣はないし、娼館を除けば一般の人が使う“それ専用”の  
 宿屋なんて物もないから、あなたの話に私も何の疑問も抱かなかったけど…今思えば初夜に  
 ラブホテルはないわよねぇ〜」  
「悪かったよ……でも安く上げたかった訳じゃないんだ。カマを掛けてみたら君が乗ってきたから、  
 つい成り行きで……」  
「カマを掛けた? 私に?……どういう事?」  
 
夫の言葉に不審の目を投げかける小夜。しかし純太朗は冗談めかす事無く真顔で答えた。  
 
「あの頃から君を妙な人だと思ってたんだ……自動車を馬車と言い間違えたり、電話機の扱い方を  
 よく知らなかったり……記憶障害があるとしてもエルデの女性なら決してしないような振る舞いが  
 多過ぎた……当然、エルデの女性なら初夜にラブホテルなんて承知するはずがない……」  
「……あの頃から既に見切られていたという事ね……」  
 
夫を射抜くような小夜の鋭い視線。純太朗は知る由もなかったが、この時の小夜の眼差しは  
ファンダヴェーレの魔女、賢者シルフィーヌのそれに戻っていた。  
 
「だから極端な話、もしかしたら君は人間じゃないかも知れないとさえ思ってたんだ……」  
「…あなたの予測はある意味当たってたわね。確かに私はエルデの普通の女性じゃなかった」  
 
そう言って彼女はうつむき、深く溜息をついた。ややあって顔を上げた彼女はいつもの鈴風小夜の  
表情に戻っていた。  
 
「疑わしいと思っていたなら、何故何も聞かなかったの?」  
「…君を失うのが怖かったんだ……『鶴の恩返し』や『雪女』といったエルデの昔話のヒロインは、  
 夫に正体を知られた後いずこへともなく去って、二度と戻ってこなかったからね。でも君の場合は  
 お約束破りだった……まさか自分から正体を明かして出て行くとは思わなかったよ」  
「草太の父親らしい発想ね……よかったわね、私が昔話のヒロインじゃなくて」  
「いや、本気で君を人外だと思っていた訳じゃないよ……あくまで極端な話さ」  
 
愉快そうに微笑む小夜の言葉に純太朗は照れくさそうに頬を掻いた。  
 
「でも……サルタンの救いの手があと少し遅れていたら、本当に戻れない所だったわ……」  
「そうだったね……彼には感謝してるよ。君にも……」  
 
純太朗はそう言って座卓の端にいる小夜に向かって手を差し出した。  
 
「こっちに来てくれるかい?」  
「なあに?……あんっ」  
 
純太朗の手を握った小夜はそのまま引っ張られ、夫の胸に飛び込むように倒れ込んだ。  
 
「もう、痛いじゃない……」  
「ごめんよ……でも怒られるのも、こうして抱けるのも君が戻って来てくれてこそさ。ありがとう……」  
「ふふ……どういたしまして」  
 
そう言って小夜は夫の顔に手を伸ばし自分の方に引き寄せた。純太朗はそれに従い唇を重ねた。  
互いの口の中で舌を戯れさせる二人。やがて純太朗は妻の胸に手をやり乳房を揉み始めた。  
 
「あんっ……駄目よ……まだお日様は高いわ……」  
「大丈夫、この位置なら外からは見えないよ」  
「そうじゃなくって……あっ……あぁん……」  
「君も言葉ほど嫌がっているようには見えないけど?」  
「あなたの手の感触が伝わってくるから……浴衣って変ね……何でこんなにエッチな気分に  
 なるのかしら……はぁ…んっ……」  
「帯を解けばすぐ肌を晒すような恰好だからね……こんな事も出来るし……」  
 
