薄暗い部屋の中、椅子に座った女の子に、何も穿いていない下半身からのびたモノを踏まれていた。  
 ……あー、いかん、これはいかん。何がいかんかというとこの状態に至るまでの記憶がスッポリ抜けている辺りが特にいかん。  
 頭の中に靄がかかっている。どうもすっきりしない。  
 とりあえず現状を把握するために視線をあちこちにやる、薄暗い部屋の中、目の前にはよく見知った黒衣の女の子―  
―ブレンヒルトが椅子に座っていてこちらのモノを踏んでいる。服装はなぜか魔女服だ。壁には光をまき散らしている鎮魂の曲刃とそれに照らされたグラムが立てかけられているのが見える。  
この薄暗い部屋の光源は鎮魂の曲刃のようだ。今度は自分自身に意識を向けてみる。どうも床に座らされているらしい、手を動かそうとするとなぜか後ろ手に組まれたまま動かすことができなかった。  
「あら、お目覚めね、動こうとしても無駄よ? 符で拘束しているから」  
 ブレンヒルトはソックスを履いた右足と裸足の左足でモノを弄びつつ言ってくる。  
「な……にを」  
 ボーっとする頭で何とかもの申してみるが、ブレンヒルトはこちらを見下ろし、愉悦の笑みを浮かべて「フフ、なんとなくよ、なんとなく」と、答えにもならないようなことを言うだけだ。  
「それよりも」  
 ブレンヒルトは足で挟んでしごきあげたモノの先っぽを見てくる。  
「あらあら、なにか出てきてるわね。もしかして足で気持ち良くなってるの?」  
 体は正直というものなのか、こんな状態にもかかわらずモノはしっかり反応していた。確かにかなり気持ち良い。意識せずに勝手に腰が動いている。  
「足だけで気持ち良くなるなんて、変態ね」  
 先端から足で器用に液体を掬いあげるとブレンヒルトはモノにそれを塗りたくってくる。そのまま裏筋に足を擦りつけていく。  
 正常に思考できなくなっているのを自覚する。快楽に流されていく……。  
 カリ首の横や先端の鈴口に爪や硬い部分で擦ったかと思うと今度は足全体で扱きあげてくる。  
 限界は近そうだ。  
 左右の足の薄布と素足の感触の違いや水音、薄明かりの中視界に飛び込んでくる彼女の足の付け根に思考を完全に奪われる。  
 やがてビクン、ビクン、と腰が動き、モノから出た精液がブレンヒルトの足を汚していった。  
「ん、思ったよりも温かいのね」  
 そう言いながらブレンヒルトはこちらのモノから足を離し、精液を足の間で弄んでいる。  
 快楽に塗りつぶされた意識が一度出したことで急速に冷えていく。同時に正常な思考も取り戻す。とりあえず声を上げることにした。  
 
「私は……いったい?」  
 彼――ジークフリート・ゾーンブルクは完全に覚醒した意識で目の前の少女に問いかけた。  
「む、割と復帰が早いわね。体には相当な無理をかけていたはずなのだけれど」  
 流石は八大竜王といったところかしら。と続けてブレンヒルトは足を組みなおした。  
「ブレンヒルト君、これはどういうことかね?」  
 鎮魂の曲刃から漏れる光を頼りに周りをよく見回してみるとここは衣笠書庫だった。  
「見てわからないのかしら。生徒に司書が足扱きでイかされたのだけど」  
 ブレンヒルトは小首を傾げて意地悪そうに笑っている。  
「そういうことを訊いているのではないよ、ブレンヒルト・シルト君」  
 ジークフリートは手を縛りあげている符をあっさり外すとこめかみをもみほぐそうとして、気づいた。  
「髪が、ある?」  
 自分は禿頭だったはずだ。そう思うジークフリートの前でブレンヒルトはやはり意地悪そうに笑っていた。  
 それを見ながらジークフリートは考える。この状況に陥る寸前の記憶は曖昧だ。その曖昧な記憶によれば――  
「たしか、そう、グラムで……」  
 ジークフリートは魔女服を着たブレンヒルトがグラムを持って衣笠書庫を訪ねてきた記憶を思い起こす。まさかと思い壁に立てかけられているグラムをよく見るとそこにはこうある。  
 
  "若体化"  
 
