「んー……、さすがにこんな沢山出るとは思ってなかったなっ。
切ちゃん、ちゃんと若に処理してもらってるの?」
全身を脱力させ、頭を垂れる切。
顔中に精液を浴び、眼鏡や口の端からそれを垂らす遼子。
下から見上げ声を掛けてくる遼子に、切は何も答えない。
「もうっ、反応薄いとつまらないなあっ。
でもちゃんと発射したご褒美に、足だけ縄外してあげるね?」
着物の袂から匕首を取り出し、切の左足首を椅子に縛り付ける縄に突き立てる。
「でも遼子さん、久しぶりにちょっと興奮しちゃった。
切ちゃん、やっぱり何かフェロモン出してるんじゃない?」
ブッ、と微かな音がして、切の左足を拘束していた縄が断ち切れた。
「よーし、片方手術完りょ――――」
ゴツッ!!!
カツッカラララ……
左足が開放された瞬間、切は遼子の顔へと足を振り抜いていた。
不完全な姿勢から出された膝下しか使えない蹴りは、それでも普段の訓練の成果か、
遼子の顔を右下から強く蹴り上げ、体を倒れさせ、眼鏡を吹っ飛ばした。
倒れこんだ遼子を、涙を流しながら睨みつける切。
憎悪に満ちたその瞳は、暗く輝いている。
引きつった頬。振り乱れた髪。
鼻と口から漏れ出る息は、一向に落ち着く気配が無い。
切の身から放出される殺意を意ともせず、遼子は肘を着いて体を起こした。
ゆっくりと切に向き直る。
遼子の右頬は真っ赤に腫れ、口元から流れる血が精液と混じり濁りを増す。
その血混じりの精液を遼子は指ですくい取り、口に運んだ。
チュプ、と音立てて一舐め。乱れた髪を手で直しながら、微笑み言葉を放つ。
「……ちょおっとだけ、痛かったかなあ……」
「…………」
遼子を睨む切の視線は、目が合っているはずなのに、どこかに流されてしまっている。
「あのね、切ちゃん。私、痛いの嫌いなんだ。
大事な人が亡くなるとき、どんな風に心が痛むか、知ってる?」
四つんばいで這い寄る遼子。
「…………」
無言で切は二発目の蹴りを放った。
バチッ!
肉を叩く音が響く。切の左足は、遼子の右手に受け止められていた。
「とても、とても心が痛むの。
そんな時に代理物を求めるのは、人間として自然なことなのよ?」
切は左足に力をこめるが、全く動かない。掴まれている足首は痛みを感じていないのに。
切の表情が、険から恐怖・驚愕に変わる。
「その結果、代理物を壊しちゃっても、しょうがないことなの。ね?」
切の足の間にまた座る遼子。右膝を立て、切の左足を無理矢理持ち上げる。
――なっ! そこはっ……!!
体の柔らかさが仇となり、天井に向けて持ち上げられた足の付け根、腿の更に下は、
陰嚢の裏、蕾までを正面の遼子に晒していた。
遼子は口に左手の人差し指と中指を入れ、口内で舐め回す。
――もしかして、そんな……ヤダ……。
チュッ、と音を立てて己の口から指を抜いた遼子は、
今度は指を合わせてその腹に唾液を流した。
「ふ、ひゅああぁあっ」
唾液にまみれた左手が切の蕾に触れる。遼子は無言で唾液を塗りつける。
今まで椅子の下に隠れていた敏感な秘所を荒らされ、思わず声を漏らす切。
遼子は顔を寄せ、直接舌で周囲をなぞり始めた。
塗るのではなく、なすりつけ、擦り込むように執拗に舐め回す。
しかし、長くは続けずに遼子はスッと頭を離した。
――……あっ。
目を閉じタオルを噛み刺激に耐えていた切は、開放されたことに安堵を得た。
が。
「――ンやああぁぁああぁあぁぁっっ!!!!」
唐突に、強引に指が挿し込まれた。一本。絶叫する切だが、しかし蕾は抵抗をしなかった。
わずかに表情を変えた遼子は、中を人差し指で掻き回しながら、もう一本、中指を挿入する。
一本目に比べればはるかに窮屈だったが、しかし未開発とは思えぬ柔軟さだった。
無言を解き、遼子が口を開いた。
「――切ちゃん、思ってたより進んでるわねえ。もう若にこっちも使ってもらってるなんて。
やっぱ最近の若い子はすごいわあ。遼子さんカルチャーショック〜」
――違う! そっちは風見さんとシビュレさんが……。
訂正しようとするも、第二間接まで挿入された遼子の二本の指がもたらす刺激に負け、
声はまたしても封印された。
突き、内壁をこすり、押し広げ、回転させ、そしてまた突く。
前後左右上下、縦横無尽に動き回る遼子の指は、
過去にそうされた時の数倍の快感を切に与えた。
全く触れていないにもかかわらず、性器から滲み出る汁を見て遼子はまた微笑を浮かべた。
果たしてどれほどの時間犯されていたのだろうか。
――あれ?