浴衣の上から小夜の乳房をまさぐっていた純太朗は手を胸元の合わせ目に潜り込ませた。  
小夜の柔らかな胸の膨らみが直に掴まれる。  
 
「あっ……あぁ……あなた…あんっ」  
「いつ揉んでも柔らかいなぁ、小夜さんのおっぱい」  
「あ、はぁ……もう、いやらしいんだから……はぅんっ!」  
「おやぁ? 乳首がもうコリコリだよ? 気持ちいいんだね? じゃあ、こっちの方も……」  
 
純太朗は小夜の乳房からそろそろと手を滑らせ、股間の辺りの合わせ目に手を差し込んだ。  
 
「あっ!…ま、待って、そこは駄目…」  
「下着の上から陰毛のさわさわした感じが伝わってくるよ…」  
「そんな言い方しないで……あっ……変になっちゃう……はぁぁ……」  
 
夫の愛撫を受けて小夜は次第に太腿を大胆に広げ始めた。  
 
「段々はしたなくなってきたね……横っちょから指を入れてみようか」  
「あっ、駄目よ、本当に駄目……おつゆ染み出ちゃうわ……」  
 
ショーツの横から秘部に触れようとする夫の手を小夜が掴んで押さえようとしたその時。  
部屋の戸をノックする音が聞こえた。驚いて身を硬くする二人。  
 
(そっ、草太か!?)  
(えっ!? もう帰って来たの!?)  
 
「あの…賢…じゃなくて……小夜さん? ハーメルンですが……」  
「ハ、ハーメルン!? 何? 何の用?」  
「露天風呂に入ってみようと思って宿のしおりを見てみたんですが、行き方がよく分からなくて…」  
「あ、そ、そう? ちょ、ちょっと待って、今行くから……(チッ)」  
 
小夜は慌てて立ち上がり、身なりを整えようとしたが既に浴衣はかなり着崩れていた。  
 
“もう、あなたが余計な事するから!……”  
 
そう言いたげに睨む小夜に純太朗は分かった分かった……と両手を振るジェスチャーを見せた。  
 
「……あの……どうかなさったんですか?」  
「な,何でもないわ! まだ開けちゃ駄目よ! 開けたら後でひどいわよ!!」  
「え!? は、はい……しません、何も……」  
「おいおい、小夜さん……いいよ、私が行くから」  
 
浴衣を直すのに手間取っている小夜を見かねた純太朗は座卓の前から腰を上げた。  
 
「そういう事はもっと早く言ってよ!」  
「ごめんよ……後で埋め合わせするから……」  
 
ばつが悪そうにそう言うと純太朗は座卓の上の宿のしおりを手に取り戸口に向かった。  
小夜はそそくさと開いた戸口の死角に回り込む。  
 
「待たせて済まなかったね」  
 
部屋の入り口の外でキョトンとしているハーメルンに純太朗は風呂への経路を教えた。  
 
「……こんな感じだが、分かるかな?」  
「はい、大体は……ありがとうございます」  
 
旅館の案内図で露天風呂への経路を示した後、純太朗は声を潜めてハーメルンに言った。  
 
「それから…君がどこまで気付いているか知らないが……今の私たちの様子はくれぐれも皆には  
 内密にして欲しいんだ……特に女の子たちには……小夜が気にしているようだから」  
「……心得ました……すみません、お取り込み中の所お邪魔して……」  
「君は悪くないよ。じゃ、迷わないよう気を付けてな」  
「はい、失礼しました……」  
 
 
部屋の戸が閉まった後、ハーメルンは頭を巡らし自分を不審に思う者がいない事を確かめると、  
耳を戸に寄せて中の様子をうかがった。  
何かをポカポカと叩くような鈍い音。そして純太朗のものと思しき小さく短いうめき声。  
 
“うっ……ごめんよ……彼なら大丈夫……痛ッ……”  
 
ハーメルンは小さく身震いすると気配を殺して部屋の前から離れた。  
実際の所、声を掛けるまで中の様子には気付かなかったハーメルンだが、純太朗とのやり取りで  
彼と小夜が何をしていたかは大体見当が付いた。仕事柄、男女が睦み会う場面を目撃するのは  
珍しい事ではない。  
ただ、ハーメルンが身震いしたのは齢千歳あまりの小夜が若い女っぽく振舞う痛さに対してだった。  
純太朗と違い、彼はあくまで年齢を基準にして小夜の事を見ていた。  
 