「そんなばかな」  
 半ば呆然という体で呟くジークフリートに、ブレンヒルトはにこやかに答える。  
「グラムは1st-Gの全て、機構など書かずとも、そのものを書けば具現してくれるのよ? まあ、急な体の変化に耐えられずにあなたは失神してしまったけど」  
 そう言いながらブレンヒルトはジークフリートに近づく。  
「若いんだし、一回じゃ終われないわよね?」  
 そう言うとブレンヒルトは首に抱きつくように左腕を絡め、右手は通常サイズに戻っていたモノを握り、上下に動かし始めた。  
「ほら、もう大きくなった」  
 一回扱くごとに大きくなっていくモノの反応の良さに気を良くしたのか、ブレンヒルトはジークフリートを見上げ、笑んだ。  
「どういうつもりだ」  
「あなたこそ、もう拘束なんてないのに動かないなんてどういうつもりなのかしら」  
 モノから手を放して両手で首を抱くようにして体を寄せながらいうブレンヒルトにジークフリートは答えず、ブレンヒルトの肩越しに何かを見るようにしながら再び訊ねた。  
「ナインに憑依してどういうつもりなんだと訊いているんだ、グートルーネ」  
 ジークフリートがそう言った瞬間、ブレンヒルトの体から抜け出るようにして微発光する女性――グートルーネが現れた。  
 彼女はブレンヒルトの耳に何かをささやくかのように口を寄せ、その後すぐに鎮魂の曲刃の方へと行ってしまった。  
「ね……姉さん!」  
 ブレンヒルトは慌てたようにグートルーネに振り向いて呼び止めるが彼女はブレンヒルトに笑顔でガッツポーズを送ると鎮魂の曲刃の中へと消えていった。  
消えていく直前にジークフリートの方を向いて意地悪げに笑ってみせたのだが彼には意味がよく解らなかった。  
 なにはともあれ、とジークフリートはブレンヒルトに向き直る。  
「ブレンヒルト・シルト君、どういうことなのか話してくれんかな?」  
 姉が消えていった方向を見ていたブレンヒルトはジークフリートに向き直り、しかし目線は胸辺りで固定し、答えた。  
「嫌です」  
「では離れてくれないかね? 服を取りに行かなければならないのでな」  
 腕はもう首に絡みついてはいないものの、こちらの胡坐の上にブレンヒルトの膝が乗っている状態のため碌に動けないのだ。  
「……嫌です」  
「ブレンヒルト君」  
 いやにかたくななブレンヒルトにジークフリートが少し強く言ったときだ。  
「その呼び方は……いや。昔、みたいに、呼んで……ください」  
 恥ずかしがるように、あるいはせがむようにブレンヒルトはとぎれとぎれにそう言った。ジークフリートは一つ息を吐くと、  
「ナイン、いったいどうしたんだ?」と彼女のかつての名前を呼ぶとともに頭をなでてやった。その瞬間、ブレンヒルトは面を上げ、ジークフリートに唇を重ねた。  
 押しつけるようにした唇から舌を入れてジークフリートの口内を数秒、蹂躙するとブレンヒルトは唇を離し、上気した顔でジークフリートを見て、「姉さんには許可を頂いてますから大丈夫ですよ」と言う。  
「何が何やらわからんな」  
 完全に向こうのペースだなと思いつつジークフリート。ブレンヒルトは胡坐の上に座ったまま自らの衣服に手を掛け、  
「昔、ある少女は姉の想い人である異世界の青年に懐いていました」  
 言い、そのままワンピース状になっている魔女服を脱ぐ。下着の類をつけていない彼女の上半身はそれで生まれたままの姿になる。  
「その少女はその人を恨みもしました」  
 服を傍らに置くと、一部汚れたソックスも脱いだ。  
「でも、やっぱり少女にとってその人は大事な人でした」  
 ショーツ一枚になったブレンヒルトは、  
「でもその人に対して素直になれないくらいには年月を重ねた少女はある日、姉の魂と会話していた少女は思いきってその人とどう仲直りするべきか訊ねてみました」  
 ジークフリートの存在をその身に焼き付けるかのようにきつく抱きついた。  
「その結果が」「グラムで若返らせた私を襲うことなのかね?」  
「立案は姉さんよ。姉さんの大事な人を借りる代わりに少し体を貸すのも条件だったの」  
 ブレンヒルトが愉快そうに笑う声が聞こえる。  
「ねえ、ジークフリート」  
 ブレンヒルトは身を離すと立ち上がった。  
「さっき姉さんがあなたのを足で扱いてたときにね」  
 ジークフリートの正面には彼女のショーツが見える。  
「こんなになっちゃったの」  
 そこはしとどに濡れていた。  
「責任……とってくれるわよね?」  
 
