それはある夜の出来事であった。  
 日本UCAT本部のとある一室ではいつものようにとあるへんt老人が赤毛の侍女にせっかn叱られていた。  
「は……八号君、落ち着かんかね?あまり怒ると御言君に嫌われてしまうぞ〜?」  
 白衣の老人、全世界の恥b大城一夫は妙にゴキブリを連想させる動きでかさかさと部屋の窓の方へと後ろ向きに這って行った。  
「そんなことはあり得ないと判断します。そしてその手に持っている物を渡しなさい」  
 赤毛の侍女、自動人形八号は大城に冷たい視線を向けつつ歩み寄っていった。その視線が捕捉するのは大城が持っているデータメモリだ。  
「八号君待つんじゃ!今君には冷静な判断力が欠如している!たぶんおそらくまちがいなく!!」  
 大城はそう言いながら窓の方へと更に這ってゆく。それに八号は、  
「ともかくおちついて話をgひhふぃあえおg」  
 重力制御で拘束させる判断を下した。  
「八号君がセメントでなー、老人虐待はいかんでなー」  
「はいはいtes.tes. ですからとっととそのデータをよこしてください」  
 八号が床に潰れている大城に近づいてその手からデータメモリを奪おうとしたとき、突然彼の頭上から人が幾人か降ってきた。それもネクタイと靴下のほかは大事なところを隠蔽する概念以外何もつけていない男たちだ。  
「八号さん!今、時代は暴力ではなく言葉で解決することを求めています!どうか穏便にことを運ぶ冷静さを取り戻してください!」  
 降ってきた男の一人が両手を広げて大城をかばうように八号の前に出て言った。  
「あなた方は常識を取り戻すべきだと判断します。――はるか後方に落としてきたようですが」  
 八号がそう言うと別の男が前に出て言った。  
「落としてきたのではない、捨てたのだ!」  
 八号は目の前の男たちの姿と、それに守られるようにしている床にへばりついた大城とを見て一言、  
「まず捨てるほどあったのでしょうか」  
 言った。  
 前に出ていた男はその冷たい視線と言葉に興奮したようでそのまま「もっとその視線で射抜いてぇ〜、虫けらのようにみてくれ〜」とか言いながら床に転がった。  
「流石は八号君でな〜、このままではまずいぞい、皆の衆!とりあえずこの場はこのデータを持って逃げることを第一に考えるでな!」  
 大城がそう言うと残りの男たちは大城からデータメモリを受け取り、窓から脱出していった。最初に八号の前に立った男を除いて。  
「何をしてるでな!早く逃げるんじゃ!」  
 床に押し付けられたままの大城が言うとネクタイに靴下の男は大城に背中を見せたまま言った。  
「俺がここを動いたら、八号さんの重力制御に対抗するこのネクタイ型概念兵器が意味をなさなくなります。……これは真正面の相手にしか効かないんでね」  
 それに、と男は俯くと自嘲気味に軽く笑って、言った。  
「俺たちの理想を形にしてくれたあんたをここで見捨てるわけにはいかないだろ」  
 
一方脱出した男たちは滑走路を走っていた。  
「このデータを仲間たちの所まで持っていくことができれば……!」  
 日本UCATではすでに警報が発動しており自動人形および女性職員たちが討伐行動に出始めていた。そして、彼等に自動人形の完璧な包囲網を抜け出すことはできなかった。  
「さて、おとなしくそのデータを渡してもらおうかしら?」  
 風見が空から現れた瞬間、彼等の逃亡劇は終焉を迎えていた。  
「なんてことだ……」  
 男の一人が呆然とつぶやく。だが彼等はまだ完全に諦めたわけではなかった。  
「まだだ、まだ!このデータを届けるまでは!」  
「いいからよこしなさい?今ならまだ一回げんこつするだけで許してあげるわよ?」  
 目が全く笑ってない笑みで風見が言う。それは駆けつけてきた他のUCAT職員および自動人形がが軽くトラウマになったほどの壮絶な笑顔だった。  
「あら、風見、そんなに脅すことないじゃない、この変態共が何をやったのか知らないけどあんたその顔……ホラー映画よ?」  
 1st-G監査のブレンヒルトが風見と対角線になるような位置に現れた。  
「なによ、あんたそこの変態共が持ってるデータの中身知らないの?」  
「? ええ、今来たばかりだから」  
「なら教えてあげるわ」  
 風見はなんかこう、怒りとか不快感とか蔑みとかこうどろどろした感情に身を焦がしながら男たちを指差し言った。  
「こいつらが持っているのはUCATの今までのデータから起こされたキャラを登場人物にした18禁ゲームのデータなのよ!」  
「……は?」  
 一瞬呆けたような顔をするブレンヒルトに風見はさらに付け足した。  
「ちなみに前情報だとあんたは隠しルートで攻略対象になってるわよ。"Sなプレイにかずおどっきどき"ですって」  
 ブレンヒルトは足もとにいた黒猫を掴み上げ、何やら実体弾と書き始めた。  
「人として最低ね」  
「君も大概最低だとおもごめんなさいごめんなさいあやまりますから撃たないでくださいおねがいします」  
 黒猫とブレンヒルトを視線の先で愛でつつ、男たちは円を描くように背中を合わせた。  
「人として、最低か……はっ!」  
 何かを悟ったかのように男は笑う。  
「人間性なら捨ててきた」  
    
「羞恥心なら脱ぎ捨てた」  
 
「ためらいなら置いてきた」  
 
「戸惑いなら切り捨てた」  
 
「誇りは犬に食わせておいた」  
 
「理性なら神社の境内に段ボールに入れて捨ててきた」  
 
 『そして今――我らは前に進む!』  
 
 彼等の体はきっと変態でできていて、この時、もしかしたらあの大城・一夫を超えていたのかもしれない(変態的な意味で)。そして、そんな彼等を見つつ、自動人形を従えていた京が言った。  
「お前らいろんなもの無くしすぎだろ、そんなに素材になりたいか?なんのとは言わんが」  
 それに男たちは答える。  
 
『だが愛と夢だけは捨て切れなかったので―――二次元に捧げてきた。』  
 
「それに、幻のextraステージ、アポルオン、アルテミス、京の超過激3P“かずお、ついついやっちゃった♪てへっ”のためなら、この命、おしくはなぁい!」  
 京が手を上げ、それに応えるように周囲の自動人形たちが構えた。  
   
ここにあるのは無限の変態――――――――  
           無限の紳士――――――――  
             無限の煩悩――――――――  
 
                 
                  臆さぬならばかかってこい  
 
 
 
・戦闘結果は言うに及ばずΘ  
 

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