(賢者シルフィーヌ、いまだに現役か……やはり外見に惑わされてるんだろうな、純太朗殿は……)  
 
その夜。時刻は11時になろうとしていた。  
純太朗と小夜は草太をはさんで川の字になって床を延べていた。数度にわたる風呂めぐりや  
歓楽街での遊興で疲れた草太は寝息を立てて、ぐっすりと眠っている。  
静寂に包まれた暗がりの中、純太朗はおもむろに口を開いた。  
 
「……小夜さん?」  
「なあに?」  
「起きてたか……まだ怒っているかい?」  
「お休みなさい」  
「ちょ、ちょっと小夜さん……」  
「ふふ……冗談よ……来る?」  
「もちろん」  
 
起き上がった純太朗は草太の足元を忍び足で回り、小夜の布団に近付いた。  
掛け布団をめくり上げ、夫を招き入れる小夜。  
 
「誘っておいて言うのも何だけど、本当にするの? 草太が横にいるのに……」  
「埋め合わせはするって言ったでしょ? それに昔は草太のそばでもしたじゃないか」  
「あの頃はこの子も小さかったから……今じゃ私たちが何をしているか分かっちゃうわ」  
「起きないよう願いながらするってのもスリルがあっていいじゃないか。じゃあ昼間の続きを……」  
「せっかちね……ん……んむ……」  
 
二人は唇を重ね、しっかりと互いに抱き合った。濃厚なキスを続けながら純太朗は小夜の背中に  
廻した手を下のほうに滑らせ、浴衣の上から妻の尻を撫で回す。小夜もそれに応えて太腿を  
夫の腰に絡み付ける。  
 
「ね……昼間の続きでしょ? 前も触って……」  
「ちょっと待ってくれ……折角の浴衣なんだから、これをやりたいんだ……」  
 
純太朗はそう言うと小夜を寝そべらせて彼女の腰の上に跨り、浴衣の胸の合わせ目を掴んで  
グイと左右に押し広げた。  
 
「あっ!……やだわ、こんな恰好……」  
 
露わになった小夜の二つの乳房。決して巨乳ではないが小さいわけでもない。  
純太朗がその手で掴んで揉んだり吸ったり、ときにペニスを挟んでしごくには充分な大きさだった。  
そしてこの時の純太朗は暗がりの中でも迷う事なく妻の柔らかな双丘を掴み、揉みしだき始めた。  
 
「あ……あなた…はっ……はぁ……」  
「気持ちいいかい? でも見たいなぁ、小夜さんの今の恰好……せめて豆電球だけでも…」  
「駄目よ、灯りを点けるなんて……そうだわあなた、魔法を使うのを許して下さる? そうすれば  
 あなたの目が幸せになれるわ」  
「魔法かい?……うーん……いいよ、今日は特別だ」  
「嬉しい、そうこなくちゃ。頭をこっちに寄せて……」  
 
小夜は両手で純太朗の頭を挟み呪文をつぶやいた。やがて純太朗の視界が徐々に明るくなった。  
天井灯に付いている常夜灯の豆電球がともったくらいの明るさである。  
 
「すごいな……こんな事も出来るんだ……君の方も見えてる?」  
「ええ……同じくらいに明るくなってるはずよ……続けて」  
 
小夜に促された純太朗は再び妻の乳房を揉み始めた。柔らかな膨らみが彼の手の中で形を変える。  
 
「はぁ……ああっ……いいわ……あぁんっ……」  
 
切なげな声を漏らしながら小夜も純太朗の股間に手をやり、トランクスの上から夫のものを撫で回す。  
 
「固くなってきたわね……あなた、私にもさせて……口が寂しいわ…」  
「おねだりかい? じゃあ“ちんぽみるく欲しい”って言ってごらん?」  
「えっ!?……何よそれ、下品な言葉……」  
「インターネットの掲示板とかによく出てくるけど……小夜さん知らない?」  
 
