とうに下校時刻を越えた図書室。
扉にかけられたプレートには「閉館」の文字が無造作に書かれている。
当然、こんな時間に人が来るはずもなく、それは単に「利用不可」という、それだけの主張しか持たない。
だというのに、その閉じられた空間に人がいた。
「……ん。く」
本棚と本棚の間。入り口からでは決して見えない狭い通路で、湿った音が響く。
「ん……く。は、ぁ」
音の発生源は一組の男女だ。
棚を背にして、半ば無理やり立たされているような少女と、
老年と言っていいだろう外見の男。
押し付ける、というよりもむしろ押しつぶすような勢いで、男が少女の唇を奪っている。
男の片手は少女の背に回り、もう一方の手は少女の手を握って上へ。今にも崩れそうな少女は、男によって立たされている。
「ぅ…ゃ……ゃあ」
わずかばかりの抵抗の台詞は聞き入れられず、逆に男を奮い立たせるだけ。
呼吸が困難になるほど口内を貪られ、朦朧としつつある少女の無意識がそれに応えた。
ただ、口を啄ばみ合うだけの状態。
だというのに、すでに彼女はそれに対して拒否の思考を持つことさえできなくなっていた。