「ちっ、たったの二千円か、しけてやがるぜ。」
男はそう言って、あさっていたハンドバッグを道端に投げ捨てた。
(1日で一万五千円……今日は調子が悪いな)
スクーターを走らせながらそんな事をぼんやり考えていると、目の前を歩いている長髪の女の姿が目に入った。
(へへっ、最近はああいうのが意外とカネ持ってたりするんだよな。丁度いいや、今日はこいつで仕事納めとするか)
女に気付かれないようにそっと背後からスクーターで近づき、追い抜き様に一気に加速する。
「それっ!」
掛け声と共に力任せに女の持っていた黒いハンドバッグを奪い取る。目撃者はいない。手馴れた作業だった。
尻餅をついている女を尻目にほくそえみながら男は走り去る。
(ふん、ボサッとしてる方が悪いのさ。あばよ!)
スクーターが視界から消えるのを確認した女は、何事も無かったかのようにゆっくりと立ちあがった。
よく見ると、髪の隙間から長い耳がのぞいている。
『皆さんこんにちは、アウターゾーンの案内人(ストーカー)のミザリィです。
今私のハンドバッグをひったくっていった男は、知らず知らずのうちにアウターゾーンへの
扉を開けてしまいました。果たして彼はアウターゾーンのアイテムを使いこなす事ができるのでしょうか?』
(どれどれ……)
男はハンドバッグを開け、中に聖書大のノートが入っているのを発見した。
(デアズ・ノテ?ラテン語か?)
そう思いながら表紙をめくる。
『How to use this notebook: Write in the name of the person whom
you want to die. Within 4 minutes and 44 seconds in human time....』
男はノートを地面に叩きつけた。
「読めねぇよ!」
デスノート編・完
男はデスノートを投げ捨てると鞄の物色をはじめた。
「と、このノート以外にも何か入ってるぞ?皮袋?」
そこには皮の袋の中に
「ってこの中身!おいおいおいおい!」
縄・蝋燭・アナルバイブ・バイブ・ピンクローター・ボールギャグのセットと、一枚の紙切れが入っていた。
「げへえへへへへ、あのアマ無茶苦茶好きものだな、こんなの持っていやがって……」
そりゃ美女の鞄にそういうセットが入っていれば男はそういうことを想像して笑みの一つも浮かべたくなる。
もう彼の頭の中にはさっき鞄を奪った女(ミザリィ)が縄に縛られて二つの穴に道具を入れられ口を塞がれて
蝋燭の熱さに身悶えている姿が浮かんでいた。
「ん?何か書いてあるな……」
然し、取り出したときは反対側にあって見えなかったが、この皮袋の表面にはこう、記されていた。
エデンクラッシャーの儀式セット
注意!
これらのグッズはジョークグッズではなく呪術グッズです。呪術以外の用途に使った場合の保証は一切致しません。
「呪術?でもどうせエロいんだろうし、どんな儀式か見てやるか」と言いながら
男は説明書と書いてある紙切れを読み始めた。