痛み混じりの快感に、飛び飛びになっていた意識がはっきりしてくる。
中からは既に指が抜き取られ、張り詰めた性器が上を向いているのが目に入った。
つ、と切の顎に掛かる指。
くっと顔を持ち上げられた切の正面には、着物を脱ぎ、
一糸纏わぬ姿となった遼子が立っていた。
「切ちゃんお目覚め?」
微笑む遼子の顔には、先ほど切が蹴り飛ばした眼鏡があった。
少しフレームがゆがんでいたが、血を垂らした遼子によく似合っている、と切は思った。
視線を下げると、運の時の自分より大きな胸。
――遼子さん、やっぱり巨乳だったんだ。
着物の構造上はっきりとした大きさは知らなかったが、
抱きしめられた時にその感触を味わったことはある。
更に下……を見ようとしても、顎に掛けられた手はそれを許可しなかった。
遼子はその手をずらし、顎を持ったまま切の下唇とタオルの間に親指を入れた。
「あー……」
指と舌がぶつかり、思わず舌を引く切。
すると、遼子はタオルと唇の隙間にもう片方の手、左手の、人差し指と中指を突っ込んだ。
先ほど、気絶するまで切の中を掻き回した指。
――く、臭ッ!!
「どーお切ちゃん、自分の味は。若はこういう趣味無いから、知らなかったでしょう。
あ、それとももしかして、今の若はこんなことももうやっちゃってるのかしら?」
差し込んだ二本指で、今度は口腔内を荒らす遼子。
切の目は遼子を睨むも、先ほどの殺気は窺えず、打ちのめされた絶望の色しか見えない。
涙を流す切の目を見ながら、遼子は言葉を紡ぐ。
「まったくもう。そんなイヤそーな顔するくらいなら、
ちゃんとお尻の穴開いてウォシュレットしなさい。常識でしょう?」
――そんな常識、佐山君だって言わなかった、のに……。
「でもね切ちゃん。遼子さん、さっきはちょっと熱くなっちゃったけど、今は反省してるの。
だから……」
切の天井を向いた怒張に遼子の空いた右手が添えられる。
遼子が身を寄せ、切に抱きつくような格好になった。
耳元でささやく。
「だから、お詫びにこっちでも味見してあげるね?」
遼子の体が、ゆっくりと切に向かって降ろされる。
――やっ、それだけは――!!
佐山と初めて成し遂げた時の喜び。
その後体を重ねる度に、最初の想いを忘れないように、と心に決めていた。
だから、切は、佐山以外の人とは交わらないと、決めていたのに――。
――イヤ、イヤだ……。
その想いを無視し、いやその存在にすら気付かず、
遼子は自らの濡れた秘所に切を導いた。
――うあっ
「いやああああぁあぁああぁぁぁああああぁあぁっっっ!!!!!」
噛まされたタオルと口内を蹂躙する遼子の指の存在を無視し、
切は心からの叫び声、悲鳴を上げた。
両目からは止まることのない大粒の涙が零れ落ち、吐き出された唾液が自らの顔を汚す。
その叫びの意味は、佐山への感情と、遼子の中を気持ち良いと思ってしまった自分への怒り。
「んっ、なあにい切ちゃん大声出して。遼子さん耳が遠くなっちゃう」
腰を上下させ、切をむさぼる遼子。接合部は互いの体液で怪しく濡れ光り、
遼子が腰を打ち下ろす度卑猥な音を立てる。
「いやあん切ちゃん若よりおっきい♪ ……あ、若はあの時まだ十歳にもなってなかったね。
遼子さん凡ミス凡ミス。てへっ」
切の口を犯して、外も、中も犯して、心から楽しげな声を出す遼子。
切の目を見ながら、語りかけ、顔を舐める。
切はただ、犯された心と体で、ただ快楽を享受するだけ。
「もぉっ、切ちゃんたら、そんな黙りこくっちゃって〜。
もっと切ちゃんの感じる声、聞きたいなあ〜」
「…………」
「あーっ、若のことが気になってるんでしょ〜。
大丈夫ッ! 全部遼子さんに任せれば、心配ないからねっ!?」
「……心配、ない……?」
「うん、そう大丈夫! モロッコに高飛びしたって、伝えておくから、だから切ちゃん気
持ちよくなってねっ!?」
――もう、十分気持ちイイよぉ。だから、佐山君……。
――佐山君、大好きだから、一緒に……。
十年前に壊れた心と、たった今壊された心。
壊れた二人の狂乱の宴は、果たしていつ終わるのか。