 
 画面の中ではブレンヒルト(のようなもの)と若かりし頃のジークフリート(のようなもの)がくんずほぐれつしていた。  
「ここからどうなるのさ?」  
 聞こえるのは少年のような声。それにこたえるのは全世界の恥部の声。  
「最初は渋々といった感じのジークフリート君じゃが、次第にブレンヒルト君の涙とかこう、愛? にほぐされての〜。で、若い体のジークフリート君はそのまま若い情熱に突き動かされてぇっ!」  
「へぇ、それで?」  
「うむ、そして! 何度もじゃなぁ、こう、もう失神するま……で?」  
 句読点ごとにポーズをキメつつくっちゃべっていた全世界の恥部――大城・一夫はその場にあってはならない声を聞いておしゃべりをやめた。  
「……」「……」「や、やぁ、グッドイブニング、ブレンヒルト」  
 固まった大城と大城の居室の入口に立ったまま冷たい視線をくれるブレンヒルトの間に形成された沈黙した空間に、  
十八禁シーンが展開されているPCが乗った机に乗って大城と共にPCを見て盛り上がっていた彼女の使い魔である黒猫が音を与えた。  
「ブ……ブレンヒルト君、なにかな? わし、今自作の十八禁ゲームをやるのに忙しいんじゃが」  
 大城はすぐさま部屋の仕掛けのどれかを使って逃げようと思い、立ち上がって向かって左側の壁まで移動、期を窺いつつブレンヒルトを見るが、彼女には一部の隙も見当たらない。  
「そう、大丈夫、こっちの用件はすぐに済むから。時間はとらせないわ」  
 ブレンヒルトは大城に笑顔を向ける。大城はその笑顔に希望を見出しそうになった。しかし――目が笑っていなかった。  
「具体的にはどんな用件なのか一夫気になっちゃうの」  
 それでも大城は一縷の望みに賭けて用件を彼女に問う。彼女は簡潔に一言。  
「ミンチ?」  
「ブレンヒルト君! やたらと恐ろしい単語のみでの返答はやめてくれんかなぁ!? わし、寿命が縮んでしまうでな?  
 君が一体何にキれているのかよくわからないが敢えて言わせてもらうとこの作品はフィクションであり実在の登場人物・団体とは一切関係ないんじゃが!」  
「だから?」  
「ブレンヒルト君がいつにも増してセメントじゃああああああああ!」  
 希望など最初から無かったのだと悟った大城は足もとを強く踏みつける。すると、大城のいる辺りの床が消失、そのまま大城は階下に落下――しなかった。  
「わぁお……」と、大城。  
 彼は着ている白衣を数ヶ所、魔術による長大なピンセットに打ち抜かれて空中に縫いとめられていた。  
「急に逃げることないじゃない、こちらの用件を済まさせなさいよ」  
 ブレンヒルトは笑顔だ。  
「老人にはやさしく――」  
 黒猫は見た。つい先程までエロゲを元気にやってた老人が何かに吹き飛ばされて壁をぶち抜き、どこか遠くへ消えていったのを。  
 
 それを見てうなずき、ブレンヒルトはPCが置いてある机へと歩いて行く。視線はPCと彼女の使い魔である黒猫をばっちり捉えている。  
「あの、ブレンヒルト?」  
「なにかしら?」  
 黒猫の窺うような声にブレンヒルトは平静な声で応えた。表情は、笑顔である。  
「ボクに対して向けられているこの殺気のようなものは一体なんなのでしょうか?」  
「ようなもの、じゃなくて殺気よ? 本物の」  
 そう答えるブレンヒルトはやはり笑顔だ――先程と同じ。  
「い、いいい、いったい、なにゆえ?」  
 ブレンヒルトは無言で接近するとPCを粉砕し、HDDを叩き潰した。  
「さて」と視線を黒猫のみに向ける。  
 重ねて言うが、彼女は笑顔である。  
「ごごごごごごごごめんなさいごめんなさいボクです! 大城にこの前一人で散歩中衣笠書庫前を通りかかったときに見た光景を話して聞かせたのはボクです! だけど変に脚色して十八禁な感じにしたのは大城であってボクじゃありません」  
 黒猫はもういろいろと諦めて全てゲロすることにした。彼には勝算があったのだ。自分はゲームのネタになるような話を聞かせただけであり、ゲームの作成はあくまで大城が全部一人でやったことなのである。  
おとがめ無しとはいかないまでも、相当な減刑になるだろうと、そう考えたのだ。  
   
 だが彼の主人はそんなに甘くはなかった。  
 
「だから?」  
 しつこいであろうがブレンヒルトは笑顔である。  
 (気分的に)顔面蒼白となった黒猫は逃亡を試みるもすぐさま尻尾を掴まれ逆さ吊りにされる。ブレンヒルトは「さて、行きましょうか」と言うと静かに歩いて大城が居た部屋を黒猫を伴って出て行った。  
 
   
         とぅーびーこんてにゅー…?  
 
 
 
 
 

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