------自宅偏
家の門の前で僕は説明した。
今日は両親も妹もいなくて自分1人だ、そしてそんなときに女の子を泊めるということが世間一般では良くない行為だ。彼女の返答は
「えぇ、それで?」
彼女らしい返答をして、勝手に門を開けて入ってしまった。仕方なく僕が鍵をあけていると、声に成らない悲鳴があがった。
振り返った僕に、彼女が抱きついて来た。
「なんで……あの…あの…生き物がいるのよ…あの…足が4本ある…忌々しい…」
ユカが彼女の後ろで尻尾を振りながら見上げていた。そういえば彼女は犬が嫌いだ。
「ユカ」
僕が呼ぶとユカは大人しく寄ってくる。世話などしなくても拾ってくれた恩ぐらいは覚えているみたいだ。
ユカが近づいでくると、彼女はますます身を堅くしてしまった。目を瞑って何かをしきりに呟いている彼女は、死刑執行を待つ死刑囚のようだ。キレイだ。
なんとなく、キスをした。
こんどは、彼女は抗わない。抗えないのか。
「夕」
呼びかけたら凄まじい形相で睨んで来た。
「あれを、どうにか、して。」
「あれ?夕、犬嫌いだっけ?」
「そんなわけないでしょう!!あんな生き物に、別に怯えてなんかないわ!!」
「とりあえず中に入らない?」
鍵を開けたドアを見ながらいうと、彼女は文字通り転がり込んだ。
「二階に僕の部屋があるから、先に行ってて」
そう言って彼女を玄関から追いやると、ユカを部屋に入れてやった。
コーヒーを入れて部屋戻ると、彼女は本棚の前に座りこんでいた。
「このナイフ、喉が乾いているのね」
返答を期待していた訳ではないようなので無視して近づく。
彼女の前は赤く染まっていた。赤い糸はナイフ達を濡らし、彼女の手首に続いている。彼女の手からナイフを受けとり、付着した血を丹念に舐めとるとまだ血の流れる手首も舐めた。強く腕を引くとドッと溢れだす。
彼女が苦痛に顔をしかめていたが、止めはしない。
「夕」
短く呼んで、唇を合わせる。ゆっくり舌を入れて深く絡ませてゆく。唾液が溢れ彼女の白い喉を伝う。
「んっ…」
呼吸に甘い声が入ると、僕はなぜか満足感を得た。