確かに言った。運の服のまま切になると、まるで裸になったような  
気分になる、と。そう言ったのは間違いない。だが……  
「……そろそろ、かね?」  
 ――それがこんなプレイに通じるなんて、ボクの想像力じゃ追いつかないよ!  
「ね、ねえ、佐山君? ほんとに……このままジッとしてなきゃ、駄目?」  
「うむ。新庄君がそのように上目遣いの潤んだ瞳でせがんできても、  
 この行為は君の為に必要であるが故に撤回することは出来ない」  
「ひ、必要?」  
 どこをどう捻れば、裸になったような気分の自分を視姦するのが  
必要な事になってしまうのだろうか。  
「……佐山時空で佐山ブレインが佐山的フルスロットル?」  
「新庄君からの賞賛は、いつ聞いても心地いい……」  
「例によって褒めてないから陶酔した瞳で明後日の方向見ないで  
 こっち見て佐山君」  
「なに、ようやくその気になったのかね!? ……しかと自分の裸を  
 見て欲しい、と」  
「違うよっ!? 話を聞いてって言ってるんだよ! ……そりゃ、  
 裸なんて、切の時も運の時も、もう佐山君にはいっぱい見られてる  
 わけだから、今更なのかもしれないけど……」  
「だからこそ、こういった刺激が必要になる……そうは思わないかね?」  
「思わないけど否定するだけ無駄な気がするのはなんでかなー……」  
 いつものようなやり取りだ。そんなやり取りをしている内に、時間は過ぎる。  
「では、話を聞こう。何かわからない事でも?」  
「えっとね、佐山君。これが必要な事だってのは、どういう事?」  
 そうだ。必要な事だと彼は言った。君の為に必要な事だ、と。自分の  
為に、ではなく、君の為に、と。  
「ふむ……そこの所が理解してもらえていなかったようだね? ならば  
 説明するが……新庄君、君は以前言ったね? 一度着替えなおす事で  
 気分を切り替えれば、その裸になったような気分もどうにかなる、と」  
「え……あ、うん。そうだね、言ったよ。その後、野外強制着替えを  
 させられそうになったのも含めて」  
「何故半眼になるのだね。素晴らしく麗しい思い出だと思うが」  
「あえてスルーするけどいいよね? ……でも、それとこれから行われる  
 プレイに何の関係が……?」  
「それはだね、新庄j君。習うより慣れろ、だ」  
「……はい?」  
 言葉と共に、両の肩に佐山の手が置かれる。  
「例えば、私たちは毎夕、新庄君の身体を確かめているね?」  
「……あ、うん」  
 その行為を思い起こし、頬が赤くなるのを自覚しながら、新庄は頷く。  
「それは一体何の為に行っている? 答えは容易い。――慣れる為、だ」  
 男の身体と女の身体が時間によって切り替わるという体質。あるいは  
そういった種族特性なのかもしれないが、それに佐山は付き合ってくれて  
いる。女であるという事を、そして男であるという事を認める為の行為を  
教えてくれ、今でも実技指導をしてくれたり、時には彼の手によって  
その行為が為される事もある。  
「慣れるという事は、認めるという事と相似……ほとんど同じと言っても  
 構わないだろうね」  
「えっと……つまり?」  
 つまりは、だ……裸になったような気分になるという事は……新庄君  
 は、慣れていないのだよ――視られる事に」  
 ……何だか誤魔化されているような気もしたが、彼が本気で自分の  
ことを想って、必要だと考えて言ってくれているのは、新庄にも伝わった。  
 ――本気で想いながら変態行為に及ぶこともあるから油断でき  
なかったりするんだけどなー……。  
 内心の思いが苦笑となって顔に出る。  
 だがしかし、その苦笑を持って新庄は覚悟を決めた。  
「わかったよ、佐山君……ボクの、服を着てるけど、裸な所――視てくれる?」  
 

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