エルデで再び暮らすようになって数週間、小夜もパソコンでインターネットを見るくらいは出来るように  
なっていたが、もちろんそんないかがわしい言葉が飛び交うようなサイトには出入りしていない。  
 
「知らないわよ……第一そんな言葉は嫌っ。もっと普通に言いたいわ」  
「普通って、どんなの?」  
「決まってるじゃない……」  
 
小夜は淫らな指使いで夫のものをしごきながら、恥じらいと妖しさが入り混じった口調でつぶやいた。  
 
「……あなたの精液飲ませて……」  
 
妻の唇から漏れたその言葉に、純太朗はおおぅ、と呻きながら身震いした。  
 
「ちんぽみるくより、私には君のその言い方の方がクルよ……それじゃ…あ、そうだ」  
「何? まだ何かあるの?」  
「今度は君が上になってくれ。久しぶりに一緒にしようじゃないか」  
「もう、あなたったら……草太が起きても知らないわよ」  
 
体を離した純太朗に呆れたように言いながらも、小夜は期待を込めて浴衣の下をはだけた。  
ショーツの横に手をかけた純太朗が脱がせやすいよう腰を浮かせる。  
トランクスを脱いだ純太朗は布団の上に横になり、跨った小夜の浴衣の裾をめくり上げた。  
妻の細身ながらボリューム感のある尻が眼前に広がる。彼は小夜の秘裂に指を滑らせた。  
 
「そんなにいじってないのに、もうヌルヌルが染み出しているよ……」  
「あなたのコレがもうすぐ私の中に入ってくると思うと、そうなっちゃうのよ……  
 潤っていないと、すんなり入って来れないでしょ……」  
 
小夜はそう言うと横で寝ている草太の方を見た。両親の痴態に気付かぬまま寝息を立てている。  
 
「ごめんなさい草太…あなたのそばで……私、お父さんに求められたら拒めないから……」  
「ちんぽみるくは?」と、とぼけた口調の純太朗。  
「それとこれとは別でしょ。かじるわよ?」  
「ごめんごめん、たっぷり舐めてあげるから許して……」  
 
そう言って純太朗は妻の秘部に顔を寄せ、柔らかな肉襞の間に舌を差し込んだ。  
 
「あうんっ! もう、ずるいわよあなた……はぅ……」  
 
純太朗をやんわりとなじりながら小夜も夫のものを手の平で包み、愛おしそうに舐め上げた。  
棒付きキャンディのように竿全体に舌を這わせたり、亀頭部を甘噛みしつつ鈴口を舌先でくすぐる。  
絶え間ない甘美な刺激で硬化したペニスが先走り汁と小夜の唾液でぬらぬらと光る。  
小夜は新たに湧き出した先走りを一口舐めると、夫の砲身を唇でゆっくり包みフェラチオを始めた。  
 
「ああ……駄目だ……そんなにされたらこっちに集中できないよ……」  
 
自分の口技で夫が手も足も出せない事に愉悦を感じながら小夜は頭を上下させ続けた。  
快感の中で小夜にさせるままにしていた純太朗は目の前にある妻の菊門をぼんやり見ていた。  
無意識に両手が動き、穴の横を親指で押さえ、左右に広げる。驚いて口を離す小夜。  
 
「やだっ、そんな所見ないで…」  
「いや、夫たるもの、妻の肛門の皺の数も把握しておかないとね……」  
「把握しなくていいわよ、そんなの…恥ずかしいわ……」  
「そういえば……小夜…ていうか、シルフィーヌはお尻の穴でした事あるのかい?」  
 
再びフェラチオをしようとペニスに頭を寄せた小夜の動きがその一言で止まった。  
 
 
 (続く)  
 

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